軍曹チーム登場。 そして始まるEDF同士の戦闘。
グロッケンからの脱出
突如、大口径の機関銃やロケットランチャーを装備した二足歩行する搭乗式外骨格及び105ミリ榴弾砲を装備した小型戦車に市街地にて追い回されたらどうするか? そして自身の条件は火器を持たない生身の歩兵であり、味方はいないとする。
この質問に対して、ここで戦いを挑む選択をした者は勇敢と言えば聞こえは良いが、素手で重火器と装甲に覆われた鉄の塊を倒せる力が無いなら自殺者かい? と尋ねることだろう。
では逆に、逃げるか隠れる選択をした者は懸命な判断だ。 戦時の時のように、プライマーの歩兵部隊に襲われた際は、近くの建物や狭い路地裏などに隠れてやり過ごしたり、裏から奇襲を仕掛けたものだ。
これは戦時中、EDF市街戦闘の基本のひとつである。 正々堂々戦ってはいけない。
戦闘は如何に損害を出さずに迅速に終わらす事が出来るかが重要である。
武士の時代ではないのだ。 正面向き合ってやあやあチャンバラはしない。
時には遠距離から一方的に、背中を撃ちまくる。 そして逃げる時は逃げる。
男じゃないとか卑怯だと宣うヤツは、スポーツと間違えているのだろう。 ぜひ戦場に出掛けて来て頂きたい。
向こうも同じ戦法をとるのだ、挙句に火力も兵士の数も圧倒的に向こうが上。 此方がやってはならない理由があるなら納得出来る説明を頼む。 ハハハ。
「………………」
すまない。 話を現実に戻そう。
突拍子もない思考を巡らせたところで、現実は変動しない。 そろそろ向き合うとするか。
ナニやら遠くの方から銃声や爆音が聞こえてくるが、状況把握の為にも起きねばな。 爆発に巻き込まれて気絶したフリをしても仕方ない。
例えその先に、恐れていた事態が起きていたとしても。
この世界が偽物でも、俺は本物だ。 故に逃げられはしない。
さあ、闘えストーム・ワン。 目蓋を開くんだ。
「よぉ、大将!」
「久し振りだな、ストーム・ワン!」
「ワンちゃんと言った方が良いか?」
「ご無事でなによりです」
複数の
「ウワアアアアアーーーッ!!?」
その事実に、仰向けの状態で歓喜と驚愕を混ぜた声を口から垂れ流してしまう。 再会に嬉しくも状況意味プーな事態に恩人らを前に酷い醜態を晒してしまったが、仕方ないと言える。
軍曹! 軍曹じゃないか! また会えて嬉しいです!
そしてナニが起きてるん? 状況不明であります!
「驚かして悪いが、説明は後だ。 立てるか?」
「いぇ、イェッサー!」
そして尋ねられて思考するより素早く起き上がる俺。
身体に染み込んだ行動と恩人に対する敬意からだ。 状況把握は後回し。
コンバットフレームやブラッカーがいるのと、軍曹の鬼気迫る言い回しの時点で危険な状況下であるのは違いない。
この場合、優先するべきは状況を知り得ているであろう軍曹チームと周囲のビークルからの指示。 予想だが戦闘に巻き込まれたと考察出来る。
だとすれば、あの時みたいだ。 また俺は守られているのか、と。
あの時。 開戦した日。 228基地での地下で侵入して来た怪物に襲われて、運良く来てくれた軍曹たちに助けられた時。
そして今も似た状況か。 懐かしい感覚だ。 不謹慎ながらも、少し口角が上がる。
「開戦時を思い出します」
「実際に開戦した。 してしまった」
だがそんな俺に反して、軍曹は悔しさからギリリッと奥歯を噛み締める。 それ以上は口を開かずに、ハンドサインでついて来いとだけいわれた。
こんな軍曹、初めて見た。 考えたくないが、恐らく状況は戦時中並みに最悪か。 発言からEDFによるGGOへの攻撃が敢行されたと考える。
撤退したと思っていたが、思い違いか。 攻撃準備をしていたのだろう。
その攻撃に巻き込まれた俺を助ける、合流する形で軍曹たちが来たのではないだろうか。
ならば、GGOへの攻撃作戦に参戦する流れと考えるのが妥当。 俺もEDFだから。
だがな、そんなのお断りだ。 勇気を持って言うべきものは言わねばならない、レンたちを殺したくはない。 偽物でも愛した者たちであり、ここはその世界なのだ。
「軍曹! 俺はGGOへの攻撃作戦へは参戦致しません! 偽物の世界でも、俺には大切な───」
「そう言うと思っていた。 だから助けに来た!」
「え?」
軍曹達は小走りで移動しながら、俺はついていきながら。 ビークルは歩兵の楯になるべく、先行しながら。
軍曹は感情を殺しつつ、移動を続けながら静かに語る。 その最中でも銃口を前に向けて警戒は怠らない。
見通しの良い大通りは避けつつ、けれど市街戦を想定した設計であるコンバットフレームやブラッカーは、狭い路地裏を難なく進む。 途中で何人ものGGOプレイヤーとすれ違ったが、悲鳴を上げるのと銃声と爆音から逃げるのに必死で気にも止めてこない。
そんな中で俺たちが何処へ向かっているのか。 今は軍曹の言葉に耳を傾けるのが最優先だ。
「俺たちはEDFを抜けた。 今のEDFはプライマーのそれだからだ。 軍人としては失格だろうが……反旗を翻すぞ」
「俺たちは今、反乱軍ってトコだ!」
「孤立無支援の、な」
「ですが対抗手段がゼロではありません」
反乱軍? 孤立無支援? 対抗手段?
気になる点は多くあり、だが聞き返さずに聞いていく。 一体どうするつもりか。
EDFの武器は現在随行しているビークルや、軍曹が所持する……今は、《ブレイザー》ではなく《PAー11》ライフルであるが……それだけではない。 最終作戦仕様の兵器群や決戦兵器と言えるブツもあるのだ。
それこそグロッケンを幾度となく更地に出来るほどの。 戦後のEDFでも、それだけの力は持っている。
更に空軍や海軍、基地や衛星の凄まじい火力を含めれば、到底敵う相手ではない。 仮にそれらの戦力が味方ならば、分からないが。
待て。 味方? 味方なのか?
「気付いたか」
走りながら、軍曹は口を開く。 後姿から表情は見えないが、今度はニッと口角を上げているのだろう。 口調から容易に想像出来た。
いや、しかし。 通信ユニットを所持していても、空軍や海軍等は要請に応じないのではないだろうか。
「俺のビークルを破壊したのは、EDFの重火器と思われます。 EDFは俺を危険因子としているのでは? そうであれば要請に応じるとは」
「全てじゃない。 お前に味方する側とEDFにつく側で割れた。 それは陸海空問わずにだ」
「つまりだ大将、その一部は助けてくれるということよ!」
「陸軍歩兵だけじゃ、EDFに勝つのは厳しいからな。 これで空軍や海軍に多少なりとも対抗出来る」
「いつも通り要請可能です」
嬉しそうに言われても、俺は複雑な気持ちになる。 本格的に戦争状態、いや。 内戦状態ではないか。
舞台がGGOというのは迷惑極まりない話だが、偽物の世界で本物同士が殺し合うとは。
元の世界、戦前にも似た事例はあったようだが、EDFに属していた身としては、同じ仲間を傷付けたくはない。
いや、そもそも殺し合う必要はあるのか。 多くの何故が脳内を駆け巡り、その癖答えは出ない。
俺は、俺たちは仲間同士を傷付け合う為に銃を握って来たワケじゃないだろう!?
「思う事はあるだろう。 だがEDFは本気らしい。 説得しようと試みた者は隊員、プレイヤー関係なく殺害されてしまったからな」
「なっ!?」
信じられない話が連続で飛び込んで来る。 勘弁してくれ。
一体、俺たちはどうなるんだ。
「まるで昔の出来事をなぞっているみたいだろ? ハッ、人類は過ちを繰り返すって本当だな!」
「だが身内だ。 俺たちが止めねばならない、力尽くでも」
「その為には
視界がぐらつくも、グッと足に力を込めて堪える。 堪えてただ走る。 走るしかない。 それが最善だと、自分に言い聞かせて。
どちらにせよ、立ち止まれば死ぬのだ。 爆音と銃声、悲鳴は続いていく。 レンは、フカは無事なのか? ピトとエム達は!?
だが考えるのは後だ!
戦場の空気、嫌でも分かる。 そしてだんだんと小さくなって、静寂が訪れる事も。
だが今は煩い。 良くも悪くも『
「ッ! 12時方向真っ正面!!」
「《ニクスB型》二機!」
正面の道を塞ぐようにして、曲がり角からニュッと二足歩行型のロボットが立ち塞がる。
青く角張ったボディ、両腕のリボルバーカノン、両肩にミサイルポッド。
EDFの普及量産型コンバットフレーム《ニクスB型》。
ああ、くそっ。 本当にEDFは敵になっちまったのか……!
『歩兵は後ろにいろ!!』
そして味方も、完全に相手を敵として見ている。 間髪入れずにブラッカーは戦車砲をブチかまし、マシンガンとロケットランチャーで武装した簡易武装の味方コンバットフレーム《ニクスA型》も応戦。
目の前でEDF同士が交戦した。
その爆音と銃撃音で、ワラワラと周囲に
ああ。 くそっ。 今のビークルの火力と歩兵だけじゃ、この数はどうにもならない。
歩兵とビークルだけなら。
ああくそっ! くそっ!
戦場はいつだって最悪だ。 突然始まり、考えさせてもくれない。
このままでは皆、死んじまう。 軍曹も俺も。
行動を起こさなければ皆の、俺を助けてくれた味方の思いを踏みにじってしまう。
俺の取るべき道はひとつだ。
「ストーム・ワン!」
軍曹が叫ぶ。
ああ、そうだ。 そうなのだ。
戦闘は迅速に対応し、損害を出さずに終了させる。 今まで通りだ。
『こちら地上制圧機DE202。 攻撃目標を指示せよ』
無線機からガンシップパイロットの声。
聞き慣れたそのワイルドボイスも、今は俺に決意を迫る声に聞こえてしまう。
「あぁ、あぁあ、あぁあぁあ! そうだ………そうだッ! 当然、そうするべきですよねぇ!!」
最悪な状況下に思わず絶叫。
同時に
その勢いで雄叫びを上げながら、光学照準器のついた拳銃みたいなビーコンガンを取り出す。 そして前方に群がり始めたコンバットフレームの群れとかつての味方歩兵部隊に、容赦なく撃ち込んだ!
『150ミリ砲、ファイヤッ!!』
刹那。 空から光弾が凄い速度で4発、前方の群れに降り注ぐと、ドゴォンドゴォンドゴォンドゴォンッ! と轟音と共に砂埃が舞っていく。
その衝撃は離れた位置にいる筈の俺たちの足元にもビリビリと伝わってきた。
戦域上空を旋回飛行しているであろう
口径がデカいと威力も高くなるが、ガンシップ内でのリロード時間が長くなる。
今回は航空機搭載限界らしい、150ミリ砲だ。 限界といいつつ180ミリや190ミリ砲もあったりするのだが。
そして、そんなモノを喰らった相手。
ビークルは木っ端微塵になり、歩兵は吹き飛んで消えていた。 みな、死んだ。
ああ、迅速に終わったよ。 これで、良いだろ?
『君の上空には味方がいる事を忘れるな』
無線機から再びの声。
励ましの声も、この時ばかりは喜べない。
敵は何か。 味方は誰なのか。 本物や偽物、異世界での殺し合い。
様々な言葉や感情がグルグルと回っていくが……今はただ、生き残らねばならない。
「……よくやった。 このままグロッケン地下に潜伏する。 そこで情報を整理しよう」
「EDFはグロッケン全てを掌握し切れていないんだ。 そこなら、少しは休めるさ」
俺が気にしないようにと、肩を叩いて励ましてくれる軍曹。 そして部下も気にしてくれる。 皆、良い奴だ。
良い、奴なのに。
俺は軍曹たちのように強くない。
この先、俺は何が正解なのか。 何をして行動して殺さねばならないのか。 それを考えねばならない。
GGOプレイヤーも巻き込まれていきます。