お迎えが来たようです。
ストームは言わずもがな、監視対象だ。 それは運営からもだが、プレイヤーからもである。
前者は何もしてくれないが、後者については重要だった。 ビルの高台等から彼を監視し、時には追尾し、位置を常に把握するのだ。
危険だが有益といえる。 その情報を知れば、彼がいるフィールドに行かなくて済むのだから。
もしフィールドで邂逅した場合、容赦なく殺されて、大切な武装を失いかねない。 それは避けたい。
勿論、その情報はタダではないのだが、需要は依然高い。 フィールドに出掛ける際は必ず見ておきたい。 最早、天気予報感覚だった。
「よっしゃあ! ストームへの鬱憤を、今の内に晴らすゼェ!」
「出来れば本人にやりたいんだがなぁ!?」
「出来ないから困ってる!」
「とにかく暴れるんだよアクしろよ」
そんな情報を得て荒野に繰り出した、とあるチーム。
見た目は皆モヒカンで、世紀末な戦闘服を着用。 防御も考えてなさそうであるから、完全に趣味の領域だろう。
良く言えば岩だらけの荒野と相まって、彼らの存在はとても似合っている。
そんな彼らは四人編成の《スコードロン》で、とても気が立っていた。 仕方ない。 ストーム・ワンの所為で、大切な武装を失ったのだから。
最もPK上等だとストームを襲った結果であるから、全く非がないワケじゃないのだが。
「プレイヤー見つけたらヌッ殺してエエんだろぉ!?」
「当たり前だよなぁ?」
「ストームはいないんだ、いんのは普通のプレイヤーだろうよぉ!」
「オーバーキルも止むなしだぜぇ!」
そんなザ・無法者な会話をしつつ、彼らが進むコトしばらく。
「おい! ありゃなんだ!?」
大きなテントが複数設営されたエリアを発見。 周囲は頑丈そうな戦闘服を身に付けた人達。 M16の様なライフルを持って警備をし、有刺鉄線付きのフェンスが周りを囲っている。
GGOでは見ない光景である。 異様な光景は普通、警戒するなり疑問に持つなりするものだが
「野郎ヌッ殺したらぁ!」
「ヒャッハー! 新鮮な獲物ダゼェ!」
彼らは何の疑問もなく、そして突撃を開始してしまった。 マシンガンを構えて、当たりもしないのに乱射しつつ。 真っ直ぐでおバカな連中である。
ストームがいないなら、怖いもの無し。 とにかく、ストレス発散。 撃って撃って撃ちまくれの興奮状態。
そんな連中に襲われたコトに気付いた警備のひとりは、直ぐに撃ち返さずに無線で仲間に報告。
すると、テントから同じ格好の人達が大勢出て来て……無駄なき動きで決められたポジションにつく。
「構えー!」
そして皆一様に銃を無法者に構え始め
「此方はEDFだッ! 直ちに攻撃を中止し、武器を捨てて投降せよ!」
その内のひとりが、何処かで聞いた様なコトを言い始めた。
特にEDFは凄い聞き覚えのある単語だ。 何の略か、プレイヤーの多くは知らないが、ストーム・ワンがいつも叫んでいる為に知名度は高い。 故に無法者は思う。
「はっ! EDFなんて単語だせば、ビビるとでも思ったかぁ!」
「ストームが街にいんのは知ってんだ! テメーらが偽物だってのは分かるんだよぉ!」
ハッタリ扱いだった。 ビビってるのは向こうだと判断して、足を止めない。
普通、偽物にしたって設営状態とか人数見て考えるものだが、野生的な彼らに説得は困難だった。
「ブルージャケット。 狙撃せよ」
それを理解してか、高台にいた狙撃手……青いカラーリングの人が4発、発砲。
その弾丸はそれぞれのマシンガンに当たり、使い物にならなくなった。
そんなに遠くない距離にしたって、立ったままの発砲でこの腕だ。 手練れだろうか。
「ぐっ! まだだぜぇ!」
逃げれば良いものを、マシンガンを放棄し、ナイフを振りかざして再突撃。 ここまで来ると特攻というより自殺だ。
その光景に止むなしと判断したのか
「撃てぇっ!」
一斉に発砲音が。 無数のマズルフラッシュと弾丸が彼らに向けられて、案の定というか蜂の巣に。 もれなく全滅してしまった。
後には何も残らない。 硝煙が漂っているくらいだ。 良く言えば、今回の彼らは武器を紛失しなかった。
あとは、彼らが何かしら学習していれば問題はない。 たぶん。
「こんな、無法者や怪物が跋扈する世界に……本当にストーム・ワンがいるのか?」
「反応はある。 無線は壊れてるのか、繋がらないが。 スカウトを編成して調べよう」
「さっさと回収して、元の世界へ帰ろうぜ」
警戒状態に移行しつつ、隊長格の人は会話をする。 どうやらストーム・ワンに関するコトの様だが。
ただ彼らの戦闘服や武器はGGOには無いものだ。 そして皆が持つM16に見えるライフルはPAー11。
EDFの主力アサルト・ライフルである。
そう。 彼らはストーム・ワンと同じ組織に属する本物のEDF隊員ら。 GGOからしたら異世界人だ。
彼らは計画的にこの世界に来て、駐屯地……というにはまだ雑な設備しかないが……を設営していた。
長期滞在になる様なら、本格的に造っていくワケだが。
何故彼らがGGOの世界に来ているのか。
それは《謎の女科学者》が発狂しながらエイリアンの技術を拗らせてしまい、人類を救った英雄、ストーム・ワンをこのGGO世界へ飛ばしてしまった為だった。
彼を回収するべく、戦略情報部や多くの人達の尽力で、最近やっと迎えに来るコトができる様になり。 それが今の状況となる。
なんだか、GGO世界が更にややこしくなってきているが……互いの世界が無事に元の鞘に戻るコトを、ただ祈るしかない。
無事に終わるか否か。