グレ男目線。 彼はただの兵士にあらず。
何を知っているのでしょう。
※所詮:あれこれ努力してみたが、結局のところ。
あれこれ考えた結論として。 結局。
※ゲーム:遊び。 遊戯。 試合。
泥塗れのお姉さん、シャーリーを捕まえたので、グレイプの後部座席に座らせて拘束を取り、髪や顔周りを綺麗なウエスで拭き取ってあげます。
心なしか不機嫌な顔が柔らかく。 良いことです。
反抗してくるようならSJ2終了まで拘束してやろうと思いましたが、このままで問題ないですね。
第2目標が爆走の最中、ノンビリは出来ないけど事情聴取といきますか。
他の皆さんは外でノビてますが、一応の形式で。
「よお美人の姉ちゃん! 俺は皆からグレ男って呼ばれてるんだぜ。 そんで君の名を教えて欲しい。 ついでにメアドも!」
面と向かい合い、いつものチャラチャラした態度でやってみますが、怪訝な顔をして口を開いてくれません。
こんな時は怒ってはいけない。
口を割らせるまでに時間が掛かります。 こちらも疲れますし。
代わりに興味のある話を振るものです。
幸い、情報を俺は持ち合わせています。
俺は彼女の本名と職業を知っています。
SJに嫌々参加したのも知っています。
降参せずに、闘う理由も知っています。
放置すればどうなるかも知っています。
誰を撃ち、誰が殺すかも知っています。
隊長が未来を変えたのを知っています。
EDFが異端であるのを知っています。
俺の存在が間違いなのを知っています。
この世界がゲームなのを知っています。
それを軸にして警戒を解きたいところですが……普通なら知り得ない情報をいきなり彼女に言えば、警戒されること間違いなし。
通常であれば見た目や仕草、過去の風景や言葉から探りを入れるところですが。
……いや。 面倒ですから、『答え』を言っちゃいますか。 時間がありません。
「キミ、《リアル》じゃ《狩ガール》だろ? 見てりゃ分かるぜ! ラインなし狙撃が得意なんじゃない?」
そう言うと、目を見開くシャーリーちゃん。
いやぁ楽しい。 楽しいですねぇ。 その反応。
やはり世界を大雑把に知っていても、『コレ』が出来るのは愉快なり。
ですがコレで満足はしません。 俺の責めは続きますよ? 事情聴取なのですから。
「GGOには練習で来たのかな? それとも仲間の誘い? いや、両方か。 特にSJ2参加は大変だったね。 『運悪く』予選突破しちゃって本選への嫌々参加、お疲れさん!」
「……なんなの? あなた」
おお。 やっと口を開きましたよ。 睨みつけられますが、なんて事はない。
本題へ移りますか。
「今は『本物』とだけ。 それよりさ、キミはこの先にいる女を殺そうとしてたろ? 危うく人殺しになるところだったんだぜ?」
お前何言ってるの、な顔ですねぇ。
いきなりですからね。 仕方ないね。
「……ゲームの話。 本当に死ぬワケない」
まっ。 そうなりますよね。
この世界はゲーム。 間違ってませんよ?
特にシャーリーちゃんは、この件でゲームとして割り切るキッカケになってます。
その相手が相手でね、凄い皮肉な話となるワケですが。
でもね。 俺たちEDFは撃たれると痛いんですよねぇ。 死ぬんですよねぇ。
君たち遊びの所為で死ぬんですよぉ?
ピトフーイに関しては、事情が異なりますが。 彼女は『偽物』ですから。
そのくせに死にたがりですからね。 贅沢なヤツです。
「世の中には変なヤツも多いんだぜ」
「貴方達みたいに?」
「そう。 俺達みたいに」
「真顔で肯定するところ?」
なかなか辛辣な子です。
ですが口が軽くなって来ましたね。 このままいきましょ。
「これ、ネタバレなんだけど。 君が殺そうとしている女、ピトフーイはね。 この大会で優勝しないとリアルで死ぬって決めてる狂人なんだよ」
「……嘘」
「嘘じゃないよん? ピトの彼氏、エムからの依頼でね。 俺たちは『ピトとエムの死』を回避する為に奮闘中なのさぁ!」
そこまで言うと、あらら。 シャーリーちゃん黙りこくっちゃった。
闘志も冷めちゃってます。 そりゃあね。 人に銃口を向けるのはアウトな考え方でしたからね。
アバターを殺したところで、罪に問われないと思いますが。
結果論でいうと、そうなのかな?
「まっ! そんなワケでピトを説得するかウチの子兎がボコボコにするまでさ。 殺すのは諦めて欲しい。 でなきゃ」
一拍おいて、
「キミ、人殺しだぜ?」
脅すように、声を低くして言い放つ。
そんなワケ、ない……蚊の鳴くような声で俯くシャーリーちゃん。
身体が子鹿みたいに震えてません?
ねえ今どんな気持ち? どんな気持ち??
別に信じてくれなくても、「ひょっとしたら本当かも知れない」と疑念を抱いてくれれば良かったのですがねぇ。
思っていたより効いてしまいました。
可愛そうだと思いますが、仕方ないね。
正史だと、ピトフーイの狙撃に成功しちゃうんですし。
ピトもピトで、顔上げなければなぁ。 レンの作戦実行タイミングが悪かった所為ですが。
「とにかく。 この件は俺たちに任せろ。 それとコレは他言無用だ」
「……わ、わたしは……どうすれば」
「俺たちと、俺たちの隊長と一緒にいろ。 STORMー01なら何とかしてくれる」
言い終えると、バタンと扉の開閉音。
表でノびてた愉快なフレンズが帰ってきたみたいです。
ふっ。 オシオキに備えねば。
扉を見やれば、フカに開けて貰い、ピンクのウサちゃんが飛び込んできた光景が視界に映る。
作戦は悪くない。 開閉役と飛び込み役を分けるのはね。
だが! レンジャーナメるなよ!
遊びの時間だぜぃ。
「今度こそぉ!」
「シールドトリガー発動! ボインガード!」
「ええっ!?」「なぁっ!?」
落ち込むシャーリーを掴んで、俺の前に素早く立たせる。
飛び込むウサギは空中で止まれる筈なく、そのままシャーリーの胸の谷間へ顔面ダイブ。
胸に付着していた泥が、ベッタリとレンの顔に。 ざまぁ。
「きゃっ」「ぐふっ」
「あらぁ、泥パックかな?」
「うわっ! 女を楯にするとか、容赦ないねグレ男さん!?」
「何とでも言うが良い! 死ぬワケにはいかんのだよ!」
「そろそろ出発する。 グレ男、遊んでないで運転席に戻れ。 報告はそれからで良い」
「了解」
グヌヌ、と悔しがるレンと、ウエスの綺麗な部分で拭き取ってあげるシャーリー。
レンの見た目は幼子だからね。 母性でも刺激されたのかな?
仲良くする分には構わないのですがね。
「何の話してたのさ?」
「イヤラシイ話さ!」
「やっぱ女の敵だわ」
フカに尋ねられたので、答えておく。
嘘じゃないよ。
イヤラシイ話じゃない? リアルの話してたし。
「じゃ、改めて第2目標へ急ぎますか!」
装甲車が相手になりそうです。
回収したアマゾネスの対物ライフルを使わすのも良し。
俺のミニオンバスターで破壊するのも良し。
対抗手段は持ってるんですよ。 今回は。
ないのは。
シャーリーが仲間(?)になりました。