違和感やミスがあるかも……。
スカウト、ブルージャケット、そしてヘリやライサンダー登場。
*狙撃で援護する。
ある日、突如として始まったEDFによるグロッケン攻撃。
その圧倒的な穢れた力に純粋なGGOプレイヤーは悲鳴を上げて侵されるしかなかった。
戦闘ヘリ、戦車、二足歩行ロボ。
歩兵の持つ武装だけでもチートなのに、ビークルが加われば蹂躙される他ない。
対空兵器もないし、GGOの武器で装甲を抜くのは困難。 勇猛果敢に挑む者達も次第に減っていき、今や一方的な殺戮劇。
「なんじゃこりゃぁ!?」
レンは思わず叫んでしまった。 ログインそうそう、銃弾飛び交いロボがドンパチしているカオスな光景を見たら大抵そうなる。
取り敢えず普段の癖か、棒立ちせず物陰に隠れて流れ弾や跳弾から身を守ったのは良い判断だと言える。
取り敢えずの安全を確保すると真っ先に浮かぶ人物、ストーム・ワン。
あの駄犬が何かやらかしたのではと一瞬脳裏をよぎったが、彼はグロッケンを無差別攻撃する輩じゃないと頭を振って否定。
おバカでチーターで最低な男でグロッケンの外じゃ容赦無いけど、グロッケン内で暴れる風に見えない。
そんなチーターを知り合いに持つレンはEDF隊員として何か知っているかもと考えた。
知らずとも、きっとなんとかしてくれる。 そう思わせてくれる。
そして戦火を避けつつ、なんとかワンちゃんの拠点があった路地裏へ到達したのだが、
「っ!?」
あったのはバラバラになった鉄屑の小山。
それはワンちゃんが拠点にしていたビークルだったもの。
その小山から漂うムワッとした熱気が皮膚を撫で、レンは最悪の事態を予想してしまう。
ワンちゃんが襲われた!?
でも誰に?
プレイヤー?
いや、EDF?
ワンちゃんが死んじゃう!
助けなきゃ!
でも本人は見当たらない。 一体どこへ?
「そ、そうだ……無事なら、メールすれば分かるよね。 今どこって」
レンは混乱するも希望に縋るようにウィンドウを開いてメールを打ち始めた。
何もしない、という選択はレンにはない。 安全地帯を探すよりもワンちゃんが心配なのだ。
彼は、EDFは本物だ。 この仮想現実に肉体を持って存在し、ゲーム内での死は文字通りの死を意味する。 SAO事件とは似て非なる状況だ。
大きく異なるのは現実に肉体を持たない者である点か。 ソレを「本物」と明記するのは疑問が多く寧ろレンたちからしたら偽物、近いものでNPCと言う方がしっくりくる。
そのくせ、彼の物品や体温、言動はVRの希薄な五感と大きく違う。 しっかり暖かくして心地良く心を揺さ振る。
俄かには信じ難い話で、レンも気になる部分は多々あれど「本物だ」と思っている。 確証も無しにそう考えるのは、真面目な彼女らしからぬ思考だが、そうさせるのも「本物」故なのだ。
そして特別な感情を抱くのも。
側から見れば「ゲームキャラに恋してる痛い女」に見えなくもないが…………。
そんな彼、ワンちゃんにレンは『今どこにいるの?』とショートメッセージを送ってみる。
お願い、応答して。 そう祈りながら。
その期待に応えるように、返信は送ったほぼ直後に。 少しビクッとしてしまうも、無事な事に安堵しつつ、落ち着いて文面を読んでみる。
「え、えと……『グロッケン地下へ』。 ダンジョンのコトかな」
それ以上の文も情報もない。 慌てて文を打ち込んだのかも知れない。
聞き返したいが、向こうも緊迫していると予想してやめておく。
とにかく、地下へ向かおう。
少なくとも地上よりは安全だろうから、誰かしら避難者がいるかも知れない。
いや、高難易度のダンジョンにいるか、そもそも安全か怪しいけど……。
いや、逆に強力なエネミーがEDFへの防壁として役に立つのか。 いや、でもプレイヤーも襲われて危険だよね?
「悩むな! 行けば分かる!」
レンは自身に言い聞かせて、P90を強く握る。
目指すは地下。 解決するかも分からないし、会えても進展はないかも知れない。
でも今は、ワンちゃんに会いたい。 会いたいよ。
胸を焼く感覚を冷ます為、レンは再び走り始めた。 いつだって希望は必要だ。
そんな時。
上空でバリバリバリと、リアルでも聞いたことのある音。
───悪夢は彼女だけを逃してはくれない。
けれど。
彼女はラッキーガールなのだ。
『こちら《
無線から聞こえる味方偵察兵からの情報に、戦闘服の一部分を青色に染めたレンジャーは思わず舌打ちをしてしまう。
グロッケンを見渡せる高層ビルの屋上から下界を見やるとヘリは何機も見えるが、明らかに一機、形と起動が異なるヘリがいる。
ソレは上から見るとホバリングしているだけであるが、ヘリ下方では砂埃が舞いに舞っていた。
間違いない。 アレだ。
「EF31……対地制圧ヘリコプター《ネレイド》か」
彼は「
ネレイドとは他に何機も飛んでいるEDF主力武装ヘリ《N9エウロス》と同じ戦闘ヘリだが、対地制圧と言う通り、武装は地上への攻撃を主体としたものである。
自動補足式オートキャノンやロケット砲で武装。 地上殲滅能力が高く恐ろしい兵器だ。
ただし、攻撃は下方へ限られる為に上部への敵には対処出来ない。
そう、今の彼のように高度がヤツより上ならば。
「こちら《
彼は手に持つ《ライサンダーF》という大きな物干し竿のような、大口径狙撃銃を構える。
それはEDFが誇る高威力、高弾速のライサンダー狙撃銃の改良強化型。 そのデカさと重量で何処かに置くこともせず、
武器のスペックも彼……《ブルージャケット》のスペックも並みのGGOプレイヤーとは差があるが、撃たれたら死ぬ。 それだけは忘れない。
「各員、指定されたエリア内を飛行する
『イエッサー!』
他のビル屋上にいるであろう、散り散りの仲間に指示を出す。
いよいよだ。 かつての仲間にトリガーを引くのは気がひけるが……仕方ない。
周りの、高度が少し低めの複数のビル屋上からマズルフラッシュが瞬き始めた。
同時に爆音が響き始める。 ローターを撃たれて制御出来なくなったヘリの墜落音だ。
自身もやらねばならない。
彼はスコープを覗くと、無防備に、遠くでホバリングしているネレイドのローター中央に照準を合わせた。
(二兎追うものは一兎も得ず、というが)
獲物は下方で逃げ回るウサギに夢中らしい。
上からの攻撃なんて、全く警戒してないようだ。
「
トリガーを引く。
銃撃音、というより爆音がグロッケンに響く。
有効射程距離1200m以上、弾速5800m/s超えの
一瞬、ネレイドは揺れたと思ったが、けれど墜落はしない。 高威力の弾丸がソレを許さない。
結果、ヘリは空中で爆発四散。
終了させた。
「次だ!」
傲ることなく次の獲物をスコープ越しに見る。 ウサギの進路上にいる、道を封鎖している《武装装甲車両グレイプ》を見据えた。
オートマチックとはいえ、装填機構が複雑で連射は出来ないのが、もどかしい。
だがそれを補って余りある威力と精度を持つ、最高レベルの狙撃銃《ライサンダーF》。
前に使用していた、今は他の仲間が使用している《KFF50》とは全然違う。
この銃は、間違いなく英雄とウサギの助けになる!
もう少し早く手に入れば、
「上から、お前を守るように言われているからな!」
約1秒掛けて装填が済んだ銃のトリガーを再度引く。
ドゴォンッ! と爆音が響くと同時。
スコープ越しの装甲車を揺らすと、次には爆発四散。 周囲にいた随伴歩兵も纏めて吹き飛ばした。
スコープの倍率を減らして、ウサギを確認。 突然の爆発等に戸惑いつつも、止まらずに進行中。
良い調子だ。 幼子に見えるが、しっかりしているのかも知れない。
彼もしっかりしようと、次なる獲物を探す。
「だからよ、期待して良いな」
そして思う。
走り続ける偽物の為に本物を殺しているのだ。 それだけの価値が生まれて良いよな、と。
「俺たちの戦いを無駄にしないでくれ」
そして……銃の構えを解いた。
突然、闘いを辞めたのだ。
目の前でEDFのヘリ《N9エウロス》が至近距離でホバリングしていたから。 機銃の銃口は此方に向けられている。
「あー、誰か俺の《ライサンダーF》。 運良く拾ったら使って良いぞ?」
『え? 隊長、突然何を……ッ!?』
ライサンダーFの次弾装填は間に合わない。 逃げる時間もない。 他の武装も無い。
同じ場所で派手なマズルフラッシュを焚いていたのだ、そりゃバレるか。
『隊長ォッ!』
仲間に格好悪いところを見られたか。 無線で悲鳴が聞こえてくる。
ハハハ……あーあ。
「僅かな天下だったなぁ」
諦めた、けれど笑顔で言い放った刹那。
エウロスからの機銃掃射。 ズガガガガガッと屋上に撃ちまくり、モクモクと埃を大きくさせる。
そして死体が出来たかを確認せず、エウロスはその高機動で後退。 容赦無い追撃のミサイルをブチかます。
そして着弾と同時、屋上は彼と共に爆炎に包まれた。
ビルの上は崩壊。 生存は絶望的。
ただ死に際に放ったのか。
《ライサンダーF》は無傷でビルから落ちていき。
傷も変形もせず、地上へと横たえた。
一方で味方が放った弾丸は、遅れてエウロスに着弾。 バランスを崩し、クルクルと空中で回転すると、ビル側面に激突。 大きな爆炎を上げる。
着弾がもう少し早ければ、彼は助かったかも知れない。 だが味方は悪くない。 それぞれの持ち場に集中していたし、気付いた味方はすぐさま撃った。 それでも……間に合わなかったのだ。
『くそっ……! 各自、任務を続行せよッ!!』
地団駄しても仕方ない。 哀しむのはいつでも出来る。
今は目の前の敵に、ウサギを守る事に集中するのだ。
「と、突然爆発したり、ビルにヘリが激突したり……不良品なのかな? なんにせよ、好都合!」
そして知らずに守られる、
所詮ゲーム世界。 そして死の実感が無い。 そういうことだろうか。
だが撃ち合いは続く。
戦争は始まったばかりだ。
偽物は知らずに守られて。
彼の犠牲を知らずに笑顔走り去る……。