■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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前半、飛鳥視点。



ゲーム開始……そして終了

 昨日ぶりの噴水広場は相変わらず私にこれが夢じゃないんだと実感を与えてくれた。往来はお世辞にも活気盛んとは言い切れないけれど、裏を返せばこれから如何とでもなるし、他の場所にはきっと此処よりも賑やかな所があるのだろう。それを想像するだけでもう楽しくて仕方ない。

 

 と言う訳で、一日ぶりの内街。私と十六夜君、春日部さん、黒ウサギ、ジン君一行は、ギフトゲームの行われる〝フォレス・ガロ〟の居住区へと向かっていた。途中、昨日お世話になった猫耳の店員さんの激励を受けたりもして志気高揚と、歩調は軽いわ。何より、楽しみで仕方が無い。

 あ、昨日の夜には如何やら十六夜君が悶着を起していたそうだけど、私には実害が無いから放っておくとする。寧ろジン君がヤル気に満ち溢れてるから良い仕事をしてくれたのでしょうね。

 さらにもう一つだけれど。私は昨日の堅苦しい一張羅から一新して、黒ウサギから譲ってもらった純・和服を着ている。因みに、貰ったものをそのままじゃなくて、私が着易いよう私好みに仕立てさせて貰った。意外かもしれないけど、手先は器用な方なのよ。

 デザインは、胴は普通の着物をより着易く、そしては着崩れしないように少し工夫をして。袖は少し趣向を凝らして二の腕の半分ほどで先と胴とを切り取って、平紐で繋げさせている状態になっている。結構通気性が良いのよ、この方法だと。

 

 とまあ、私の軽い自慢はさて置き。私達は〝フォレス・ガロ〟の居住区、門の前に辿り着いたのだけれど………

 

 

「ガルドって、意外と陰気な所に住んでたのね………」

「まあ虎だしな。コレが普通なんじゃねえの?」

 

 

 いや、あの無駄に高慢で似合いもしないのに上品ぶってたガルドが…………まさかジャングル(仮)に居を構えていたとは、ねぇ?

 外から見た感じでも中は鬱葱としていて、日の光が充分に差し込んでいなく、大分薄暗い。更に言うと、生い茂る木々はその根を、枝を縦横無尽に伸ばして外壁まで破壊している。……自棄にでもなったのかしら?

 まあ取り敢えず、私は半壊した門柱に貼られた〝契約書類(ギアスロール)〟を見つけて内容を確認してみた。

 

 

 

─ギフトゲーム名 〝ハンティング〟─

 

・プレイヤー

 久遠飛鳥

 ジン=ラッセル

 

・クリア条件

 ホストの本拠内に潜むガルドの討伐

 

・クリア方法

 ホスト側指定した特定の武具でのみの討伐。指定武具以外は〝契約〟によってガルド=ガスパーを傷付ける事は不可能

 

・敗北条件

 降参及び、プレイヤーが上記の条件を満たせなくなった時

 

・指定武具

 テリトリー内に配置

 

 

 

「ガルドの身をクリア条件に……指定武具で打倒!?」

「こ、これはまずいです!」

 

 

 羊皮紙を読み終えるや否や、黒ウサギとジン君が急に悲鳴染みた声を上げた。

 まぁ確かに、一見難しいわね。指定武具での討伐ってとこもそうだけど、何よりそれ以外に傷を負わせられないって事が厄介みたい……二人曰く。詰まり、私の〝威光〟の拘束戦法は通じない訳、か……

 

 

「面倒ね。動きさえ止めれれば早々にケリが付いたのだけど……」

「くっ………すいません、落ち度でした。初めに〝契約書類〟を作った時にルールも決めていれば、こんな事にはならなかったのに………!」

 

 

 ジン君が自身に失態を悔いる。けれど、私は別に攻めたりはしない。少し難易度が上がって寧ろ気分的にはハラハラしている。要は……〝威光による直の拘束〟が効かないのよね? フフフ、それなら勝機は充分見出せるわ。

 

 

「ふぅん。敵さんは命を賭けて勝負を五分に持ち込んだって訳か……。観客としては面白い展開だな」

「あら、それなら厭きさせないように盛り上げないとね。責任重大だわ」

「あ、飛鳥さん。とても余裕そうに見えるのは………何か勝算があるので?」

「無いわ」

「えぇ?! なら如何してそんなに悠然と構えていられるのですか!」

 

 

 如何してって……そんなの、ねぇ?

 

 

「面白そうに決まっているじゃない」

 

 

 私はそう言って門の前に立つ。ジン君も、十六夜君と何か二、三ほど言葉を交わして私の隣に立つ。

 そして、私達二人は三人の健闘を祈るという視線に押され、居住区の中へと入っていった。

 

 門を開き少し進んだ途端、退路は鬱葱と茂る木々によって塞がれてしまった。もしかしなくても、クリアするまで逃がさない、って事でしょうね………上等じゃないっ。

 

 

「それじゃあ、先ずは相手側の指定武具を探しましょうか」

「そ、そうですね」

 

 

 ?…………あぁ。

 

 

「大丈夫よジン君。近くには誰も居ないわ。だからそんなに強張らなくても良いのよ?」

「え……飛鳥さんは、捜索のギフトも持っているのですか?」

「いえ、ただの感よ」

 

 

 ガクリとジン君は肩を落とした。そして感と言われたせいか余計に辺りを警戒するようになってしまった。

 実際、辺りには誰も居ない。だって()()を感じないもの。だからジン君の警戒は杞憂に終わってしまうのだけど……別にいいわね。

 

 私達は居住区内を可能な範囲で探索した。勿論、二手に別れると強襲された時のリスクが大きいから二人でね。結果………何も見付からなかった。残るは〝フォレス・ガロ〟の本拠と思われる一際大きな屋敷。とは言っても、蔦や根が窓や壁を壊して侵入している様は嘗てあった生活感を台無しにしてしまっている。

 

 

「此処に来るまでの家屋もそうだけど、本拠も凄い有り様ね。本当に自棄にでもなったのかしら…………ねえジン君。この舞台だけど、本当にガルドが作ったものなの?」

「………分かりません。〝主催者〟側の人間はガルドだけに縛られていますが、舞台は代理を頼めますから」

「代理、ねェ……罠もなければこれといった奇襲も無い。随分温いゲームね」

「その分クリア条件は難関ですけどね。しかし、これは………」

 

 

 あら、また考え事。余計な事を考えてると今に足元掬われるわよ?

 

 警戒を怠らず屋敷の中に入る。中も外観同様、瓦礫が転がり雨風が辛うじて凌げるかどくかもいう荒れようだった。

 

 

「取り敢えず、二手に別れましょうか」

「……そう、ですね」

 

 

 お互いフォローが利く範囲なので、私達は二手に別れることにした。ジン君は一階、私は二階よ。

 

 瓦礫を軽い歩調で越えていき、辿り着いた二階。私は何の迷いもなく其処の一番奥にある部屋へと歩んだ。目的は当然――――その部屋から感じる()()()()()()()。私は屋敷に入る前から当たりは見付けていたから、ジン君には先の通り予め離れて貰ったの。きっと違和感も感じること無いでしょうね。

 

 

「さ、メインディッシュと洒落込もうかしら」

 

 

 こそこそと契機を窺う必要はない。私は堂々と部屋に突入し、目の前に相対するガルド………いいえ。考える事を棄てさった猛虎さん?

 

 

『……GE………GEYAAAAAAAaaaa!!!』

 

 

 ガルドは、もうあの時の人虎ではなかった。こらはもう、正真正銘野生に生きる猛獣ね。ま、最低限〝彼〟としては扱ってあげましょうか。

 

 

「来なさいガルド。少しだけ――――戯れて(あそんで)あげるわ」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 四肢を踏み締め、バネのようにガルドは飛鳥へと飛び掛かった。対し飛鳥は、バックステップで部屋の外、更にドア枠を掴んで階段へ方向転換、そしてもう一度後ろ手に跳んで距離をとった。同時に、ガルドも部屋から姿を現した。

 

 

『GEYAAAAAAッッ!!!』

「っ! 鬼、しかも吸血種! やっぱり彼女が、」

「ジン君! 今すぐ逃げなさい!」

 

 

 ガルドの姿を確認したジンは何かに気付いたように声を上げる。そんな彼に飛鳥は一人撤退を呼び掛けた。

 無論、その間にもガルドは彼女に襲い来る。流石に二人が通れる程度の通路は横に避ける事も出来る筈無く、後ろは脚力上無理。前など以ての他………だが、

 

 

「フフ――――()()()()()!」

 

 

飛鳥は前へ進んだ。そして〝威光〟のギフトを行使する。本来、ガルドは契約の力に守られているため飛鳥のギフトで命令、拘束等は出来ない。故に、彼女はギフトを………自身に使った。

 大分大雑把な命令にも〝威光〟は確りと機能し、飛鳥はその場で跳躍をしてガルドの頭上を足蹴に彼の後方へと降り立った。飛鳥の身体能力ではまず出来ない所動だが、結果も訳も言う必要はあるまい。

 

 

「(くっ……! 思った以上にやり難いっ。ある程度体を動かす事を覚えておけば良かったかしら……!)」

 

 

 内心そう愚痴を零しつつ、チラッと階下のジンを見る。如何やら飛鳥の呼び掛けを聞き入れずその場に残っていたようだ。今も、飛鳥に心配の檄を掛けてきている。

 

 

「飛鳥さん!!」

「あーもう! (分からず屋ね!)いいから()()()()()()()!」

 

 

 痺れを切らした飛鳥は、ジンにギフトを使った。すると彼は、スゥと静かに黙り込むと屋敷の外へと走りだし、あっという間に姿は見えなくなってしまった。

 それを尻目に飛鳥は先程の部屋に駆け込み、最初に視界の端に捉えてた指定武具であろう十字剣を手に取る。

 

 

「ふぅん? 成る程、吸血種……ようするに吸血鬼の眷属みたいなものね。十字の銀は確かに有効、か」

 

 

 試しに剣を振るってみた。細身の剣と言うことで空気抵抗は少なく、彼女にも比較的容易く振る事が出来た。

 飛鳥の口許が嗤う。そしてそのまま後ろを振り向いた。其処には先と同じ体勢で構えるガルドが唸り声を上げていた。今にも襲ってきそうだが、飛鳥の手にある十字剣を警戒してか簡単には突撃してこない。飛鳥の口許が更に嗤った。

 

 

「怖いの? 怖いのね。フフ、中途半端に理性が残ってるからそうなるのよねェ。まぁ本能的にも忌避していたでしょうけど、」

 

 

 瞬間、飛鳥の姿がガルドの視界から消えた………否、()()()()

 

 

『ギッ……!?』

 

 

 ガルドは周囲を見回した…………飛鳥は居ない。次はその嗅覚を頼りに焦燥に駈られながら必死に捜す…………、

 

 

「――――残念」

『!? GIAAAッ……aaa…………』

 

 

 飛鳥の声が聞こえた。彼女は目前に悠々と立っている。そして彼女の手には剣はもう無い。

 魔を断つ聖の十字は、寸分の狂いもなくガルドの頭部を貫いていた。

 やがて言葉を失い理性をも失いかけていた一匹の獣は、塵となり虚空へと散っていく。それを見届けた飛鳥は、何の言葉を掛ける事もなく静かに屋敷を後にした。

 そして間もなく、辺りを覆っていた密林は跡形もなく霧散し、残ったものは完全に瓦礫の山と化した〝フォレス・ガロ〟の居住群だけであった。

 

 

 

 

 

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