グレラン回。 EDFが絡む今後の展開が不安。
でも何とかなる。 たぶん。
大型ショッピングモール。 その中にある武器屋にワンちゃんとレン、フカは訪れた。
見た目は幼女二人に作業着姿の男。 仕事帰りに玩具や工具を買いに来たように見えなくもないが、ココは硝煙漂うGGOだ。
どっかの宇宙最強エンジニアや、ショッピングモールでゾンビと戦うカメラマンの世界と同列にしてはいけない。 フツーに陳列している銃を見に来ただけだ。
ところが、出だしの会話は古くてファンタジーな兵器から始まる。 ALOからやって来た元妖精さん、フカが要因だった。
「筋力体力あるから、どんなヘビーな武器でも持てるよ? 両手剣とか、戦斧とかいいね。 長いランスも結構好き」
「そうは言ってもなぁ、アレは運用が難しいと思う」
「またワケ分からないコトを」
それに反応したるはEDF所属のワンちゃんだ。
繰り返すようだが、GGOは銃の世界。
フツーなら「そんなもん、いらん!」と言うプレイヤーは多いだろう。 だって銃撃戦でそんな接近しなきゃいけない武器とか、非効率的だもん。 近付く前に撃たれて死んでしまうのがオチだ。
ところが、謎技術の兵器群を運用するEDFの隊員は常識からちょっぴりズレていた。
「EDFでは槍やランスで、銃を持った敵部隊を一掃している部隊がいたが。 使っている仲間は殆どいなかったな」
「いやー。 話盛ってるでしょ」
「冗談言わないで。 ピトさんの件もあるし、真面目に武器を選ぶよ」
「………本当の話なのだが」
そして当然理解されず、冷たい反応をされて拗ねるワンちゃん。
EDFのヤベェ兵器や隊員らを基準にしている時点で、いろいろ話にならない。
それに。 ワンちゃんの言うEDFの槍やランスは、先っぽがトンがっている辺りとか、それっぽく見えるけど、刺して終わりな代物ではないのだ。
《ウィングダイバー》のランス系や《フェンサー》装備の槍《ブラストホール・スピア》等は、機械的。
ランスは粒子ビーム砲だったり、槍は肉眼では分からない程に一瞬で突出、伸縮。 あらゆる物体を貫通した後、先端から高圧プラズマを放出し物体を内部から崩壊させる恐ろしいモノだ。
ハンマーやブレードも叩いて終わり、斬って終わりな代物じゃない。 コレも衝撃波や斬撃波の様なモノを発生させて、離れた敵にもダメージを与えられる。
ただ、接近しなきゃならないのは共通していて、銃撃戦での運用はEDF隊員をもってしてもムズい。 それでも《グリムリーパー隊》の様に使いこなす隊員がいた結果、今の会話に繋がる。
……まあ、どっかのレンジャーは、なんの変哲も無い溶接用ガスバーナーを戦場で振り回していたのだが。
ソレだったら、槍やランスで戦った方がマシではあろう。
え? 宇宙最強のエンジニア?
知りませんね……少なくとも元技術者のワンちゃんとはいえ、工具で怪物とドンパチはしていない。
モノは本来の用途で正しく使いましょう。
「ところでEDFってなーに? スタート地点にいたオジサン達のコト?」
「ああ。 EDFは地球を守る組織だ。 悪いヤツらじゃないぞ?」
「関わらない方が良いよ」
話の流れで、フカ達からEDFの単語が出た刹那、余計な面倒ごとを避けたいレンはすぐさま警告を出す。
だってEDFとかヤバそうだもん。 スタート地点で見かけた銃はGGOのと似ていたけれど、隊員だというワンちゃんの戦い方はGGOじゃ滅茶苦茶だもん。
その仲間も絶対ロクなモンじゃねーよ。
偏見でそう考えたレンだったが、ドンピシャで当たっていた。 そもそも銃撃戦に槍とかランス(オマケで溶接用バーナー)を使っている隊員らがいるトコだ。 普通じゃない。
まあ、他にもフカとワンちゃんが仲良くなるのが面白くないという、深層心理も働いているのだが、ワンちゃんは全く気にしない。
「そう言うな。 これから関わる可能性があるワケだし」
「二度となくて良いんだけど」
レンは眉間に皺を寄せて露骨に嫌がる。
人の命が掛かっているのに、これ以上面倒になっても困る。 ワンちゃんだけでも困るのに。
ただ、彼女には「諦めろ」としか言えない。
プレイヤーの拠点とも言うべき首都《グロッケン》にEDFが来ちゃっているのだ。
理由はどうあれ、接していく機会は増えるだろう。
一方でスカウトに話しかけられたくらいの被害しかないフカは、事態を軽く見ていた。
その所為で祭りの予感だと楽しげにする。
「いやぁ、面白くなりそうだねぇ! 銃だけでなくロボットとか戦車まであるなんて。 アレ乗れるの?」
「コンバットフレームとブラッカーか? フカには動かせないと思うぞ。 ペダルに足が届かないだろうし、そもそも操縦にはライセンスが必要だ」
「そう言うワンちゃんは動かせるの?」
「ああ。 あの場にあったビークルに限らず、ヘリや救護車両、特殊なモノまでEDF製のは大凡扱える」
「おぉ! 流石パパ! 乗る機会があれば同乗させてよ!」
「はっはっはっ! EDFに入隊すれば乗る機会も多くなるぞ?」
「はいはい武器を探すよ時間が勿体無いよ」
ちゃっかり入隊を勧める駄犬にイラッとさせられつつ、レンは武器探しを続行。
中世の武器の話からEDFや乗り物の話にシフトして脱線してしまったので、余計に時間が掛かってしまった。
レンはサッサと済ませる為に、フカに実弾銃を紹介していった。 ワンちゃんも雑談はやめて、今までの経験等から言葉を添えていく。
「フカ、機関銃なんてどう? 連射による火力で広い範囲に攻撃できるよ」
「フェンサーは槍の代わりに機関銃を持っている者が多かったな。 弾幕を張れるのは強みだぞ。 群れを成す敵を一掃出来る。 命中率、反動や重量の問題があるが……入隊するか? 《パワードスケルトン》を着れば楽になると思う」
「攻撃力とサイズのバランスが取れたアサルト・ライフル(自動小銃)は?」
「様々な局面で活用出来る、良い銃種だと思う。 だからか、レンジャーで使う者は多かった。 しかしココのは装弾数が20や30じゃないか。 セミオート限定で、高威力なら分かるが……EDF製ならワンマグ3桁は余裕だぞ。 ここは入隊をしてだな」
「少し黙ってろ駄犬がっ!?」
ウサギは我慢出来ずにキレてしまった。
援護しているのか話の腰を折ってるのか分からないし、しつこく入隊を勧めるのが悪い。 親友としては、EDFに関わって欲しくない。 マトモな銃を握って欲しい。
レンジャーやフェンサー装備を身に付けて槍やランス、ガスバーナーをGGO世界にて握った日には泣いてしまうだろう。 「フカよ、お前もか」と。
しかし、そんな親子喧嘩(?)を余所に、フカは微妙な顔をする。
「ピンとこぬなあ」
どうやら、どの武器もフカのお眼鏡にはかなわなかった模様。
「なんか、どれも強そうだけどさ、どれも、全然美しくないね」
美的印象はどうでも良いから!
レンは言おうとして、言えなかった。 だって自身も外見だけでP90を買ったから。
「困った……」
レンは頭を抱えた。
ああ、こんな時。 銃知識の豊富なピトさんやエムさんがいてくれたら。
ワンちゃんは微妙に詳しいけど、どっかズレているから頼れないし。
それは思っても詮無きこと。
武器選びは難航。
しかし、ココでワンちゃんが提案する。 考える頭は多い方が良い。
「ふむ……別の銃種も見に行こうか?」
「え?」「おっ?」
「裏路地の店に行こう。 ココにはない武器が置いてあるハズだ」
「うーん? 分かった」
「おっけー」
ワンちゃんが言うと、全てが怪しく感じてしまうのだが、武器が見つかるならと、レンもフカも付いて行くコトにした。
これから行くのはレアで高威力で高価な武器を扱っている店。
きっとフカのお眼鏡にかなう品があるだろう。 そう最初の店に入って、すぐさまフカが目を輝かせる。
やったぜ。 駄犬も役に立つだろ?
「レン! ワンちゃん! これ! この銃、何? 超かっこいい! 綺麗! 美しい! ビューティホー!」
「え! どれ?」
「むっ?」
そこまで歓声を上げるとは。 どんな銃だ?
かつての自分を見るようで楽しくなって、レンはフカに駆け寄った。 ワンちゃんは可愛い娘がはしゃいでいるので、ホッコリしている。
そして、
「これ!」
棚にかかっている、指差す銃を見てみた。
「なに……、これ……?」
「なぜコレがココにあるんだ?」
レンとワンちゃんの顔が引きつった。
レンは不細工な銃だと思い、ワンちゃんはまさかの武器を見つけてファッ!? となる。
それは酷く不恰好な代物だった。
全長は70センチほど。 長めのサブマシンガンと同じくらい。 グリップと引き金、肩に当てるストックがついているのだから、銃は銃なのだろう。
色は、ほとんどがデザートタンという土のような茶色。 グリップなど、ところどころが、黒。 レンからしたら、実に格好の悪い銃に見えてしまう。
何より醜くしているのは、中央部にある膨らみ。 リボルバーのような回転式弾倉が、肥満中年のお腹のようにポッコリ膨らんでいるし。 銃身はやたらに太くて短く、これもまた見た目の悪いこと、この上ない。
なんか……これ……サイズ調整をミスったんじゃね? な銃だった。
オマケに、隣には色違いというか、茶色ではなく黒色のが飾ってある。 色以外の見た目に差異はそんなに感じられず、お好みであろうか。
ワンちゃんは、ソッチの黒色に注視しており、子犬が尻尾振って見ている茶色側は目もくれない。 一体、どうしたというのか。
娘がいるのに、そんなコトをするなんて。
「レンも知らない? でもこれ、いいね! これに決めたよ! どんな銃なの?」
「えっと……」
そんなワンちゃんと初めて見る銃に、レンはおろおろしてしまう。
それに答えたのはワンちゃんだった。 視線は黒色の銃に向けられたままだったが。
「………榴弾発射器。 グレネード・ランチャーだ」
「ああ、これがそうか……」
「ぐれねーど……、何?」
表示してあるタグを見やれば、《MGLー140》とある。
ついでに、ワンちゃんがジッと見ている黒色も見やれば《ヴァラトル・ナパームZD》と変な名前がついていた。
何だろう? いや、まさか。
「そしてこの黒色のはな、EDFの……歩兵用ナパーム弾射出機だ。 しかも最終作戦仕様」
「なん……だと?」
「え? え? どしたのー? 何か問題?」
ココに来てもEDFの単語が出て来ようとは。 レンとワンちゃんは様々な意味で硬直してしまい、子犬は目を輝かせながら首を傾げるだけだった……。
何故か店にあったEDFの兵器。 プレイヤーに持たせてはならない……。