駄文続きですが、よろしければ。
原作では住宅地でプロチーム相手に奮闘するのですが、ワンちゃんの所為で早めに退場してしまったので……。
『フォボスの力を見たか!』
そう無線から声がすると、フォボスの編隊は何処かへと飛んで行く。
見慣れた光景だ。 しかし彼ら空軍が何処から飛んで来て、去って行くのか全く分からない。
何処かに離着陸可能な場所があるのだろうが、開戦時の時点で空軍基地の多くは攻撃されたと聞く。 難を逃れた基地があるのだろうか。
終戦間際は有翼型エイリアンの群れが飛び回っており、制空権は喪失したと思われたが……普通に要請に応じてくれた。
終戦してから改めて考えると、他にも謎はあるのだが。 座標が分かるから、全力で突っ込んでくれるのか。
……あまり考えない方が良いな。
今は戦場にいるのだ。 センサーに反応がある内は集中しよう。
「都市部はもう、使えない。 怪物はともかく、人間が潜伏するコトはないだろう」
「そうだね。 私たちも使えないね」
瓦礫の山と化した都市部を見て、レンは言う。 別に構やしない。 建物もボロボロであったし、無法者のアジトと化しているのなら壊れた方が良い。
今動いているのは、プスプスと音を立てている煙くらい。 センサーに反応はなし。
「移動する。 次の敵を倒しに行くぞ」
発煙筒を投げて、ビークルを要請。
いつもの《グレイプ》だ。 レンとエムを守りながら、移動するなら最適のビークル。
赤い煙をモクモクと空へと上がる様を見ながら、エムに周囲の地形を聞こうとして
「……エム。 大丈夫か?」
振り返ればエムが呆けていた。 空爆の衝撃で、どこかやられたか?
「あ、ああ。 僕……俺は大丈夫」
「言葉が変だぞ。 本当に大丈夫なら良いが」
「ワンちゃんが《チート》をやるからでしょ」
レンがいつもの口調で言う。
チート……コンピュータ・ゲームにおいて本来とは異なる動作……ズルのことか。
確かにズルだったかも知れない。 空爆はやり過ぎだったかも知れない。 だが銃には銃で対抗しなければならない道理はないぞ。
連中だって銃以外にも手榴弾を使うだろう。 この前は楯を持ってる奴もいた。 それをズルとは聞かない。
それにコレは《ゲームじゃない》。
生きるか死ぬかの話になるなら、生きる方を選ぶ。 そこにルールはない。 特に戦場では。
俺一人の命だけでなく、無法者によって危険に晒されるのはレンやエム。 そして生き延びた者たち。
守る為に必要なら空爆要請もするし、ビークルも使う。 どう思われようと、そのスタイルを変える気はない。
「すまないな、エム。 驚かせて。 だが互いに生き延びる為にはこうするのが良いと思ったのだ。 許せ」
「う、うん……いや、分かった」
「さて。 次はこの方向に行きたいのだが、こっちは何かあるか?」
「住宅地と、沼地がある」
「了解。 そちらへ向かう」
まだ混乱している様子だが、何とかなるか。 精神崩壊でも起こされたら大変だ。
何時ぞやの、戦略情報部の少佐の部下……は少し違うが。
そうこう話してる内にコンテナが投下され、いつも通りビークルが届く。 お馴染みの武装装甲車両だ。
「よし、乗ってくれ。 エム?」
「……いや、すまない。 コレは?」
「装甲車だ、ライフル程度の弾丸ならやられない。 安全に移動出来るぞ」
「エムさん。 最初は慣れないと思うけど、ワンちゃんはこんな感じなの。 ごめん」
「……頑張るよ」
何がごめんで頑張るんだ。 エムは車酔いし易いのだろうか。 ビークル恐怖症?
だが済まないエム。 遮蔽物のない中を歩くのは危険極まりない。 嫌でも搭乗してくれ。
「俺が運転するから、二人は後ろに。 レンは知ってるな?」
「うん。 エムさん、後ろの扉から乗って」
「……分かった。 ところで、砲塔は本物か? 操作員は必要なのか?」
「俺が操作する。 運転しながらでも出来るからな。 二人は乗っているだけで良い」
「了解」
エムは良い奴だな。 混乱しているであろうに、役に立とうとしてくれている。
「ワンちゃん、成る可く揺らさないで走ってね?」
レンは呑気だな。 だが子供故の笑顔に負けた。 許す。
そうして二人を乗せて、いざ発車。 道中はひび割れた道路ではあるが、舗装された道に変わりはない。
徐行していたのもあり、そんなに揺れることもなく、あっという間に住宅地へ。 途中で攻撃されることもなかった。
さて。 この住宅地は日本というより、アメリカの高級住宅街を思わす風景だ。
庭があり、ガレージがセットなアレ。 人が住んでいないからか、だいぶ荒れ果てている。
一応、トラップの類はないか、センサー反応にない敵がいないか警戒。
しかしながら、住宅地に敵影なし。 民間人の反応もない。
当たり前かも知れないが……都市部とは別に漂う寂寥感。 道に空き缶やホイール付きのタイヤ、買い物カートが転がっているからか。
「かつてココでも人々が暮らしていたと思うと……悲しいな」
「都市部を吹き飛ばした人の発言とは思えないね」
「いや状況が違う。 コッチは何というか、生活感が残っている」
「そうだな。 実際、住宅地にある物品や新聞はそう思わせる配置だったり、文字が書いてあるようだ」
新聞か。 他にも気になるが、降車はせずに沼地へ行こう。
寄り道をしている余裕はないからな。
「そういえば。 前にピトさんから聞いた話で、こんなのがあるよ」
レンが何かを思い出したかのように、声を発する。 俺への皮肉や誹謗中傷でなければ聞こうじゃないか。
運転中なので、周囲を気を付けながらも、無線越しに耳を傾けた。
「小さな協会の廃墟で犬に似たモンスターを仕留めたら、さらに奥にある部屋に入れたんだって。
するとそこには、洋服掛けに綺麗なウェディングドレスとタキシードが掛かっていて……天窓からの光の加減でキラキラ輝いていたみたい」
ほう。 それはまた、幻想的というか美しい光景であったろうな。 レンも女の子だし、そういうのに憧れるのだろうか。
「でもピトさん。 二着ともショットガンでズタボロにしたって」
「台無しじゃないか!?」
思わず叫んでしまった。 何故そんなコトをするのかな、あの女! ホント、素敵な性格をしているよ。
「犬が守っていたからかな? 誰かが守っているモノを壊したくなる、みたいな」
「今日の結婚式でも、似たコトをやっていたりしてな」
「笑えないぞ」
やめてくれよ……。
狂った様に笑いながら、結婚式を滅茶苦茶にする光景が目に浮かんでしまうじゃない。
スプライトフォールの女科学者と良い勝負になってしまうのではなかろうか。 それはないか。
「二人をそんな目に遭わせる気はない。 一緒にいる間は俺が守る」
「え? あ、ああ」
「うん。 ありがとね、ワンちゃん」
ヨシ。 住宅地はクリアだ。 敵がいるであろう、沼地へ移る。
センサーを見ると、何やら高速移動をしている。 水上だ。 人の速さじゃない。 レンも速いが、敵はもっと速い。
ビークルに乗っているのか、空を飛んでいるのか緑の変異種の類か。 だが倒さずして平和はない。 得意不得意に関わらず、俺は向かわねばならない。 地底もそうであったし。
「沼地へ向かう。 敵がいる様だ、気を付けろ」
「先程のスキャンによれば、一チームいるのは分かっている。 市街地の方にいたプロチーム含む5チームは、あー、運悪く爆撃に巻き込まれて全滅したか」
「あっ、スキャンのコト忘れてた」
「沼地の連中、少なくとも人間の速度じゃないな。 レンよりも速い」
「乗り物でも手に入れたか。 残り三チームだが……厄介だな」
乗り物、ね。 《コンバットフレーム》や装甲車系ならばエムに《ミニオンバスター》を持たせたいところ。
爆薬と遅延信管を内蔵した徹甲榴弾を撃てる特殊ライフルのコトだ。
弾頭が大きくて弾速が遅く、射程距離が短いという欠点があるものの強力な銃である。 持ってないから意味ないけど。
やはり最悪は俺が何とかするしかない。
「わたしたちも、乗り物使ってるけどね」
「違いない。 だが相性というのがあるだろう」
「ああ。 腕に自信がない限り、高速移動する敵を仕留めるのは難しいな」
「ん? ワンちゃん、自信あり?」
「ない! 射撃全般は苦手だ!」
「そんな自信満々に言わなくても」
これから対峙する敵の対処会議をしながらも住宅地を抜けて、湖沿いに車を走らせる。
センサー反応を見ると、敵が湖を迂回せずに真っ直ぐ此方に向かっているトコロだった。
砲塔を操作しつつ見やれば、エムの言う通りである。 乗り物が見えた。
「敵だ! 左!」
「視認した! ボートか?」
凄い速さで湖の上……水上を移動していたのは、飛行型でも緑の変異種でもなく。
小型のモーターボート。 緑の船体の下には黒いゴムの膨らみ、そして後部には飛行機のような大きなプロペラ。
下に噴射した空気の力で船体を少し浮かせて、プロペラで押して走るその姿は。
「ホバークラフトか! 平地なら水陸両用として使えるビークルだったな! 乗ってみたいなぁ!」
「馬鹿言ってないで! ほら、来るよ!」
四台中、一台だけが一気に突っ込んできたかと思うと、横殴りにマシンガンを撃ってきやがった。 威力偵察か?
グレイプの装甲表面に火花を散らし、金属音を車内に鳴らして中途半端な嫌がらせをしてくる。 ダメージを与えられないと悟ったのか、次には手榴弾を放り投げてきた。
接触式なのか分からんが、地面に落ちると同時にドカァン! と派手な音。
アスファルトを抉りつつ、爆風と飛び散った破片群でグレイプを大きく揺らされた。
むぅ。 軽く徐行していたとはいえ、当ててくるとは。
中々の実力者達なのかも知れない。
「うわわっ!? 車が揺れる!」
「耐えるか。 強力な装甲だな」
だが無法者だ。 倒さねばならない。 乗り物に乗ろうと実力者だろうとなんだろうと、倒す対象に変わりはない。 倒そう。
「反撃する。 だがコイツの武装じゃ素早い敵に当てるのは至難の業だ」
「じゃあ、どうするの?」
「俺が狙撃して戦おうか?」
「いや、俺が始末する。 別のビークルを呼ぶ。 二人は中にいてくれ」
そう言って、俺は車両を止めて運転席から車外に出た。
それをチャンスと見たのか。 一台、真っ直ぐに突っ込んで来たので
「ちょうどいい的だな」
ビークルを呼ぶ前に素早く、ビーコンガンを撃ち込んでみた。
射撃が下手でも真っ直ぐに向かって来るなら、簡単だ。 偏差射撃がいらないのは助かる。
敵も何をされたのか分からないだろう。 乗ってる運転手と射手は一瞬首を傾げたが、そのまま突っ込んで来る。
精々、拳銃弾を1発早撃ちされた程度の認識か。 そうだとしても、それは間違いであるが。 だって弾丸というか、それビーコンだし。
『バルカン砲、ファイヤ!』
そしてガンシップへの要請とは思うまい。
無線と共に、遥か上空より降り注ぐ弾丸の雨。
それはビーコン地点に多少のばらつきをもって着弾する。 高速で移動していてもそれなりに当たる攻撃だ。
当然、それは無法者が乗るホバークラフトと周囲に着弾。 無数の水柱をモザイク代わりに、無法者はミンチになった。 悲鳴を上げる暇もなかった模様。
「空から銃弾の雨が?」
「あー、ワンちゃん曰く上空を旋回しているガンシップに、攻撃要請をしてるんだって」
「理解出来ないが……いや、したくないが……ストームについて考えるのは後にしよう」
残りは三台。 今の攻撃を警戒してか、近寄ってこないな。
まあ良い。 都合が良い。 今の内に別のビークル《ニクス リボルバーカスタム》を要請。
これは対空戦闘用にカスタムされたコンバットフレーム……搭乗式の強化外骨格で、見た目はロボット……様々なバリエーションが存在するが、今回は両腕にリボルバーカノンを搭載。
上半身の回転速度は速く、高速で移動する物体が狙いやすい。 両肩にはミサイルポッドを搭載。 ロックオンした物体に発射、追いかけ回す。 これらの利点から、対空とは言わず、通常の地上戦闘、素早い敵に大いに役に立つ故、要請してみた。
ただし。 このコンバットフレーム、重量が増しているのか、機動性が悪い。 素早い機動は難しい。 移動手段としては向かない。
「外でワンちゃん、頑張ってるねぇ」
「……俺たち、何もしなくて良いのだろうか」
「全部ワンちゃん一人で良いんじゃない?」
「複雑だな。 1発も発砲していないし」
「隊長命令だし仕方ないよ。 それより、さっき読んでいた手紙は?」
「え? あ、いや。 気にするな」
「気になるなぁ。 まっ、いいか」
待ってる間は時間が勿体無い。 リムペットスナイプガンで、動き回るホバークラフトを狙ってみた。
乗ってみたかったが、無法者に使われていると思うと破壊衝動に駆られたのだ。 射撃の練習台になってもらおう。
射出、失敗。 射出、失敗。 ダメだ当たらん。 リロードリロード……あ、ビークルが来てしまった。 練習短かったなぁ。
「なんか、格好良いロボットが登場したけど」
「………」
素早く搭乗し、起動。
操縦桿を握り、動き回るホバークラフトに向けてリボルバーカノンを撃ちまくる。
フルオートだ。 容赦はない。 空薬莢を左右に滝のように排出しながらも、撃って撃って撃ちまくる。
大きな水柱が無法者の周りにて大量に上がり、視界が遮られるが構わず撃つ。
続けてロックオン、ミサイル発射。 しばらく真っ直ぐ飛ぶと、思い出したかのように目標を追いかけ始めた。
無法者達は必死に逃げ回るものの、やがて命中。 大きな水柱を立ててセンサーから反応を消した。 全滅だ。
「クリア。 次へ行こうか?」
「なんか、参加者が可哀想に思えてくるよ」
火力差を思ってか、レンが諦めた様に言う。
だが構わない。
二人を守る為にも、他の者たちを守る為にも、そして地球を守る為にも、だ。
まだ戦闘は終わらず。