レンちゃん、ナイフ講義を受けるの巻。 ワンちゃんは良くも悪くもいつも通り。
漫画だとレンちゃんがエム相手に、ナイフ戦をやっている描写があります。 眼窩への攻撃はハラハラする場面ぞ。
エイリアンの転送装置の応用か。
次の瞬間には、薄暗い部屋に立っていたから驚いた。
テレポーションシップや、アンカーから出て来る怪物も、最初はこんなトコにいるのだろうか。
目の前には『待機時間 09:59』のカウントダウンウォッチ。
怪物もコレを見ながら、降下されるのを待っていたと思うと笑えてくる。
最も、歩兵部隊はともかく、怪物に数字が読めるとは思えないが。
「戦闘用意」
「よーし!」
レンが張り切った声を出した。 いいぞ。 子供は元気が1番だ。
しかし。 そんな時こそ危険である。 気持ちだけが前に行き過ぎて、肝心のマガジンを忘れたとか、挙句に武器を忘れてはダメだ。
地底で砲兵隊や空軍に支援要請をするくらい笑えない話になる。
子供に最前線を闘わせる気は無いが、こんなご時世。 自衛火器は必要なのだ。
勿論、他の用意も大事。 ケガしたら即治療をする用意は出来ている。 エムもだが、レンは子供。 擦り傷でも命に関わるだろう。
いかん。 急に心配になってきた。 隣で確認作業中のレンに尋ねてみよう。
「P90と、マガジンは大丈夫か? 医療品はあるか? 具合は大丈夫か? ご飯食べたか? 歯磨きしたか? ソラスパン食うか?」
「後半関係ないよね。 それにソラスパンって何?」
「怪獣の形をしたパンだ。 アイスティーもあるぞ」
「ピクニックじゃないんだが」
レンもエムも、反応が冷たい。 先程の部隊の結束は何処へ行ったの。 隊長悲しい。
「真面目に話すけど、ピーちゃんは大丈夫。 マガジンもね。 救急治療キットも持った。
サテライト・スキャン端末もね」
「ああ、スマホみたいなヤツか」
「そう言うワンちゃんは大丈夫なのー?」
レンめ。 上目遣いで、ニヤッと笑いおってからに。 全く。 戦闘終了後、ナデナデの刑に処する!
「問題ない。 各種無線機器は正常。 リムペットガンも問題なし。 セントリーガンも動作不良はない」
「サテライト・スキャンは?」
「自前のセンサーで十分だ」
「いや、その機器は?」
「強度テスト中、不幸の事故で」
「………何も言わんぞ」
何だろう。 更に冷たくされた。 悲しい。
うーん、でも強度が気になっちゃったんだもん。 サプレスガンで撃ちたくなったんだもん。 仕方ないじゃん。
取り敢えず。 皆の戦闘準備が出来たか尋ねようか。 ウッカリ忘れ物をしたら大変だ。
「まあ………なんだ。 準備は済んだな?」
「バッチリ」
「いや。 レン、これを」
むっ。 忘れ物か? そう思った刹那。 エムがレンに鞘に入ったコンバットナイフを渡そうとして………
「はい没収!」
「うおっ」
素早く取り上げた。 何てものを子供に持たすんだ。 ナイフなんて早い! フォークから始めなさい! 違うか。
「P90の弾切れ時、副武装として持たせたい。 駄目か?」
「でもわたし、マガジンは七本装備していて、350発だよ?」
そう反論するレン。 表情からして、ナイフが怖い様子。 うん。 怖いと思う気持ちがあって、少し安心した。
俺としては、ナイフなんて直接肉を裂く様なモノは持たせたくない。 手に感覚が残るからだ。
だが………言わせて貰おう。
「七本でソレは少ないぞ。 EDFのアサルト・ライフルの中には、ワンマグでそれ以上のモノもある」
「それ、本当にライフルなのか?」
「分類はそうだった」
「えぇ」
今度はジト目で見られ始めた。 いけない。 脱線した挙句に戦闘前からコレではマズイ。 背中から撃たれてしまう。
「とにかく。 他にも利点があるのは分かる。 音を出さずに敵を倒せる、閉所や近接戦闘での使用。 ケーブルの皮剥き。 だがなぁ」
「ケーブル………?」
複雑な表情を浮かべるレンを見ながら言う。
身長や走力を生かせば、一気に懐に潜り込み、人体の急所を狙う等の戦法はあるだろう。 体格差で、相手の身体に纏わりつくのも可能のハズ。
肺、腎臓、心臓は防弾プレートで無理だが、首や眼窩を狙えば………普通の人間なら致命的なダメージを狙える。
「ストーム、必ず使う訳じゃない。 だが万が一を考えて欲しい」
「………」
結局のところ、首を縦に振った。 レンには悪いが無いよりあった方が良い。
「腰の後ろに、水平に装備するんだ。 使うときは、右手で逆手に抜いて………正対したのなら突撃………左右どちらかの内股を斬り付けるんだ。 そこには大腿動脈が走っているから、かなりのダメージを与えられる」
その後はナイフのレクチャーを受けるレンだったが、やはり、嫌そうだったな。 使う機会がないコトを願うばかりだ。
「銃だけで戦ってきた人間は、白兵戦には思いの外もろい。 もし気付いていない相手を後ろから襲えるのなら………」
講義を聞いてると、ふと懐かしくなった。 郷愁にも似た何かだ。
初めてプライマーの歩兵部隊と遭遇し、軍曹の戦術の講義を聞いた時を思い出す。
アレは遮蔽物を上手く使えば、裏をかける、というものだったか。 それと部位破壊。 今回は相手が違うけれど。
銃だけで、の部分を思う。 俺もその類だ。
兵科に関わらず、デカい怪物やプライマーを相手にする手前、格闘戦の訓練を受けても仕方ない。 故に殆どやらなかったし、やっても実戦で使うコトはなかった。
一部フェンサー等は装備の都合で、やっていた者もいたが。
ただ、約3年間の間、無法者や悪友を相手にする際に自然と格闘スキルが身についた。
嫌な時代である。 プライマーが跋扈しているより余程良いがな。
「以上だ」
「ね、ねえワンちゃん? 白兵戦が苦手なのは私よりワンちゃんだと思うし、ナイフ………持ってくれない?」
「駄目だ。 それでは講義を受けた意味がなくなるだろ。 それに俺も、一応は格闘戦は出来る。 心配するな」
「………うぅ」
すまない、レン。 だが大切なコトなんだ。
悲しげにナイフを鞘に戻す様を見ながら、心で謝っておく。 俺に出来るのは、ソレを使う機会が無いように、レンを守ってやるコトだろう。
待機時間を見やる。 もうすぐゼロだ。
「よし……。 やろうか」
エムの落ち着いた声が通信越しに聞こえる。
「りょーかい!」
「ああ!」
レンと俺は景気良く返事をし、銃に初弾を装填した。 エムも同様だ。
乾いた、異なる金属音が鳴り響く。
戦時中は様々な場所で、嫌でも聞いたもの。 雪降る田舎町、土砂降りの都市部。 綺麗な欧州の街並み。
そして終戦間際の静寂。
だが今は違う。 仲間がいて、再び銃撃音が鳴り響く。 決して嬉しい状況ではないが、希望を感じられる世界になったのは確かだ。
全てがゼロになった瞬間、俺達は光に包まれた。 聞かずとも分かる。 転送だ。
次に立っているのは、命がけの戦場となる。
さあ。 銃を再び手に取ろう。
皆を守る為。 地球を守る為だ。
次回、やっとこさ戦場予定。 やっと……暴れられる、のか?