GGDF(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文。 間違いがあればすいません……。
プレイヤー視線など。 EDFは圧倒的。 でも全く抵抗出来ない訳ではなさそう。


EDFとの火力差

EDFとの火力差

 

戦闘停止前。 つまり、ワンちゃんが戦線をほっぽり出して仲間任せにした後、グロッケン地下に移動中兼、グレ男が地下でドンパチしていた時。

 

ワンちゃんの代理となった子兎は、慣れない無線機を腰につけて、ビーコンガンを両手で握り、なんとかコンバットフレームを一機撃破した。

その結果、プレイヤーの士気は上がり、少なくとも前線を支える時間は出来たかに見えたが……。

 

 

「うああ!? 最前線のモヒカン連中が全滅しちまった!」

 

「駄目だ! あのロボットが倒せない!」

 

「小銃じゃ無理!」

 

「装甲車とヘリ、誰か何とかしてくれよ!」

 

「出来ないから困ってる!」

 

 

プレイヤー達は尚も困っていた。 士気が上がっても形成逆転するとは限らない。

 

というのも、荒野では2メートル以上はありそうな人型ロボット……搭乗式外骨格のコンバットフレーム《アサルト》が両手それぞれに持つマシンガンで暴れ続けているのだ。

左右に滝のように金色の粒を排莢すれば、次にはプレイヤーを片っ端から光の粒子に変換。 戦場はキラキラと輝き、冬のイルミネーションを見てるかのよう。

 

そんな中でも制圧されてたまるかと、抵抗を試みて銃撃を喰らわせるプレイヤー。 けれども表面装甲に火花を散らすばかりでビクともしない。

遠方から対物ライフルやグレネードを試した者もいたが駄目だった。 装甲車……《グレイプ》も同じく。

ヘリに至っては高度があるし、機動性があって当てるのは難しい。 弾が届いても表面に火花を散らすばかりなのは一緒である。

 

とにかく、皆の持つアサルトライフルやサブマシンガン、拳銃でどうにかなる相手ではない。

 

 

「女によってたかって虐めるなー!」

 

 

そんな中、荒野の最前線。 金髪チビのフカ次郎はそれらの集中砲火を喰らっていた。

いくつもの閃光弾らしきものが、フカの隠れる窪み周辺に無数に着弾。

止まらぬ飛翔音と着弾音は常に耳元で羽虫が飛んでいるかのような不快感を与え、大量の砂埃を舞わせて視界はゼロに等しい。

近くの味方もゼロ。 フカしかいないとなると、当然敵は一点に集中。

彼女を煽るようにして、土のシャワーを浴びせ続ける敵の軍勢。 ヘルメットに小石が当たるたびに軽い衝撃が頭に響く。 服の内側にも土が入り込み気持ち悪い。 戦闘服は表も裏も薄汚れてボロボロだ。 心も折れそう。

 

 

「誰か助けてヘルプミー!」

 

 

悲鳴にも似た、救援を求める声は、銃撃音と飛翔音、爆音に掻き消されて響くことはない。

仮に聞こえても、皆は手一杯で身動きが取れない。 取れてもフカの下へ辿り着く前に弾幕を潜り抜けられずに銃殺されるか爆死するだろう。

 

 

「もっと後ろに陣取るべきだったなぁ」

 

 

砂埃越しに見える、GGOの狂った空を見上げて、今度はニヒルな笑いを浮かべる。

 

だが言った通り、もっと後ろからグレランで援護すれば良かったのかも知れない。

だが考え無しに最前線にいたワケじゃない。

 

最初は自身の小ささを生かし、即席の蛸壺……グレネードランチャーで空けた、地面のクレーターを個人用塹壕代わりにして身を匍匐で隠しながら、後方でグレランによる砲撃支援を行っていたのだ。

 

ところが、いつのまにか包囲されていた。 気が付いた頃は既に遅し。 退路もなく周囲の味方は全滅。 残すはフカ次郎ただ1人。

一応、後方に沢山味方がいるのだが……わざわざフカの為に死に行く者はそういまい。

大の為に小は切り捨てる。 そんな考えが一瞬脳裏をよぎってしまう。

 

 

「この銃でも、ロボットは倒せないしなぁ。 EDFはズルいぜぃ」

 

 

両脇にある、榴弾尽きたデザートタンのグレラン《MGLー140》二丁を見ながらボヤいていると激しい銃撃音に混ざり、バリバリとヘリのローター音。

 

次には完全に影に飲み込まれた。

頭上を覆い、影落とすモノ。

 

フカが小悪魔ならば、それは空飛ぶ大悪魔。

 

 

対地制圧ヘリコプター《ネレイド》。

 

 

地上を這うプレイヤーを、安全な空から一方的に殺戮する、無慈悲なビークル。

 

スマートな機体の下方にある自動補足式オートキャノンの赤色レーザーは小さな胴体を突き刺して、小さな赤い点を生み出した。

被弾エフェクトではない。 GGOでいうバレットラインやサークルのようなものである。

 

 

「《ALO》だったら、空飛んでボコボコにしてやるのに!」

 

 

頭上の悪魔を見て悟る。 逃げても無駄だと。

何十人もいた小隊規模の味方がヘリの攻撃で蒸発したのを見たのだ。

撃たれたら死ぬ一歩手前。 万事休すか。

 

 

「ハ、ハハハッ!」

 

 

文句を言いつつも、笑う。 笑いながらサイドアームの《M&P拳銃》を抜いて、上に向かって滅茶苦茶に撃ちまくる。

乾いた音がパンパンパンと連続で聞こえた。 残弾なんて数えない。 とにかくトリガーを引きまくる。

 

周囲の銃撃音や爆音と比べると、小さく頼りない乾いた音。 それでも、撃つ。 笑いながら撃ちまくる。

 

悲惨過ぎると笑うしかないとも言うが、彼女の場合はゲームとして楽しんでの笑顔だ。

ココで死んでも《死に戻り》するだけ。 この非常事態も、多くのプレイヤーにとってはイベント。 祭りの一種。 ならば楽しんだ者勝ちではないか。

確かに怖い時もある。 フルダイブのVRMMOであるが、現実と比べると五感はどこか希薄。

それなのに対峙するEDFに対しては、何故か凄い恐怖を感じる。 なによりプレイヤーにはない……本物の雰囲気があるから。

 

だからこそ。 この瞬間を楽しもう。

もう二度と無いかも知れないのだから。

 

 

「うりゃあああああぁぁ!」

 

 

射撃下手なフカは1発も当てられず、弾切れを起こす。 悔しさからか、せめての抵抗か、スライドが下がった拳銃をヘリにぶん投げると、それだけはヘリの底に当てられた。

 

カーンという、虚しい金属音を鳴らして跳ね返ってきたが。

 

 

「ふっ……やるなら、やれよ」

 

 

万策尽きたか。

格好付けたセリフを吐いて、バッと両手を広げて見せた。 どうせ死ぬなら、格好良く死にたい。

 

そして武勇伝にしよう。 わたしゃぁ……ヘリ相手にたった1人で立ち向かったのよと。

 

だが、その願望は叶う事はなかった。

 

 

『要請受託!』

 

 

突如として聞こえた、ワイルドボイス。

 

刹那、風に吹かれた雨のように、斜め上方から降ってくる無数の光弾。

EDFのガンシップ、地上制圧機DE202による《バルカン砲》の、3秒あるかないかの弾幕である。

 

その弾丸は容赦なくヘリのローターやコックピットを突き抜けて、フカの脇へと降り注ぐ。

 

プレイヤーの持つ銃弾とは比べ物にならない高威力。 砂柱を形成する程の凄まじさ。

 

貫通力があり高威力の雨は、空飛ぶ棺桶を空中で蜂の巣に変身させると、墜落を許さず空中で爆発四散させた。 もれなく破片が辺りに飛び散った。

 

 

「うおッ!?」

 

 

故にか。 驚いた声を上げるフカ。 何が起きたのか。 いや、誰かが助けてくれた。

EDFの兵器なのは分かる。 だからワンちゃんかと思ったが……違う。

 

 

『ごめん! 遅れた!』

 

 

今度聞こえたのは、親友の声。

無線越しに伝わる、昂ぶる感情。

 

どうやら、来てくれたらしい。

 

 

「そこは『待たせたな』と言うとこだぜぃ?」

 

 

聞き慣れた事のある声に、思わずニヤッとしちゃう。

 

 

『そうだね。 ちょっと忙しくて』

 

 

今、戦場での花形はフカの親友。

鉛玉でなく、ビーコンや無線で闘う誘導兵。

 

親友がワンちゃんみたいに活躍している様が、ちょっぴり誇らしく……ちょっと嫉妬するフカ次郎であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「連中のも、マシンガンか?」

 

 

マシンガン大好きチーム《ZEMAL》の男達は、クローン達の持つ武器について話し合う。 マシンガン好きとしては、EDFの銃にも興味があるのか。

話合いながらも、視線は前線に向けられ、機関銃のトリガーを引き続ける。 無線越しなので、激しい銃撃音でも問題ないらしい。

 

機関銃の種類や服装はバラバラ。 《M240B》や《FN・MAG》、《ミニミ》、《M60E3》。

 

銃撃音も異なるも、トリガーハッピーなのは同じのようだ。

 

そんな彼らは、突撃する軽装の味方を後方から援護している形だ。 味方の誰かが榴弾系で開けたであろう、地面のクレーターを塹壕代わりにして陣取りながら。

マシンガンの位置付けとしては有効的だろう。

 

…………形なだけで、彼らは深く考えてないのだが。 偶々そんな風の位置にいただけ。

 

撃てりゃー良い。 撃ちまくれヒャッハー集団だ。 といっても戦果は出しているから文句は言えない。 かなり役に立っている。

ビークル相手は無理だが、クローン部隊の何人かを葬っているし、倒せなくても弾幕により勢いを止める防衛線となっている。

包囲されているのに、未だ戦線が維持されているのは彼らの活躍が大きい。

 

…………が、そんな事になってるとは、つい知らず。 話を始める男たち。 愛すべきマシンガン馬鹿たちだ。

 

 

「多砲身だしな! そのせいか、撃ち続けているのに焼ける様子がねぇ!」

 

「トリガーを引いて、直ぐに弾が出ているな! 回転が安定するまで待たなくて良いようだ!」

 

「リロード頻度が少なく感じるぜ! あの銃身のどこに、そんだけの弾が?」

 

「身体も細く見える。 予備弾薬はストレージかどこかか?」

 

 

疑問を投げ合いつつ、撃ちまくる。 時々バーストして、休み休み撃つ。 リロード時は仲間に声掛けて、隙をカバーしてもらう。

その辺の連帯は忘れない。 マシンガン馬鹿といっても、その辺は下手なソロプレイヤーや野次馬よりハイレベル。

SJ2に参加出来た力は、運だけではないのだ。 たぶん。

 

 

「EDFの銃と兵士だぜ? 取り敢えずハイスペックなんだろーよ!」

 

「だが、奴らには愛が無いように感じる! マシンガン愛なら俺らが上じゃあ!!」

 

「おうよ!」

 

「ヒャッハー!」

 

「ヘリだろうが、装甲車だろうが撃ちまくれえええ!!」

 

「マトなら幾らでもあるからなぁ!」

 

 

会話中断。 ズガガガガガッと撃ちまくる。 もれなく前方のクローン数名が倒された。 ついでに射線にでた味方ルーキーも撃ち抜いた。

 

構うことはねぇ。 撃てりゃー良い!

 

因みに。

彼らが疑問に思った多砲身の銃であるが。

EDFでは《M3レイヴンSLS》と呼ばれている銃である。

少し大きく、ガトリングみたいに多砲身だがアサルトライフルの分類。 機関銃ではないのだ……たぶん。

 

 

「おい! 装甲車だ!」

 

 

すると増援か。

前方に武装装甲車両《グレイプ》が走ってきた。 兵員輸送車のソレは、そのままプレイヤーに対して車体を横向けに。 兵士を守るようにだ。

 

いけない。 EDFの装甲は徹甲弾でも抜くのは難しいだろう。 ピンチである。

 

そして後方のハッチが開くと、中からゾロゾロと増援のクローン部隊が、

 

 

「撃てええええええッ!!」

 

「ヒャッハアァァァッ!!」

 

 

そんなん関係ねぇ。

 

出て来て、素直に此方へ向かってくるクローンに撃ちまくった。 彼女らクローンは、銃弾を1発も撃つ事なく、バタバタと倒されてしまった。

 

 

「車もぶっ壊せぇ!」

 

 

今度はグレイプに撃ちまくる。 距離あれど、横に広いのもあり、それなりに当たる。

当たるだけで、やはり火花を散らすばかりだ。 ビークルの破壊は無理なのか。

 

 

「気持ちイィ!」

 

 

そんなん関係ねぇ。

 

寧ろ火花が散って、当たっているのが分かるのが良い。 楽しい。 倒す事をすっかり忘れているトリガーハッピー達。

 

そんな彼らに仕返しとばかりに、グレイプの砲塔が回転。 砲口が彼らに向けられる。

弾種は歩兵戦闘を考慮して、榴弾を使用していた。

 

逃げられない。

 

というか、撃つのに夢中で危機感がない。

 

だがヒーローとは、いるもので。

 

突如として空から光の玉が降り注ぎ、ソイツは白い帯を空中に残しながら、グレイプの天辺、砲塔目掛けて落下した。

 

それはミサイルによるトップアタックだ。

 

そして衝突した刹那、グレイプが爆炎に包まれた。

 

ドゴォンッ、と派手な音が戦場に響き渡り、射撃に夢中だったマシンガン馬鹿達も思わず驚きの声を上げる。

 

 

「うおっ!?」

 

「なんだ!?」

 

 

爆煙が晴れると、装甲車はスクラップに変貌していた。 一瞬だった。

 

 

「装甲車なんか怖かねぇ!」

 

「やっぱ、マシンガンは良いな!」

 

「ヒャッハー!」

 

 

自分達がやったと思っている男たち。

観察力があったのは、相手の武器に対してだけだったか……。

 

 

「間に合ったか!」

 

 

すると答え合わせするかのように、後方からオッサン声が。 のっしのっしとやって来たのは全身を鎧のような……強化外骨格に身を包んだEDFの兵士6人組。

背負う特徴的な大きなバックパックに見えるモノは、よく見ると動力パイプのようなモノが見えたり、スラスター、ブースターの噴射口が見える機械的なもの。

 

マシンガン持ちの者は、更にココから弾帯……ベルトリングが伸びている。

ヤベェ……なんか強そう。 というか、実際強い人達。

 

そんな勇ましく強そうな兵装の彼らは《フェンサー》の分隊だ。

 

 

「良く耐えたな! 後は我々に任せろ!」

 

 

そう勇ましく言う1人の武装は左肩後方に大きな、縦長の筒を背負っている。

右手には、重そうな多砲身の機関砲《FG7ハンドガトリング》を片手持ち。

ハンド、といってもかなりデカい。 歩兵が持ち運ぶのは無理な得物。

それを可能にしちゃうのが、彼らフェンサーの、パワードスケルトン。

 

マシンガン馬鹿達を救ったのは、この人である。 使われた武装は、肩に背負う筒から発射される《FGX高高度強襲ミサイル》だ。

ロックオンした目標に対して、上空高くミサイルが飛んでいき、やがて目標に対して降り注ぐのだ。

 

遮蔽物が多い(主に野次馬なプレイヤーの事なのだが)戦場で、誤射を避ける為に使われた。 威力も高く、装甲目標でも役に立った。

 

後の5人は、ミサイルの代わりに左手に大きな特殊合金製の楯《ディフレクション・シールド》を装備。

右手は同じく重そうなマシンガンを片手持ちしている。 マシンガンは《ZEMAL》と同じくバラバラ。

見た目に差異はないモノもあるが、性能が異なるのだ。

 

装弾数に優れ、約1分間もの間、射撃を続行できる《UT3ハンドガトリング》。

もうひとつは機関砲のイメージと少し離れた……銃口が二つ伸びており、連射性能に優れ、直接パワードスケルトンにマウントする《ガリオン連射機関砲》。

《ブローニングM2重機関銃》に少し似た、《ガリオン軽量機関砲》。

モーターから多砲身が生えたような高性能火炎放射器《フレイムリボルバー》は……機関砲ではない気がするが、取り敢えず、様々な武装であった。

 

どれもデカい。 そして重い。 だが見た目からして力強さが伝わってくるのが素晴らしい。

その光景にマシンガン馬鹿達は大いに盛り上がった。

 

 

「すげぇ! 片手持ちしてるぜ!」

 

「俺には分かる! マウントしてあるのも、マシンガンだな!」

 

「ああ! 俺たちも筋力値を上げまくって、真似しよう!」

 

「目指せ! 両手持ち!」

 

 

だが、彼らはマシンガンにのみ注視する。 救ってくれたミサイルの事など考えもしない。

 

褒めるところが、なんか違う野郎供。 気を使ってか、部下の1人が声を出す。

 

 

「隊長」

 

「……気にしてないぞ。 ただ、次は両手に機関銃装備でいくか」

 

 

トーン低く、そう返す隊長さん。 だが若干、士気が下がったのは気の所為ではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ! EDFは化け物か!」

 

 

別方面の戦場にて。

《MMTM》のリーダー、デヴィッドは思わず叫んでしまう。 ヘビーゲーマーな彼らは、有利になるべくGGOの戦術……側面や後方に回り込む、隠れる、等の方法を試していた……のだが。

 

どうしても位置がバレて正面同士の撃ち合いに発展してしまうのだ。

 

センサー反応の所為だ。

 

プレイヤーになくて、EDFにはあるモノのひとつ。 隠れてもおおよその位置がバレるのだ。

必ずじゃないし万能ではないが、残念ながら彼らのチームはバッチリとセンサーに映ってしまっている。 故に良いポジションが取れる前に攻撃を受けてしまう。

 

 

「SJでも見たが……あの兵器群は無力化出来ないのか?」

 

 

そして1番厄介なのは。

目の前で暴れるロボットやヘリ等のビークル群。

 

今はまだ、最前線に突撃した野次馬なニュービー連中に群がっているから良いが、湯水の如く消されている。 いなくなったら前線は後退、次に消されるのは我々だ。

 

 

「光の粒子が絶え間なく輝いて……綺麗ですねぇ」

 

「ああ。 このままだと、俺たちも光にされるだろうな」

 

 

冷静に会話する余裕があるようだが、打開策が思い付かず、ギリッと奥歯を噛みしめるリーダー。 小銃弾や榴弾も効かない相手に、どう立ち回れば良いのか。

 

歩兵は何とか殺れるが、装甲持ちは駄目だ。

チート集団に、通常兵器は効かないか。

絶望しそうになり、それでもリーダーとして何かないかと考えるも、

 

 

「がぁっ!? 足がっ! 足がああああああああああ!!」

 

「リーダー! チキンがっ!」

 

「なっ!?」

 

 

仲間の悲鳴に、思考の海からサルページ。

銃口と共に視線をやれば、前方にいたチキンことケンタが、コンバットフレーム《アサルト》に足を踏まれていたのだ。

ケンタは仰向けに倒れており、足からくる痛みに悲鳴を上げた。

VRだ、本当の痛みではない。 だが、EDFから与えられる本物からの痛みは被弾時の痛みより僅かに、本当に僅かだが……現実味がある気がした。

 

 

「コイツ、いつの間に来たんだ!?」

 

「遠方から跳躍してきたんだ! カンガルーやウサギみたいにな!」

 

「撃て! 撃つんだッ!」

 

 

味方全員が驚き、けれど考えるより先に銃口を《アサルト》に向けて撃ちまくる。 やはりか、火花が散るばかりだ。

それでも撃つ。 味方が、まだ生きている味方がいる。 助けたい。 その想いからか、それとも……目の前に敵が来てしまったからか。

 

別に、《アサルト》側は狙って踏んだワケではない。 たまたま着地地点にケンタがいてしまい、踏んだのだ。

だからか。 踏んでいる事に気が付いていない。 銃撃を加えられているのもあり、注意はリーダー達に向けられている。

 

 

「……ッ!」

 

 

その点に、踏まれながらも気が付いたケンタ。

 

すると冷や汗をかきながら、痛みに耐えながら、動く手でウィンドウを開いて操作する。 ストレージにしまってあるモノを取り出そうとしているのだ。

 

 

「チキンは何をしてる!?」

 

「まさか」

 

 

気付いた仲間が、声を上げる。

その意図に直ぐ気付いたリーダーは、その覚悟に思わず銃身を強く握ってしまう。

そして、感情をブチ撒けるように声を張り上げて指示を出す。

 

 

「ッ! 総員撃ち続けろ! ヤツの注意を引くんだ!! チキンを援護するッ!」

 

「了解!」

 

「撃てぇ! 撃てえ!」

 

「バケモノめ! こっちだ!」

 

 

とにかく撃ちまくる《MMTM》の皆。

マズルフラッシュを焚きまくり、弾丸は装甲に阻まれ火花を散らし、それでも撃つのをやめない。

 

その甲斐あって、《アサルト》は肩に備えた榴弾をばら撒く《エクスプロージョン》の照準を合わせて……リーダー達に向けて発射した。

 

起こる複数の爆炎。 周囲一帯を消し飛ばす。 どんなに足掻いても、無駄だと言わんばかりに。

 

 

「グハッ!?」

 

 

拡散する榴弾は陣地全体に着弾し、皆を吹き飛ばした。

4人は光の粒子になって消えてしまう。 それでも、運良くデヴィッドは生き伸びた。

 

地面に転がされながらも、メインアームを何処かに吹き飛ばされても、痛む身体に鞭を打ち、手を動かした。

彼は注意を引くために、まだ生きている仲間の為に足掻く。

 

 

「うおおおおおおッ!」

 

 

倒れた姿勢のまま、サイドアームの《ステアーM9A》を抜いて撃ちまくる。

ボロボロで、情けない格好でも。 EDFには散々ボコボコにされてきけど。 今度も無駄に、無様に死ぬかも知れずとも。 今まで積み上げてきたモノが、全て否定されているかような……屈辱を受けたとしても。

それでも仲間の為に、リーダーとして最後まで闘う。 それが、今自身に出来る事なのだ。

 

そして、それは無駄ではなかった。

 

 

「……リーダー、ありが、とう……ございますッ!」

 

 

ケンタから、突如として礼の言葉を送られて。

 

刹那。

 

 

ドゴオオオオォンッ!!

 

 

踏まれていたケンタが、大爆発を起こし。

《アサルト》は大きな爆炎に飲み込まれ、世界の照度が一瞬上がる。

 

この時点で、リーダー以外の者は死んだ。

 

爆風は、離れた位置にいたリーダーにも届き……彼が成功した事を告げてきた。

同時に1人になってしまった事も。

 

 

「……ケンタ」

 

 

犠牲になった仲間の名を呟いた。

彼は、簡単に言えば自爆したのだ。 ストレージにあった、高威力のデカネードを起爆して。

機動性の高いヤツに、当てるのは難しい。 だが足下で、ゼロ距離で爆発させられるチャンスをケンタは掴んだ。 そして実行した。

 

 

「勇敢だった」

 

 

だから、リーダーは褒めた。

 

爆煙から出てきた、《アサルト》を見上げつつ。

 

無駄ではない。

 

犠牲の上で、取り敢えずの成功は得た。

 

そして、デカネードでも駄目な事を理解した。

 

二丁のマシンガンを向けてくる相手。 もう、助かりそうもない。

 

 

「…………ハ、ハハハ!」

 

 

心が折れて狂ったか。 それとも得られた戦果が嬉しいのか。

 

 

「アハハハハハッ!」

 

 

そんな、抵抗もせず笑うだけの相手に。

弾が勿体ないと思ったのか。

代わりに《アサルト》は足を上げると、そのまま彼を踏み潰そうとして……、

 

 

「フンッ!」

 

 

黒い影が接近したと思ったら、次に《アサルト》は。

 

目の前でバラバラになった。

 

 

「………ハ、ハハ……何が、起きた」

 

 

流石に驚いて、笑いが引っ込んだ。

そして、目の前に漆黒の鎧に身を包んだフェンサー部隊が現れる。

片手に、大きな機械式の槍である《ブラストホール・スピア》。

もう片方はシールド。 真ん中に白く『G』の文字が書いてある。 銃の類はない。

 

 

「地獄に行きそびれたな」

 

「ひとつ貸しにしとく」

 

 

彼らはそう言うと、スラスターを吹かして高速移動。 前の方にいた別の《アサルト》へ突っ込む。

相手が慌ててマシンガンを振り回して、弾幕を形成するも、スラスターで高速蛇行しながら回避しつつ接近。

フェンサーが槍を突き出したと思えば、再び《アサルト》が爆発。 スクラップに変貌する。

 

 

「銃……じゃないな。 近接武器……《フォトンソード》ではない、か」

 

 

呟くデヴィッド。

だが彼の疑問に答える者はいない。 代わりに、再び黒いフェンサーが話し掛けてくる。

 

 

「お前の仲間は、意義のある死を遂げたようだが。 お前はどうだ?」

 

「ココが死に場所か? 随分と楽しそうだったしな」

 

 

どこか挑発的な言葉を投げてくる相手。 だが、力の差が歴然としているのだ。 どうしろというんだ。

 

そう思うデヴィッドに、フェンサーは言葉を投げかける。

 

 

「お前が闘うのを止めた時、背後にいるヤツらはどうなる? 最後まで足掻いて見せろ」

 

 

そういうと、リーダー格らしいヤツがポイとライフルを投げ渡してきた。

爆発でどこかにいった、自身のメインアーム《STMー556》だった。

 

 

「じゃあな。 地獄を楽しめ」

 

「お前にも、出来る事はあるだろうよ」

 

 

それだけ言って、スラスターを吹かして前線に突入するフェンサー達。

挑発的な言葉の裏に感じた励ましに、デヴィッドは再びライフルを握りしめ、無線で《死に戻り》した仲間に連絡をとる。

 

 

「死んで包囲網の外に出たな? 外側から攻撃を仕掛けて、EDFの態勢を崩す! 包囲されたお返しに、今度は内と外で挟み撃ちにしてやる!」

 

 

やれる事。

まだ戦闘は続いている。 GGOプレイヤーは未だ抵抗戦を続けており、屈していない。

 

生き延びろ。 そして、今度こそ勝つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤバいです! だけど映像は撮り続けます!」

 

 

これもまた、別方面の戦場にて。

 

そこそこ人気の実況プレイヤーのセインは、日本の小銃《89式》を握りつつ、後に《GGDF事件》と呼ばれるこの戦場の撮影を行っていた。

 

既に序盤から撮影を開始しており、バルガ同士の殴り合いも撮影。

イベントでもなし、こうして別ゲームや日本国外からもプレイヤーが集まって参戦しているのは、ある意味奇跡かも知れない。

 

そんな状況を撮らない手はないと、彼はSJ2に続き、勇気を持って前へ前へと突き進む。

 

だが、激しい銃撃戦や砲撃が行われる硝煙弾雨の戦場だ。 前に行くほど被弾率は高まり、死にやすい。

 

そして1つの線が、セインの横を閃光が走る。

羽虫が通ったような不快感と共に、彼の前にいた味方の頭に被弾。 もれなく光の粒子になって消えてしまった。

 

 

「山田ー!」

 

 

とうとう彼以外の味方は全滅してしまったらしい。 ボッチ撮影。

 

 

「また僕以外全滅です! でも撮影は続けますよ! 生きている限り!」

 

 

でも声は溌剌としている。 臨場感溢れる戦場風景を頑張って実況しているのだろう。

 

 

「敵は圧倒的です! よく分からないロボットや、戦車を繰り出してきます! ああ! 名も知らぬ味方さんが死んだー!?」

 

 

前方では、コンバットフレーム《アサルト》に蹂躙されるプレイヤーたち。 マシンガンで撃たれまくって、光の粒子になって消えている。

他にも小型の戦車《ブラッカーE1》が何台か動き回っており、ズドンッと砲撃が始まれば、榴弾によりプレイヤーが吹き飛ばされては消えていく。

 

何とか撃ち返す者もいたが、火花を散らすばかりで歯が立たない。

 

 

「ああ! 空にヘリが!」

 

 

今度は空を映し出す。

そこには追い討ちをかけるように、ヘリが2機やってきて、地上にミサイルや無誘導弾を落としては爆炎を上げに上げまくっている映像。

その度にプレイヤーの群れが噴き出し花火の如く舞い上がって消えていき、残りは機銃掃射で掃討されるシーンが映った。

 

 

「コレは……ココも危ないですね! でも後退しませんよ! しても、包囲されてますし!」

 

 

大袈裟に騒ぎながら、今度は後方を映し出す。

味方の後ろ姿が無数に映る中、奥の方では爆発が起きているのが見えた。 包囲されていて前も後ろも戦場なのだ。

 

 

「誰か助けてー!」

 

 

わざとらしく、元気そうに助けを求める彼。 本当に助けを求めているワケじゃないので、返答は期待していなかった……のだが。

 

 

「スプリガンが援護しよう」

 

「へ?」

 

 

空から、返事が来た。

大人びた、女性の声だ。

 

思わず実況も忘れて、声のする方へ見やるセイン。 そこにはSFチックな、だけど服のような……戦闘服には見えない軽装な格好に、ヘルメットに身を包んだ女性兵士達が4人飛んでいた。

 

背中には飛行ユニットがあり、手にはSFチックな武器。 銃には見えない……中世の武器のような、とんがった見た目の《パワーランス》を持っており。

他の3人は少し大きな光学銃なんだろうなと思わせる《マグブラスター》を装備。

 

腕や足は細くて白い綺麗な素肌を晒し、胸の膨らみやリップの潤いは情欲を誘う。 引き締まったボディはアイドル体型。 実にお姉さん。 スカート部分も女性らしさを感じられて素晴らしい。

 

シュタッとセインの前に、華麗に着地。

フワリとスカート部分がめくれれば「それ、パンツじゃね?」というくらいの短パン(?)が丸見えに。 普通に立っていても見え見えだが。

 

そう。 彼女らはEDFの、女性のみの兵科《ウィングダイバー》であり。

精鋭である《スプリガン》隊である。

 

空からアメージング。 ビューティフル。 ディスティニー。 そしてヒップ!

実況中に美味しいネタが舞い降りた!

 

 

「親方ァ! 空から女の子が!」

 

「うん? 君以外いないようだが……ふざけてないで、闘うぞ」

 

 

そう言うと、セインの言葉を待たずに彼女らは再び空へ上がり、駆け抜けた。 もれなく背後からのパンティー……じゃなくて、短パンが撮影されてしまう。

 

そんな事はつい知らず、彼女らは、ヘリが暴れる前線へと飛んでいく。

ヘリより上の高度で飛んでいくと、隊長格の人が急接近。 手に持つランス先端からビームを出すと、ヘリは貫かれて空中爆発。 大破した。

他の3人は、地上からの弾幕を踊る様に回避しながら、手に持つ銃からビームを出して反撃していく。

コンバットフレームは確実に装甲を削られていき、とうとう爆発。 動かぬ鉄屑と化した。

 

 

「おお……凄いです。 我々プレイヤーに撃たれまくってもビクともしなかった、手強い兵器をどんどん倒してくれてます!」

 

 

そんな光景を映像に収めつつ、セインは89式を握って前進を決意。 更なる美味しい映像を求めて!

 

 

「ひょっとしたら、ポロリもあるかも知れません! コレは前進して彼女達の活躍を見つつ、その瞬間を待ちま「おにーさん?」あ、やば」

 

 

だがしかし。 そんな事を聞かれているとは知らず。

いつの間に戻ってきたスプリガンの隊員に、優しーく声を掛けられてしまった。

 

事情を知らない人がここだけ聞いたら、大抵の男は堕ちてしまうだろう。

セインの目の前にて、スタイル抜群のお姉さんが、カメラ目線に微笑んでいる。 怖い。

 

 

「あ、いや、お姉さんの勇姿を見ようとしたんですよ?」

 

「へぇ? じゃ、地上から援護してくれないかな? 具体的には囮で」

 

 

親指を立てて、レクチャーで背後を指すお姉さん。 その先には戦車やらクローンの大群やらがドンパチしているのが見えた。

ひとりで倒せるような数じゃない。 突っ込んだら、まず死ぬのは確定である。

 

 

「いやー、僕ひとりじゃ」

 

「あら。 ポロリを見たいんじゃないの? ワンチャンあるかもよ? それとも、ココで死んでみる?」

 

 

ガチャ、と銃口を向けられるセイン。 撃たれて死ぬよりも、別のナニかの恐怖を感じて、思わず身を震わせた。

あ、ヤバい。 前線に突撃して死んだ方がマシだわ、と。

 

 

「喜んで囮になってきますです、ハイ」

 

「よろしい」

 

「みんな、僕の死に場所が決まりました。 後の世に生き残る事があれば伝えて下さい。 不器用に生きた、男の生き様を!」

 

 

引き攣った表情を浮かべながら、セインは格好付けた言葉を吐いて、89式と共に突撃を敢行。

 

雄叫びを上げながら、それっぽく走り始めるも、

 

 

「ウオオッ、オオッ!?」

 

 

即バスン、と頭に被弾。 光の粒子になって消えてしまった。 あっという間だった。

銃撃戦でイキナリ死ぬのは珍しくないのだが、なんというか……彼は残念な終わり方の部類な気がする。

 

 

「まあ、プレイヤーだし。 《死に戻り》してくるでしょ」

 

 

後に残されたお姉さんは、それだけ言うと、前線へと舞い戻る。

ただ次に会うとき、また変な事してたら、撃ち殺そうかな、と物騒な事を思いつつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍曹チームは駐屯地内部まで侵入し、シールドベアラーや転送装置……テレポーションアンカーの制圧に成功。 増援を防いだ。

ところが指揮官と思われる者はいないし、資料もない。 挙句に戦闘は停止する気配を見せない。

 

外に出た途端、今度は感情なき人形達が軍曹チームにひたすら群がり、ただただ銃弾をばら撒いている様はホラー映像。

駐屯地を守るワケでもなく、ただ目の前の敵に撃ちまくる。 弾が切れても突撃してくる。 武器を壊してもやってくる。 片腕や片足を欠損しようが、お構いなしに、無感情に。

這ってでも近寄って殺そうとしてくるから、もうゾンビやロボットに近い。 或いは人形のソレか。

 

 

「なんだよコイツら!? プライマーの歩兵部隊よりタチ悪いぜ!」

 

「死ぬのが怖くないのか!?」

 

「人形だ。 感情なんてないんだろうよ」

 

「どこから湧いて来たんだ!?」

 

 

軍曹達は建物の角から応戦。 《PAー11》ライフルをフルオートでばら撒けば、密度が高い為にバタバタと倒れゆく。

だがそれ以上に、敵はやってくるし、息のあるモノは這いながら寄ってきた。

 

自身の片足を、倒れた場所に置き去りにして。 断面はGGO特有の赤い被弾エフェクトを煌めかせ、無感情に這ってくる。

 

 

「う、うわあああ!?」

 

「戦時中もそうだったがな、女の形をしてる所為で気持ち悪さ倍増だよ!」

 

 

悪感を感じ、感情持たぬ人形達に身を震わせる。 それでも生きる為に彼らは撃ち続けた。

いつのまにか、足下に這ってきたヤツに足を掴まれたが、蹴り飛ばしたり銃床で頭部を殴って息の根を止める。

 

無感情のクローンは、死しても無感情のまま。 それが、また動き出しそうな気がして……気持ち悪さに思わず蹴り飛ばしてしまった。 それでも尚、表情を崩すことはない。

 

 

「数が多過ぎる」

 

「《タイタン》に《レールガン》まで来やがったぞ! 年貢の納め時か?」

 

「人形にもビークルが扱えるのか」

 

「退避ッ!」

 

 

敵のビークル……重戦車の《タイタン》や強力な威力と貫通力を誇る新兵器《レールガン》まで視界に飛び込んできた。 歩兵相手でも容赦がない。

 

砲撃を喰らって生きている望みは薄い。 直ちに軍曹が指示を出してこの場から全力で走り出す。

 

それと同時に主砲は仲良く軍曹の隠れる建物に照準を合わせる。 刹那、激しい爆音。

 

ドゴォオオオンッ!!

 

 

「うおおおっ!?」

 

「あぶねっ!?」

 

 

凄まじい轟音と共に、建物は巨大な爆炎に包まれ、跡形もなく吹き飛んだ。 防ぎようがないレベルに感じられる威力だ。

 

だが間一髪。 皆は衝撃の余波で吹き飛ばされつつも、爆煙に紛れて別の建物裏に隠れる。

センサーでバレているだろうが、次弾発射までラグがあるし、見えない敵に正確な狙いを定める事は出来ない。

だがどちらにせよ、ピンチである事は変わりないだろう。

 

そも、歩兵の武器……《PAー11》ライフル等の小銃弾で、どうにかなる相手ではない。 装甲は分厚く、武装に至っては歩兵の火力の比じゃない。

タイタンの主砲《レクイエム砲》はビルを吹き飛ばす威力があるし、《レールガン》は貫通力が高く、建物の裏にいてもダメだ。

主砲から逃れる為に接近しても、今度は副武装の榴弾射出器やマシンガンにやられてしまう。

 

 

「さあ、どうする?」

 

「逃げる場所なんてないぜ」

 

 

絶体絶命。 これまで幾度となく修羅場をくぐり抜けてきたが、最早これまでか。

 

だが忘れてはならない。 EDFは彼らだけではないことを。

 

 

「おい! ありゃ味方か!?」

 

 

ヘリのローター音と同時、空を見やれば大きな武装ヘリが。 左右に大きな機関砲が飛び出ており、重厚そうな装甲に覆われているように見える。

 

敵か味方か。 それは次の無線で答えが出た。

 

 

『こちら《HU04ブルートSA9》の《ホーク・ワン》! 《STORMー02》の回収及び援護に来た!』

 

 

やってきた大型武装ヘリ《HU04ブルートSA9》……味方が来てくれた!

 

それは大型武装ヘリコプターブルートの最終作戦仕様。

大きな兵員輸送ヘリを思わす機体の左右には大きく突き出た黒い筒棒……重機関砲《ドーントレスSA重機関砲》を装備。 高い貫通力を持つ徹甲弾を発射する。

その為、装甲を持つビークル相手でも効果的な攻撃を望める、耐久力も合わさり空の要塞ともいえる頼もしい存在だ。

 

敵であったならば、絶望のひとつになり得たが、味方ならば大きな戦力。

 

パイロットと銃座に着く者で、計3名の搭乗が可能であるが、大きいので押し込めば後ろに4人は入れる(たぶん)。

 

 

「ついてる! 早速、ビークルを優先的に攻撃してくれ!」

 

『…………すまない、銃座に誰も着いてないんだ。 乗り込める高さでホバリングするから、後は乗り込んで好きなだけ撃ってくれ』

 

「おいおい!?」

 

 

期待外れの言葉を返されてしまった。

 

軍曹達は支援を期待したのだが……悲しい事にパイロットしかいないらしい。 ブルートのパイロットは攻撃手段を持たず、操縦のみしか出来ないのだ。

機関砲は機関砲で銃手が必要。 つまり、今のブルートは空飛ぶだけ。 下手すりゃ棺桶。

 

 

「分かったから降下してくれ! ココにいたら殺される!」

 

『広場に降りるから、周囲の敵を減らしてくれ。 危険だ』

 

「既にやってる!」

 

「とにかく撃て! ヘリに取り憑かれるワケにはいかない!」

 

 

前方の広場に降下していたヘリを援護するべく、フルオートで撃ちまくる面々。

EDF謎の技術による……ワンマグ3桁の装弾数を誇る箱型弾倉から押し込められて放たれる無数の弾丸は、情け容赦なく広場のクローンを倒していく。

 

それでも数は一向に減らないが、それでもなんとか、ヘリの降下ポイントは確保した。

 

それを空から確認したブルートは、ゆっくりと降下。 軍曹達も合わせてヘリの降下ポイントに前進していく。

 

 

「前進! 素早く乗り込め!」

 

「イエッサー!」

 

「《タイタン》と《レールガン》にバレました! マズいですよ!?」

 

「俺が《ドーントレス》で破壊する! 他はクローンの相手を頼む!」

 

「了解!」

 

 

ゆっくりと降下してきたヘリだが、地上すれすれでホバリング。 離陸時間、退避時間を短縮する為だ。

激しいローター音と共に砂埃が逃げるように舞うが、その風圧に逆らいながらブルート側面のスライドドアを解放。 乗り込んでいく軍曹チーム。

 

そして彼らを追い掛けるように、周囲の構造物を破壊しながら巨大なデザートタンカラーの重戦車《タイタン》や、青いボディの戦車……《レールガン》がやってくる。

だが照準が定まっていないようで、まだ少しながら時間があった。

副砲の滑空砲やマシンガンで攻撃してくるが、ブルートは大きさから被弾する事を想定しているからか、それなりに堅牢だ。 機体を揺らされながらも、何とか耐えてくれている。

 

このチャンスを逃す軍曹ではない。

戦場では、一瞬の時間が生死に直結する。

 

素早く電子機器越しの操作板……銃座につくと、彼方より先に照準をつけてトリガーを引いて、

 

 

「撃たれる前に撃て、だ!」

 

 

刹那。

 

 

ドゴォンッ! ドゴォンッ! ドゴォンッ!

 

 

激しい砲撃音が鳴り響き、大きな機関砲の銃口から相応のマズルフラッシュ。

歩兵の持つ機関銃と比べると、連射性に欠けるが、それを補って余りある威力の弾丸が放たれる。

 

大きな徹甲弾はレールガンに3発直撃。 レールガン程の貫通力はなくとも、装甲を貫くには十分で、車体に大穴を開けていった。

大きく車体を揺らしたと思ったら、反対側に弾が抜けて、地面に着弾。 大きな砂埃を立てる次には車体が爆発。

レールガンは獲物を仕留める事なく、物言わぬ鉄屑と化す。

 

だが、その間に《タイタン》が主砲を動かして照準を合わせてきた。 このままでは、向こうが先に撃ってしまうが、

 

 

『離陸する!』

 

 

パイロットがフルスロットル、操縦桿を横に動かした。

機体の方向が変わり、砲口の先も変わる。 その先には次なる標的、《タイタン》が。

 

気を利かせ、砲口を動かさなくても《タイタン》に合うように回転させたのだ。

すかさず軍曹はトリガーを引き続け、相手の大きな車体に撃ち込むが、

 

 

「流石に堅い!」

 

 

大きな火花を散らしまくるも、破壊しきれない。 装甲にダメージを与える事は出来ても、タイタンの耐久力は高い。

 

ブルートが空の要塞なら、タイタンは陸の動く要塞というべきか。 ドーントレスは強力だが、2、3発喰らわせたところでタイタンは倒せない。

パイロットも相手の主砲が放たれる前に倒せるとは思っていない。

だから退避する目的で滑空するように離陸。 パイロットは操縦桿を全力で倒す。

 

 

『間に合え!』

 

 

だがブルートの機体は大きく、機動性は他と比べると低い。 間に合うかどうか怪しかった。

それでも射線から逃れようとヘリを傾け続ける。 少しでも生き延びる可能性に賭けて。

 

そして、

 

 

ドゴォオオオンッ!!

 

 

「うおおおおっ!?」

 

 

タイタンの《レクイエム砲》が炸裂。 眩い光と砲撃音が雷鳴の如く戦場に響き渡る。

あまりの反動に、タイタンの巨体は履帯を地面に擦りながら後退する程。

だが肝心の砲弾は、ブルートが先程までいた空間を擦り、後方へと飛翔。 そのまま遠くで着弾すると大爆発。

その周囲にいた、運の悪いプレイヤーとクローン部隊が吹き飛んでしまった。

 

 

「ま、まだ生きてる」

 

「運が良い」

 

「まだだ! 離陸急げ!」

 

 

軍曹は叫びながら、タイタンから群がってくるクローン部隊に照準を直し発砲。 何人ものクローンが纏めて被弾、バラバラになるも勢いは止まらない。

部下も空席の、反対側の銃座についてクローンに撃ちまくる。 余った者はスライドドアを開けて、左右それぞれに付いて小銃で援護射撃。

 

一方、外したタイタンはもう一度照準を合わせ直しているが、恐らく次弾も外す可能性が高いだろう。 特に空を飛んだ相手に対しては。

 

《レクイエム砲》は元は軍艦用。 それを戦車で運用出来るよう、砲身を短縮している。 だが、その影響か弾速が遅い。

そして砲手が地面ではなく、宙に浮く標的を「撃ち墜とす」ように撃ったのが、軍曹達が助かった要因に繋がった。

偏差射撃もしなかったから、余計である。 相手が未熟で助かった。

 

ヘリの高度が上がり始める。 こうなればコッチのものだ。 あとは安全な空から撃ちまくれば良い。

 

 

「よし、このまま地上の……ッ!?」

 

 

だが一難去ってまた一難。

離陸したと思ったら、低空にて機体が大きくバランスを崩し始めてしまった。

 

視界に映るは、縁に掴まる複数の手。

 

警報が煩く鳴り響く。 数が多過ぎて捌き切れなかったクローンが、ヘリに纏わり付いてきやがったのだ。

 

 

『振りほどけ! 墜落するぞ!?』

 

「くそっ! もう、ジャンプして届く高度じゃないだろ!?」

 

 

部下の1人が下を見やれば、恐ろしい光景が。

 

 

「ッ!?」

 

 

クローンがゾンビ映画のワンシーンみたいに群がり、自分達の身体で山を作り……互いに登り合いながら無数の手を伸ばしては、ヘリに掴んでいたのだ。

銃撃を喰らわせても無駄だと思ったのか。 ヘリの機動を奪って墜落ないし、自滅覚悟のビークルの援護か。

 

次から次へと、どんどん這い上がってくる。 素早く手を動かして仲間の身体を登る様は、虫が這ってくる様にも見えて気持ち悪い事この上ない。

 

 

「うわああ!? 落ちろ! 落ちろォッ!?」

 

 

そのホラーシーンに思わず悲鳴を上げるも、反射的にライフルを下方に構えて撃ちまくる。 生理的悪感もあり、必死に振りほどくべく容赦なく撃ちまくる。

 

銃口を左右に振り回して、滅茶苦茶に撃ちまくるが、数の暴力には勝てやしない。

縁に掴まるヤツを撃っても、補強を入れるように別の手が伸びてきてキリがない。

 

 

「ドーントレスは!?」

 

「砲身が長過ぎて、横に取り憑いたヤツに対処できん! 砲身の旋回速度も速くないし、射角も取れない!」

 

『もう良い! 何とかドアを閉めろ! 墜落に備えるんだ!』

 

 

諦めて、射撃を止めてドアを閉める。 墜落も視野に入れ、生存性を高めようとした時。

 

 

『うおっ!?』

 

 

ヘリが再びバランスを崩し、大きく揺れた。 パイロットが最後まで足掻こうとした意地からか、操縦桿でバランスを取ろうとして……容易に動かせる事に気がつく。

 

 

『なんだ? 振りほどけたのか』

 

「人形の山が崩れた!」

 

「ラッキーだな」

 

 

下をドーントレスのガンカメラ越しに見ていた者は、山が崩れるのを見やり、勝手に自滅したと思った。 まだ何人かはこびりついているが、飛行に問題はない。

だが軍曹は渋い顔を保ったまま、言葉を述べる。

 

 

「400メートル以上離れた丘で閃光が見えた。 それに横殴りにしたかのように、クローンが吹き飛んだ……恐らくアンチマテリアル・ライフルによる援護射撃だ」

 

 

軍曹が冷静に分析、予想。

下方のみならず、周囲の戦場をも見ていた彼は、名も知らぬ味方に助けられた事を悟る。

 

 

「《ブルージャケット》か?」

 

「……プレイヤーかも分からん。 なんにせよ、助かった」

 

 

名も知らぬ味方に感謝しながら、ブルートは高度を上げつつ、プレイヤーの援護に向かう。

そんな光景をスコープ越しに青髪の子や《SHINC》のトーマ、《KKHC》のシャーリー、羆みたいなエムは確認。 口角を上げると、再び円盤を相手にする。

他の狙撃兵も全く同様の光景を眺め……そして、皆一様にトリガーを引いて人形の山吹き飛ばしたのは、本当に偶然であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《NSS》という、「各戦場で死んだと思われた者たちが神秘的な力で未来に飛ばされて、そこで出会い、いつか戻れる日を夢見つつ、一緒に戦っている」というロールプレイ及びコスプレを楽しんでいる連中もまた、この《GGDF事件》に参戦。

野次馬で、精々拳銃を振り回して囮になっている群勢よりかは役に立っていたが、

 

 

「突撃だ! 突撃あるのみ!」

 

「冷静になれ。 塹壕に身を隠すんだ」

 

「我らの同志、味方のEDFも来てくれる。 耐えるのだ」

 

「生きてこそ得られる栄光をその手に掴むまで、その命……俺が預かる!」

 

「くっ……!」

 

 

ノリノリで状況を楽しんでいた。

この作戦に参戦しているプレイヤーの数は凄まじい。 サーバーが大丈夫かどうかは考えないが、祭りとは興奮するものだ。

特に世界大戦時のやり方というか、EDFの砲兵隊が歩兵の為に砲撃して弾幕戦法をやってくれたり、皆で突撃したりするのは大変興奮する。

勝つとか負けるとか、そこには求めていない。 楽しめれば良い。 そういう意味では、彼らは最も状況を楽しみながら闘っているといえる。

それと、勝手に味方のEDFを同志扱いしているが、それはEDFが異世界からやって来て、この荒廃した世界の為にドンパチしてくれているという話を聞いたからだ。

彼らの設定的にも、その話は琴線に触れたらしい。 まあ……別にEDFとしてもGGOとしても、それ程害は無い。 彼らが楽しそうで何よりです。

 

 

「今はこの場を死守するのだ!」

 

 

そう言って、突撃してきたクローン部隊に発砲。 新旧の銃がマズルフラッシュを出しながら、人形を倒していく。

この様も、どこか世界大戦時の防衛陣地に突撃する兵士と対峙しているみたいだ。 野郎どもは興奮し、咆哮を上げた。

 

 

「相手は死ぬ気で突っ込んでくる!」

 

「撃て! この陣地を守るのだぁ!」

 

 

何だかんだ、善戦するコスプレ野郎ども。 SJでは特筆する戦果がなかったので、それと比べたら、彼らは役に立っている。

 

だが、

 

ドゴォオオオンッ!!

 

 

「ウギャアアアッ!?」

 

 

次には大きな爆炎に飲み込まれてしまった。

 

駐屯地からやってきた《レクイエム砲》の砲弾が近くに着弾して……陣地が吹き飛んでしまったのは運が悪いと言わざるを得ない。

ただ、SJと異なり《死に戻り》して来れるので、まだまだ活躍の機会はあるだろう。 たぶん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ? コレの使い方教えて欲しいんだけどぉ?」

 

 

薄暗い、駐屯地格納庫にある《コンバットフレーム A型》の前にて。

そこには両頬にタトゥーを入れた、長身の女……ピトフーイと。

倒れ込んだアイドル体系の女……オペレーターだったクローンが。

傷だらけで、半裸の状態だ。 にも関わらず、遠慮なくピトフーイは蹴り飛ばした。

苦痛を与えやすいようにか、服を脱がされて素肌を晒されたらしい。 既に何度も蹴られたのか、綺麗な身体には赤いエフェクトが煌めいていた。

それでも苦痛の表情も浮かべず、感じ取れるのは虚無の世界だけ。

 

 

「あんた、ワンちゃん達とは違って本物でも偽物でもなさそうだけど……痛みも感じないのかな?」

 

 

今度は《XD拳銃》の銃口を女性の大切な場所……子宮あたりにある、赤いエフェクト内に突っ込んだ。

グリグリとねじ込む様にした銃身は、クローンの内側へズプズプと入っていくが、それでも悲鳴も上げなければ表情を崩すこともない。

 

 

「はあ……ダメかー。 クローンらしいけど、喋る機能もないのかな」

 

 

はぁ、と残念そうに溜息を吐く。 そして、ねじ込んだままトリガーを引くピトフーイ。

バンッと発砲音が狭い室内に響き渡れば、反動で銃身がズボッと抜ける。

撃たれたクローンは、身体を一瞬撼わされた。 尚も表情崩さぬソレは、生きているのか死んでいるのか判断が出来ない。

 

 

「人形遊びをしている間に終わったらツマラナイから、もう良いわ。 そこで死んでなさい」

 

 

ピトはオモチャに飽きた子供のように、クローンを放置。

コックピットハッチが開いた機体に乗り込むと、中の椅子に座って、手探りで操作盤のボタンやレバーを動かし始めた。

 

 

「武装は……右手に機関銃。 左手にロケット砲。 口径は分からないけど、威力は歩兵の比じゃないでしょうね。 弾薬は……ある! 助かるわぁ……起動シーケンスとやらは……もう終わらせてあるのね。 うーん。 ハッチ閉鎖はコレかな……おおっ、正解! 私ってついてるぅ!」

 

 

訓練も受けてないにも関わらず、コンバットフレームのハッチを閉めたり、銃をしっかりと構えるピト。

狭い空間内を埋め尽くす無数の電子機器が放つ淡い光と、外部を写すカメラ映像の光源がピトの視界に情報を次々に与えていく。

どうやら、動かせそうだ。 操作は複雑な筈なのに、それを直ぐに理解していくピトは、運が良いのか天才か。

 

 

「そんじゃ、いっきまーす!」

 

 

ぶざけた声を出しながら、格納庫の扉にロケット弾を発射。 派手に吹き飛ばして外への出口を確保する。

そのまま、ガシャンガシャンと脚を動かして外へと出て行く《ニクス A型》。

問題を起こしそうなヤバいヤツが、EDFの兵器を操り戦場に出て行ってしまった。

 

そんな時。 無線から見知らぬ声が。 味方のEDF隊員らしい。

 

 

『全兵士へ! 直ちに戦闘を停止せよ! 繰り返す! 戦闘を停止せよ! 無抵抗の敵兵士への攻撃を禁ず! 聞こえんのか!! 攻撃を止めろ!!』

 

「へ? なに!? 戦争終わり!?」

 

 

悲しい事に、ドンパチが何らかの原因で終わってしまったらしい。

そのかわり、無線から察するに停戦命令を無視している者がいるようだ。 恐らくプレイヤーである。

 

 

「じゃ、正義の名の下に、プレイヤーキルして良いわよねぇ!?」

 

 

新しいオモチャを試したいピトは、そのまま銃口を構えて歩みを止めない。

彼女もまた、言う事を聞かない人物であったが……無抵抗の敵を殺し続けるプレイヤーも悪いので、ココは制裁を加えて貰おう。

 

かくして。

戦争は一先ず収束していく方向に向かったのだが、ワンちゃんの件が片付いていない。

この後、一部プレイヤーはグロッケンに戻り、再び戦闘に巻き込まれる。

そして本当の敵と対峙し、別れを経験していくのだが、それはほんの少し先の話だ。

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