EDF隊員の話。 死神部隊が来る様ですよ……。
GGO世界に来ているEDFの戦力は、首都《グロッケン》に集中している。
それは勧誘のアピール材やストーム・ワンの回収目的もあるのだが、クイーンに備えた軍事行動が主だ。
この世界のクイーンは、青いヤツで遠距離攻撃が得意とされる。 クイーンというからには戦闘能力は凄まじいハズだし、卵をポコポコ産んで繁殖しているコトだろう。
そしてEDFがGGOに来る前から跋扈しているのは間違いない……故に隊員らは思う。
GGO世界はソイツの所為で荒廃しているんだと!
いや、全部がソイツだけの所為ではないにしろ、筆頭して荒らしたハズだ。
そう予想した隊員らは、まだ見ぬ恐ろしき怪物に戦慄と共に身を震わせる。 だが放置は出来ない。 いつEDFに被害が出るか分からないからだ。
そして数少ないであろう、この世界の人類活動拠点である首都《グロッケン》がいつ襲われるかも分からない。
だからこそ首都を防衛し、駆除しなければならない。 世界違えど同じ人類だ。 我々の世界と同じ『人の声が響かない地球』にしてはならない。 隊員らは気を引き締めて、状況に備える。
「とはいえ。 俺たちの戦力でクイーンをどうにか出来るのか?」
GGOプレイヤーの初期スタート地点で陣取るレンジャー隊員の1人が、不安そうな言葉を吐いた。 お馴染みの、サングラスに米軍風なスタイルで統一した彼らの手には《PAー11》アサルト・ライフルが握られている。
厳しい訓練を積み、手に持つ小銃以外にも様々な武器やビークルを扱える彼らだが。 それでも戦時中は怪物やプライマーの歩兵部隊に苦戦を強いられたのだ。
特にクイーンは戦闘能力が凄まじかった。 雨で増水した川の濁流に飲まれるが如く、真紅の強酸で部隊が溶かされた光景は、隊員らにとって、トラウマでしかない。
「確かにな。 誘導兵が随行してくれれば心強いのだが」
「ストーム・ワンのコトか? さっき合流したんじゃ?」
「それがな、子どもを連れてどっかに行ってしまったらしい」
「なんじゃそりゃ」
「スカウトが子どもにも声を掛けたらしいからな。 守る為じゃないか?」
「見境ないな、スカウトも」
隊員同士、空爆誘導兵……ストーム・ワンの話を始めた。 既にあの英雄がいる事実は、警備のレンジャーにも知るトコロにあった。
英雄である彼……誘導兵が随行してくれれば、クイーンが来ても怖いものはない。 レンジャー達が戦線を支えている間に空軍や衛星、基地に座標を伝達して貰えば、空爆や衛星砲、ミサイル群による、歩兵では携行が不可能な圧倒的な火力でねじ伏せられるからだ。
そうでなくても、隊長として指揮能力のある彼だ。 少ない戦力でも、効率的に運用する術を知っている。 日常での性格はアレだが。
「だが、いないなら仕方ない。 俺たちだけでもやろう。 AFVや《コンバットフレーム》も来ているし、都市の外ならば《タイタン》や《レールガン》が配備されている。 条件は悪くない」
「願わくば、クイーンと戦う前に合流したいのだが」
「そうだな。 最悪、この都市の人々にも協力して貰う。 何かしらの銃は所持している様子であるし」
「装弾数の割に威力の低い銃が多いのは気になるが」
会話を聞く限り、誘導兵がいなくても、隊員の士気は低くはなさそうだ。
過去には敵に包囲殲滅されそうになったり、増援が期待出来ない状況なんて、幾度となく経験してきた彼らだ。 こんなコトくらいで絶望するEDFではない。
だが戦力はあった方が良いに決まっている。 どんな猛者か分からないから。 だが今のEDFの戦力は全盛期と比べると微々たる力。
この世界の人類にも協力して欲しいのが正直なところ。 幸いにも、雑多な銃火器を皆は持っているコトだし。 EDFの銃と比べると見劣りするが、戦力になり得る存在だ。
「入隊してくれれば、武器の訓練を受けさせて、EDFの武器を渡す算段だと」
「未だに入隊希望者はゼロだがな」
「ああ。 それでEDFをアピールするとか言って、グレネード好きなヤツが都市に突入したよ」
「アイツか。 《グレ男》とか呼ばれてる」
なんだかストーム隊が出る前に、新キャラが出てくる予感が。 機嫌が悪そうな名前だが、隊員は特に突っ込まず会話を続ける。
「ソイツだ。 ストーム・ワンの知り合いらしい。 だいぶ前に《ヴァラトル・ナパームZD》を持って街中に消えたぞ。 たぶん、グレネード系の布教活動だ」
「なんちゅうモン持ちこんでるんだ。 本部もよく許可したな」
「無断だろ」
「……EDFに選り好みする余裕が無いとはいえ、やっちゃマズいだろ」
隊員の1人は、グレ男の問題行動に溜息を出してしまう。
ただ止めに行こうとしたり慌てないのは、いつ交戦するか分からないクイーンに備えてとか、持ち込む以上のバカはやらないだろうという根拠のない安心からだ。
残念ながら期待に反して、裏路地の武器屋に売りやがりましたがねソイツ。 お陰でピンク幼女が荒ぶりました。
そんなコトを未だに知らない隊員らは、冷静さを保ったまま話を続けた。
「今はグレ男に構ってる場合じゃない。 クイーンや怪物、無法者に備えて、防衛線の強化だろう」
「どっちにしろ、俺たちは警備でこの場から動けないが……まだ仲間が来るのか?」
「来る。 《グリムリーパー隊》の《ストーム・3》が来てくれる。 軍曹のチーム《ストーム・2》と《スプリガン隊》の《ストーム・4》は来ないらしい」
「グリムリーパー!? 《フェンサー》の精鋭部隊の!?」
「ああ。 そのグリムリーパーだ。 死神部隊とも呼ばれてる」
「マジかよ」
今度は、グレ男の話を吹き飛ばす情報に隊員は驚いた。 まさか、あの死神部隊がGGOに来るコトになろうとは……。
《グリムリーパー隊》、今は《ストーム・3》のコードネームを持つ部隊。
《ブラストホール・スピア》に特化した真っ黒なパワードスケルトンを身に纏い、その槍とシールドで戦う部隊。 装備の都合上、敵にサイドスラスターで急接近して攻撃する戦術を取る。
プライマーとの戦争が始まる前に起きた紛争にて、《コンバットフレーム》を破壊した実績があるらしい。
ただ、その時に多くの仲間を失ったらしく、それ以降、隊長は死に場所を求めて……意義のある死を求めて、危険な戦場を渡り歩く。
常に困難な任務に志願し、捨て身の戦術を駆使する彼らを、兵士たちは死神と恐れるようになった。
「本部も本気、ということかな」
「クイーンが何体いるかも分からないからな。 出し渋って戦力を減らすより良いんじゃないか?」
「ホントにそれだけが理由だろうか」
「……今、俺たちに出来るコトをやれば良い」
「そうだな。 ワリィ」
それだけ言うと、隊員らは黙って警備に戻る。 他に人がいないのと、EDFもその辺は緩いのか、喋っていても咎められない。
とはいえ。 ひと通り喋って満足したのか疲れたのか、それ以上話すコトはしなかった。
ただ「死神かぁ」と独り言をいうくらい。
終戦した日。 プライマーの司令官と思われる《かの者》も死神と呼んだ隊員がいたが、EDFにもグリムリーパー隊という死神がいる。 そして……ストーム・ワン。
GGOにも少し前に、そういったヤツがいたのだが、今はもういない。
しかし、入れ違う様に新たな死神が来ようとは。 なんというか……皮肉だ。
でも今度の死神は、都市伝説の類では終わらないだろう。 それくらい強い部隊なのだ。
なかなか、話が進まぬ……。