文の書き方を少し変えました。
ワンちゃん、ピンチになりつつある?
ストームに対する考察と対策
ストーム・ワンが酒場に戻ってきた時。
彼は拍手喝采を浴びるコトもなければ、罵倒されるコトもなかった。
普通、大会の優勝者が帰ってくれば、大なり小なり、称賛されるものであるのに。
ソレがないのは「ストームはチート野郎だから」とか「そういうヤツだから仕方ない」という、一種の呆れや諦めからだった。
例えるならば自然災害に近い。
その圧倒的な火力や装備品は、どうしようもない嵐(ストーム)であり、《荒らし》なのだ。 そんなヤツを褒める気にはなれない。
地震や台風で家財を失い、喜ぶヤツはいない様に。
本人はそもそも、SJが大会だったなんてコトすら知らないのだが。
いつも通り、無法者を倒した程度の認識だった。 今日も平和の為に頑張ったなぁ。 仲間も無事で良かったわー。
そーいえば、いつもより敵は連帯が取れていたなぁ。 でも倒したから良いやー、な感じである。
そんなワケで。
壊れた通信ユニットを修理するべく、家と化している救護車両に彼が帰った後。
酒場は通夜じゃないが、微妙な静けさに包まれていた。
笑顔で話したらバチが当たりそうな気すらする。
居心地の悪さから、皆はサッサと酒場を後にしたりログアウト。
そんな中、僅かに残ったプレイヤー。 彼らはこの酒場の常連で、SJには参加しなかった人達だ。 しかし、モニターで今回の結果を見て、話の種として会話を始めた。
SJの感想というよりは、ストームについての話がメインだ。
「チートをやってるなら、アカウント停止を喰らっても良いハズなのに。 ザスカーは何をしてる?」
名も知らぬプレイヤーは口にする。
独り言の様に放たれた疑問は、GGOプレイヤーが皆思うコトであった。
3、4ヶ月前から意味不明な兵装や乗り物でヤツはやりたい放題。
明らかにチート野郎で、1日どころか、半日以内にGGOから追い出されて良いハズだ。
なのに今日まで健在した挙句、大会にまで出場。 皆の予想通り滅茶苦茶な結果になった。 都市部が空爆されて一気に5チーム潰れたときなんて「うわぁ」と嘆きの声が上がったものだ。
「ザスカーに問い合わせても『調査中』の一点張りらしいぞ」
隣に座る、顔馴染みのプレイヤーが応答する。 互いに同じ店によく来てるので、その内挨拶をする様になり、会話をする様になった関係だ。
最も、街の外で出会えば殺し合うが。
「何ヶ月も調査中って。 多くの被害者が出てるんだ、有無を言わさず追放すれば良いのによ」
「出来ない理由があるんだろ」
「例えばどんなだよ」
手元にあるジュースを自棄飲みの様に、一気に減らす彼。 自分で話してるコトなのに、ヤツを思えば思う程、どんどんイライラしてきているのだ。
こういったプレイヤーは少なからずいる。 プレイヤーによるが、リアル同様に好んで関わりたくないタイプである。
その感情の矛先を向けられる危険性が、常に孕んでいるからだ。 こっちには関係ないのに。
幸いにも、彼の隣には付き合ってくれる友人がいてくれたが。
「例えば、GGOの関係者とか」
「余計に理解出来ないな。 明らかにプレイヤーを怒らせているじゃないか。 関係者なら、プレイヤーが喜ぶ、楽しめるコトをするハズじゃないのか? お偉いさんの子供だとしても、運営が個人を優先させて滅茶苦茶にするとは思えん」
「後は……実はNPCだとか」
「NPCに、あんな火力を持たせるか? ゲームバランスを一気に崩してるじゃないか。 バグなら直すハズだし、そうでないなら、ザスカーから知らせが来るだろうに」
互いに考え、あーじゃないこーじゃないと質疑応答を繰り返す。
こういった議論はGGO内で何度も繰り返されており、公式側でも頭を抱えつつも、似た様なコトをやっている。
結局、答えが出ないまま今日になってしまった。 解決の見通しが立たないのが現状だ。
そのせいで、GGOから離れてしまうプレイヤーもそれなりに出始めた。
『あんなチーターが許されるトコロに居られるか!』と。
だがしかし。 一方で簡単に硝煙漂う銃の世界を棄てるコトが出来ないゲーマーの方が多かった。
『やっぱこの世界が好きだ。 他所なんてありえねー。 銃を寄越せ! 撃たせろ! もっとだ!』的な。
「とにかく。 運営がどうにか出来ないなら、俺たちプレイヤーに出来るコトをやるべきじゃないか。 最近はそういう風潮になりつつある」
彼は明るく言い放った。 SAOじゃないが、プレイヤーによって解決出来るコトもあるであろう、と。
その為にはどうするべきか。 それを皆で考える。 それを実行に移し、ヤツに対抗する。
大会を見ていて改めてプレイヤー達は思った。 ヤツにこれ以上好き勝手させてはならないと。
そしてヤツは無敵ではないと理解した。 被弾したり、逃げる光景を見れば誰にでも分かる。
「そうだな。 だが、どうする?」
彼の希望がある発言に、イライラが収まった彼は尋ねた。 ヤツが無敵でないにしろ、あの圧倒的な火力や兵装を掻い潜るのは至難の業である。
何時ぞやの討伐隊は傷ひとつ付けられずに全滅。 大会中の被弾は、偶然であろう。
本格的に対抗するには、そういった運に頼らずに、ハッキリとした方法を確立しなければならない。
「とりあえず、ヤツの身内……《EDF》のメンバーに接触したりとか」
「して、どうするよ」
「もう暴れるなと説得してもらう」
「それが出来たら苦労しなくね? てか、もうやってるヤツの話は聞いたぞ。 身内にも制御出来ないらしい」
「じゃあ、腕の立つヤツにクレジット積んで、暗殺して貰うとか」
「並大抵じゃ、ヤツは殺せない」
「GGO最強のスナイパーとか、剣で弾丸を弾くヤツとか、ほら、いるだろ」
「後者は分からんが……前者は……殺れるか?」
「依頼を受けてくれれば、な」
「だがなぁ。 殺してもまた復活するのであれば、難しいか」
「装備を少しずつ削れば、いけるさ」
少し前向きな会話になっていく二人。 次第に笑顔が増え、ジュースの飲み方も穏やかになっていた。 持つべきは友達である。
絶望するにはまだ早い。
この酒場以外で活動するプレイヤー達は思った。 まだだ、と。 諦めるには早すぎる、と。
その想いは結集させ、彼らを強くしていく。
そんな希望を抱きつつあったGGO世界であるが。
またも皆が仰天してしまう事件が起きてしまうコトになろうとは、誰が予想出来ただろうか………。
どんどん壊れていく世界……。
もうやめて! 運営のライフはもうゼロよ! 状態へ突入………?
どこまで話が続くか未定orz