GGDF(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 グロッケンに空爆開始。


連続誘導

 

「うおおお! 離してくれ軍曹ッ! アイツ殺せない!」

「落ち着けストーム・ワン!」

「そうだぜ大将!」

「落ち着きましょう!」

「落ち着いていられるかあああ!」

 

 

現在地、未だ地下。

目覚めれば、ふざけた張り紙をヘルメットにつけられて、書かれた内容から娘が拉致されたコトを知った俺は荒ぶった。

 

あの野郎! 俺の娘に手を出しておいて無事に済むと思うなよ!

 

EDFもそうだ! テンペストミサイル1発では済まさない!

 

そんな感じで激昂する俺を軍曹たちは抑え込んでくる。 流石レンジャーというべきか。 俺がジタバタしているのに、よろけもしない。

 

せめて溢れる感情を発散させようと、俺は一枚の紙を手に取り、軍曹の顔に押し付けて訴えた。

 

 

「だってアイツ、こんな手紙を俺のヘルメットに貼り付けていったんですよ!? 読んでくださいよ!」

「落ち着いたらな」

 

 

淡々と言って、落ち着くように促す軍曹。

 

くっ。 仕方ない。 大人しく言うことを聞いて荒ぶるのを止める。

 

怒りは収まらないが、手紙は是非読んで欲しいのだ。 内容は俺宛だけではなく、軍曹も含まれているのだから。

 

 

「読むぞ」

 

 

軍曹は抵抗しないのを確認すると、手紙を手に取り、部下にも分かるように音読を始めてくれる。 心使い感謝である。

 

 

「ふむ……‘’よぉ、STORMの方々。 俺様、皆のアイドルグレ男~。お前が大切にしている子兎ちゃんは、榴弾兵な俺様がいただいたぜぇ。その代わりに素敵なプレゼントを置いてってやったけど、気に入らねぇからって爆撃で仕返ししようとしても無駄だからなぁ? EDFはお前の戦法をぜぇ~んぶお見通しなんでねぇ、歩兵との連帯をオススメするぜぇ? さもないと、も~っと大事な物を失うことになっちまうぞぉ~? ウヒヒヒッ!”…………だ、そうだ」

「「「ナニその犯行声明!?」」」

 

 

部下がツッコミを入れるのも仕方ない。 こんな某大盗賊みたいな文面なんて、ふざけるにも程がある。

 

そんな文を軍曹が読み上げるのはシュールだったが、構う余裕はない。 早く何とかしなければ。

 

 

「……プレゼントは、出入り口に数ぶん並んでる《フリージャー》のコトか。 遠慮なく使わせて貰おう」

「恐らく。 何故、敵に塩を送る行為をするかは不明ですが」

「爆弾はセットされてないな……よく整備されてる」

「ヤツのコトだ。 気紛れだろうよ」

 

 

軍曹たちが口にしつつ指さす先には、手紙にあったプレゼント。 そこには装甲に覆われた軍用バイク《フリージャー》だった。

 

迅速な行動が求められる際に使用されるビークル。 見た目は戦場での運用を想定しているため装甲に覆われて、前方には内蔵されたマシンガンの銃口が二門、顔を覗かせている。

 

軍用でパワーはあるのだが……操縦は難しい。 暴馬と言って良い。 俺が要請出来るビークルではないのもあり、免許あれども運転は大の苦手。 だが贅沢は言えない。

丁度急いでいるのだ。 使わない手はない。

 

 

「ともあれ、地上に出ます。 俺が空爆、砲撃要請した後、歩兵による攻撃を敢行。 グロッケン奪還を目指します」

「ああ。 ドンパチは任せろ!」

「歩兵のチカラ、見せてやる!」

 

 

そして各員、フリージャーに跨り地上へ戻る。 ここからが本番といったところか。

 

重傷者はライフベンダーで回復を待ち、その後に合流。

 

酷だとおもうが、戦時中の比ではない。

いや……かつての仲間を殺すのだ。 下手すればあの頃より酷か。 それでもやらねばならない。 この世界はレン達の世界である。 EDFのではない。

 

 

「レン……待ってろ」

 

 

アクセルを回し、駆動音をドラムのように響かせて地下空間を後にする。

 

そうして地上に出る前に何度もコケる羽目になるのだが、きっとグレ男の細工に違いない。 俺は悪くない。 尚更許すワケにはいかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が諦めて静寂が支配する首都、グロッケン。

 

先程までいたGGOプレイヤーはフィールドに脱出したか、建物内部に隠れたかログアウト。

 

銃撃音は時々聞こえるも、それはGGOの銃ではなくEDFの銃撃音。

建物や路地裏をクリアリングして、発見したプレイヤーやNPCを射殺しているのだ。 今やプレイヤーは一方的に駆逐されるだけの的と化している。

 

それでもログアウトせず、グロッケンに留まる者たちは少なくない。

EDFがやべぇチート武器と技術を行使するヤツらだと実感した彼らだが、全く歯が立たないワケじゃないのも知ったからだ。

 

GGOの武器が全く通用しないワケじゃないなら、裏を突けば倒せるんじゃないかという淡い希望を抱き、潜伏して隙を伺っている。

例え刺し違えても、ヤツらに1発喰らわせたいのだ。

チートで調子に乗る荒らしを純粋な力で黙らせる……ゲーマーの格の違いを見せたい、EDFへの怨みを晴らしたい、組織的なチーターに何処までやれるか試したい等という欲求が大半ではあるが。

 

結局はゲームとして、彼らは自分なりの楽しみ方を見出しているに過ぎない。 グロッケン奪還だとか平和の為だとか大それたコトは考えてない。

相手は命懸けで銃を握っている異界の戦士だが、こちとら遊びで銃を振り回すアバターだ。

それで腕や足が吹き飛ぼうが死のうが仮想世界の話でしかない。 ゲームの中でヒトが何人死のうが殺そうが所詮ゲーム。 殺人の意識は皆無である。

それでいちいち反応していたら、逆に頭オカシイと思われるだろう。 現実と仮想を区別出来ないあぶねーヤツだと。

 

 

「よぉし。 隙を伺って皆殺しよ」

「逃げる時、ブービートラップを仕掛けてやったぜ」

「良くやった!」

 

 

そんな訳で。

 

グロッケンの路地裏で楽しそうに会話するプレイヤー達。 最早、EDFのグロッケン侵攻はイベント感覚だ。

 

とても戦場の雰囲気ではない。 その辺はプレイヤーによるのだが、少なくともそういうヤツもいるのは確かだ。

知らない人がGGOにログインしたら、やはりイベントの類かと思うだろう。 『宇宙人が攻めて来た! 人類は応戦せよ!』みたいなお題かと。

 

 

「しっかし、EDF同士でドンパチしていたのに、突然終わったな」

「何だったのかねぇ。 お陰で俺らは逃げられたが」

「今いるヤツら、なんか同じ顔に見えないか? クローンみたいだよな」

「そうか? 同じ格好しているから、よく分からなかったよ」

「しかも歩き方などから、みんな女と見た!」

「みんなだ? 男が大半のGGOだからか? 花を添えて花畑にしよーってか。 というかよく分かったな変態め」

「ココは硝煙漂うGGOだぜ! そんなん必要ねぇ! 撃って撃って撃ちまくれ!」

 

 

そして次には弾をばら撒こうという時。

 

あの音が聞こえ始めた。 それは空から聞こえる、あの例の音だ。

 

ゴオオオオッという、ジェット機の音。 ヘリのバリバリとは明らかに違う、世界全体、遠くまで響き渡るような音。

 

 

「お、おい! 空から妙な音が」

「それならヘリか?」

「ち、違う! この音は……空からの音は……ヤツしかいない!!」

「う、うわあああああ!? 逃げろ! 逃げろぉ!」

「ヤツだ! 《かの者》が来たんだぁ!!」

「死神だぁ……俺たちを殺しに来たんだぁ!」

 

 

先程までのワクワクモードは一転。

 

ゲーム世界だと理解しながらも、その恐怖にすくみ上がり、涙さえ浮かべながら蜘蛛の子を散らし始めたプレイヤー。

新規には分からないその音は、航空機の音にしか聞こえない。 そして次にはヒューッという口笛のような音。

 

 

「なんだってん、だ……?」

 

 

そうして空を見上げた新規プレイヤーは、ピシリと石化。

 

そこにはEDFの重爆撃機、《フォボス》が編隊を組んで飛んでいたのだ。

 

その数10機以上。

 

何処かでストーム・ワンが《爆撃プラン10》を要請したのである。

 

プレイヤーの頭上を越えた先、EDFが集中していたエリア。 そのグロッケン中心部を目掛けるようにして定められた座標と突入角度で飛行、突入。 そしてその通りに下方に光の玉を大量に落とし始めた。

それらは帯を描き、やがて地面やビルに当たると激しい爆音を轟かせる。

 

もれなくビルはドミノ倒しの如く倒壊し、地上は爆煙に包まれ、衝撃はグロッケン全体に響き渡った。 早速、地獄絵図と化す。

 

 

「爆撃!? いやいや銃の世界だろココ!? なんで航空機が……いや、ヘリもだが、アレよりヤバいだろアレ!」

 

 

興奮と混乱で叫ぶプレイヤーだったが、ヤバいコトは止まらない。

 

 

「見ろよアレ!?」

「ほ、砲撃だぁ!?」

 

 

今度はプレイヤーが逃げる先の四方八方から放物線を描いてくる光の玉が。 やはり同じように帯を描いて落ちてくると、広範囲に着弾。 逃げるプレイヤーをも巻き込み、更に建物の崩壊は進んでいく。

 

SJ2でもあった《迫撃砲 集中運用術》である。 いつのまにか発煙弾が投げられており、ソレを確認した砲兵が、そのポイントを中心に目掛けて迫撃砲で榴弾を撃ちまくっているのだ。

どこに砲兵隊がいるんだよ、とかいうツッコミは無しである。

 

 

「何処に逃げれば良いんだぁ!?」

 

 

敵も見えず、見えても銃弾届かぬ高所や遠方。 そもそもヒトですらない兵器群。

一方的に攻撃される恐怖にアワアワしているプレイヤー。 しかしあんなの挨拶だとばかりに、更なるやべぇモノが飛んで来た!

 

 

「あ、ありゃあ……ミサイルか!?」

 

 

猛爆撃、猛砲撃の雨の中、それでも生き延びた幸運なプレイヤーがプルプルと指を空へ向ける。

もう空なんて見たくもないが、悲しいかな、人とは見てしまうのだ。 希望でも絶望でも。

 

どちらにせよ、確かにソレはあって飛んで来ていた。 数は20発以上だろうか。

 

それを見たプレイヤー達は愕然としてしまう。

 

 

「あ、ああ……ミサイル、だろう……あれは」

 

 

もう逃げる気力もなくなり、そのミサイルが飛んで来るのを呆然と見るのみ。

やがてそれらは地上に、それぞれ微妙に弾着地点を変えながらも激突。 グロッケンに爆炎を上げていく。

 

ただでさえ少なくなったプレイヤーが、更に木っ端微塵にされていった。 中にはリスポーンして即死んだ者もそれなりに。 酷いリスキルだった。

 

そんなミサイル群は潜水艦から放たれた《ライオニックミサイル》だ。 ビーコン誘導に従って軌道を描いて着弾していっているのだ。

 

だが「まだまだぁ!」とばかりに、空から悪魔は飛んで来る。 建物は殆ど残っていないというのに、容赦無い。

 

もうやめて! グロッケンのライフはもうゼロよ! そういったとしても止まらない。

娘を拉致られ、バイクで何度も横転してEDFが暴れてるという現状のストレスに理性が飛んでいるのだ、かの者は。

 

どうせこの世界は偽物なので、プレイヤーは死なないしグロッケンも運営が何とかするだろうな感覚だ。

プレイヤーはゲーム感覚で戦っているが、ワンちゃんも別のベクトルでゲーム感覚だった。

 

 

「あ、あぁ……まだ、くる」

「いやああ!」

「もうやめてぇ!」

 

 

狂った空からは、更に狂ったかのような……ビルくらいの大きさはあるデカいミサイルが飛んで来た。

極秘建造されたバレンランド基地から放たれた強力なミサイル《テンペストミサイル》だ。

その巨体にしてはユックリ飛んでいるように見えるので、「大丈夫?」なツッコミもあるかもしれないが……ソコはEDFの謎の技術ということで……。

 

それを見て女々しく悲鳴を上げるは生存者たち。 中にはこの世の終わりだという顔をし、絶望し、ハルマゲドンかと嘆いていく。

 

それはEDFなのかプレイヤーなのか知らないが、恐らく両方だろう。

 

ワンちゃんにとってはどっちでも良いが。 さっさと終わられたい。 EDF死すべし慈悲は無いのだ。

 

 

「ああ……GGOは終わりだ」

「俺、GGO辞めます」

「銃棄ててALO行くわ。 自然に癒されてくるわ」

「取り敢えず《死に戻り》は確定だな」

 

 

そうして、死に際に悟りでも開いたような穏やかな顔を浮かべて、残りのプレイヤーは巨大な爆炎に飲み込まれていったのである。

 

この日。 グロッケンは《かの者》と呼ばれる死神により住民もEDFも殲滅され、跡に残るは瓦礫の山……いや、巨大なクレーターだけとなった。

 

この話はGGOのみならず、ネットなどの情報網で急速に拡がり、それは他ゲームユーザーにも知れ渡り、挙句に日本国内のみならず海外、北米サーバー等にも伝わって野次馬が大量に日本サーバーに押し寄せて大祭りとなる。

 

そして有志により、ストーム・ワンなる人物がこの中心人物だと判明する。

ナニもソイツは娘の為に、圧倒的な絶望に抗っているという。

この合ってるのか微妙な情報からロマンや同情、好奇心で彼に加担するプレイヤーが増加。

祭りといえば神輿じゃねと、彼を担ぎ上げ始めるのであった………………。

 

後の世に《GGDF事件》として語り継がれるVR事件は動画投稿サイトに一部始終が投稿、それはうなぎ登りに再生数を伸ばしていきメディアも取り上げて、トンデモナイ大嵐に発展していくのだが。

 

EDFもワンちゃんも、そんなモン知っちゃこっちゃねぇと戦場へと身を投じて行く。

ただ、被害者は娘を拉致された彼や英雄とコトを構える侵略者、グロッケンやプレイヤーだけでなく。

 

運営も被害者である点は忘れないであげて欲しい。

 

 

「グレ男はどこだ! どこにいるぅ!? レンジャーは徹底的にグロッケンを掃討しろぉ!! ウィングダイバーとフェンサーが到着したら、駐屯地を襲撃するぞゴルワァ!」

「落ち着けストーム・ワン!」

「そうだぜ大将!」

 

 

どうなることやら。




次回、駐屯地攻略へ。
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