GGDF(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。
ストームチームが奮闘する中、グレ男は首謀者探し。


裏方で周回者は終戦を目指す。

 

「アンタが来る事は予想出来なかったわ」

 

 

薄暗闇の空間に辛うじて光を放っているのは両サイドに並んだ、全体がガラスで出来た養成ポッド。

エメラルドグリーンの液体に満たされた中身は、眼を閉じた女性の裸体が入っている様に見える。

 

そんな異質な空間で対峙するは、開けた白衣の実験着を纏う《謎の女科学者》。

20代後半のお姉さんの印象で、大人の雰囲気を醸し出している。

そんな彼女の見た目はショートヘアに両耳にピアス。 豊満な胸と脳髄まで響く甘い声は女としての魅力を、異性に伝えるには抜群だった。

 

 

「本部と情報部を逃したのも、アンタの……グレ男さんの仕業でしょ?」

 

 

そんな魅惑で妖しい女科学者は、目の前にいる……《PAー11》アサルトライフルの銃口を向けて来るレンジャー隊員……グレ男に子供の様に、楽しそうに問いた。

その相手となる、薄暗くとも分かるグレ男の赤い眼は不気味に輝いていて、空間と相まって狂気に感じて仕方ない。

 

 

「その方が楽しいだろ?」

 

 

いつもの、ふざけた調子で返答する彼。 けれど銃口はブレる事なく向け続けられており、目は少しも笑ってない。

彼は今、真面目なのだ。 SJと異なり遊んでる場合ではない。

そもそもココはGGOではないのである。

 

 

「楽しい、かぁ。 私のところに来たのも?」

「愚問だな。 そうに決まってる」

「ポッドの全てに《CX特殊爆弾》が設置されてるのも?」

「もちろんさぁ!」

「施設の中心部に《C70爆弾》を幾つも仕掛けたのも?」

「見てたん? エッチだねぇ!?」

 

 

言葉こそふざけてるも、怒声を上げる彼。

その余裕の無さそうな表情を見た女の方は嬉しそうに口角を上げた。 さも、悪戯が成功した子供のように。

状況がこんなんでなければ、その笑みに多くの男は堕ちるだろう。 グレ男やワンちゃん等の変人は例外として。

 

 

「いいえ? 貴方の事だから、きっとこうかなと予想しただけなのだけど」

「カマかけたのかよ」

「悪い?」

「……遊んでる場合じゃないんでね、本題に入ろうか」

「がっつく男は嫌われるわよ」

「元より嫌われ者だ」

 

 

やれやれ、とウザく両手でアピールする女に、今すぐでも発砲してやりたい。

ただ、聞く事が多々あるし、逆に敵と決まった訳ではない彼女を殺しては『終戦』が遠ざかるのは確実だ。

だからグッと堪え、それでも引金の『遊び』を殺すのに留まった。

 

 

「今頃自己紹介する事も無いだろうがな、確認をとるぞ。 お前は《神をも滅する光の槍》の開発に関わった《謎の女科学者》だな?」

「謎、ね。 その方が魅惑があって良いか」

「質問に答えろ。 じゃなきゃ撃つ」

「おー怖い。 そう、そうよ。 私は《スプライトフォール》の女科学者。 ストーム・ワンの無線に出てる人。 満足?」

「ああ。 俺は、そんなお前さんに質問があってココに来ている。 何としても答えて貰うぞ」

 

 

尚も銃口を下げずに言葉を繋ぐ。

一拍する暇もなく、矢継ぎ早に質問していく辺りから、やはり余裕の文字は無いようだ。

 

 

「まず、今回のGGO世界への侵攻についてだ。 お前はどこまで知ってる?」

「あら、《周回プレイ》したのに知らないの?」

「その言葉が出る時点で、俺の事を知ってるんだろ。 逆に俺が知らないモノすらな。 だから今は、お前が教える側だ。 質問する側じゃない」

「はいはい、分かったわよ」

 

 

はぁ、とワザとらしく、つまんなそうに溜息を吐く女。

これが平時だったら、軽口を言い合った挙句に、一緒にワンちゃんを虐める遊戯のひとつやふたつはやっていたであろう。

2人は「楽しむ」という意味なら、協力し合える性格なのだから。

ただ今は、無限ループから抜け出すべくガチで銃を握っているのだ。 楽しむ余裕は無い。

 

 

「ストーム・ワンを転送装置の実験台にしたらね、偶然GGOへ繋がったの。 それは知ってるでしょ?」

「ああ。 お前さんの腹いせでな」

「彼は有名人だからね、直ぐに上層部は転送装置の件とGGO世界の事を知ったわ。 そしてストーム・ワン救出を表向きの理由にし、GGOの調査を開始。 そしてプログラムの世界である事を知った。 そんで今の戦争を始めたって感じ。 理由は分かるでしょ?」

「知ってる。 神様ゴッコでもしたいんだろうよ、上の奴らは」

「やっぱ貴方、上層部と連絡を取り合っていたのだから多少は知ってるでしょ」

「詳細は知らん。 連中の居場所も正体も」

「じゃあ、知りたいのはソコかしら」

 

 

教えましょ、と両手を上に上げて降参のポーズを取りながら、今度は冷めた目で口を開く女。 グレ男は微動だにせず、答えを聞くべくただ耳を傾ける。

その答えとは、グレ男にとっては少し驚くものであった。

 

 

「日本の関東の外れ。 STORMー02の勤め先だったところ。 バルガを保管していた基地のひとつ、STORMー01が民間人のとき、訪れた事があるところ」

 

 

まさか。

 

 

「《228基地》。 ココよ」

「マジかよ」

 

 

それは様々な意味での始まりの地。

嫌な記憶の方が多い場所。

 

そして今いる場所。

 

転送装置が地上の敷地に設けられた所でもあるが、どうやら、移動の手間が省けたようだ。

 

 

「ならお前は、今回の開戦の首謀者か」

「なんで、そう思う?」

「この基地にいるのはお前かクローンの大群だけだ。 GGOに派兵された看守の……幼稚な思考を出来る失敗作《M4レイヴン》持ちクローン以外に、動ける奴はいないからな」

「あの子は成功作よ、感情を持ってるけど」

「どっちでも良い。 どうせクローンがいようがいなかろうが、GGOは隊長と子兎達が何とでも解決する。 問題は『地球側』なんだよ。 それで?」

「それで……残念ね。 私は首謀者じゃないわ」

「じゃあ、他に誰がいるんだよ」

「とっくに会ってるじゃない。 今はいないけど」

 

 

今は、いない。

 

その言葉に嫌な予感がする。 今は、というのはさっきまでいた、ということ。

さっきまで確かに人はいたのをグレ男は知っている。 だがそれは『味方』の筈だ。

そう……思っている。

だが現実とは無慈悲で、真実とは残酷だと再び彼は思い知らされる羽目に。

何度も同じ絶望を繰り返されて、慣れたつもりだったが、アレは底を知らないらしい。

 

 

「戦略情報部の、少佐の部下よ」

 

 

周回プレイしてきたが、まだ知らない絶望があるとは。 だが味わってる暇はない。

グレ男は舌打ちをすると、銃口を下げる。 正直言って時間が惜しいのだ。

その悔しがる様子を面白そうにクスクスと笑う彼女は、さぞ愉快な事だろう。

 

 

「ふふっ、知らずに自ら逃がしたなんてね」

「神探しの次は神気取りか? 捨てたもんじゃないな、この世界も。 チクショウが」

「グロッケン地下に行ったみたいね」

「また地下か。 なら俺の戦争は地下で始まり地下で終わらせるとしよう」

「1人で行く気?」

「ならお前も来い」

「私の仕事じゃないわ。 ココで《スプライトフォール》の要請無線が来るのを待ってる」

「勝手にしてくれ。 俺は1人でも行くぞ」

 

 

グレ男は早口で会話を終わらすと、早歩きで転送装置のある地上へ戻っていく。

何としても、隊長が現れたこの世界で無限ループを終わらせたいのだ。

その事情をどこかで知った女科学者は、去っていくグレ男の背中を見るも同情はしない。 ただ、

 

 

「設置した爆弾の片付けは、全てが終わったらヤるつもりかしらね」

 

 

ボヤきながらも、背後の端末に手を触れる。

彼女なりにも、この状況を愉しむべく、少し手を加えようというのだ。

 

 

「元凶は私の転送装置だし。 ちょっと手伝っても良いかしら」

 

 

そして操作を終えたのか。

くるり、と向き直ればグレ男は既にいなく。

代わりにポッドからの排水音が闇の空間に響き渡ると同時、数少ない光源が失われていった。

 

 

「さて……ちょっとグロッケンにお使いにいってきてね。 本部は事情を知っているから大丈夫よ」

 

 

ベチャ、ベチャ、と。

 

ポッドのガラスがスッと魔法の様に消えて、前のめりに倒れてく中身の人形達。

それらの肌はシミひとつない色白。 光の無い世界では良く目立つ。

髪は飾らないショートヘア。 濡れてシットリとしていたが、その一本一本は細く艶がある。

スレンダーな身体は決して貧相ではなく、だけど細く触れたら崩れてしまいそうな……だけど女性を感じさせるくびれのラインや上品で柔らかそうな胸の膨らみはハッキリしていた。

皆、同じ動作でぬるりと立ち上がると、同じ様に目蓋を開ける。

 

相変わらず、生気を感じぬ表情と濁り目だけは欠点だ。

 

 

「グロッケンに行ってきて、戦争を終わらせて来なさい。 EDF本部からは承認済みよ」

 

 

女はそれだけ言うと、グレ男と同じ様に地上へと去っていく。

無線を待つ気はないらしい。

 

 

「美味しいトコだけ貰いたいしぃ? 面白いモノは生で見たいし?」

 

 

後に続いて、人形達がついていく。

予め頭に突っ込まれた情報を元に、戦闘服や銃火器を取りに行くのだ。

そこには何の感情も無い。 ただ与えられた任務を遂行するのみ。 必要なら自爆もするだろう。 そんな、人の形をしたナニか。

 

 

「……その生産も、打ち止めたいし」

 

 

女科学者の疲れた声は、ただ闇へと吸い込まれるだけ。 聞こえている筈の人形達は、何も答えない。

ただ、与えられた任務の為に歩くだけ。

 

心を不要物のゴミとし、効率と仕事のみが存在意義で正義だった戦前の社会の代理人としては正解の製品かも知れない。

けれど、社会システムが崩壊した今の世界でその需要は望めない。

治安維持に従事する兵士としての要素や子を成せる意味では有用な存在ではあるが。

 

やはりというか、紛い物とは生理的に悪感を感じる部分がある。

女は偽善者ではない。 科学者ではあるが、効率を無視して素直に、その思考を受け入れて拒否せず……そして、ソレをさせる戦争をさっさと終わらせたいと素直に思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか戦略情報部の少佐の部下……あの女が敵だったとは。

 

戦時は隊長専属の作戦のサポートをやっていましたね。

頼りない発言が目立ち、末期戦では絶望に押し潰されて、歪んだ希望に縋って。

そして「神を探しています」という、何の宗教かっていう発言をするに至っていましたが。

 

戦後は正常運転に戻ったと勝手に思っていましたよ。

でも人類同士が殺し合う暗黒時代に絶望したんですかね。

 

今は神探しから神気取りを始めましたか。 冗談キツいです。 メンタル弱過ぎです。

いや、まあ、仕方ないと言えば仕方ないのですが。

 

戦時に流された放送の中には、プライマーに媚びるかの様なモノもありました。

 

人間は強者が現れると、その存在を畏怖し赦しを乞い、闘うのを止めて自分だけでも助かろうとする者もいます。

 

それは醜い姿ですが、否定する気はありません。 種の存続や家族の命を助けたい人もいた事でしょうし。

 

そも、死にたくないと思うのは生きているからこそです。 正しい思考と言えます。

 

ただ、プライマーに関して言えば、根絶やしにするつもりだったでしょうから、意味はありませんでしたね。

人口だって終戦した時には1割しか残らなかった訳ですから。

 

今回は同じ人類だって、ハッキリしてます。 言葉は通じます。 命乞いはしませんが、行って説得するつもりです。 「戦争止めて地球帰るぞゴルワァ!」とね。

 

戦場そのものは、隊長達が終わらせてくれるでしょう。

 

俺は裏方の、糸引く神気取りの馬鹿を潰します。

 

ですから。

 

EDFのみんな。

 

 

「今度こそ戦争を終わらせる! そして地球に帰って! 知らない未来を見に行こうぜ!」

 

 

GGOグロッケン地下。

隊長を半殺しにし、子兎を虐めて遊んだ場所へ舞い戻った。

転送装置とアンダーアシストの力をフルに使えば造作もない事。

 

 

「全員動くな! 俺はEDFだ!! 抵抗するなら射殺する!」

 

 

未だ鉄屑が転がる地下。

でも空爆に耐えたらしい、この薄暗い空間。

 

俺は室内戦闘用の、爆発しない、EDF主力アサルトライフル《PAー11》を構えて突入。

今回、知らない展開につき『コマ送り』はナシです。

 

そんな空間には数十分前に救助した本部の面々と……情報部の人たち、女性が複数。

何やらPCやケーブル、簡易椅子や机を並べて即席の事務所風にしている。

 

皆、制服組ですな。 驚いて此方を向いていますね。

驚いてないのは……中年に近い男と明らかに年若い娘、か。

男は本部のお偉いさん? たぶん、日本支部の指揮官です。 予想ですが。

 

そしてインカムを付けて座っていた小娘はというと、

 

 

「バレちゃいましたか。 クスッ♪」

 

 

聞いた事ある声で、けれど何処か狂気を孕ませつつ。

瞳孔を見開いて立ち上がり容赦無く《アシッドガン》を向けて来やがりました。 え、何処で手に入れて隠し持ってたのアンタ。

 

そして、何の悪びれもありません。 人も絶望に染まって、それでいて尚、希望に縋ってこうなるならば……俺も経験者なので同情はしておきますが……。

 

でもね。

 

 

「上等だぞこのアマァッ!!」

 

 

俺は死にたくないですよぉ!

 

俺は容赦なくトリガーを引きました。

片や酸を、片や鉛玉をぶっ放し。

 

そこに護衛なのか、奥の闇からゾロゾロとクローンどもが。

《M3レイヴン》改修型ですね、多砲身から瞬時に大量の弾丸を吐き出してきて、弾幕を形成してきやがりました。

俺も他の制服組と同様に素早く伏せます。 刹那、頭上を無数の光線が過ぎ去り、PCや机や椅子が穴を開けつつ吹き飛んでいき、火花があちこちから散り始めます。

ですが。 そこは戦時に襲撃されても尚、生き延びた経験か。 皆、意外と冷静です。

まあ、被弾率は低くなりました。 緑の酸はマズイですが。

 

 

「アハハハハハハハハハッ!」

 

 

人形もろとも殺しても良いですかね。

あの小娘の狂った笑い声、不愉快です。 特に戦争の首謀者だと知ったからか。

 

全く。 あの弱気な子が随分と出世しましたね!?

 

そんな時。

 

入ってきた、地上への出入り口から別のクローン部隊がゾロゾロと綺麗な横隊でやってきましたよ。

 

ヤベエ、挟み撃ちかと思ったのも束の間。

 

俺ではなく、相手のクローン部隊を撃ち始めました。 わお。 まさかの味方。

そして疑問に答えるかのように、女から無線が。

 

 

『やほーグレ男。 貴方1人じゃ小娘の人形遊びは苦痛かと思ってね、私のトコの人形を送っといたから。 後は上手くやってね。 あとM4の看守と私もソコに乗り込むから。 着くまでには掃討しといてねぇ!』

 

 

ホント。 あの女は何処まで知っていて味方なんですかね。

《スプライトフォール》にしか興味が無いかと思えば、手伝ってくれるし。

まあ、良いです。 どっちにしろ全部終わらせるべく銃を持ってるのですし。

 

 

「グレ男。 君達がココに来るのは知っていた。 そして首謀者もな。 ボロが出ると思い、様子を見ようとしたが……これでハッキリした。 頼む、ヤツを拘束し戦争を止めてくれ」

 

 

やれやれ。 指揮官からも声をかけられました。 もうね、やるしかない。

 

 

「仕方ない! 少し人形遊びに付き合ってやんよ!」

 

 

助けたヤツに殺されたくないし。

本当は撃ち殺したいのですが、拘束しろとの命令ならば、何とかせねば。

隊長も知ったら哀しむでしょうからね。

 

俺は《PAー11》を握りしめて、再び引金を引く。

フルオートによる無数の弾丸は、空中で何発か相手の弾丸とぶつかり、交差し……。

 

取り敢えず人形を何人か無力化したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本部からの連絡が途絶えたぞ!?」

「だからどうした? 俺達は仕事を全うするだけだ」

「けっ! お嬢さん方を世話する手間が増えた。 ひとつ貸しな」

「レン! 慣れないだろうが、引き続き無線機と発煙筒を使ってガンシップや衛星、潜水艦や空軍、砲兵隊と連帯を取るんだ! やり方は教えた通りで良い!」

「えっ、ワンちゃんは!?」

「俺はグロッケンに戻る! 心配するな。 直ぐ戻るつもりだ!」

「了解。 前線は任せろ!」

「安心して行って来い、大将!」

「兎の世話が1匹分増えた。 貸しにしとく」

「その間、頼りにしてるぜ! 《子兎》ちゃん!」

「……ねぇ、小さなお嬢さん。 スプリガンに入らない?」

「ごめんなさい。 それはちょっと」

「……そうか」

「ザマァねぇな兎ども!」

「ああ、1発だけなら誤射かもしれない。 スピアが当たっても怒るなよ」

「反目は止めろ! 今は全員でひとつの部隊だ!」

「…………大丈夫かな、この人たち」

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