GGDF(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文。

ストームチーム出揃い。 そして本部登場。
明かされて行く今回の事件の真相。 そして全て終わらせるべく、皆は動き始めます。


駐屯地攻略作戦・第三段階

 

『こちら死神部隊。 救援に向かう。 持ち堪えて見せろ』

 

 

絶望に染まりかけた戦線で、確かに聴こえたワイルドボイス。

 

それは幾度となく窮地から救ってくれた男の声。

そして死地となりうる無数の修羅場を潜り抜けてきた英雄の声。

 

挑発的な言葉に孕んだ優しさと覚悟を感じ取れば、プレイヤーも隊員も俺も、気合が入るというものだ。

 

 

「うおおお!」

「まだだ! まだ終わってなーい!」

「救援が来るまで持ち堪えるんだァ!」

「EDFッ! EDFッ!!」

 

 

士気は上々。

 

よし。 早くストライク バルガを無力化し、歩兵の援護に戻らねば。

 

俺は背中のスラスターを吹かしまくり、手のグラップルをグルグルと回転して見せる。

 

殺ッちゃうよ!? ヤッちゃうよ!? という意思表示をしているのだ。

 

向こうはビビったのか、少し後退。 間合いを取り始めた。

 

だが逃がさん! 全ては愛娘とEDFとグレ男に説教垂れる為だ!

ああ、あとは地球とか人類とかGGOとかグリムリーパー隊とか軍曹達とか……色々だ。

 

とにかく!

 

 

『馬力も装甲も向こうが上! 破壊は困難! だが、負けん!』

 

 

すると、それを見ていたプレイヤー達から応援メッセージが!

 

 

「おお! ダサいロボも奮い立ってるぜ!」

「チートの分際で負けたらダサいぞ!」

「そうだぞ、チート野郎!」

「パパ、負けたら縁切るかもよー?」

「負けたらレンちゃんは、私が貰うからねー!」

『みんな、応援ありがとう!』

「隊長……いや、何でもない。 頑張って下さい」

 

 

皆の気持ちをひとつにし、今、バルガの技を披露する時!

 

 

『皆が期待する技で行くぞ!』

「おお! ロケットパンチか!」

「おっπミサイルかな!?」

「ネタが古くね?」

「すいません、皆様おいくつでしょうか?」

「急に敬語やめろや!」

 

 

ふっ。 無線越しに賑わってるな。

だが残念ながら違う。 バルガは元は作業用クレーン。 飛び道具は無い、 挌闘技が主だ。

 

だが無力化するにはコイツを倒さねばならない。 物理的にな。

 

その為の、ひっくり返す技を見せようではないか。

 

俺はストライクに近寄り、両手のグラップルを脇に差し込んでから下から上へと、相手の胴体ごと持ち上げるように動かした!

 

 

『喰らえっ! ちゃぶ台返し!』

「「「まさかのご家庭技!?」」」

 

 

皆の歓声を聞きつつ、ストライクを下から上への動作でひっくり返す!

 

質量あるストライクは後ろ向きにバランスを崩し、そのまま地面に影を落としながら、駐屯地の敷地に倒れ込む。

 

爆音かと思う程の轟音と砂埃を舞い立てて、ストライクは仰向けに。

丁度、シールドベアラーや敵コンバットフレームや建物が下敷になったが、安心するのは早い!

 

 

『この程度で壊れないのは知っている!』

 

 

俺は相手が起き上がるより前に、側まで近寄ると右足でストンピングをかます。

ドゴォンッ! とデカイ音と共に、バルガ越しに寝る地面が陥没。

バルガの大質量を喰らい、ノーダメージとは流石にいくまい。

 

だがそれでも壊れないのを知っている。

バルガはタフだ。 特にストライクは破壊困難な程に。

 

 

『うおおおお!』

 

 

だからこそ、覆い被さるように倒れ込んでやった。

 

それだけではない。 それでも馬力のあるヤツだ、除けるだろう。

そうはさせまいと、ヤツの背中にあるロケットのようなスラスター目掛けて、抱くような形で思いっきりグラップルを刺して破壊してやる。

 

これは、起き上がる時の補助となるからだ。 コレが壊れてしまえば、起き上がるには腕や足の力のみになる。

 

だが同等の質量であるバルガに覆い被されて、腕も固定されれば思うようにいくまい。

 

馬力では負けているだろうが、少なくとも時間稼ぎくらいにはなる。

 

 

『これで起き上がれまい』

「本当か?」

『ああ、たぶん』

「まあ……信じるよ」

「流石パパ!」

「《かの者》がデカブツを倒したぞ!」

「今の内に駐屯地に行くんだぁ!」

「突撃ッ! 突撃ィ!」

「着剣せよ!」

「あ? ねぇよ、そんなもん」

 

 

よし。 バルガはここまでだ。

 

シールドベアラーは運良く破壊した。

他にも何台かあるから、要請による攻撃は未だ困難だが、バルガという大きな障害は取り除いた。

 

プレイヤーも次第に流れ込む筈だ。

 

あとはコンバットフレームを倒さねば。

 

そしてレンを救出して、EDFをボコボコにしてグレ男に会って説教だ。

 

そう思ってバルガから降りた矢先、ピトから無線が。

 

なんか、少し笑ってる気がするんだが……。

 

 

「ワンちゃん? ウチのレンちゃんがロボの下敷になったんじゃない?」

「え、ナニそれヤバいじゃん。 俺、ストンプまでヤッちゃったんだけど」

「あー、ワンちゃん。 半殺しじゃ済まないかもね。 『ワンちゃん、一回死んでみる?』って言われるかも」

 

 

なんて事だ。

 

更なる苦難の訪れを感じ、思わず頭を抱える俺。

 

戦闘中、レンの姿は確認出来なかったが、本当に下敷にしていたら大変だ。

ピトの言う通り、ヤバい目に合いかねん。

 

バルガは何度も言うが、47メートルの巨大人型クレーンで質量が大きい。

空爆も砲撃も効かなかった巨大怪生物を倒せる程の力を持っている。

歩兵と比べると像と蟻の差があるだろうか。

 

そんな質量が倒れてきたら……うん。

小さなレンは即死だろう。 レンに限らないが、うん。 死ぬ。

 

そして《死に戻り》した時、俺は濁った目を向けられながら殴る蹴るの暴行のち、ピーちゃんの錆にされかねないのだ。

 

レンはキレたらヤバい。 俺は知っているんだ。

 

 

「な、なあ……ピト。 一緒に謝ってくれない? いや、くれませんか?」

「えー。 じゃあさ、私がワンちゃんを殺せば問題ないよね!」

「問題大アリだ!? 何故俺が死ねば解決するんだ! そうなりたくないから、言ってんの!」

「レンちゃんに殺されたくないんでしょ? だから善意の第三者の私が殺してあげるの。 そうすればワンちゃんはレンちゃんに殺されずに済むし、私はワンちゃんを殺せて大満足! win-winじゃん」

「どこが!? 死にたくないんだよ俺は!」

 

 

ピトよ。 確かに殺しに来ても良い様なコトを約束したけどね、コレとソレは違くない?

 

レンのみならず、ピトからも殺されそうになる中、もう1人の愛娘、フカから通信が。

 

おお。 助けてくれるのか!

 

持つべきは心の友、そして娘!

 

 

「まあまあ。 私が一緒に謝ってあげるからさぁ、きっと許してくれるって!」

「助かるぞ、フカ!」

「お礼はねぇ、裏路地にあったグレランとぉ、榴弾全部とぉ、酒場のツマミ全種類を二つずつとぉ」

「はっはっはっ! 良いぞ! クレジットが許す限り!」

「やった! パパだーい好き!」

「……隊長。 いや、何でもない」

 

 

エムがまた、ナニか言いたげだったが、まあ良いか。

 

潰れた(かも知れない)レンの問題は解決した事にして、さっさと戦闘に復帰しなければ。

 

周りを見やれば、駐屯地の敷地であるコンクリートの大地。 後ろで抱き合って倒れているバルガの所為でヒビが大きく広がっている。

その人工の大地の上を、まだ敵コンバットフレームが3機、無数の円盤や沢山の随伴歩兵と共に動いているのが見えた。

新兵狩りに忙しいらしい、拳銃だけで突撃してくる者達に容赦なく弾丸をばら撒いている。

 

敵歩兵の武装は……多砲身のアサルトライフルだからM3かM4。

たぶん、M3改修型の《M3レイヴンSLS》だ。 M4は問題があったからな。

だとすれば総合的なステータスはM4を上回っていると見るべきか。

精度は高くないが、弾幕を張れるから危険である。 早く片付けないと突撃兵に被害が広がってしまう。

 

しかし……敵歩兵連中、何故ヘルメットもサングラスもしてないのか。

皆、白い肌に白い髪の毛、ショートヘア。 女性で濁ったような目をしているし、顔も同じだ。

前に上層部から聞いたクローンなのだろうが……彼女らに感情はないのか?

なんだか、ただただ命令で動く機械人形に感じて不気味だな。

 

いや、今は後回しだ。 敵なら倒さねばならない。 でなければ死ぬのはこちら側だ。

 

 

「私語は終わりだ。 グリムリーパー隊が到着するまで、皆は戦線を支え続けて欲しい」

「ワンちゃんは?」

「一旦、後退する。 皆の足並みに揃えたいからな」

「ワンちゃんなら余裕っしょ」

「馬鹿言うな。 空爆も砲撃も効かないシールドの中で、しかも敵陣地の中じゃ活躍出来ない」

 

 

悩むように言いながら、俺は後退するべく踵を返す。 リムペットガンで無双出来るほど、俺は強くないからな。

 

そんな時。 バリバリと複数のヘリの音が。

敵さんは更なる増援を投入したらしい。

空を見れば大きなヘリのシルエット。

 

《エウロス》や《ネレイド》もいるが、

 

 

「(HU04ブルートSA9》か!」

 

 

3人乗りの大型武装ヘリコプター、空の要塞も確認できた。

 

《エメロード》や《FORK》、《ネウリング自走ミサイル》といった対空兵器がないからな。 ヤバいぞ。

 

だから空が安全というわけではないが、見渡しが効くし、左右に外付けされている武装の《ドーントレスSA重機関砲》の威力は危険だ!

 

ネレイドも無誘導弾を投下しての地上爆撃や自動捕捉による機銃掃射能力等、対地戦闘に優れている。 歩兵隊が一掃されてしまう。

 

一方でブルートは大型なので機動性は悪く被弾率は高いが装甲は厚い。 プレイヤーの小銃ではどうにもならん!

 

ソイツらはシールド内にいる俺を無視すると、そのままプレイヤーの群れの方へ。

 

 

「くっ! 歩兵が危ない!」

 

 

慌てて、ガンシップにバルカン砲を要請するべく、上空を過ぎ去るヘリにビーコンガンを発砲。

しかし、射撃下手な俺は外してしまった。 くそっ! このままでは被害が出る!

 

 

「ヘリがそっちに向かった! 皆、遮蔽物に身を隠せ!」

「うん?」「へ?」

 

 

プレイヤーにヘリの相手はキツイ!

遮蔽物に身を隠してやり過ごして貰わねば。

 

無線越しに警告を出すのが精々か。

 

 

「援護に向かう! 耐え……」

 

 

刹那。 俺の背後にて爆発。 何が起きたか理解する暇なく、その衝撃に転がされてしまう。

 

 

「ぐっ……今度は何だ!」

 

 

痛む身体に鞭を打ち、起き上がってみれば……

 

 

「《プロテウス》に《タイタン》か、今度は陸を動く要塞とくるか」

 

 

目の前には歩く要塞こと、プロテウス。 そして巨大戦車タイタン。

そして《ニクス アサルト》及び随伴歩兵が銃口を向けていた。

 

プロテウスは特殊装甲板に覆われた、白銀のボディで、4人乗り。

相変わらず頭部と腕部が無い胴体に足が生えてるかの様な見た目。

その左右に《バスターカノン》と片側にミサイルポッドがぶら下がっているという重火器祭り。

タイタンは全長25メートルの大型戦闘車両で、EDFの重戦車。 カラーリングはデザートタン。

主砲はレクイエム砲。 ビルを吹き飛ばす威力がある。 副砲が砲塔上部に二門、そして車体側面には、横の敵に対応する為のグレネード射出機。

 

砲塔は全てこちら側に向いている。

 

 

「俺も随分過大評価されたものだ」

 

 

なら、期待に応えられるように、せめて生き延びて時間を稼がねばな。

 

《パーソナルシェルター》を地面に設置したのと、連中の砲口が火を噴いたのは、ほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某レンジャーは拾ってきた《ライサンダーF》などで、ウィングダイバーは《クローズ・レーザーF》などで、フェンサーは《YH7散弾迫撃砲》や《FGX高高度強襲ミサイル》や《35ミリ ガリア重キャノン砲》などで狙撃部隊より少し前でプレイヤーの援護をしている。

 

本当は軍人が前に出るべきかも知れない。 だが本物を前に出すリスクが高かった結果、こうなった。

 

《オペレーション・オメガ》ではないが、《死に戻り》が出来る以上、彼らには時間稼ぎの駒として役立って貰わねば。

 

隊員としては複雑に思う部分はあれど、任務に集中してプレイヤーの援護を続ける。

駐屯地へとストーム・ワンは駒を進めたようであるし、後の障害は歩兵や円盤、コンバットフレームか。

 

コンバットフレームは厄介だ。

歩兵が立ち向かうには無謀である。 プレイヤーは特に。

 

だから、敵がプレイヤーに夢中になっている間に、隊員らが狙撃して、コンバットフレームを倒す算段の筈なのだが……。

 

 

「射線に出るなぁ!」

「くっ! 高機動でミサイルが当たらん!」

「シールドベアラーが邪魔!」

「ああ! 新兵も巻き込んでしまった!」

 

 

この始末。

統制が執れていないのと、野次馬で集まった人達が邪魔だったり、そもそも弾が相手に当たらなかったり。

 

だったら前に出ろよ、という話だが。

主に徴兵組の彼らは、折角戦争を生き延びたのに、また危険に晒されるなんて……というか、異世界で死ぬのはイヤスギィ! という思考もあって、後ろでチマチマやっていた。

 

 

「た、隊長の命令だしな! ココにいるしかないしな!」

「ああ。 前に出れば、多少は良くなるだろうが、命令だし!」

 

 

とまあ、ストーム・ワン隊長の命令を都合の良い言い訳として芋っている。

皆が皆ではなく、軍曹達のように前進している者もいるのだが。

ただ、ワンちゃんは彼らの考えを知っていて、ソレを汲み取って安全な後方に配置していたりする。

そうでなくても、最も有効なEDFの兵器を扱える隊員らを危険に晒すこともあるまい。

おバカなワンちゃんだが、隊長経験故か、その辺を読み取る事は出来るのだ。

 

 

「むっ、アレは」

「敵の増援か」

「《HU04ブルートSA9》か。 3人乗りの大型武装ヘリで最終作戦仕様」

「ドーントレスSA重機関砲を装備しているな。 貫通力のある徹甲弾を使う」

「ふむ。 空から歩兵の援護か?」

「乗ってるのは誰だろうな」

「まあ良い。 敵なら撃ち落とすまで」

 

 

安全な後方にいる彼らは、呑気に観戦しつつ、狙撃を再開する。

 

ただ、彼らも新兵であり、腕はワンちゃん並みかそれ以下。

残念ながら、ヘリの上や下、左右に弾が抜けていくばかり。

 

 

「もっと射撃練習をしておくべきだった」

 

 

嘆いても仕方ない。

下手な鉄砲、数撃ちゃ当たると撃ちまくる。

そんなやり方に言いたい者もいるだろうが、それもまた、戦略だ。

 

…………そして、前ばかり夢中になる彼らの後方を敵軍が取ったのも、ひとつの戦略だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上を見ろ!」

「ヘリだ!?」

 

 

士気が上がったのもつかの間、ヘリ部隊に襲われたプレイヤー達。

遠方からミサイルを撃たれては、爆炎に飲み込まれ、赤いレーザーサイトが伸びてきたと思えば自動捕捉による機銃掃射で一掃され、デカいヘリの左右側面から出ている重機関砲にはドカドカと撃たれて砂埃の中へ消えていく。

装甲に覆われているブラッカーは、なんとか105ミリ榴弾砲で抵抗を試みるも、空中を高速で動くヘリに当てられずに攻撃を受け続けて耐え切れず大破、《ドーベル隊》含め、壊滅状態と化す。

 

 

「ドーベル隊、もう駄目です!」

「うわあああああ!!」

「ヘリを何とかしろよ!」

「出来ないから困ってる!」

「撃ったって、墜とせねぇよ!」

 

 

小銃ではヘリを墜とすのは困難だ。

何人かは僅かな希望的観測に縋り、空に撃ちまくってみたものの、高度の差で弾が届かないか、届いても表面を火花が散るばかりでビクともしない。

 

だが悪夢は更に過激を増して、彼らを襲う。

 

なんと、背後からも撃たれ始めたのだ。 前のめりに倒れ始める味方を見て、皆は更にパニックに。

 

 

「背後からも撃たれてるぞ!?」

「フレンドリーファイヤか?」

「違う! 敵だ!」

 

 

見やれば、いつのまにか敵歩兵やアサルトに囲まれているではないか。

いつの間に回り込まれたのか。 今、プレイヤーは挟み撃ちを受けており、混乱状態と化している。

 

 

「狙撃部隊は何をやってるんだ!?」

「背後から来たんだ。 やられちまったに決まってるだろ」

「ブルージャケット応答せよ。 くそっ、駄目か!」

「フェンサーやウィングダイバーは!?」

「……駄目だ、そっちも連絡取れん」

「あいつら新兵だったな」

「ああ、こりゃ《アイアンウォール作戦》を思い出すよ」

 

 

上がって落とされる絶望を味わうプレイヤーの皆。

 

隊員からしたら、またこのパターンかと呆れ半分。

それでも絶望は何の役に立たないのを知っているから、戦闘を放棄したりしない。

 

 

「誘導兵はいなのか!? 援護してくれ!」

「ストーム・ワンとは連絡が取れません。 駐屯地の敷地に侵入したらしいですが」

「歩兵だけで何とかしろってか。 手厳しいな」

 

 

混乱していく戦場。

パニックになった新規プレイヤー等は敵味方問わず発砲し、それが更なる混乱と被害を招いてしまっている。

 

味方の、数少ない重火器の類を持つ……グレランを持った金髪チビなんて彼方此方から悲鳴に似た指示を飛ばす味方の無線に混乱しているらしく、取り敢えずニクスに榴弾を撃ち込んでは、周囲の味方をも吹き飛ばしてしまっている。

 

これではグリムリーパー隊が来る前に戦線の維持もあったもんじゃない。

 

 

「どちらにせよ、逃げる場所もない。 戦うだけさ」

 

 

だが前線の隊員らは違う。

覚悟なんて、とうの昔から出来ている。

 

徹甲榴弾を撃ち出せる、緑のゴツい小銃《ミニオンバスター》を握りしめて、隊員はニクスに銃口を向けた。

 

武器は対コンバットフレーム用として開発された銃とはいえ……歩兵で挑むのは無謀でしかない。

 

だが、やるしかない。 唯一、有効そうな武器は俺たちしか所持していないし、使えない。

 

戦時もそうだ。 戦える者は銃を取って足掻いて、足掻いて、足掻き続けて。

 

そして今日まで生き延びた。

 

今もまた、そうするだけだ。

 

 

『よくやった民間人!』

 

 

そんな時だ。

 

無線から聞こえるDE202パイロットのワイルドボイスが聞こえたのは。

 

民間人。

 

ああ、開戦時を思い出す懐かしき響き。

 

あの時も助けて貰ったな、と。

 

 

「ストーム・ワンじゃねえな」

「新たな英雄の誕生かぁ?」

「入隊するなら熱烈歓迎だぜ」

 

 

隊員は、この後起こるであろう展開を予想して思わずニヤリと笑う。

刹那、目の前の《ニクス アサルト》が突如として爆発四散、吹き飛んだ。

 

間髪入れず更に3回、連続で爆音と共に砂埃が舞いに舞った。

 

それはドゴォンッ、と爆発が起きたかのような爆音と煙、そして地面を大きく揺るがす衝撃である。

 

グレネーダーの仕業じゃない。

EDFの兵器によるものだ。

 

 

「ガンシップの《150ミリ砲》か!」

 

 

歩兵が持てない、圧倒的で暴力的な力は周囲の地面と強化外骨格を世界から爆煙と共に消し去るには十分過ぎる威力を誇る。

やがて煙が晴れれば、そこには鉄屑と大きなクレーター。 全ては一瞬の出来事。

 

 

『わ、ワンちゃんの代理で援護する!』

 

 

そして今回の民間人と思われる声が聞こえた。

幼くも、中性的な声だ。

 

生で聞いたことのある隊員は、ああと納得したものだ。

あの子だ。 ピンクの戦闘服を着た、小さくて可愛い女の子だ!

 

 

「コンバットフレーム撃破記録更新だな」

「今度会ったらサイン貰うわ」

「さすが、大将の娘だな」

 

 

一部、若干の間違いを孕ませつつも戦場の絶望は薄まっていく。

混乱は続くが、希望が見えてきた。 隊員らは気合を入れる為にお決まりの言葉を叫ぶと、ビークル狩りを開始。 プレイヤーの援護を再開する。

 

 

「幼女が頑張ってんだ! 俺たち男が弱音吐いてどーすんだぁ!」

「テメーら気合い入れろぉ!」

「何としても、戦線を維持すんだ!」

「EDFッ! EDFッ!!」

 

 

互いに励まし合い、負けるもんか、引くもんかと気合いを入れ直す皆。

 

銃撃音と爆音は未だ続く。

だがいずれ終わる。

 

さっきの、本部の無線を聞いた者なら、尚更に事の末を見ようと思うだろう。

無線持ちじゃないと、分からなかっただろうが。

 

ピンクのチビは、その無線持ちのひとりだった。

そして全て片付けるべく、看守に貰った慣れない発煙筒と無線機を握って、戦場を駆け回るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し戻り。

 

レンは危うくバルガの下敷きになりかけつつも、なんとか生き延びた時間にて。

彼女の足の速さと運の良さが幸いし、死ぬ事は回避したものの、下手な銃撃戦より怖かったかも知れない。

 

仮想空間でも怖いものは怖いんです。

この時の子兎は半泣きだった。 だって巨大なロボットが倒れてくるんだもん。 仕方ないじゃん。

 

 

「……後でワンちゃんに文句言おう」

 

 

安心半分、怒り半分にP90 PDMを構え直して、以後の行動を考えるレン。

 

もし下敷きになって死んでしまったら、グロッケンの方にリスポーンしてしまうだろう。

そうなっては、折角駐屯地内で暴れるチャンスを失ってしまう。 そうならず良かった。

 

遠い先、ワンちゃんがバルガから降りているのが見えたから、レンは取り敢えず合流しようかと思って一歩踏み出す。

駄犬だけど、戦場において最も頼りになる人だろうから。

そしてなにより、側にいたい。 地下でお互い半殺しにあったけど、生きていて良かった。

 

 

「取り敢えず、ワンちゃんと合流して……それから……ん?」

 

 

考えていると、バリバリという音が。

銃口と共に空を見上げれば、何機ものヘリがプレイヤーの群れへと飛んで行くではないか。

 

 

「ヘリ!? 味方なワケないよね」

 

 

明らかにマズイ。 グロッケンでもヘリは見た事があるが、プレイヤーにヘリの相手はキツ過ぎる。

 

急いでワンちゃんに合流、指示を仰がないと!

 

そう思ってワンちゃんの方に向き直ったら、またしても衝撃的な光景が。

 

巨大なバトルマシンと戦車がワンちゃんに押し寄せるのが見えたと思ったら、次の瞬間には容赦のない砲撃を始めたのだ。

 

 

「ワンちゃん!?」

 

 

爆炎に包まれるワンちゃんを見て、悲鳴にも似た叫びを上げてしまう。

いくらワンちゃんでも、あんな猛砲撃を喰らっては生きてるとは思えないからだ。

 

策もなしに、思わず駆け寄ろうとするレンだったが、

 

 

「待ちなさい」

 

 

若いお姉さんの、静止の声が聞こえたと思ったら、低空を高速で飛んで行く複数の人影が視界に入り込む。

 

 

「え?」

 

 

反射で空を再び見上げると。

飛行ユニットをつけた、SFチックな装備を身につけた女性たちが、横一列に、綺麗に過ぎ去っていくのが見えた。

 

まるで、戦隊ものが飛行ショーを見ているかのよう。

 

 

「ここは《スプリガン》に任せて貰おう」

 

 

彼女たちはレンの頭上を通過し、そのままワンちゃんを襲っているマシンへと飛翔。

次の瞬間には、手に持つ光学兵器で攻撃を開始。

 

突然の出来事に、一瞬棒立ちしてしまうレンだったが、

 

 

「手の掛かるお嬢さん方を援護する」

「何かとウサギとは縁があるな!」

 

 

考える暇なく、今度はオッサンの声が複数聞こえたと思えば、レンの横を黒い影が幾つも過ぎ去って行く。

 

一瞬見えた片手に装備するシールドに書かれた、大きな『G』の白文字を辛うじて読み取れたレンだったが、次から次へと起きるイベントについていけず、頭の中はパニックだ。

 

 

「え? え!?」

 

 

その黒い影も、ワンちゃんを襲うマシンの下へと行ったかと思えば、次にはドッカンドッカンと激しい戦闘音。

マシンの装甲が弾け飛び、戦車側面から射出されたグレネードが周辺に爆炎を起こし、それでも怯む事なく彼らは戦闘を続ける。

 

やがて、強そうだったマシンが派手に爆発して鉄屑に。

光学兵器はまだ分かるが、黒い鎧をつけた人達が使う……槍みたいので、マシンをどうやって壊したのだろうか。

ナニが何だかさっぱりだ。

 

 

「相変わらず、ぴょんぴょん跳ね回って狙い辛い。 背後のチビを見習え」

「《グリムリーパー》の腕が落ちたんじゃないか?」

「ぬかせ」

「あー、喧嘩で忙しそうなところ悪いが、助かった。 礼を言う」

「ひとつ貸しな」

 

 

ワンちゃんを助けて、普通に会話している辺りは味方らしい。 たぶん、EDFだ。

 

物凄い強さを誇る部隊のようで心強いが、合流するタイミングを見失った。

これ、普通に声掛けて良いのかな。

 

 

「あ、あのぉ」

『反目は止めろ! 今は全員でひとつの部隊だ!』

「うおっ! 本部か!?」

 

 

勇気を持って声を出したら、今度は別の声……無線に遮られた。

なんか、不幸が続いてない? ステータスの幸運値、もっと上げないとダメなのかな……ハハ。

 

かくして、伝説のストームチーム(軍曹は前線でドンパチ中)は、子兎そっちのけで会話を続けていく。

 

一応、戦場なのだが、本部と連絡が取れていなかったぶん、色々話をしたいのだ。

 

特にGGOに長く居たワンちゃんと、

 

話したくても、話せなかった本部は。

 

 

『ああ、ストーム・ワン。 そして全EDF隊員。 すまない、『反乱軍』に拘束されていたのだ。 今は戦略情報部と共にグロッケン地下に活動拠点を移し、通信している』

「反乱軍? 俺達のことか」

『いや、現状ではクローン側の事だ。 一部の上層部がGGO世界を知ってな、我々の……EDFの意向を無視し始めた。

そしてクローンやドローンを生産、実戦データ収集と《人の声が響かない地球》の一時放棄を決定、この世界の戦略的価値を見出しての攻撃、制圧を試みた形だ』

「EDFが地球を守る事をやめて異世界侵攻。 何の冗談だ?」

『ああ。 そして、この世界がゲーム世界なのは知っている。 そしてプログラムの、システムの世界だともな。

だが、だからこそなのだ。 我々がGGOのシステムにない事を出来る、干渉されない事を知った者達は、逆にこの世界のプログラムを此方側が書き換える事で、大地や大気、生命を創り、そして我々の地球に転送する事で無尽蔵に物資や生命を再生し、やり直せるのでは、とな』

「……………………………………………………『神』にでもなったつもりか?」

「笑えるな」

 

 

このやり取りの無線はレン含め、全プレイヤーが聞いていた。

何を言ってるのか、レンや……いや、多くの人は理解出来なかったであろう。

EDF隊員もまた、デカいスケールの話についていけずに、それでも何とか銃を握る力だけは落とさずにいた。

 

 

『だがそれは、やっている事は……侵略なのだ。 EDFは侵略する為に銃を握ってきた訳ではない!

我々は確かに先の大戦で多くの愛する人や物を失った。 戦後も絶望は続いている。

だが! 異世界を侵略して、プログラムによる創造で、世界を再構築しようなどとは望んでいない!

我々は、我々の世界の地球は、未来は自分達の力で切り開く!

そして悲劇を生んだプライマーと同じ様な道を歩むつもりは毛頭無い!』

 

 

本部の訴えは、いつのまにか、皆が頷き、耳を傾けている。

本当の話なのかは分からない。 でも、その熱のある言葉は『本物』の言葉なんだと皆は感じている。

 

 

『もし同じ意見の者は、我々に、EDFの旗の下について来て欲しい。

遊撃部隊ストーム。 その為には君達の力が必要だ。 ついて来てくれるか?』

「鼻からそのつもりだ」

「デカい貸しにしておく」

「EDFは地に落ちたと思ったが、また最高の舞台を用意してくれたな」

 

 

この流れで、戦場を後にする者はいないだろう。

ログアウトしようと考え始めていた無線機持ちのプレイヤーは聞いて踏み止まり、再び銃を握った。

 

この戦争の行く末を見届けよう。 その義務が、皆にある気がした。

 

 

『これより、GGDF作戦の指揮を執る。 支援要請はストーム・ワン及び装備を託されたというGGOプレイヤー、レンに任せる。

…………このふざけた戦争を終わらせて、地球に帰るぞ! 良いな!』

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