※タイトルネタバレ。 お察しください。
…………はい。 我々に合流する事を逡巡しております。 裏切る場合を考慮するべきです。 彼の指揮誘導技術、座標伝達技術は元より、人望の厚さはEDFにとって脅威ですから。
GGOプレイヤーや彼に賛同した隊員を率いて抵抗する可能性があります。 暗殺ないし営倉に入れるべきです。
……確かに《死に戻り》は脅威ですね。 火力よりそちらを懸念した方が良いでしょう。 心が折れない限りは、我々が遅かれ早かれ負けます。 《ザスカー》は手をこまねいていますが、彼らの支援を行う事は出来るはずですしね。
…………《グロッケン》は入り組んでいます。 完全制圧は困難です。 ドローンを飛ばしてはいますが、やはり……。
……ええ。 地下にも空間が広がっております。 かつての地底みたいに。 何日か前に制圧部隊が送られましたが、狂った機械が蔓延っていたと。 《デプスクロウラー》も複数投入されましたが……倒しても倒してもキリがありません。
…………いえ。 最深部まで到達したのですが、どこからか敵勢が無制限に湧き出て来るのです。 危険性が高いとして、最近撤退命令が下りました。 ですが、そんな場所にすらプレイヤーは活動していたと報告が。
…………はい。 潜伏場所は多くあります。 正直に申し上げます。 全ての制圧は不可能です。
……彼に加担はしていません。 信じるかは任せますよ。
…………それでも攻撃を敢行するのですか。
しかし隊員らへの説明は?
…………ああ、防衛出動ですか。 かなり強引ですね。
…………作戦成功を願ってますよ。
ではでは。
…………俺はどちらの味方でもないんですがね。 隊長がどちらに着くかも勝手です。
けれど。 俺が楽しくなるように事を運ばせて頂きます。 悪く思わないで下さいね?
場所は巨大ドームの縁。
直径約2キロ、高さ数百メートルの巨大ドームは近づくともう山にしか見えない。
つなぎ目が一切ない謎の材質の白い壁が、緩やかな弧を描いて、赤みがかった鼠色の空へと伸びている。
100メートルおきくらいに扉のようなものが見えるから、中には入れる様子。
「外も中も汚したくなる建物ッス。 俺のお馬さんでドーンとイきたい!」
「《グレネードランチャー ユーマックス》(UMAX)な。 《ウマックス》(ローマ字読み)は間違いだろ」
「ワザとです!」
「卑猥な発言はやめてくれよ」
「あーはいはいスキャン見るよ真面目にやってよ」
「がってんよ!」「すまん」「俺はいつだってマジだぜ?」
ふざけてんのか真面目なのか分からないが一度、匍匐で待機。 スキャンを待つ。 中に敵がいるのは分かるけれど、またもや密集している。 同じパターンだよ。 考えることは同じなのかしら。
とにかく。 端末で詳細を見てみよう。
「おっ。 スキャン始まったよ」
「ぐう……ドームのほぼ中央に、三チームもいる」
「固まってるなら榴弾で吹き飛ばして終わりよ」
「まあ待て。 中の状況は分からない」
今なら密集している。 空爆や砲撃要請でドームごと吹き飛ばす方法も考えるワンちゃんだったが、レンが激おこになるのは目に見えている。 娘に怒られるのは避けたい。
それを抜きにすると、ドームという遮蔽物がなくなって、残りの敵が真っ直ぐ来るかも知れぬ。
ここはひとつ、中の様子を見てからにするか。 状況が悪ければ外に出て、空爆か砲撃で吹き飛ばせば良い。
そう考えていると、レンが不安そうな顔でこちらを見てきた。 いけない。 安心させねばならない。 見ていて可愛いが、堪能している場合ではない。
「ワンちゃん、どうしよう。 迂回すると距離が長い。 しかも北回りだと《MMTM》って敵とぶつかる可能性が高い。 南回りだと、《SHINC》とぶつかる」
「接敵したらレンジャーに任せて後方に退避する」
「ちょ、隊長! 俺はワンマンアーミーじゃないんですよ!?」
「さっき、ひとりで分隊潰したじゃん」
「フカ……それは先に見つけたらからサ。 先制攻撃を出来るのは大きいぜ?」
「心配するな。 今は中の様子を見る。 全てはそこからだ」
先ずは中を確認。 横開きのドアを開ける際、トラップがないか警戒しつつ、またはCQCやCQBといった近接戦に備えつつ、ワンちゃん一行はドームへと侵入。
爆発物を扱うグレ男とフカは、閉所での戦闘は向かないので、ワンちゃんとレンがP90を構えて進む。 銃口を前方に向けつつ、慎重に前進していった。
やがてドーム構造体を突き抜ける、歩行者用の長いトンネルを抜けると
「トンネル抜けたら、函だ……イギリスゥウウ!」
「いやジャングルでしょ?」
「音楽の話かな」
「グレ男、静かにしろ。 敵がいたらどうする」
「なんで俺だけなんスか!」
びっくり仰天。 ドームの内部はなんと南国、ジャングルだった。 一面鬱蒼とした緑。 人の背丈ほどの草が乱雑に隙間なく生えており、天までそびえる苔まみれの大木が空を覆っている。 僅かに見える空はホログラムなのか、GGOじゃあり得ない美しき青色。
その光景にグレ男が意味不明な言葉を叫んだお陰で、他のメンバーは逆に冷静になれたが、内心はビビっている。 まるで失われた地球の自然が残っているよう。
「はー…………」
目を丸くするレンの脇で、
「こりゃスゴい! ドームの中だけ別世界だね! いいねえ! 温室かねえ? 自然パークかねえ? なんだろうねえ?」
フカは楽しそう。 そんな子らにホッコリしたワンちゃんだったが、いつまでも目を奪われているワケにはいかない。
無法者やジャングルが立ち塞がろうとも、EDFは敵に背を向けないのだ。
「や き は ら え!」
「Yes!」
「ちょ!?」
駄犬が指示すると、グレ男はフカのMGLー140を黒くした様なグレラン、ヴァラトル・ナパームZDを構えて天に向けてポンポンポンッと連続発射。
草木の隙間からナパーム弾が抜けていき、放物線を描いて敵のいる方向へ飛んでいく。 もれなく、燃える音と悲鳴が木霊した。
「火の回りが早い。 敵に逃げる余裕はないな」
「ドームを破壊せずに敵を殲滅出来そうだぜ?」
「この駄犬供が!? ドーム抜けられなきゃ意味ないよ!」
「パパ、派手にやるじゃねえか!」
あっという間に火が回り、熱風や燃える音が大きくなってきた。 最終作戦仕様だからかゲーム世界だからか、短時間でここまで燃えるとは。 早く脱出しないと、こっちまで焼け死んでしまう。
「だがな、ジャングルは危険だ。 隠れる場所が多い割には銃弾を防げる場所は無い。 先に見つかればアウトだ」
「そうだぞチビッ子たち! ゲリラ戦は市街地でよくやったけど、アッチはコンクリ。 コッチは草木。 弾なんて貫通してくるぜ。 だから敵ごと燃やして丸裸にしつつ、見えない敵をも燃やし尽くす!」
「やりたかっただけでしょ? とにかくドームから出るよ!」
正解とも間違いともいえる意見を主張する駄目な隊長らに文句を言いつつ、ドームから撤退するワンちゃん一行。
ああ、コレで遠回りだよ。 敵は一掃出来たとしても全然嬉しくない。 ドームの外にも敵がいるってのに。
「思ったんだが」
「今度は何?」
やりたい放題のワンちゃんがボソッと言うものだから、レンはイラッとした口調で聞き返す。 これ以上、何しようというんだ。
「グレイプを要請して、進もうか。 山のふもとまでなら走行出来る」
「……それ、最初からやっていれば早かったんじゃ?」
ココまできて、もっと簡単で安全にピトの下へ行けそうな方法を提案する駄犬。 今頃過ぎる。 今までの行軍は何だったのか。 散歩かな?
「隊長、武装は榴弾砲ですよね?」
「ああ」
「なら乗ります!」
「良かったじゃんレン。 楽が出来そうで」
「……辿り着いてからが大変そう」
楽観モードのフレンズ達に、ウサギは深々と溜息を吐く。
ワンちゃんが要請用のスモークグレネードを転がすと、赤き煙が立ち上り始めた。 見慣れたモノだが、それはGGOの狂った空を更に濃く染め上げていくようにも見えて……レンは改めて天を仰いだ。
ドーム内でのフカが変態に襲われてエロいことされそうになったり、レンが弾をくれた敵にお礼のキスをするシーンをバッサリカット……。