シャーリーと出会います。 ちょっと酷い目に。
鬼。
様々な意味合いがある言葉であるが、スゲー強いヤツや人情がなく冷酷な者を指すコトが多いだろう。
ピトフーイという女は、そんな言葉が当て嵌まる人物だ。
冷酷というかサディスティックなドSお姉さんというべきかも知れないが、その強さは鬼と言って良い。
正史では結託した小隊を素手で殺してーの、武器を鹵獲してーの皆殺しであった。 エム程でないにしろ狙撃の腕もある。
そんな女を殺さず説得。 その任務は地底進行より困難だ。
ワンちゃんはピトが強いのを知っている。
レンがログインしていない時も共に行動していたから、LFDFでは1番詳しいかも知れない。
あの身体のラインがくっきり出るような、ピチピチ全身黒タイツな格好は色々不安にさせるものの、多種多様な銃火器をレンジャーの如く難なく使い熟すし、格闘スキルも高いときた。
判断能力も高い。 戦場に求められる刹那の臨時対応にも優れる。
ひょっとしたら、EDFのビークルも使えるんじゃなかろうか。
訓練をしなければ乗りこなすのは困難なモノも多いが可能性はゼロではない。
使用済みビークルは極力処理するべきか。
そんなヤツが相手だ。 戦力が欲しい。 救出するにも周りの露払いとして。
なら現地調達をすれば良いじゃない。
その思考になった為に、レンの友人であるアマゾネス捕獲の流れに。
一方的な力で捩じ伏せての捕縛後、スキンシップ(罵倒)をしつつ事情説明。
仲間に引き入れて戦力増強に成功し、グレイプをもう一台要請してぶち込むと、さっさと鬼退治へと走り出した。
どっかのRPGでも敵をボコボコにして仲魔に出来るのもあるから、なんの問題もないね。
そしてワンちゃんは、気が付けば分隊長から小隊長へと昇格。
よし! 人手は確保した。 この勢いで鬼の下へ急ぐのだ!
『って、ザけんなよチート野郎! 緊急事態なのとレンの頼みもあったから協力してやるだけで、誰も指揮下に入るとは言ってない!』
「とか言いつつ、ちゃんと付いてくるっていう。 ババアのツンデレなんて得しないからマジ止めてくんね?」
『テメェ、後で絶対殺す!』
「ヤレるもんならヤッてみなぁ!」
ところが、喧嘩ばかりで部隊の纏まりがない。 烏合の集も良いところ。
特にグレ男は吸着爆弾で吹き飛ばされて静かになったのもつかの間、アマゾネスを再び煽り始める。
隊長は予想はしていたのでSHINCとLFDFで車両を分けてはいたが、無線機越しに尚も喧嘩を続行中。
連絡が取れる様にワンちゃんが共通の回線にしたので、耳の中でギャアギャアと騒ぎ立てられているみたいだ。 良い迷惑。
因みにアッチの運転はトーマという狙撃手。
1番運転が上手いらしいので任せている。
今はワンちゃん達の乗るグレイプについて来てくれているが、喧嘩別れは勘弁して欲しい。
そうならないように、ワンちゃんは注意しておく。
「反目は止めろ。 今は全員でひとつの部隊だ」
「《228基地奪還作戦》時の本部の言葉ですね。 俺も参戦したかったんすけど、ダメだと言われて」
「グレネードで道中派手にやられたら、敵を引き寄せるだろう」
「でも、道中で既にプライマーの歩兵部隊に襲われたって聞きましたが」
「……まあな」
助手席に座りながら昔の話を引き出したところ、グレ男が喰いついた。 お陰で喧嘩は止まった様子。
戦時の話は良い記憶が無いが、それで争いが止まるなら安いものだ。
プライマーの時みたいに、交渉する気が無い訳でもなし。
EDFも、あるいは。
『なんだなんだ? EDFの妄想話か?』
残念ながら止まりきらなかった。
やられたらやり返すとばかりに、アマゾネスが小馬鹿にしつつ言い返してきたのだ。
止せば良いのに。
ああ! 人間って面倒臭い!
ワンちゃんと後部に乗っているちびっ子は、頭痛に耐えつつ、それでも聞こえてくる喧嘩を聞いていく。
『いるよなー、そういうヤツ。 過剰なロールプレイングってヤツ?』
『痛いわ! EDFって痛い集団!』
「ああん!? ババア、あの《遊撃部隊ストーム》誕生の作戦を馬鹿にするとは良い度胸だ! ココで爆破処理してやんよ!」
そう言って、グレ男は走行しつつ上部砲塔を背後を走るもう一台のグレイプに向けて挑発。
そして撃たぬ代わりに急ブレーキ。 ぶつかる腹だ。
「うひゃあ!?」「うおお!?」「ぐっ」
レンやフカ、ワンちゃんの身体が大きく前に転がされる。
危険運転である。 現代で問題になっている煽り運転等はやめて欲しい。
そして人の喧嘩に巻き込むんじゃねーよと思うワンちゃん達。
『はっ!』
しかもトーマにアッサリ横に回避されてしまった。
速度は出ていたが車間距離が開いていたのもあり、余裕の回避だ。 運転技術が違いますよ。
何というか、車の教習ビデオの悪い例と良い例(?)みたい。 丁度、酒場では二人のドライブがモニターさているし。
だがこのままではイカン。 隊長は少し声を荒げて、両者を叱る。
「おいグレ男! 喧嘩は止めろ!! SHINCもだ! 巻き込んで申し訳ないと思うし、グレ男はこの通りの性格で悪いと思う。 だが人命が掛かっている件を忘れないでくれ!」
それ、ワンちゃんが言うかな?
皆は思ったが言わなかった。
ただ、その言葉はごもっともで、今喧嘩をしている場合ではない。
共同戦線を張り、ピトフーイを救わねば。
それが終われば殺し合いになるだろうが、今は仲間。 手を取り合う時だ。
皆は黙り込み、ひとつの目的に集中することにした。
それにストーム・ワンの言葉に重みを感じたのもある。
彼の言葉はきっと、どんな銃声や爆音より身体の奥深くの芯まで響く。
そして指示に従おうと思えるから不思議なものだ。
ゲーム内のスキルでは不可能な、人の心そのものを惹きつける何かが、彼にはある。
『すまない。 今は集中する』
『グレ男……だっけか? お前とは、ひとまず休戦だ』
「良いぜ。 全部片付いたらボコボコにしてやんよ」
結果。 仲直りは出来なかったものの、今度こそ喧嘩は終わり。
運転も心なしか穏やかに。 改めて心をひとつに、鬼退治といこうじゃない。
「よし、情報を整理する。 グレ男」
すかさず戦場モードにシフト。
求められたグレ男も切り替えてキリッと報告。
いつもこうなら良いのに、とはレン&フカ談。
「はい。 この先の草原、ログハウスのあるAREA6にターゲットが移動しております。 センサー反応から他にも集まる敵部隊を捕捉。 ひとグループは高速で移動しています。 恐らく我々と同様にビークルを使用しているかと」
「障害となりうる。 ピトに接触する前に、これらを排除する。 1番近いヤツは?」
「1名、遅く移動している者です。 恐らく匍匐移動中。 偵察か狙撃手と思われます」
「危険だな。 この単体を第1目標、高速で移動するグループを第2目標とする! SHINCは後方に待機。 有事に備えて周囲を警戒して欲しい」
『あ、ああ』
さっきまでのアホなやり取りとのギャップ差に、戸惑うアマゾネス達。
ボスは何とか返答すると、他の仲間も遅れて了解の意を示す。
「周りは平原。 遮蔽物は殆どない。 だが君たちの乗るグレイプを上手く使って欲しい。 装甲車だ、銃弾から身を守る移動式の楯として十分役に立つ。 砲塔もある、最悪は使って構わない。 トーマ、榴弾砲の取り扱いは気を付けてな。 操作方法は教えた通りだ」
『は、はい!』
「大丈夫。 トーマの運転、とても上手かったぞ。 君なら上手くグレイプを使いこなせるさ」
『……спасибо(スパシーバ)』
「すまねえ、ロシア語はサッパリなんだ」
彼の褒め言葉に心をくすぐられて、思わず母国語を口にしちゃうトーマさん。
さっきまでの敵意はどこにいったのよ。
ピンクな雰囲気になってピンクなウサギが機嫌を損ねると面倒だと、グレ男が茶々をいれるが、焼け石に水だった。
仕方ないよね。 だって女の子なんだもん。
レンは頰を膨らませつつ、不機嫌な声で指示を仰ぐ。
「……ワンちゃん、わたしはどうすれば良いのかな?」
「SHINCと共にいてくれ。 そこで周囲を警戒。 グレイプの中からな」
「人も増えたんだし、包囲すれば良いんじゃないの?」
「遮蔽物がない。 匍匐で多少は身を隠せるが、バレたら危険だ。 各個撃破されるのは避けたい」
「そうだぞ。 俺たちEDFも平原でドンパチした時は《タイタン》の陰に隠れながら戦ったモンだ」
「たいたん?」
「EDFの重戦車だ。 今は気にするな」
おおよその方針は決まった。
細かな判断や行動は各分隊長に任せて、先ずはボッチの撃破といこう。
レンは不機嫌なままだが、ワンちゃんは気が付かずに作戦に集中する。
「まぁまぁ。 今はパパ達に任せとこーぜ? いざって時に助けられる様に、準備だけしといてさ」
「……うん」
フカのフォローで、気持ちを落ち着ける。
今は個人の感情を出している時ではない。 ピトを救うのが優先だ。
その為には皆の協力と連帯が大切であり、個々が勝手なコトをするワケにはいかない。
無事にこの件が終われば、また一緒に行動出来る。 それで良いじゃないか。
「間もなく第1目標」
「状況に備え! 可能なら拘束する!」
緑の多い穏やかな大地に似つかわしくない鉄の塊は、草原を駆け抜けていく。
当然目立つのだが、隠密性なんて知らねぇとばかりにワンちゃん達は突っ込んでいくのだった……。
シャーリーという女性について語るなら、アバターの外見が20代でリアルツリーパターン迷彩のジャケットで、緑髪の胸が大きい美女ってところ。
リアルでは24歳。 名前は霧島舞。
東京出身で北海道で働いている。 職業はネイチャーガイド兼エゾシカ猟専門のハンター。
幼い頃から夢見ていた自然の中での職を見つけて北海道へ移住した、という経歴の持ち主。
そんな彼女がGGOにいる理由。
それは仲間の誘いを受けて、射撃練習の為にやってきたから。
VRとはいえ、リアルの技術や知識は役に立つし、逆に練習になる。
対人戦闘上等のGGOだが、ソコは避けていた。 『本物の銃』を扱う者としての倫理観からだ。
もし戦闘になりそうな時は、銃をストレージにしまってログアウト。
フィールドでログアウトしちゃうと直ぐには消えず、その間に殺されると次回ログイン時に、その時のペナルティ……経験値や所持していた武器を失うのだが、ストレージにしまっていれば問題ない。 経験値を失っても、目的からして構やしない。
こんな感じに対人戦闘を避けていたのだが……。
では何故、対人戦闘のスクワッド・ジャムに参加しているの? と疑問に思うだろう。
心変わりか、といえばそうではない。 ゲームと割り切ってしまった仲間に誘われてしまったのだ。
遠回しに不参加の旨を伝えたり、仮病を使おうとも思ったのだが、今後の付き合いも考えて嫌々参加する事に。
本当、人間関係とは面倒である。 大人になると余計なのよ。
「あの女……!」
そんな彼女の今。
ログハウスから1キロ以上離れたところから、隠れるようにひたすら匍匐前進中。
そして何か怒っている。 どこかで付着したのか全身泥まみれであるが、その鋭い目は怒りと殺意で染まっていた。 怖い。
それを向ける相手はこの先にいるであろう、仲間を騙し討ちにした憎き女、ピトフーイ。
何が起きたかと言えば、仲間がピトたちと組もうとして近寄って、ピトが断った件である。
断られたシャーリーの仲間たちは仕方ないね、離れるまで撃たないでね、と背中を向けて移動していたところ……ピトに『ぱーん』されちゃったのだ。
ワンちゃんとドンパチを控えている彼女は、少し情緒不安定だったのもある。 正史でも嬉しそうに『ぱーん』したけど。
シャーリーは撃たれた仲間を背負って、必死に逃げて逃げて……生き延びたのはシャーリーだけ。
気が付いたら、背負った仲間はどこかに落としていた。 左上の仲間のライフゲージを見やれば、自分以外は全滅というオチ。
隊長権は自然に唯一生き延びた彼女にまわる。
隊長は降参する選択が出来るから、そうしようと思ったのだが……あの憎き女に……あの害獣を駆除せねばと銃を握って戦う決意をする。
「あんなやつは……、人間じゃ……、ない。 人に害をなす、害獣だ……」
ブツブツと言いながらも、殺意と怒りを原動力に前進するシャーリー。
「獲物は、1発で仕留めてやる」
手には《ブレイザー・R93タクティカル2》というドイツ製の高性能狙撃銃。
汚染された水の中で生まれた奇形魚のような、不気味な形のライフル。
実際に使用している狩猟のノーマルモデルとは、ストック部分が違うだけ。
GGOにはノーマルが存在しなかったので、操作方法が一緒ということで相棒になった。
それは力。
腕力のない女性でも、巨大な相手を倒せる力。
その力を手に前進していた彼女だが、
「……車の音?」
背後から現代人が聞き慣れた、車のエンジン音が。
首をそちらへ向ければ、二台の砲塔付き装甲車。 その鉄の塊は自然豊かな大地を踏み荒らしながら、真っ直ぐシャーリーに向かって来ている様に見えた。
(なっ……! 位置がバレたの!?)
スキャンまでまだ時間があるはずなのに。
まるで正確に『位置がバレている』みたいに、どんどん近付いてくる。
いや、まだだ。 偶然方向が被ったのだ。 慌ててはいけない。
ここはジッとしてやり過ごそう。 志し半ばで死にたくない。
『そこの泥まみれの狙撃兵! 此方はEDF空爆誘導兵のストーム・ワンだ! 直ちに武装解除し、投降せよ!』
「っ!?」
ばれてらぁ。
スピーカーから聞こえる男の声は、やはりシャーリーのことか。
い、いや。 まだだ。 たまたま同じ格好の者がいたのかも知れない。
それはそれで問題であるが、そう思ってジッとしておこう。
『聞こえているはずなのだが。 寝ているのか?』
『俺が呼びかけます! アレは酒場で見たボイン姉ちゃんッス!』
(ボイン姉ちゃん!?)
それってわたしのコト? いやいやいや。 女性プレイヤーはあの場に他にもいた気がするし、きっと他のプレイヤーだ!
てかセクハラ発言だよ。 ナニ言ってくれてんの。
『ヘイ姉ちゃん! 良いケツしてますよねホント! お兄さん達と一緒にドライブしない? これから鬼ヶ島へ行くんだけど、ババアとチビしかいなくてさあ! 若いおんにゃの子が欲しいんだよねぇ!?』
『真面目にやれグレ男!』
『ババアババアって、それしか言えねえのかこの野郎!』
『テメェ、この件済んだら絶対殺すからなァ!』
『チビ……やっぱわたしたち、チビなんだよぉ』
『レン、ナニかトリップしてないか?』
『……チビと言われて悦んでしまう、哀しき女なのさ』
『ちょ、フカ!? 違うよ! そんなんじゃないよ!』
『認めろ! キサマは飼われた挙句に自身に酔うロリビッチなのさ!』
『グレ男さん? あとでお話しよ??』
『レンジャーの俺に勝てると思うなよぉ?』
ギャアギャアとスピーカー越しの会話が、草原に響き渡る。
もうね。 忍ぶ気ゼロよ。 説得する気もないよ。 てか、ナニがしたいのよ。
ナンパ? 喧嘩?
"シャーリーは カオスな てんかいに こんわくしている!"
そんなコトしている間にも、装甲車はシャーリーの隣に停車。 やはりバレていた。
シャーリーは自身が持つ銃で、装甲車と戦うか考え……直ぐに諦めた。 無理ゲーだ。
ボルトハンドルを真っ直ぐ引いて、そのまま前に戻す……ストレート・プル・アクションというこの銃独特の機能は、ある意味セミオート並みだとか何とかだが……中の人が出て来たところで、多分勝てない。
装弾数、距離の問題や人数な問題で。 目を付けられた時点で敗北していたのだろう。
駆逐されるのは、わたしの方だったか。
「グレ男! 拘束!」
「イエッサー!」
「くっ」
装甲車からひとりの男が出て来ると、凄い速さでシャーリーに近付き、縄で拘束。
匍匐姿勢のままだったので、そのまま縛られて転がされてしまった。 亀甲縛りで。
手足もちゃんと拘束しており、なんとご丁寧に目隠しまで。
豊かな双山が縄でクッキリ浮き出て更に強調され、行動の一切の自由を奪われた彼女は敵の手に完全に堕ちてしまった。
ナニされるか、闇の世界で怯えながらも、自身の身体を敵に委ねるしかないのだ!
なんという、なんということだ(歓喜)!
「って!? 何よコレ!?」
「ナニだよ。 拘束に決まってるでしょ。 武装解除してたら、もう少し柔らかくしたんだがなぁ。 うん、キミは見栄えが良い!」
全く悪びれなく、寧ろやたらイイ笑顔で視姦するグレ男。
グレ男はグレネード大好きだけど、若いおんにゃの子も大好きなのだ!
「ナニしてんだグレ男! 丁重に扱わないか!」
「女の敵!」「サイテー!」「クズが!」「なんてヤツだ!」
そして再度キレる隊長たち。
すぐさま全員が降車して、グレ男に襲い掛かる。
同じ女として、ウザい男をボコボコにするチャンスとして、部下を躾けるとして。
ところが、襲われた彼は慌てる事なく対応していく。
「イイぞ! 闘いの基本は格闘だ!」
笑顔で言い放ち、アンダーアシストを活用したスライディングをアマゾネス集団にかまし、
「ぐっ!?」「うわっ!」「バカなぁ!」
もれなく全員足をすくわれ、すっ転んだ。
「格闘に心得があるようだな同士! だが俺の方が上だぁ!」
「ぐほぅっ!?」
フカがシャーリーの狙撃銃を拾って、ストックで殴る……というより斬りつけるような動作で襲うも、白刃取りの動作で受け止められて、そのまま手前に引き寄せられた。
手を直ぐに離せば避けられたであろう、腹への膝蹴りをモロに喰らったフカは、腹痛の子みたいにその場にうずくまってダウン。
「缶蹴りしようぜ! お前、缶役なぁ!」
「うぎゃっ!?」
レンは今度は飛び掛かって、身体にまとわりついて、ナイフによる滅多刺しをしようとしたが失敗。
飛び掛かったタイミングでかかと落としをモロに喰らい、またしても踏んづけられた。
「懲りろグレ男ぉ!」
「隊長、ハイ缶踏んだぁ!」
「ぎゃっ!?」
雄叫びを上げて殴りかかるワンちゃんに、足下のレンを踏む……というよりワンちゃんに蹴り飛ばす。
避けるワケにはいかず、ワンちゃんは全身でレンを受け取った。
その時の勢いでワンちゃんとレンは地面に倒れてしまう。
結果、グレ男により小隊は全滅。 いや、死んではいないけれど、勝負的にはグレ男……変態の勝ちになった。
「じゃ、テイクアウトしましょうか。 隊長達も寝てないで乗って下さい。 ババア達もな!」
「な、なに!? 何が起きたの!? いや、起きるの!?」
目隠しで周りが見えず、パニクるシャーリー。
グレ男は醜悪な笑みを浮かべて近寄ると、お姫様抱っこして、グレイプへと乗り込んでいく。 その光景は魔王に攫われていくお姫様である。
「お、おのれ……グレ男! この件が終わったらお仕置きしてやる!」
「協力するよ」「うん」「あの野郎ぉ!!」
ある意味で、連帯力が高まったワンちゃん一行。
今は大人しくグレイプへ戻ってやるが、後で酷いよ? と思いながら。
こんな調子で鬼を倒せるのか。
次の目標は高速移動中の、第2目標である。