同じワンちゃん。 そして操られそう。
誤字脱字、その他間違いがあればゴメンなさい。
新戦力の《フカ次郎》。
そして待ち合わせ場所にいた《EDF》。
気になるコトは多く、特に作戦行動中と思われるEDFの目的は謎だ。
聞きたいコトは沢山あったが、中年オヤジが絡んでは質疑応答どころではない。
仕方なく、ワンちゃんはレンとフカ次郎を連れて寂れた酒場の個室に避難する。
これはこれでオヤジがいそうな雰囲気はするのだが、他に落ち着ける場所を知らない。
ワンちゃんは申し訳ないと思いつつも、自己紹介と作戦会議を始めるコトにした。
落ち着いたらEDFに合流しようとも思いながら。
「レンから聞いていると思うが、俺はストーム・ワンだ。 周りからはワンちゃんと呼ばれてる」
「わたしはフカ次郎。 《ALO》から《コンバート・システム》でGGOに来たんだ。 フカで良いよ、ヨロシク!」
明るく言い放つフカ。 金髪で整った顔立ちをしている、明るく可愛い女の子な印象を受ける。 レンの親友らしく、同じ背丈くらいのレンと並んで座っている光景は、見ていて微笑ましい。
ちょっと魔女見習いな雰囲気もあり、小悪魔的とも言える風貌でもある。
援助交際ぽい交渉の時、金の話を始めたのも納得出来る……気もする。 将来が心配だ。
名前がキラキラネームっぽい、変な名前だから余計にそう思う。
その名前で色々苦労しているのでは?
ワンちゃんは思い悩んだ。
悩んだ上で、結局は尋ねるコトにした。 これから共に戦う仲間だ。 成る可く戦わせないつもりだが、互いのコトを知って親交を深めたい。
その結果、逆に嫌われないか不安に思いつつ。
「あー、その。 変わった名前だな。 次郎って、男みたいというかラーメン系というか……犬というか」
「おっ! 分かる? 飼っていた犬の名前なんだよ。 同じ『ワンちゃん』同士頑張ろう!」
「ならフカは子犬で、俺が親犬としようか」
「頼りにしてるよー。 あっ、親犬なら子犬を育てなきゃ! ほらほら、早速行動で示して! 私たちにツマミ奢って!」
「はっはっはっ! 任せろ! クレジットならあるからな!」
嫌われたどころか、認められた気がしたワンちゃんは気を良くして、調子の良いコトを言い始めてしまう。 側から見たら、小悪魔にさっそく操られている駄犬の図だった。
「………ワンちゃんのバカ」
そんな光景を見て、ムスッとする隣のウサギさん。 ワンちゃんが有頂天になっているサマがお気に召さない様子。
ワンちゃんは、チート野郎でおバカで人の話を聞かず皆に迷惑を掛けまくる最低男であるが、側にいて守ってくれる男でもある。
色々奢ってくれるし皮肉を言っても笑顔で頭をナデナデして蝶よ花よと可愛がってくれる。
それに、いざという時は果敢に立ち向かい、どんな絶望にも屈しない。 そう思える存在だ。
そんな男の笑顔が、親友とはいえVR世界とはいえ……別の人に向けられているのだ。 心が騒ついても仕方ない。
しかし親友の子犬は直ぐに気付く。 置いてかれているレンを仲間に入れるべく、話を振った。 持つべきは心の友だ。
「あっ、戦うにも武器がいるよね。 何か貸してくれる?」
「えっ? ああ、ゴメン。 前に《スコーピオン》や光学銃を持っていたけど、売っちゃった」
「と、なると……買うしかないか」
「だね。 所持金は?」
「えっと、千クレジット」
「……ばりばり初期金額だね」
真面目なレンには、真面目な話を振れば引き込める。
そんな感じで上手くいったのだが、新たな問題が出て来てしまった。 フカの装備を整えねばならない件だ。
コンバート・システムはひとつのIDで、別のVRゲームに移籍できるコトをいう。
この時、鍛えたキャラの強さは相対的に引き継がれるものの、装備や金は持ってこれない。 アバターもそのゲームで固定される。 ALOでは妖精さんだった彼女だが、GGOではこの通りの小悪魔だ。
ただ例外として、ワンちゃんやEDFは初っ端から最終作戦仕様を持って来れる《強くてニューゲーム》なチート野郎だった。 それは運営にもどうするコトも出来ないレベルである。
でもGGO世界に来た彼らは良い方だろう。 だって銃と硝煙の世界だもの。 SAOやALOみたいな剣とか魔法な世界にログインしたら、《地球舐めるなファンタジー》と化してしまう。 ホント、戦場は地獄だぜぇ。
閑話休題。
兎も角、フカの所持金では安い拳銃を買って終わりである。
そんな装備では……。
「大丈夫だ、問題ない」
「そうだな。 俺が守れば良い」
「問題あるよ!」
とうていSJ2を生き残れない。 一番良いのが必要だった。
ワンちゃんがいる限り、負ける気はしないのは事実だが、前回の件もある。 せめて自衛火器は必要だとレンは思った。
取り敢えず、フカのステータス画面を見せて貰うコトにしたレン。 結果として、どんな武器が良いか見繕うのだ。
金の問題はまあ、おバカな駄犬におねだりすれば何とでもなるだろうし。
さて。 ALOで鍛えたであろう、フカのステータス。 それを見たレンはぶったまげてしまう。
「な、何……、これ……?」
筋力、敏捷性、耐久力(体力)、器用さ、知力、運。
GGOキャラが持つこの六つのステータスのうち、レンが勝っているのは敏捷性と器用さだけ。 他は遥かにフカが上だった。
特に筋力値と耐久力が高い。 これなら重い銃や大量の装備を持ち歩けるだろう。 グレランだったりグレランとかグレランとか。
「まー、こんなものかねえ」
長い金髪を顔の前でいじくりながら、フカはさも当然そうに言う。 まったく驚いていない。
ただEDF歩兵の方がずっと強く、彼女が知れば驚くと思う。
筋力や耐久力はフェンサー辺りとか。 強化外骨格《パワードスケルトン》の恩恵で、普通の歩兵が持ち運べない、運用出来ない機関砲やらキャノン砲を片手でブチかましているし。 シールド装備もあるし。 俊敏性はスラスターを使えばそれなりに。 ウィングダイバーも飛行ユニットで速く移動出来る。
それらを扱える分は器用ともいえる。 多種多様な兵器やビークルを扱えるレンジャーはもっと上か。 知力は……エアレイダーだろうか。 座標を伝達しなきゃならないし。 運は……終戦まで生き残った隊員らに当てはまるだろう。 戦時中は悲鳴や絶望を叫びまくっていた気がするけど。
「頼りに! なるっ!」
そんなEDF隊員らを知らないレンは、心の声が漏れ出した。 ステータス画面が見えないワンちゃんは、二人が指遊びをしている様にしか見えないのだが
「仲が良いのは良いコトだ」
勝手に独り言ちて頷き、納得していた。 変に突っかかるよりは良い。 ワンちゃんやEDFが絡むと面倒にしかならない。
「じゃ、早速武器を買いに行こうぜぃ」
「むっ? 自衛火器ならプレゼント出来るモノが」
「遠慮しとく」
「……そうか」
逆に絡もうとすると、レンが拒否反応を示してソレ以上は進まないコトもあるが。
しかし、今回は違う。 フカがいるのを忘れてはならない。
ロハ(タダの『只』をカタカナのロとハに分けてロハ読み)程安いモノはないと、話に乗ってきたのだ。
「ほう! 見るだけならタダだしぃ、ワンちゃん見せてよ!」
「よした方が良いよ。 ロクな武器じゃないだろうから」
「ナニを言うんだ。 レンと同じ《P90》だぞ?」
「「な、なんだってぇ!?」」
衝撃発言にレンとフカはぶったまげた。
青天の霹靂である。 ワンちゃんのコトだから、てっきりEDFの兵器とかワケ分からんサポート機械とか無線機器だと思ったのだ。
ところが、レンと同じP90だという。
コレは正史(?)において、第一回SJで壊れてしまったピーちゃんの2代目として、レンが買い直した品だった。
ワンちゃんの所為で壊れなかったピーちゃんは、ソレはソレで良かったと思うのだが、まさか元凶の駄犬が購入してしまうとは。
「うっ……ピーちゃんは可愛い……銃だよ」
「うむ。 レンとフカでお揃いになるぞ?」
「ほう。 レンとお揃い! 良いじゃない?」
三者三様の反応をする。 レンはまさか愛銃P90の名前が出て来ると思わなかったので、ロクな武器じゃない発言をした自身を悔いていた。
一方でフカは親友とお揃いの武器も悪くないかー、な反応を示す。
ワンちゃんは、自身よりも可愛い娘にぜひ使って欲しい。
なんだか、雰囲気的にフカの武器が決まってきた感があるのだが、ワンちゃんが絡んで穏やかに済む事案を期待しない方が良い。
「ただのP90じゃないぞ!
perfect defender modelだ!」
「「パーフェクト ディフェンダー モデル?」」
何だか怪しくなってきた。 そんな不安をよそに、ワンちゃんは笑顔で二人にブツを見せる。
はいドーン。 そんな感じに出て来たのは、箱型弾倉を後方に装填した、プルパップ式に見える黒い銃。
色々ごちゃごちゃ付いており、攻撃的なデザインをしている。
後付けの様に、側面に飛び出る形で箱型弾倉が差し込まれている。 銃上部に寝かせる様に装填する専用弾倉は見当たらない。
「ゴメン。 コレ、P90?」
「いかにも。 『ちょっと』改造したが」
ワンちゃんは説明をそれっぽく始めた。
コンパクトで高性能なP90をディフェンダー用にパーツ編成したモデルだそうで。
T4ストークぽい見た目と化している。
銃上部に寝かす様に装填した専用弾倉を撤廃。 代わりに専用のP90BOXマガジンを制作、使用。 EDFの謎の技術で驚異の300発以上まで装弾数を引き上げた。
サプレッサー装備により、アンブッシュ時の隠密性を極限まで向上。 敵からの発見を遅らせる効果を狙う。 またクイックマウントベースにより、夜戦時と昼戦時での編成変更を容易に行える……らしい。
コレを造るのに、ワンちゃんだけでは無理で、色々な人達の協力や偶然の産物等でこんなゴツいのが出来上がってしまったという。
「道のりは険しかった。 だが、何とかなった気がする! さあ、ぜひ使ってくれ!」
「何だか取り回し悪そう。 それに可愛さが消えちゃってるし」
「うーん、強そうなんだけどさ。 ピンとこないわ」
「……そうか」
余計な手間暇を掛けた割には微妙な評価を受けてしまった。
悲しげに銃を仕舞うワンちゃん。 結局はフカの武器は決まらなかった。
このP90 perfect defender modelが使われる日が来るのか、どっかの作業用クレーンみたいなコトになるのか不明。
取り敢えず、フカの武器探しが始まりそうだ。 変な展開にならなきゃ良いが。
子は親に似る。 この場合は武器……?