おや? ウサギとワンちゃんの関係が。 でも信用してるんです。 多分。
「レンちゃん、紹介するね! このバカみたいに無駄にでかいのが………」
一通りピトが笑い、レンに踏まれた俺が心傷したあと、新戦力となる羆の紹介が始まった。
聞いていると酷い言い方である。
確かにデカいが、エイリアン連中より余程良い。 レンも思うコトがある様子。 ちょっと下向きになっている。
デカいといえば《ギガンティック・アンローダーバルガ》を思い出した。 それこそ無駄にデカいと言える。 戦前は、だが。
全長47メートルの、移動式………人型巨大クレーン。 架橋作業などを想定し、政府主導で開発されたデカブツ。
完成までに天文学的な資金が投入されたが、運用する段階で安全性やコスト面の問題が多発。
ほぼ使われないままEDFに譲渡。 通称「鉄クズ」。 最終的には担当者の責任問題にまで発展したらしい。
民間人時代にも職業柄、話には聞いていたが………まさか兵器として運用されるとは。 エイリアンや怪物の群れを殴り、踏み潰し、多少撃たれてもE1合金製なのでビクともしない。 怪生物エルギヌス、アーケルスとの闘いでは特に活躍した。
「ワンちゃーん、聞いてる? 羆扱いした挙句に放心中?」
「ご、ごめんなさい。 ウチのワンちゃんが」
「ん? ウチの? いやー、そこまで関係がいっていたとは」
「違うからね!?」
だがなぁ。 殴るか踏むしか出来ないからなぁ。 クレーンだから仕方ないが………せめて、もう少し素早く動けないか。
ああ、レンのコトを思う。 レンは素早く動けるから素晴らしい。 踏まれたのは悲しかったが。
「ワンちゃんは放置で。 余程レンちゃんに踏まれたのがショックだったみたいだし、そっとしとこ」
「えっ、あ、その」
「何故分かったか? そりゃ二人の動きや反応を見てりゃーね。 取り敢えず、話進めようか」
「………ピト、用事は全部済ませておいた」
「分かった。 ほら、こっち座れ」
他にも悲しい思い出は色々ある。
バルガに関して言えば、228基地にあるモノを回収する為に、命からがら脱出した当基地の地下に逆戻りする羽目になった。
照明が落ちた暗い地下には、残存するエイリアンや怪物が蔓延っていたな。
勿論、殲滅したが………リムペットガンやセントリーガンで、味方の援護が精々であった。 それも何度か誤射しかけた。 援護ならぬ援誤である。 空なき地下は苦手だ。
「ほら、自己紹介しなさい」
「初めまして。 俺はエムと言います。 よろしく」
「初めまして。 わたしは、レンです」
最早、過ぎたコトだ。 クヨクヨしても仕方ない。 エイリアンとの戦争は終わった。 前向きにいこう。
ああ、さて。 何の話だったか。
「じゃ、私用事あるんで。 あとは若い三人に任せて!」
「え? あっ」
俺が我に帰ったとき。
ピトが消えていた。 残ったのは羆とレン、そして俺だけ。
「すまない、俺はストーム・ワンという。 君の名を聞かせてくれ」
「ワンちゃん………人の話はちゃんと聞こ? わたしも悪かったけど」
何も言えない。 俺は素直に謝るしかなかった。
「あの……、まあ、あんまり……、緊張しないで、い、いきましょう。 いや、いこう……。 敬語を使うと、ピトのヤツに……、あとで、ボコボコ殴られる」
新戦力のエムは、そう言ってきた。 ピトほど社交的ではないようだ。
しかし『殴る』か。 暴力はいけないが、時に格闘戦及び近接戦闘になった際の対応は重要である。
「あ、はい。 じゃなくて、うん、それで、お願い」
バルガはそうするしかないが、コンバットフレームの《ニクス レッドボディ》《レッドシャドウ》《レッドアーマー》等は近接戦用だ。 悪く言うと近付かないと攻撃し難い。
そうなると一気に距離を詰めるか、近付くのを待つ訳だが。 バルガと違い、レッドカラーは機動力が高いのが良い。
「ねえ、ワンちゃん? 人の目を見て話すのは大切だと思うよ。 でも、わたしじゃなくて、エムさんを見ようよ」
そう、レンのように。 レンをウサギに例えたコトがあったが、丁度ウサギみたいにピョンピョン跳ねて移動すれば、一気に距離を詰められる。
レンがウサギ跳びをしたトコは見たコトないけれども。 いつかやってくれないだろうか。
「………そんなに踏まれたのがショック?」
「仲が良いんだな。 俺もそうなれば良いのだが」
EDFのビークルは色々あるが。
デカさでいえば、他にもあったな。 《B651タイタン》という全長25メートルの巨大戦闘車両だ。
要は重戦車。 動く要塞というワケだが、やはり機動性は悪い。 装甲と火力は高いのだが。 主砲は本来、艦砲として開発されたという、レクイエム砲を搭載。
搭載する為に砲身短縮をした影響で、初速がやや低下している。 だが当たればビルをも吹き飛ばす威力である。 それでも金色の装甲は破れなかったな。
「まあ、ワンちゃんは放置で」
「良いのか?」
「うん。 あとで、わたしが躾とく」
「そ、そうか」
あとは………《BMX10プロテウス》。
巨大人型バトルマシン。 陸上戦におけるEDFの切り札ともいえる兵器だが、やはりか、運動性能は低い。
代わりに搭載武装は大型。 火力は高い。 また、全身を特殊な装甲板で覆われており、防御力は戦車を大きく上回る。 さらに大量の弾薬を搭載しており、戦闘継続能力は高い。 歩く要塞である。 ところが、操縦は専任になり、他にガンナーがいなければ戦えない。 ボッチでも固定砲台として使えるものの、仲間はいた方が良い。 今回みたいに。
「ピトから、どんなことを聞いてる? 俺が来るまで、どんなことを話していた?」
「SJのルールの再確認と、無線アイテムの使用と、ワンちゃんがリーダーになるってことを」
「そうか。 じゃあ、今日こうして俺達が顔を合わせている理由は?」
「まだ何も」
まあつまり、デカいのは機動性や被弾率の問題があるものの、火力や防御力が高いコトが多い。 それにモノを言わせて押し切る戦法も立派なのだと思う。
そう、何時ぞやの《前哨基地突撃作戦》みたいに。
「お互い、どれくらいの能力か分からない。 俺はピトから聞いているけど、ストーム・ワンに関しては噂でも聞いているけど………これから演習場に行って、それを確かめたい」
「なるほど。 でも、一つ、どうしても心配なコトが……」
「何か?」
「ワンちゃんがリーダーなコト。 そりゃ武器は強いけど、このとーりだし」
最も、火力と防御力に頼り過ぎてはならない。
無法者を取り押さえる際、武器弾薬が尽きた際、最後は自らの身体を武器としなければならなかった。 戦場でふざけて、銃口を向けて来る友人に対してとか。
「大丈夫。 考えがあるから、そうしているだけだ。 早速、予約した演習場へ移動する」
「分かった。 ほら、ワンちゃん! 行くよ!」
「はっ!?」
レンに声をかけられ、思考の海からサルベージされた。 しまった。 またやってしまった。
なんの話だったか聞いていない。
取り敢えず移動らしいので、移動しよう。 親睦会でもやるのかな?
次回、演習場へ。