GGDF(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 違和感あったらすいません……。

まだSJ開始前という……毒鳥やEDF隊員を早く出したい……。


榴弾も人も取り扱いは難しい。

 

ぽんっ、という小気味の良い音が荒野に響けば、次の瞬間には人より少し大きい火柱が出来上がる。

メラメラと燃え上がるソレは、体感が希薄なプレイヤー達すら近寄らせない熱さと迫力、息苦しさがあった。

 

EDF所属、ワンちゃんの所業である。

 

ワケを話せば、フカにEDF最終作戦仕様の歩兵用ナパーム弾専用グレラン《ヴァラトル・ナパームZD》を見せるべく、格好つけて射出しやがったのが原因。

 

誘導兵のクセにレンジャー装備を使うとか生意気だ。 というか、最終作戦仕様を私用でホイホイ使うのもどうかと思う。

 

 

「どうだフカ! 範囲は狭いが、迫力はあるだろう? 敵の侵攻を阻止する、制限する防壁としても役に立つ!」

 

 

しかも自身の兵科に関係ない武器を、さも自分の兵器のように言うワンちゃん。

子犬な娘に好かれたいのは分かるけど、ウサギな娘がゲンナリしているのに気が付かない。

 

一方でフカは、とっくに気付いているのだが、ちょっと意地悪をしたくなって、ワンちゃんの話に合わせていく。

 

 

「こりゃ凄い。 汚物を一瞬で消毒出来るんじゃない? この銃でも出来るかね?」

 

「その武器と購入した擲弾の威力や性能は分からないからな、なんとも言えん。 だが今から試そうじゃないか」

 

「おうよ!」

 

「…………」

 

 

犬どもがキャンキャン騒ぐ中、様々な感情で心労したウサギは一度、深い溜息を漏らしてしまう。

特に楽しそうに会話している二人を見ていると、黒い感情が湧いてくる。

それでも真面目な彼女は、目を逸らさずに武器や二人の観察を続けた。 万が一、自身が孤立したときや武器を使うのを考えてだ。

 

例えば、ワンちゃんは銃撃戦が苦手だから、その辺をレンやフカがカバーしなきゃ。

グレランによる攻撃は爆発物だから、巻き込まれないように気を付けよう。 レンは接近戦は得意だけど、接近しているタイミングで榴弾は撃って欲しくない。 そんなコトされたら、敵と共にバラバラになってしまう。

 

そんな、なるべく真面目な思考をして、ドロドロした形容できない私欲を端へ追いやる。

内側が落ち着かないけど、コレは勉強。 勉強なのだ。 大切なコトだからやらなくちゃ。

 

そう抑えている間にも、二人の会話や距離は縮まっていくから、心身共に乱れるばかりだ。

 

 

「結構力持ちなんだな? 片手で銃を持てるとは」

 

「ふっ。 これでも鍛えてたからね。 このくらいなら二丁持ちとか、ほら。 余裕よ」

 

「最近の子は凄いな。 だが姿勢を安定させる為に、ちゃんと両手で持ちなさい。 ほら、左手で前に付いている……そう、グリップを握るんだ」

 

「えー? 爆発するなら、大雑把でも良いんじゃないの?」

 

「そういうな。 俺は誘導兵だから詳しくはないが、形から入れ。 それからだ」

 

「はーい、パパ」

 

「…………」

 

 

 

 

ワンちゃんが寄り添うように密着し、少し腰を曲げて視線を合わせつつ腕や手を握ったり、丁寧に構え方を教えていく。 フカも素直に言うコトを聞いて騒がない。

 

やっているコトは物騒だけど、親子のやり取りにも見える。 それに珍しくも、レンが嫌う問題が起きる気配がない。

 

 

「……むぅ」

 

 

だけど、ウサギは不機嫌になるばかり。

問題が起きない方が良いのは違いない。 だけど、やっぱり、二人が密着しているのは面白くないのだ。

理由は上手く言えないけど、心がドロドロしてきて気持ちが悪い。

 

コレでふざけていたら「真面目にやれ!」と一喝しつつ、二人を突き放せるのに……。

 

真面目にやってる二人を見て、何故ドロドロするのか。 良いコトのハズなのに。

さっきまで騒いでたから? らしくないから? 親友がEDF寄りになりそうだから? 自身が放置されているから?

 

……最初の頃は、荒らしなワンちゃんと一緒にいたくなかったけど、今は一緒にいたいから。

優しくて、どこか暖かい気持ちになれて、けれどおバカで世話が焼けて、ほっとけない。

でも、いざっていう時は頼りにしたい存在で。

 

そんな男は同時にレンの、GGOでの居場所。 その居場所が取られそうだと感じてモヤモヤするのだろうか?

 

しかし『仮想現実』の世界で、何を思っているのだろうか、とレンは区切りをつけようとしてみる。

 

悩む必要はないハズなのだから。 『現実』の方が大切じゃないか。

ワンちゃんとの付き合いだって、GGOの中やメール止まり。 その程度の関係。 リアルで会ったコトはない。

 

だから。 いつかゲームから離れるとき、ワンちゃんとの関係も冷めていくだろう。

ゲームの世界。 そんなものだ。 だから、悩むコトは全くない。

 

 

けれど。

その事実が、関係が苦しいのは何故だろう。

 

 

自身の真面目さと私欲が、疲労で混合して答えが出ないレンだったが、なら両方満たせとばかりに声を出す。 悩んでも仕方ない。 今は行動あるのみだ。

 

 

「えっと。 わたしもその武器、習いたいんだけど」

 

 

遠慮がちに習いたい、と言ってみる。

これなら教官となっているワンちゃんと会話したり側にいられるし、グレランについて学べるから一石二鳥。 問題なんてないね。

 

ところが、小悪魔がいたコトを失念していたのはイケなかった。

ソイツはニヤリと笑うと、ウサギの心を更に弄んで楽しむべく、言葉を発する。

 

 

「おっ? レンも惚れた?」

 

「ふぇっ!?」

 

 

フカはレンの心にダイレクトアタックをぶちかます。 内なる大きな爆発を抑えきれず、レンは激しく動揺。

そこに敢えて逃げ道を与えてやる。 その先の、レンの反応見たさで。

 

 

「この銃に」

 

「ああ! うん、そう! 持ちたいなぁって!」

 

「そうだよねぇ? 素敵だもんねぇ?」

 

 

コクコクと激しく首を縦に振るウサギ。

そんなサマが面白くて暗黒微笑(だぁくねすすまいりんぐ)を浮かべて楽しむ小悪魔な子犬。 親友で遊ぶとか、なかなかのワルだよ……。

 

 

「てなワケで。 もう片方を貸してやろう! パパ、レクチャーよろしく!」

 

「任せろ。 といっても、知っている範囲でだが」

 

「え、えっと、うん。 二人ともありがとう」

 

 

でもなんだかんだいって、援護してやるのは良い点か。

フカは使っていない方のグレランを渡そうとして、ワンちゃんもレンを受け入れる。

ワンちゃんの場合は最初からそうしろと言いたいが、自分で気付かなきゃ意味ないので……。

 

さて。 一応の目的が達成されそうな雰囲気になってきたが。 残念ながらワンちゃんやEDFがいて平和に終わった試しがない。

早速というか、突如ぽんっ、という音が荒野に響く。 それはフカのグレランからではない。 遠くから僅かに聞こえたもの。

これが小銃のような、たんたん、とかダダダダッ、という重低音なら警戒するだけで済ませられただろう。 ああ、遠くにプレイヤーがいるな、気を付けるかで終わりだ。

 

でもこの音の場合は……。

特にワンちゃんの場合、戦時の悪友との日々がフラッシュバック。 すぐさま《電磁トーチカ》の装置を両手に抱えて状況に備えた。

 

 

「ん? 他にもコレを持ってるプレイヤーが?」

 

「それは厄介だね」

 

「伏せろ!?」

 

 

余裕のある声を出す二人をさし置き、唯一、ワンちゃんが行動を起こす。

迅速にプラネタリウムの装置のような《電磁トーチカ》を設置、起動。 半透明な青白いエネルギー系の壁を前面に作り出すと、側の二人をギュッと手元に抱き寄せて、壁に対して背中を向けしゃがみ込む。

刹那、耳をつんざくデカい爆音。

 

ドコォオンッ!!

 

 

「ぐっ!」「うおおっ!?」「うひゃあ!?」

 

 

同時に衝撃が背中を押した。 フル装備のワンちゃんだったが耐えきれず、悲鳴と共に地面を転がされてしまう。 それでも娘を守ろうと、二人のコトはしっかり抱きしめる。

ソレを嘲笑うかのように、ぽんぽんと連続で音が。 考えるまでもない。 攻撃されているのだ。

 

ワンちゃんは素早く立ち上がると、二人を抱き起す。 こりゃヤバいとばかりに。

 

 

「走れるか!? あの大岩まで逃げるぞ!」

 

「え? え?」「ナニゴト!?」

 

 

二人の手を取り、ワンちゃんは一際デカい大岩まで走り出した。 走力ならレンやフカの方が上なのだが、混乱している二人に指示を出すのは酷かとの判断だ。

彼女らはベテランプレイヤーなので多少問題無いと思うのだが、ワンちゃんからしたら幼い子どもだ。 保護欲や大人としての役割等を考えて、この行動になった。

 

そんな三人が走り出したとき、背後で再び連続の爆発。

今度は電磁トーチカの装置前方で爆発が起き、1発は偏差でほぼ装置の位置で爆発。 爆風はエネルギー壁を通り抜けて地面ごと吹き飛ばし、そのまま装置を吹き飛ばしてしまう。

 

電磁トーチカは銃弾や光学兵器も防ぐけれど、爆風は防ぎきれずに通過させてしまうのだ。

 

そんな一部始終を振り返って見たレンは驚いた声を出す。 敵の場所が分からんのだ。

 

 

「どこから!?」

 

 

周りを見渡しても人影を確認出来ないばかりか、バレット・ラインも見えないとは。

 

スナイパーの類か?

それとも潜伏系スキルで近寄られて撃たれのか見えないところにいたのか。

 

混乱の中での思考に答えるかのように、ワンちゃんは走りながら声を出す。 背後は見ていないが、レンが見た光景や疑問に安易に検討がつく。

 

 

「俺たちのいた場所は遮蔽物が多く、通常の銃なら高所か近寄らねば攻撃は困難だと思うが……大きく山なりに弾道を描くグレランなら出来る芸当だ」

 

「えっと」

 

「音が遠くからだったろ? 砲撃、と言えばしっくりくるか」

 

「……あっ!」

 

 

レンは合点がいったようで、納得し……そして青ざめる。 そんな戦法があったかと。

そして、ソレをやられているわたし達はピンチなんだと。

 

とりあえず、大岩まで生きて辿り着いたワンちゃん達。 VRなので息が切れるコトはないし、ワンちゃんも軍属なのもあり、これくらいは平気だった。 問題はこれからどうするかである。 これ以上撃ってくる音はしないけど……。

 

ここで、未だに状況が分からないフカは首を傾げてレンに尋ねる。

 

 

「どういうこと?」

 

「この銃の弾頭は山なりに、放物線を描くでしょ? だから遮蔽物越しに、安全に攻撃できるんだよ」

 

「そんなところだ」

 

「でも撃ってる側はコッチが見えないよね? テキトーに撃ってのまぐれ狙い?」

 

「位置がバレていたんだ。 たぶん、俺がグレランを使用した時か。 音から位置に当たりをつけて、こちらに着弾するように射角を上げて撃ってきたのだろう。 勿論、射手は目標が見えないから大凡で撃つコトになるだろうが……何せ榴弾だ。 目標に直接当たらずとも、爆風で攻撃出来る」

 

「えーっと。 うん……厄介ってコトね」

 

「フカ、飲み込めてないでしょ」

 

 

ワンちゃんは話しつつも大岩の陰から様子を見て周囲を確認。 やはりか、人影はいない。 遮蔽物に隠れているか、遠いところか。

 

 

「だが、それでも当てるのは難しい。 銃の癖を把握していても、見えない目標に当てるワケだからな。 移動する目標なら尚更だ。 だから味方に弾着観測を行って貰ったり、発煙弾を焚いて貰って目標の位置を教えて貰う方法等があるが……犯人は一人だろう」

 

「なんで分かるの? ワンちゃんの言うセンサー反応ってやつ?」

 

「ああ。 そしてソイツは……青い表示で……あー、コレは俺の予想なんだが」

 

 

ココで歯切れ悪く、唸るワンちゃん。 この状態で言い辛いのだろうか。 敵が強いとか?

でも状況が悪いコトに違いはないし、ならレンとしては情報が欲しい。

ワンちゃんはおバカだけど、戦闘では頼りになる隊長だ。

チートを抜きにしても、指揮能力は頼りになるから、ソコに協力を惜しむつもりはない。

 

フカも同様らしく、ワンちゃんの言葉を待っている。 一丁のグレランを、教えてくれた通りに両手でしっかりと構えてニッと笑っている。 殺る気満々だ。

そしてレンはキリッとした顔になると、我らが隊長を安心させるべく頼もしい言葉を投げつけた。

 

 

「予想でも良いよ。 敵が強くてもワンちゃんは何とかするでしょ? わたしだって協力する!」

 

「ニュービーだからって舐めてるのかねぇ? ALOで鍛えた元妖精さんのチカラ、見せてやるぜぃ?」

 

 

幼女たちが勇敢な姿勢を隊長に見せつける。 ここまでやられては、ワンちゃんも応えないワケにいかず。

やがて決心したのか。 重々しく、予想を話していく。

 

ただ、それはレンにとって、憤慨したくなる内容で……。

 

 

「犯人は恐らく、爆発物やその手の銃火器を好んで使用する、爆弾魔でもあり《グレ男》と呼ばれている……その、俺の、悪友の可能性があってだな……EDFレンジャー隊員なんだが」

 

「またEDFかああああ!!」

 

 

ワンちゃんが言い終わる前に、レンは叫んだ。 心の底から。

 

フカやワンちゃんがその声にビビっている間に、ぽんっ、という音が鳴り響く。

そしてワンちゃん達が隠れている大岩の、前方で爆発が起きた。

 

それはウサギの怒りを表しているようで、二匹の犬はガタガタ震える目に遭った……。




ウサギは爆発(感情的な)してしまったけど……。
次回、グレ男なる隊員が?
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