GGDF(完結)   作:ハヤモ

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本物と偽物

 

*彼女の舞台ですか。

でもね。 俺たちには更に大きな舞台が待っています。

ご一緒に如何でしょうか?

 

その前に。 一度死んで頂きますがね。

 

ウサギの為にも。 英雄の為にも。

俺の楽しみの為にも。

 

 

 

 

 

*本物? 偽物?

関係ない。 俺が信じたもの。

それが本物だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピトさん。 大人しく投降してくれません?」

 

 

侍というか、忍者というか。

そんな姿のピトに俺は、一応の形式で説得を試みます。

 

今の彼女はヘッドギアを頭に着けて、バウンドガンを思わす……スラッガーライフルにドラムマガジンを付けた見た目の小銃や光学兵器の剣と考えられる武器で武装中。

腕には装甲板をシールドとして装備。 裏に取手を溶接して持てる様にしているみたいですね。

 

その華奢な身体からは考えられない筋力と俊敏性、判断力を持ち合わせ、高い戦闘能力で狂った闘いをする女。 油断なりません。

それでも殺すのは容易いですが、俺が殺してしまってはリアルでも死んでしまうコトでしょう。

全く。 贅沢な死です。 《グリムリーパー》が聞いたらどう思うことやら。

 

 

「ヤダ」

 

 

そして、迷うコトなく屈託の無い笑顔で言い切られました。

でしょうね。 予想通りです。 それでも時間稼ぎをしなければ。 少し会話を長引かせましょう。

 

 

「理由は?」

「アナタもワンちゃんと同じ本物でしょ? 殺し合えるなんて素敵な機会」

 

 

嬉しそうに口角を上げる毒鳥。

ああ……本物だと気付いていましたか。 それはそうと足が少し曲がりました。

 

跳躍体勢的な感じです。 ダメですねコレは来ます!

 

このドS女め、少し待てないんですかねぇ!?

 

俺は直ぐにコイン大の《一号弾》を右手にたくさん、鷲掴みにして投擲用意。

相手は鬼です。 そんな鬼の貴女の為に丁度良い武器をご用意致しましたよ!

 

 

「捨てなきゃなら」「鬼は外おおおお!!」「っ!?」「ピトッ!?」

 

 

言い始めた直後、鷲掴みにしていたモノを撒くように前方にばら撒きました。 攻撃なんてさせねぇぜ!

 

刹那。 隣のクマさんが庇う様にピトに覆い被さります。 身体が大きいのでピトを床に押し倒す形になり、上手く全体を守れています。 美しき自己犠牲愛。 戦場で時々見た光景ですがいつ見ても良い! 愛は良いね!

 

そしてドンドンドンドンッ! と爆発に次ぐ爆発。 投げたコイン大のグレネードが小規模な爆発を起こしていきます。

天井や床、壁の綺麗な表面を子どもの悪戯のように抉っていき、木屑が狭い共用廊下を舞っていきました。

 

クマさんの背中には直接接触して起爆したものも複数あり、赤いエフェクトが無数に生まれます。 ですがHPは大して減ってないでしょうね。

 

《一号弾》、スプラッシュグレネードは殺傷能力があるものの、元は暴徒鎮圧用だったモノです。 初期型なのもあり、1発の威力は期待出来ません。

爆発の範囲は狭いので、把握出来ていれば閉所でも被爆ナシでいけるのですが。

 

ですので、

 

 

「鬼は外ッ! 鬼は外ォッ!!」

 

 

連続でバッバッと丸まるクマ公に投げつけました。

なんかね、豆をひたすら投げつけて起爆する度にクマさんがビクビクしてます。

もうコレ、イジメの現場です。 でも仕方ないです。 隊長とウサギが来るまで時間稼ぎですよ。

 

ですが、そうは問屋が卸さない。

 

HPの減りが微々たるモノだと気付いたのか、ピトが自分より大きいエムを楯にする形で持ち上げて起き上がりました。

 

うわっ。 やはり力持ちですねぇ。 そして仲間を楯にするとか容赦ねぇ女です。

 

そしてナニするのかと思ったら、光剣を床に挿しこみ、ぐるっと自身の周りをなぞります。

 

そして丸い形にカットされた床ごとストン、と一階へ急降下……といっても、断熱材と二階天井に阻まれ、もう一度やったようですが……ピトとエムは素早く消えました。 ちょっとした手品のよう。

 

 

「おっと」

 

 

慌ててPAー11に持ち替えて銃口と共に床の大穴に近寄り覗き込みます。

ですが既にいません。 見えるのは間の断熱材と一階天井の木材の断層。

そして一階に落ちた二階の床だった丸みを帯びた木材。

 

行動早過ぎでしょ。

 

…………うーん。 関係ないですが、隊長風に言えば「ホルソーで連続抜きした跡」みたいですね。 合成樹脂製可とう電線管やスピーカー機器を突っ込むにはデカ過ぎる穴ですが。

 

ともあれ逃げられました。 そして一階にいるであろう、隊長とウサギがピンチです。

 

逆に言えばチャンスです。

 

 

「毒鳥と熊がソチラに落ちました。 警戒して下さい」

 

 

無線でそれだけ言うと、二階の客室っぽい部屋へ。 綺麗な部屋にはベッドがあったので、遠慮なく横になります。

追い掛けるのが面倒だからじゃないですよ?

 

 

「俺の仕事は終わりだぜぃ」

 

 

後は……若いふたりに任せて。

説得はほぼ無理として、拘束出来ても殺すしかなくて。

 

そして隊長には世界を実感して頂きましょうか。 この世界は所詮ゲームなんだと。

愛する子は、キャラクターなのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『毒鳥と熊がソチラに落ちました。 警戒して下さい』

 

 

大きな音や銃声が何度も聞こえたと思ったら、今度は何かが落ちて来る音が。 グレ男が派手にやらかしたらしい。

そしてヤツの性格だ、丸投げする気だろうな。

 

全く……この世界の件といい、EDFといい、今回の件といい。 問題ばかりで嫌になる。

 

なんて日だ。 228基地で戦闘に巻き込まれた日と良い勝負じゃないか?

 

 

「…………レン。 俺から離れるなよ」

 

 

レンの小さな頭を撫でつつ、俺は言う。 レンは上目遣いでコクリ、と小さく頷いた。 目に不安はなく、決意に満たされている。 そんなレンも可愛い。 故に守らねばならない。

 

生死に関して言えば、レンを殺させず、殺しをさせず、ピトを説得する。

 

状況は酷いが、良い時の方が少ないのだ。 現実と闘わねば。 そして希望は必要だ。

 

戦時中の時のように。 人が毎日たくさん死んで友人や知人、家族を失い、家や町、基地を失っていった日々を思う。

 

屍に囲まれて、自身だけはポツンと地球に立ち尽くし生き延びている。 皆、俺だけを置いて逝く。

 

ついて来てくれた仲間たち、守るべき筈だった民間人。

生き延びても絶望に押し潰されて、精神を病んだ者も数多くいた。

 

俺もそうだ。 英雄だなんだと囃されたが、内心では生きる理由も何の為に闘うのかも分からなくなりそうだった。

 

それでも無線機を握り続けて闘って。 そして絶望の果てに手にした勝利は、歓声も喜びも湧かなくて。

 

代わりに地球に静寂と暗い影を落としていくばかりとなった。

 

僅かに生き延びた人類同士で殺し合いが始まり、絶望の淵に沈む世界に、それでもEDFは今なお、足掻き続けている。

 

この世に生まれたから。 生きている者がやらねばならないから。

 

惰性と偏在的な考え方だとしても、今この瞬間と任務を遂行する事に邁進する。

それが自身の未来に繋がるのだと。 生きる意味だと。 誰が何と言おうが思おうが、今までそう信じてやってきた。

やっていくしかなかった。

 

ならば今はピトフーイを救うのが最優先であり、その一点に集中するべきだ。

 

そして、レンを守る。

 

その為には行動しかない。 街を跋扈する侵略者(フォーリナー)の歩兵部隊に対しても、建物の影からゲリラ的な攻撃を仕掛けたように。

 

 

「……ありがとうね、ワンちゃん。 でもわたしがピトさんを倒す。 そうしないと死んじゃうから」

 

 

物騒な事を言うな。

 

たぶん、ピトは俺たちを殺す気だから「殺られる前に殺る」と言いたいのだろう。

 

ピトは確かに強い。 とても強い。

 

正規のレンジャー程ではないにしろ、多種多様な武器を扱える器用さと身体能力。

生きているのを忘れたいかの様な、狂った戦闘スタイルの女。 敵意を向けられたら……危険だ。

 

『狂った女』の部分では、EDFにもいるがな。 サテキチな科学者が。

 

だが安心させねばなるまい。

 

 

「レンは死なせない。 俺が守る」

「うん、知ってる。 いつも守ってくれてるもんね」

 

 

なら不安がるな。 俺が信用出来ないか?

 

ところがそうじゃないとばかりに、レンは少し寂しい表情をして言葉を繋いでいく。

 

 

「わたしね、ワンちゃんのコト知った気になっていた。 荒野できっと1番に出会って、たくさん話をして側にいて。 なのに今まで疑問に思わなかったの」

 

 

突然、よく分からない話を始められた。

今は戦場であって、悠長に会話している場合ではない。

 

そうでなくても、この話をしてしまっては全てが壊れる気がする。

いつも通りの関係に戻れない。 そんな気がして、

 

 

「その話は後だ。 今はピトを───」

「感覚が希薄なVR世界なのに、ワンちゃんに触れてると温かくて言葉が心を揺らして困る事も多いけど側にいて楽しくて」

 

 

無視して話し続けられた。 まるで死ぬ前の走馬灯を言葉にしているかの様だ。

 

スゥッ、と意識が遠くへ引っ張られる感覚と共に、世界から時間と色が消え失せた。

 

───俺は口を塞いででも止めるべきだったのだろうか。

 

 

「でも思ったの。 なんでそう思えるのか、感じられるのかって。 ねえ。 ワンちゃんって」

 

 

いや。 いつかはそうなる。

 

それが今だった、というだけだ。

 

 

「───本物(ホンモノ)なの?」

 

 

ああ。 やはりこの世界は。

愛する娘たちは。

出会えた仲間たちは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偽物(ニセモノ)』、だったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからなんだ?

 

俺の気持ちは本物だ。

 

例えレンやフカ、ピトやエムがゲーム世界で動く偽物(キャラクター)だとして何が悪い?

 

偽物を愛していたら罪になるのか?

 

偽物だと知って、切り捨てられる軽い存在ではない。 俺にとっては。

時間が戻る。 色が戻る。 口と身体が動く事を確認し、レンの寂しそうな目を改めて見た。

 

 

ああ、答えてやる。

 

 

これからも、この気持ちは変わらない。 その自信がある。 そう言い切れた。

 

 

「俺は本物(ホンモノ)だ。 そして気持ちは変わらない、この先もずっと。 俺はレンを愛しているし、全てが欺瞞だったとしても構わない! 偽物も本物も俺には関係ない!」

 

 

言ってやったぞ。 レン。

これで良いか?

 

 

「ふぇ……あぅ」

 

 

レンの顔が、茹でタコみたいに真っ赤に染まっていく。 大丈夫か、コレ?

 

 

「じゃ、じゃあさ。 わたしの気持ちも本物なんだよね?」

「…………? レンが信じるなら本物で良いと思う」

 

 

レンの気持ちというのは分からんが、信じたものが本物で希望じゃないか?

その中に節度はあれども他人の意見に任せて右や左に流され続けていると、自我は消える。 腑抜けになるとか。

 

ところがレンは、首を横に振るのだ。

 

 

「ううん。 本物から、わ、ワンちゃんの口から…………その! この気持ちが本物だって言って欲しいの!」

 

 

胸板に寄りかかって言ってくる。

いつになく甘えん坊だ。 可愛いじゃない。 仕方ない、言ってあげよう。

 

 

「本物さ、レン。 安心して良い」

 

 

そう言うと。

ふにゃぁ、と表情がユルユルになって、腕を腰に回された。

顔を見られるのが恥ずかしいのか、胸板……というよりお腹に顔を押し付けて隠れるレン。

 

 

「満足したか?」

「うん!」

 

 

頭を優しくナデナデしてあげながら今後を考える。

 

 

 

 

 

……………………はて??

 

 

 

 

 

俺たちは何でログハウスでスキンシップをしているのだろうか?

 

窓を見る。 草原だ。 ピクニックに来たんだっけか。

 

成る程、センサー反応に映る団体様は家族連れかナニかだな!

隣壁にビタビタに張り付いて聞き耳を立てているであろう2名様は、このログハウスの家主か客か。 ナニかを期待しているのか。

 

フッ、ワルなヤツだな。 存分に聞いて、親子愛(?)で浄化されるが良い!

 

刹那。 その丸太の壁から光の棒がニュッと出て来たと思ったら、ぐるっと大きく楕円に。

 

そして、

 

 

「イチャついてるとこ、ごっめーん!!」

 

 

壁を蹴破り、武装したピトが乱入してきやがった。

咄嗟に飛び散る丸太からレンを庇う。 酷い。

娘からのLOVE powerを補給しているというのに邪魔しおって!

 

 

「わたしを無視してイチャつき始めるとか、どういう案件!?」

 

 

見ろ! 俺のレンがビビってるじゃないか! 壁を壊して登場しおってからに!

 

俺はピトからレンを守るように抱き寄せて、背後に隠れさせる。

側から見たら、浮気現場な修羅場に見えなくもない。 だがそんなやましい行為はしてないぞ。

 

 

「うひゃあ!? 違う違うよ誤解だよピトさんだけど約束守ってよ!?」

「早口で言ってるコトが滅茶苦茶じゃん! 全く! これだから最近の若い子は!」

 

 

ああ! 分かった!

ピトも寂しかったのか!

 

成る程、合点がいった。

ならば3人で仲良くスキンシップを取れば良いじゃない!

それならピトもレンも幸せ、俺も幸せ。 世界は愛に包まれた!

 

我ながら名案じゃないか。 そうだそうしよう。 早速実行だ。

 

 

「それよりワンちゃん! レンちゃんとじゃなくてさ、わたしと楽しまない? ワンちゃんにとっても刺激的なんじゃないかな? 本物なんだし!」

「フッ。 やはり盗み聞きしていたか。 そんな悪い娘はオシオキだな!」

 

 

光の棒を振りかざし、向かって来るピトに素手で構える俺。

格闘戦は苦手だが、出来ないワケではない。 俺はP90改をレンに持たせて後方に下げさせる。

 

武器や装備に頼らずにヤらねばならない。 闘いの基本は格闘だとグレ男も言っていた。

ココで道具を使ってオシオキ出来ても、ピトは納得しないだろう。 純粋なチカラの差を見せねばならない。 ケモノの様にな!

 

 

「行くよワンちゃああん! あははは!!」

「来いピト! 悪戯する相手を間違えたと後悔させてやる!」

「…………ピトがその、ストーム隊長に迷惑を掛けている。 すまない」

「…………こちらこそ、ウチのワンちゃんがすいません」

 

 

背後で何か聞こえるが、今はピトに集中せねばならない!

 

ピトは強い。 だがしかし!

本物の愛は時にスペックを凌駕するのだと教えてやんよぉ!




微妙な勘違いと共に、SJ2は閉幕へ漕ぎ出したっぽい?
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