GGDF(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 いつもの誘導兵と、謎の人物。
違和感あれば、すいません……。

そしてピトフーイの、ワンちゃんに対する考察。


快進撃と毒鳥の考察

 

 

ーーこの世界はgameだ。 文字通りに。

 

この場で死んでも現実の君達は死なない。 一部を除いてね。 頭に電子レンジを載っけていたり、水槽の中に閉篭もるとか。 事件に巻き込まれたりゲームのやり過ぎでの衰弱死をしなければ。

 

でも俺達はココが現実だ。 そして死ぬ側だ。 この世界で死んだら死ぬ。 それすら文字通りに。 それ以上でも以下でもない。 死ぬんだよ。 理解出来ないかい? しなくて良い。 関係ない世界の話になるからさ。

 

まあ、無理に理解しようとすればNPCに意思があって感情があって、死んだらプログラムとして消滅して消え失せる。 《死に戻り》も《再出撃》もない。 そういうこと。

 

その場合。

殺人にはならないのかね。 うん。 だから気にしないで『いつも通り』銃の引き金を引いてくれ。

 

そうしたら、俺も遠慮なく撃てるから。 偽物を殺したところで罪にならない。

 

おっと。 ドッチが偽物で本物かね。

 

勝てば官軍。 負ければ賊軍。 なら勝った方が本物ってことで。

 

まっ。 同情しなくて良い。 考えなくて良い。 すると別れが辛くなるぜ? 殺すのも含めてな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特にSTORMー01。

LLENN。

 

キミたちだよ。

 

近々キミらは、俺らは殺し合うだろう。

結局はさ。 相容れない存在なのさ。

 

愛し合う者が殺し合う。

 

そのXーDAYが楽しみだなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長に隠しているコトがあります」

「何の話だ?」

「実は《ヴァラトル・ナパームZD》を持ち出してきたんです!」

「懲りない奴だな」

 

 

三回目のスキャン前。 グレ男がやたらイイ笑顔で告白をしやがった。 没収されたヴァラトル・ナパームZDをパクってきたという。

EDFの管理体制の甘さも、コイツのアホさにも、もはや何も言うまい……。

 

 

「……三回目のスキャン、見るぞ」

 

 

ナニはともあれ。 今はスキャンを見なければ。 ワンちゃん達は先ほどまで敵防衛拠点だったホームの間ーー今は崩れたコンクリ破片と剥き出しで変形した鉄筋、ボコボコの地面の上ーーにて端末画面を確認。

死体は爆風で吹き飛んだのか、この場にはなかった。 あっても気にしないが。

 

 

「んんっ?」

 

 

端末を見ていたレンが険しい顔に。 気になるモノでも見つけたみたい。

フカも気になって見てみれば、なんと敵が七つも集まっているじゃーありませんか。

 

しかも見晴らしの良い畑の上。 ナニしてるん。

 

 

「これはどうしたことかね? パパ。 七つも同じ場所にいるよ? あり得なくない?」

 

 

フカが尋ねる。 分隊の最大が六人までだから、普通に数だけでもおかしい状況。

最低ひとりは敵になるのだが……何故殺し合いにならないのか。

 

 

「願い事が叶うボールでも持ち寄ったんじゃね? そして死者を蘇らせたい派とパンツ欲しい派で会議中なのさ」

「違うでしょーが!?」

「俺は榴弾おーくれと高らかに叫ぶぜ!」

「じゃあ、わたしは彼氏と金!」

「そのまま爆発四散してしまえ!」

 

 

答えを知っているクセにボケるグレ男と話に乗っかるフカに突っ込むレン。 コイツらピトさん救う気あんのかね。

 

だが真面目に話すと、そんなノリの展開になった。 駄犬の所為で。

 

 

「無法者同士、結託したんだろうな。 だが問題ない。 《カムイ》に空爆を要請した」

「あっ。 何の問題もないですねソレは」

「問題大アリだよ! どうして穏便に済ませられないのかな!?」

『空爆開始! アタック!』

「うおっ!? また無線が!」

「ああ……またしても」

 

 

駄犬の暴走が始まった。 穏便に進む気がない隊長に頭を抱えるウサちゃん。

 

マトモなのは、わたしだけか!!

 

だがEDF的には穏便な方である。 まとまる敵を空爆で一網打尽にすることで、歩兵の負担は大いに減るからだ。

実際、彼らは結託して憎きワンちゃんを殺そうとしていた。 放置して接近を許していたら、グレ男と愛娘に危害が及んでいただろう。 それを防いだのだから、褒めても良い。 あ、チートだから無理か。

 

因みに正史では結託のち、ピトの分隊を襲っていた。 結果は全滅。 返り討ち。 ピトの鬼の様な強さを感じられる場面でもあるが、どちらにせよ、ワンちゃんがいる以上はその前に空爆で吹き飛ばす。 無法者死すべし慈悲は無い。

 

 

『仕事は終わった! 帰る!』

「センサー反応なし。 悪は滅んだ」

「悪はお前じゃあ!!」

 

 

アッサリ敵小隊が片付き、レンに罵倒された。 悲しかった。 けれども前に進まねばならない。

悲しいけどこれ、戦争なのよね。

 

 

「では予定通りドームに向かう」

「サクサクだね。 もうパパひとりで良いんじゃない?」

「良くない。 誘導兵は銃撃戦や接近戦は苦手だからな。 戦線を支えるには、どうしても歩兵が必要なんだ」

「隊長! やっぱ俺、必要ッスよね?」

「味方に攻撃しなきゃな」

「「「HAHAHA」」」

 

 

ああ……明るいムードなのに、明るくなれないよ、わたしだけ。

 

先行きの暗さの不安に、ウサギは再度頭を抱えてしまった。

最悪、ピトさん逃げて。 超逃げて。

 

 

 

 

 

一方で問題の毒鳥は、というと。

 

寝っ転がりながらも端末を見ていて……そして次の瞬間には遠くからの爆音と共に、畑の方に集まっていた敵表示が一瞬で消えたのを見て、

 

 

「ワンちゃん………………私の楽しみをどこまでも奪うとか。 とことん許せないわね」

 

 

プンプン怒っていた。

ドンパチで生きているコトを忘れたい彼女は、ソレを奪う駄犬を良く思っていない。 少し面白いヤツとは思ってはいるけれど。 交渉する前から決裂しているムードである。

 

 

「いやぁ、エムが前回殺してくれていたらなぁ? こんなコトにならなかったんだけどぉ?」

「…………」

 

 

側のクマさんに明るく言う彼女。 口角は上がっているけれど目は笑ってない。 怖いよサディスティック女。

それでも、一応自論があるのか。 クマさんが間をおいて言い返す。 勇気あると思う。

 

 

「……殺しても、SJ2に参加しなかった保証はない」

 

 

淡々と言うクマさん。 別にSJ1に敗退したからといって、シード権が貰えないだけであり、参加自体は出来るのだ。

 

例として、《ZEMAL》というSJ1に参加していたマシンガン大好きチームも参加している。

このチーム、ヒャッハーなハッピートリガー達で、前回は最初らへんで全滅してしまった。 しかし今大会にもエントリー。 予選を何だかんだいって勝ち残り、当本選に参加しているのだ。 愛すべきマシンガンバカ達である。

 

 

「死んだら、死ぬだけだよ?」

 

 

だがピトはニッと笑ってそう言った。 いつかのベッドの上での会話みたいに。

ゾッとする言葉。 未だにあの時の緊迫を忘れられないエムであるが、その言葉が孕む真髄に迫れない。

震えそうになる声を抑えながら、エムは素直に聞き返すコトにする。

 

 

「どういう意味だ?」

「そのままの意味よ」

 

 

いや、何を言って……そう思い……さしてハッとした。

自身も今現在、リアルで経験しているからか。 或いは彼を殺そうとした時、感じた違和感からか。 そこからとある可能性が生またのだ。

 

 

「いや、まさか。 ありえない」

「どうして、そう言い切れるのかしら?」

 

 

気付いたであろう……気付きたくなかった、そして否定したい顔のエムに、加虐的に笑うピト。

エムには、悪魔が嘲笑している様にすら見える。 愛する女でも、今この瞬間は……この考えは否定したい。

 

 

「プレイヤーでないと参加出来ない筈だ」

 

 

そう。 ピトはストーム・ワンがプレイヤーではない、としているのだ。

playerでなければNPCかAIとなる。 プログラム上の存在。 だがもしそうだとして、参加なんて出来るのか?

 

仮に。 人間との差異を感じさせない程に高度なNPCかAIだとして……プレイヤー間で戦闘を行い勝敗の優越を競う筈のSJに、参加させるメリットはあるのか、という疑問もある。

 

第一、彼の攻撃方法はチートだ。 ゲームバランスを崩壊させている。 他のプレイヤー間でも嫌われているのだ。

わざわざそんな存在を参加させるなんて……。

 

参加……なぜ、参加させる?

いや、出来るんだ?

 

 

「あら? プレイヤーなら、とっくに《BAN》されて良いんじゃない? いろんな意味でね。 ワンちゃん、嫌われ者だし」

「そ、それは……運営にも対処出来ない……高度な……」

「運営側であるから、存在が赦されているとは考えなかった? まあ運営は 『対処方法を検討中』とか『調査中』って繰り返してるから、この考えは一先ず却下だけど」

 

 

そこまで言われて黙りこくるエム。 視線も自然と下向きだ。

反論出来ないと思ってか、論破して相手を抑え付けたという、いつものゾクゾクした心地良い感覚に浸る毒鳥。

更に追い討ちをかけるように、言葉を繋げていく。

 

立ち上がって、エムの耳元に囁くように、ねっとりと。

稀薄なVRでも感じる、生暖かい息を耳に入れる様にして。

 

 

「ワンちゃん含めたEDFの存在がバグだとして……それを長期に渡ってなぜ、放置する? ゲームバランスを崩壊させているし、彼らが運用する武器も実在しないものばかり。 それは『GGOじゃない』。 そう皆は声に出している。 なのに運営は何もしない。 いえ、『出来ない』。 プログラムの世界なのに運営がどうすることも出来ない、なんて余程よね。 詳しくないけどさ。 じゃあ出来ない理由ってなんだろう。 運営側でもプレイヤー側でもない。 じゃあなんなんだって」

 

 

今度はエムの顔正面、キス出来そうな距離で。 そして嬉しそうな顔で語り続ける。

 

 

「ワンちゃんと一緒に行動しているときね、思ったの。 VRで稀薄な筈の五感。 ソレがワンちゃんに対してだけは『本物』だった! そう、ホ・ン・モ・ノ!! 話していると心がくすぐったい! 触れると暖かい! 持ち物もリアルと同じ重さに感じる! 彼の汗の匂いもそう! 貰った食べ物もハッキリ味を感じるのっ!!」

 

 

他のメンバーがビクッとして、ピトとエムを見る。 それでも構わずに、彼女は更に続ける。 頰をほんのり染めて、目はどこか愛おしそうに……まるで恋人のような。 けれど内容はおっかなく。

 

 

「ここまで言ったんだからさぁ……後は分かるでしょ? わたしがシたいコト」

「……ああ」

 

 

エムは頷く。 その考えが合っているとは思わないし、思いたくもない。

けれども、ピトがやりたいコトは分かる。 ストーム・ワンが本物というのは、彼が『この世界で生きている』のであり『殺せば死ぬ』ということ。

そうならば、殺人になる。 いや、殺人になるのか分からないが。 けれどもピトはそう感じたのだろう。 そして望むのだ。 殺人者になる事を。 死ぬ事を。

 

 

「わたしね、ワンちゃんを……本物を殺したい! 正義の名の下に! 嫌われ者のワンちゃんならさ、殺しても誰も文句言わない! それで消えても言われない! 寧ろ感謝されるだろうね! そしてね! 逆に殺されても良いとも思えるのよ! だって本物だよ? 本物に殺されるなんて素敵じゃない……………………ねぇ、そう思うでしょ、えぇむ?」

 

 

そう、笑顔で、瞳孔を開いて尋ねる毒鳥。 顔は陰がかかり、その恐ろしさを増している。 悪魔……いや、魔王だ。

けれど。 エムはそこまで聞いて、ハッキリと相手の目を見て答えるのだ。

そこにはいつかの、毒鳥に怯えていた臆病な熊の面影はない。

 

 

「ああ」

「あはっ」

「だがなぁ!!」

「…………………………あん?」

 

 

普段のエムなら有り得ない、叛逆の目。 ピトは一瞬驚くも、気に食わない目に、ヤンキーみたいな声を出した。 だがエムは怯まない。

それでも。 それでも言いたい事があるからだ!

 

 

「隊長は! STORMは! 死ぬ事はないし、死なせない! そして俺たちを救う存在だ! 本物だとしてもだ、お前には彼は殺せない!」

「………………言いたいコトはそれだけか? 試すだけよ」

「がはっ!」

 

 

思いっきりエムの鼻っ面をブン殴る。 赤いエフェクトが鼻先を散り、巨体は後ろ向きにひっくり返った。 そんな様子を周りの仲間はどうすれば良いのか、誰も分からず動けない。

 

この叛逆因子は、直ちに射殺するべきだろう。 だが利用価値がある内は生かしておく。 終われば殺す。

 

しかし。 ここまでエムに影響力を与えた、いや、自身にも与えたワンちゃんの存在は、もはや無視出来るモノではない。

 

 

「やっぱり、殺すしかない。 或いは私が殺されるか」

 

 

ピトは静かに呟くと。 ウィンドウ操作を始めて、自分の武装を整えていく。

 

 

「どっちに転んでも、レンちゃん悲しむでしょうね」

 

 

戦場に行く前に。 ピトは可愛いウサギを思う。 ワンちゃんに静かな好意を寄せて、私の『ファン』であるウサギを。

 

 

「ゴメンね。 でも、それが私」

 

 

聞こえやしない、けれど。

ピトは無意識に謝った。




あーあ。 気付いちまったか。
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