アマゾネス を つかまえた !
そして仲間割れ。 けもの ですもの、大目に見てね(殴
ドームにせっかく突入した別チーム《MMTM》と《SHINC》は、ドーム内を見て1発も発砲することなく、大変遺憾ながらも即撤退。 不完全燃焼な気持ちを抱えての仕切り直しとなった。
ドーム内のジャングルは、どっかの放火魔の所業で火の海へと変貌していたからだ。 この中を進む気はない。 彼らは飛んで火に入る夏の虫ではないのだ。
この様子では中央付近にいた敵チームは焼き死んだか同じ様に撤退したと思われるので、自分達も無理してココにいる必要はない。 出来れば闘いたかったが。
そんなワケで。
南側より燃え上がる気合を入れて突入、そして燃えるドームを見て、心当たりのある犯人に怒りで更に燃えるアマゾネス集団《SHINC》。
外に出たところで幸か不幸か、その犯人が現れた。 砲塔付き装甲車で。
「ボス! 凄い見覚えのある車両が!」
指の代わりに《ドラグノフ狙撃銃》の銃口を向けて言いたるは、前回ガンシップのロケット弾で葬られたトーマ。
長身で黒髪という、素敵な女性だ。 チーム1の狙撃手でもある。
そんな彼女が見たスコープ越しの砲塔付きの車両。
砂埃を立てながら此方に向かって来ているソレは前回SJ1で対峙した憎き男が乗っていたものではないか。
今回もヤツが乗っているに違いない。 気付いてないのか、幸い砲塔はこちらに向いてはいない。
見た誰もが予想して、怒りがメラメラと燃え滾る。
ココで出会ったが何とやら。
今度こそブッ殺す!
「ソフィー!」
「やるよ!」
大柄で厳つい顔をした、三つ編みのエヴァ……ボスがすぐに叫ぶと茶髪のドワーフみたいな女、ソフィーが応答。
ウィンドウを素早く操作して物干し竿みたいな長いアンチ・マテリアル《PTRD1941》を実体化。
そしてどかっと胡座をかいて、アウトリガーの如く両手を地面に突き刺して身体を安定させる。
そしてトーマが近寄って、ドラグノフを脇に置くと左肩の上に、その長い銃身を載せた。
「アンナとトーマは運転席を狙え! ローザとターニャは銃撃を続けて援護! 殺るか殺られるか、ここでケリを着ける!」
「ダー!」
装甲車相手に戦うつもりらしい。
自殺行為でしかないが、誘導兵の恐ろしさの片鱗を味わった彼女らは、逃げても死ぬのを知っている。
ドームの通路に逃げ込んでも、爆発物でも放り込まれて終わりだろう。
だったら闘いの中で死にたい。 それが戦士である。
そして何より、あの憎きチート野郎を殺したい。 幸い距離はあるので、ココはアウトレンジで決める!
「あの男からレンを救うんだー!」
誰かが叫び、トーマが殴っただけで殺せそうな大きな弾丸を装填、引き金を絞ろうとして、
『こちらEDF空爆誘導兵ストーム・ワン! 直ちに銃口を下げてくれ! 君たちの友人、レンも乗っている! こちらには戦う意志はない!』
そんな、スピーカー越しの声。
けれど、
「お命、頂戴いたす!」
そんなの関係ねぇとトーマは引き金を絞り切った!
チーター殺す慈悲は無い。
砲撃を思わす重音は同時に二つ響いたが、着弾して吹き飛んだのは残念ながらアマゾネス集団だけであった…………。
「単発で旧式のアンチ・マテリアル・ライフルで、現用グレイプ様の装甲とマジの砲撃に勝てると思ったの? バカなの死ぬの?」
時間は少し経ち。
停車したグレイプの前に胡座をかくように座る六人のオバさん達。 その前でグレ男は仁王立ちで見下しつつ罵倒中。
アマゾネスの両腕は共通して背後に回されて紐で拘束されている。
そのサマは、戦争捕虜のイメージ。 戦士として死ぬ事を許されず、敵のイイ様にされているのだ。 屈辱だ。
ナニが起きたかといえば、グレ男に加減されて砲撃された挙句に拘束されているだけ。
トーマの放った弾丸は確かに、グレイプに命中したものの、強靭な装甲表面を凹ませただけに留まった。
一方でグレ男の榴弾砲による砲撃は、彼女らが死なない程度の位置に着弾。
彼女らを吹き飛ばし、地面に転がったところを素早く拘束したのである。
言うのは簡単だしギャグ寄りだが、インフェルノな難易度だろう。 それを可能にするグレ男は凄いのである。 性格はアレでも。
そんな感じに、殺すより困難なノーキルプレイを成し遂げたワケであるが。
「ハッ! チート野郎に言われたくないね」
「そうだそうだ」
「正々堂々勝負しろ!」
「それでも男か!」
「レンを解放しろー!」
「タマついてんのかゴルワァ!」
拘束されていても、精一杯の罵声で抵抗するアマゾネス達。
苦労してグロッケンの地下でPTRD1941を手に入れたのに、ソレをアッサリ否定する相手に更なる怒りすら覚えて。
「ああん? 生殺与奪権を握ってるのはコッチだってコト、知っていて言ってんのかぁ?」
「だったらなんだ? 殺せよ」
「ナマ言いやがってぇ……隊長! ガスバーナーで炙ってやりましょう!」
そう言うと、グレイプの助手席扉がパカっと開く。 見やれば降車する憎き男……ストーム・ワン。
フルフェイスヘルメットと通信ユニットが特徴的な独特の格好だが、GGOでは悪の枢軸扱いのソイツ。
《かの者》と呼ぶプレイヤーもいて「名前を呼んではイケナイあの人」状態となりつつある。
ALOな魔法世界なら有名な呪文を唱えたいところだが、硝煙漂うGGOでは似合わない。 いろんな意味で。
「止めろ。 話をする前に回復させる」
ワンちゃんは威厳ある声を出しつつスッと白い縦長の、人の大きさはある円柱状のポールを出してアマゾネスの近くに設置。
上側が少し伸びると、サイドにパネル状の羽根が数枚飛び出てクルクルと回り始める。
風車でいう直線翼形の羽根を思わす見た目だが、発電機の類ではない。
ボスは気になって、思わず聞いてしまう。
ワンちゃんは丁寧にも答えてあげた。
「なんだそりゃ」
「《ライフベンダー》だよ。 君たちの所持する注射器状の治療キットの一種だと思えば良い」
「ありがたく思えよババア共!」
「なっ!?」
こんなデカイのが!?
まさか……アマゾネス達は最悪のケースを予想して戦慄と共に身を震わせた。
「こんなおっきいのを挿すつもりか!」
「変態だぁ!?」
「おのれストーム・ワアァン!」
「そんなワケないだろ!?」
トンデモナイ誤解を受けた。 レン以上の大きさのモノをどうして挿すと思ったのか。 注射器の単語を出したのが悪いのだろうか。
EDFは装備も人も変態が多いが、ソコまでじゃないハズだ。 たぶん。
「いやぁ、このババア共は小さい方が好みらしいですね。 きっと注射器であんなことやこんなことしてるんですよ。 レンを解放しろとか言ってるのも、コイツらがショタかロリ好きだからじゃないですか? 危ないから会わせない方が……あ、注射器の件で想像したら気持ち悪くおrrrr」
「気持ち悪いのはお前だ! それと本当に吐かないでくれないか!?」
危ない発言で更に煽って、派手に自爆するグレ男。 発言も行動も汚くて困る。
《ハラスメントコード》がEDFに通用しないので、GGO基準でアウトな行動や発言をしても制限されないからタチ悪い。
そのうち事案が起きるんじゃないだろうか。
「とにかく! コレは近くにいる者の服や身体の傷をナノマシンで塞いで回復してくれるものだ。 長時間浴びるのは毒だが危険物ではない」
「……緑のバレット・ラインが伸びてきているのだが」
「有効範囲にいる者に対して緑のラインが機器から伸びて、回復させるんだよ」
言われてみると、なるほど。 黄色やレッドカラーだったHPのバーがみるみる伸びて回復していく。
あっという間に全開のグリーンカラーに。 チートだし、やっていることも納得出来ないので礼は言わないが。
「では本題に入る」
「話を聞くつもりはない」
「嫌われてるっすね隊長」
「……レン、出てきてくれ」
なおもストーム・ワンの話を聞く気がないアマゾネス。 ならばと話を聞いてくれそうな人物……レンを無線機越しに呼び出した。
レンは彼女らの友人だというから、少しは耳を傾けるだろう。
そしてグレイプの後部扉から小さな子、レンと付き添いでフカがひょこっと出て来る。
レンはどこかバツが悪そうにしているが、協力して貰わねば。
ところが、先に口を開いたのはアマゾネス達。 レンを視認するや否や訴え始めた。
「か……じゃなくて、レン! この男に言ってくれ! チートを止めろと!」
「SJ、いやGGO全体の問題に発展してるぞ! 仲間まで増えて滅茶苦茶だ!」
GGOプレイヤー全体意見を訴えた。 SJ中に言う言葉ではないだろうが、本人がいる前で敢えて叫んでみる。
ところが、レンは更に申し訳なさそうに首を横に振るのみだ。
「ごめん。 ワンちゃん含むEDFは制御不能なの。 止めても勝手にやるし」
「くっ! 非道男め!」
「何故こんな男とスコードロンを組み続けるんだ?」
「弱味を握られたのか?」
「まさか惚れているの?」
「そ、そんなワケない! ワンちゃんのことはリアルじゃ知らないんだし!」
好き勝手言う女共。 多人数の女に口で勝つのは困難なので、膨らむ前に本題へ行きたい。
ところがグレ男は首を突っ込んでいく。 リバースから立ち直った彼は、話を面倒くさく拗らせた。
「ふっ! レンは飼われているからに決まっているだろ!」
「なにいぃ!?」「なんて卑猥な!」「まあ、はしたない!」
「ちょ、何言ってるの!?」
「ナニだよ。 てか事実だろ。 側にずっといてエサ貰って頭ナデナデされて戦闘からは守ってくれてる」
「あぅ……で、でも! 否定は出来ないけど言い方が」
「上のお口で散々言いつつ、心でモジモジしてるのはお見通し……ちょ、ナイフ抜くな! 同士も拳銃抜くんじゃない! そこはグレランで頼む!」
「天誅!」「女の敵がぁ!」
ギャアギャア騒ぎ始めて無駄な時間を過ごしていくフレンズ達。
フカはM&P拳銃で何処ぞの名人みたいに片手で魂の高速連射を行い、レンは俊足を活かしてナイフで斬りつけようとするも、
「下手クソでちゅねー!」
「うぎゃー!?」
至近距離なのに1発も当てられない下手なフカに一瞬で詰め寄り、右手に持つ拳銃を蹴り上げて弾き飛ばし、
「サッカーしようぜ! お前ボールな!」
「ぐぺっ!?」
股下を潜り抜ける様にスライディング斬りを仕掛けてきたレンを、頭から踏んづけて止める。
いきなり始まったハードな仲間割れにアマゾネスがポカーンとしていると、
「うちの娘にナニしてくれてんだぁ!!」
親犬がキレた。
「うおおお!」と雄叫びを上げながら、愛と怒りのストレートパンチをグレ男に繰り出す。
レンジャー程で無いにしろ、彼も軍人。 鍛えられた身体から繰り出される拳は並大抵のモノでない。
「CQCなら俺の方が上ですぅ!」
しかし、ヒョイと避けるグレ男。 そのままワンちゃんの腕を掴み、懐に入れるようにして、
「ふっ!」
背負い投げ……というより、腕力に任せて後方に投げ飛ばす。
空中を飛翔する程であるが、しかし、ワンちゃんもそのままでは終わらせない。
「甘い!」
そう言って、いつもの間にか構えられているリムペットガン。 空中飛翔しながら撃つ気か。
「リムペットなら俺、撃たれてから回避余裕なんですけど!」
「レン退避しろ!」
「うん!」
「なっ!?」
足がどいて解放されていたレンに退避命令。
俊足で離れて安全が確認出来たところで、ワンちゃんは地面にぶつかる前に『起爆トリガーだけ引いた』。
刹那。 グレ男の足下で爆発。 グレ男は吹き飛ばされる。
予め足下に吸着爆弾を仕掛けていたのだ。
「目標に当てるだけが銃でない」
それだけ言うと、銃を下ろすワンちゃん。 グレ男は死んではいないが、水をぶっかけられた様に地面に横たわって大人しくなる。 熱は冷めたらしい。
「レン、フカ。 無事か?」
「うん。 助かった、ありがとう」
「レンとパパの連帯。 打ち合わせたワケじゃないのに凄かったわ。 二人とも相性バッチリじゃん?」
「そ、そうかなぁ? エヘヘ」
「フッ」
そしてアマゾネスそっちのけでイチャつく駄犬と娘たち。
「……………………あの。 ストームさん。 そろそろ本題に入りませんか?」
このままでは放置されて去られそうな雰囲気だったので……話をするつもりはなかったボスは、逆に自ら話し掛ける事にした。
素が出て敬語になってしまったが、仕方ないとして見逃して欲しい。
共同戦線へ。
やったね ワンちゃん! 仲間が 増えるよ!