やっとこさ、大会日まで進んだ感。
「装備を全部身につけてくれ。 通信アイテムも渡す。 ストーム・ワンは……持っているな」
着いた場所は演習場であった。 放棄された車両や、遠くに傾いたビル、クレーターのある山が見える。
特筆するべきものはない。 いつもの光景だ。
「ふむ。 射撃や運動能力を見たいのか」
「ああ。 二人に指示を出すから、その通りに動いてくれ」
「分かったよ」
そんなワケで。 俺とレンは武器を装備し、色々とやって見せた。
「40メートル先にドラム缶がある。 あの中央に向けて、立ったまま射撃して欲しい。
レンとストームは武器が違うから、それぞれ指示を出す」
先ずは普通に射撃から。
レンはP90で、言われた通りに射撃。 普段から使い慣れているからか、普通に良い腕をしている。
フルオートもそんなにブレていない。
「ストームも、その銃で撃ってみてくれ。 起爆はしなくて良い」
と、言われたので、リムペットガンを普通に撃った。 ドラム缶の中央に吸い込まれるように、吸着爆弾はピタリと着く。
むぅ、多少ズレた。 精度は悪くないが、スナイプガンの方が綺麗に付着する。 そっちの方が良かったか。
「今度は武器を持ったまま全力疾走して欲しい」
そう言われたから、レンと共に走る。
レンの方がずっと速い。 比べるまでもないな。
アンダーアシスト付きのレンジャー程ではないにしろ、どんどん離される。
振り返ってドヤ顔をされたが、子供らしくて可愛いじゃないか。 あとで褒めてやろう。
「今度は走りながら射撃だ」
もう一度、レンと走る。
走りながらの射撃は、体が安定していない分、ブレが激しくなる。
だがレンはそんなにブレていない。 かくいう自分も、先程と差異はない。 ズレ具合も同じである。 ちくせう。
レンジャーも、走りながらフルオート射撃をする者が少なくないが………彼らは凄いと思う。 殆どブレていないように感じる。
てか、狙撃銃を走り回りながら撃ったり、ジャンプしながら撃ってるヤツもいたくらいだ。
「あそこにある尖った岩まで、目測で何メートルあると思う?」
まあ『だいたい、このくらい』で答えた。
射程圏内かの判別はレーザーサイトがあれば頼っている。
「目をつぶって歩いて欲しい。 なるべく普通に、そして一定にだ」
普通に歩く。 ヘルメットを着用していると、不正していると疑われると思い、外して行った。
それでレンが驚いて、赤くなったり目を背けられたが。 そんなに俺の顔が酷いだろうか。
「後ろ向きになるべく速く歩け」
戦場でもよくやったコトだ。
敵から目を逸らさず、後退する。 重要だ。
コレはレンより速く歩けたな。 レンが悔しがって、更に足を速めて転んでしまった。
転んだ際の指示通り、そのまま回転して腹ばいになったが、少し可哀想なコトをした。
「しゃがんで丸まって、なるべく小さくなれ。 そして、そのまま坂道を転がってみてくれ」
ローリングの要領で、難なくこなした。
緊急回避としてではなく、素早く移動したい時にも使える手段だ。
ただ、228基地の非常用だとかいうあの道………あそこまで斜度がキツいトコではやりたくない。 転げ落ちて死ぬのは笑えない。
一方、レンもソレっぽく出来た様子。 うむ、良いコトだ。 万が一の回避運動も問題ないだろう。
「うん、分かった。 ありがとう」
エムがそう言うと、今度は自らも武器………ライフルを装備。
大きな異形の銃だ。 《PAー11》をカスタムしまくって、原型がどっかいった様な………上手く言えないが、そんな感じ。
使い込まれているらしく、あちこちが剥げていたり、擦れて色が落ちている。
だがそれが強力なモノである雰囲気を漂わせており、実に良い!
「おお! 格好良いな!」
「それがエムさんのメインアーム? 初めて見たけど、なんて言うの?」
「《M14・EBR》。 EBRはエンハンスド・バトル・ライフルの頭文字だ。
その名の通り、M14という古いバトルライフルの強化版だ。 口径は7.62ミリ」
改修された銃、ということか?
どれくらい古い銃なのか知らないが、それでも使用されているというのは信頼性が高いのだろうか。 何にせよ、格好良い銃だ。
「すると、エムさんの戦闘スタイルは……、セミオートでの中距離射撃?」
「そうだな、俺は、基本的には開けた場所で、相手との距離を保って戦いたい」
室内ではこれだ、と言い拳銃を見せてくれる。 いざというときの為に、使い方をレンと学ぶ。 俺にはサプレスガンがあるが、レンはP90のみだからな。
そう思い、レンの銃を一瞥して………エムを見ると、服装が変わっていた。 一瞬でどの様に着替えたのか。
装備ベスト、登山にでも行くのかと思えるほど大型のバックパック、服と同じ迷彩柄のブッシュハット。
いやはや、驚いた。 彼は只者ではないな。
その後も、音がどこから聞こえるかとか、色々やらされた。
俺は平気だったが、レンは終わった時、とても疲れている風であったな。 子供にアレはキツい。 3時間くらいやっていた気がする。
終了後に、何か奢ってやろうと思って声を掛けたが
「ありがとう。 でも、今日は帰って寝るね」
レンはぐったりと、トーン低くそう言った。
「分かった。 ゆっくり身体を休めてくれ。 好きな歌でも聴きながらな。
それとも俺が歌おうか。 子守唄は分からないが、EDFの歌ならば」
「あ、全力でお断り」
「………そうか」
俺はぐったりと、トーン低くそう言った。
翌日。
レンとはメールのやり取りのみで、会うことはなかったが、明日はいよいよSJ………新たなチームでの初戦闘予定である。
今や自宅代わりの、キャリバン救護車両内にて、武装や無線機器を確認していく。
いざとなれば、俺がレンを守らねばならない。
さあ、戦いの時間が迫っている。
俺は明日に備えて、目を閉じ………身体を横たえた。
次回、メール回?