GGDF(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文と違和感を感じつつ、それでも終わらせるべく……。


終戦の間際は敵ばかり。

 

 

「申し開き、あるかな?」

 

 

グロッケン地下にて。

レン達が駆け付けた後、俺は何故か針のむしろな状況下。

グレ男によってボロボロになった暗闇に浮かぶは、虹彩のない大きな瞳。

その恐ろしい眼には、フルフェイスヘルメットに、防弾着、背中に通信ユニット姿の俺が囚われている。

抵抗することなく、正座姿で。

…………本来可愛い瞳は、今や俺を閉じ籠める冷酷な牢獄だ。

嗚呼、何故こうなってしまったのか。 愛する娘に責められるのも初めてではないが……今回は完全に冤罪だ。 俺は悪くない。

俺は正座の姿勢から、愛娘……レンの顔を見上げて訴える。

幼女相手に叱られている格好は情けない姿であるが、真実を伝えねば。

争いを避ける為の妥協は必ずしも平和的解決になるとは限らないからだ。

その中に含まれる嘘や優しさが相手に伝わる保証はなく、向こうの妄想を肯定する結果になる場合がある。

その行き着く先は想像の域から出ないが、最悪は自身の存在すら脅かされると考えた方が良い。

 

場合によっては物理的に。

 

だから反逆しよう。

心苦しいが、身を守る為だ。 それを悪とし否定するのは個人の自由だが、誰も傷つかない世界はない。

何故なら人の感性には個人差がある。

良かれと言った言葉が相手を傷付ける事もあるし、その逆もある。

大切なのは自分がどう思っているかより、相手がどう思うかを考える事だ。

そして発言し、行動しなければならない。

ひとつの言葉と行動に絶対の正解と間違いはなく、互いの答えは別々に用意されている。

そのくせ、常に責任が付いて回ると思うと厄介極まりない。

面倒だが、それがまた、人の良いところでもある。 個性は大事。

だがな、自分自身の存在を否定され、自虐し、苦しんだところで相手や世界が変わる事はないんだ。

ましてや今回は誤解である。

さあ、真相を伝えよう。 彼女に理解を求める為に。

 

 

「グレ男に制裁を加えるべくだな」

 

「そうやって人のせいにするんだ?」

 

「すいません」

 

 

冷たい言葉で熱が冷めた。 レンちゃん本当怖い。

 

だって、仕方ないじゃないか。

 

可愛い姿とのギャップが恐怖を増幅させてるんだもん。 俺は悪くないのに!

嗚呼、ゴミを見るような目で見ないで。 パパ哀しい。

あと怖いので、出来ればその態度ヤメテ。

 

 

「どうして本人がいないの? 確認取れないんだけど。 その間はワンちゃんに容疑がかかるんだよ…………正直に白状して? 痛くしないから」

 

「ソレ、殺さないって意味じゃないよな? 即死的な意味だよな!?」

 

「ウフフ♪」

 

「勘弁して下さいお願いします」

 

 

ピンク色のP90……ピーちゃんを向けられ、直ぐに土下座。 頭を垂れる。

いや、仕方ない。 いろいろ。

真実を伝える前に殺されるかも知れないからな。

でもね、違う。 違うんだ。 誤解なんだ。

俺は悪くない。 悪くないが、頭を下げる。 相手を逆撫でしない為には、形が大切だと思うの。

レンの機嫌次第では、俺は死ぬ。

プライドとか下らないモノにすがっている場合ではない。

先ずはご機嫌取りだよ。 嗚呼、幼女相手にナニしているんだ。 我ながら哀しくなってくるよ……。

 

 

「顔上げてよ。 土下座して欲しいワケじゃないし。 それと話してる時は、わたしの目を見て」

 

「分かったから、銃口の先で小突くの止めてください本当に」

 

 

ヘルメットをピーちゃんの銃口部分でコンコンと小突いてくるレンちゃん。 その都度、頭が軽く下げられ、ヘコヘコ謝っているみたい。

もうね、怖い。 怖い以外無い。

下手すると地底より怖い。

相手の目を見て話すのは大切だと思うし、それは礼儀だろう。 状況によっては喧嘩売っていると思われるが……。

だけどね、今回は正直怖いです。 見たくないです。 喧嘩する前に負けてます。 虹彩のないドロドロした瞳とか、いろいろと。

でも言う事聞いちゃう。 死にたくないから。

いくらEDF製アーマーやフルフェイスヘルメット越しでも、至近距離からP90を、それも『首』とか、防護が弱いウイークポイントにフルオートされたら……うん。 死ぬ。 中身入りヘルメットが床を転がりかねん。

トリガー下部にあるセレクターがどうなっているか見えないが(見たくないが)、たぶん、怒りのフルオート。

あーもう顔上げ笑え。 英雄が闘う最前線(笑)だ。

 

 

「じゃあ納得いく話をして。 どうしてこうなったのかを」

 

 

そういうと、銃口を向けたまま、小さな左手を振ってみせるレン。

ナニかが溶けたモノや、壊れた机や椅子、麺類を床にぶちまけたように散乱するケーブルが見える。

……それと、俺の弾切れを起こしたセントリーガン。 ウィンウィンと左右に首を振っている。 虚しい。

 

 

「だからだな、グレ男が暴れて」

 

「ワンちゃんも関わったよね」

 

「事情があった」

 

「へー。 女の人を裸にしなきゃいけない事情が?」

 

「逆にそれだけで済ん……イテッ」

 

「事と返答次第じゃ、撃つよ?」

 

 

俺を蹴って、恐ろしい発言をされた。

もう、ナンデそんなに怒っているの。 why?

そんな疑問を他所に、別の方向を指差すレン。

釣られて見やれば、気絶したオペ子、それと何人ものクローン達。

女性だと分かるアイドル体系の身体に、同じ綺麗な……だけど無表情な顔に虚ろな目。

その内の1人は大きなバスタオルを巻かれて大切なところを隠している。

その隣にいるもう1人の娘、フカが巻いてあげたらしい。

やる事やって、今はコチラを見守っているが……苦笑いするばかりで助けてくれない。

他の者たち……クローンもそうだが、駆け付けたストームチーム(軍曹チームがいないのは幸か不幸か)の面々もだ。

ああ、止めろ。 そんな目で見るな。 ヘルメット越しでも分かる。 俺を蔑むな。 無罪なんだぞ俺は。

今や俺は、制裁を下す側ではなく下される側に成り下がった。 さながら、公開裁判といったところか。

で、あれば弁護人がいなければならない。 つまり……だれかたすけて。

 

 

「……アレは、レン達が駆け付ける前だ」

 

 

だが振り返れば、味方のいない状況なんて戦時中に幾度となく経験したじゃないか。

その度に乗り越えて来れた。 きっと、今回も乗り越えられる。

どんな時でも希望は必要だ。

俺は正座のまま、弁解を始めた。

駄目だ、弱気になっては。 ちゃんと説明すれば分かってくれる筈。

反逆しろ……! 例え娘相手でも、理不尽な状況下でも、胃が痛くても!

そも、戦後処理も残っている。

そう再度決意し、事の経緯の話をしていく。

勿論、嘘偽りの無い、ありのままの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。 アレは皆が駆け付ける前。

連絡途絶した本部に、グレ男が関わっていると察した俺は、戦場をプレイヤー達に任せてグロッケン地下に戻ったのだ。

だが俺が辿り着いた頃には戦闘が終了しており、見るも無残な光景が広がっていた。

クローンの遺体に囲まれる上半身裸のグレ男、そして半裸のクローン、気絶するオペ子……。

この暴力と肉欲を満たさんとする強欲のヒャッハー空間。

元の世界でも見た光景に、俺は全てを悟る。

 

犯人はグレ男。

 

刹那、堪忍袋の緒が切れた。

今までの鬱憤を晴らす時だとして、俺はグレ男に叫んだ。

向こうも吠え返し、《PAー11》アサルトライフルによる銃撃を浴びせてきて……そこからドンパチに発展した、というワケだ。

 

 

「先に手を出したのは向こうだ。 その子も既に裸だったんだ」

 

「普通、銃撃戦で裸になる?」

 

「グレ男の足下に強酸を発射する銃《アシッドガン》の残骸が転がっていた。 恐らくソレの所為だな」

 

「グレ男さんが酸で防弾着だけ、溶かした? そんな器用な事ある?」

 

「パパ……どっかの薄い本じゃないんだから」

 

「やっぱ、ワンちゃんかグレ男さんか。 どちらにせよ、見た時点で重罪だよ」

 

「女の敵!」

 

 

早速オカシイ方向に向かう。

見たら犯罪なのか……事故でも駄目なのか?

いや、まあ、女性は色々と気にすると言うからな。

クローンがどう思っているか、あの表情からは読み取れないが……いや、なんか冷たい目が責めているように感じるが……。

いや……諦めるな。 諦めたら終わる。 いろんな意味で。

本部も戦争末期、言っていたではないか。 希望は必要だと。

 

 

「見たくて見たワケじゃない」

 

 

正直に言う。 決してやましい気持ちがあってココに来た訳じゃないと。

すると、スラッとしたおねえさんな、飛行ユニットを背負うスプリガン隊の隊長と黒い強化外骨格に身を包むグリムリーパー隊長に冷めた口調で返された。

合わせて女性陣の金髪幼女なフカも。

 

 

「潔く罪を認めろ」

 

「これで世界を救った男。 笑えるな」

 

「サイテーな部類だからね、ソレ」

 

 

嗚呼、酷い。

空飛ぶ揚陸艇やテレポーションシップに囲まれてるより酷い。

てか、グリムリーパー隊長。 アンタ男でしょ。 ナニ女性陣の味方してんの。

俺の味方は俺自身しかいないのか。 地下空間なのにエアレイダー単騎で闘うしかないのか。 状況は最悪じゃないか。

 

 

「俺は正直に言って、イテッ」

 

「ワンちゃん……ゴメンね。 もっと躾けておけば良かった」

 

 

レンに再度蹴られた。 心まで痛い!

ココはもう、見てしまって御免なさいと言うべきか?

正直に言えば、ドンパチに集中していてそれどころじゃなかったし、やましい気持ちなんて本当になかったのだが、周りが納得しなきゃ延々に解放されそうにない。

それと気になるコトがあるが……レンが特に殺気立っているのは何故だ。 乙女心は分からない。

だが論点をズらすつもりはない。 したら、余計に反感を買いそうだ。

俺は様子見をするべく、受け答えを行う。

ナニはともあれ、俺の命を繋ぐコトに集中しようそうしよう。

 

 

「…………アーマーが溶け始めて、直ぐに脱いだのだろう。 使用者はグレ男だと思うが……本人はドサクサに紛れて逃げたようだしな」

 

「なら、別の人に確認だね」

 

 

そういうと、レンがアイコンタクトでフカに指示。 フカはジト目のまま、隣のバスタオルなクローンに質問していく。

いや……話し掛けても答えられないんじゃないか?

ナニかプロトクルがあるかも知れないが、この子達が話しているところを見た事がないぞ。

 

 

「答えられないと思うが」

 

「ちょっと黙ってよーか?」

 

「アッ、ハイ」

 

 

レンに銃口を、首元に押し付けられた。 痛い。 心なしか、怒りが増した気がする。

ああ! グリグリしないで! ホント痛い!

失言だった!

アレだ。 「辛い事を話せるワケないだろグヘヘ」みたいな発言に聞こえたのかも知れない。 やっちまったか。

そう考えると、今の俺って最低な男に見えているのでは?

嗚呼。 俺は今、様々な苦境に立たされているよ。

そんな光景に目もくれず、フカはバスタオルに質問開始。

無駄に終わると思うが、希望は必要だ。

 

 

「死んだ魚の目みたいな、おねーさんに質問。 目の前のヘルメット男にナニかされた? 大丈夫だから、おねーさんに話してみな」

 

「…………」

 

 

おい。 フカの方が余程酷い事言ってないか?

そして誰もつっこまない。 哀しいかな、個人差による反応が違い過ぎる。

それとも女の子だから? コレが男と女の違いか!?

戦前は男女平等と良く叫ばれていたが、コッチの世界ではないのか!?

取り敢えず分かった事は、俺の評価ってカナリ低かったらしい。

色々良くしてあげたのに……パパ、ショック。

そして無反応のバスタオル。 やはり無駄に終わると思っていたが、証言してくれれば無罪を証明出来たのに……無理か。

 

 

「レン裁判長殿ォ! 証人は精神的ショックにより話せません!」

 

「そう……仕方ない。 私の裁量で処刑するしか」

 

 

ファッ!?

サラッとトンデモナイ言葉が聞こえたぞ!?

へ、ナニ!? 処刑!?

 

 

「処刑は決定事項か!? 証拠不十分だと思うんだが!? "推定無罪"とかないのか!?」

 

「潔く散って」

 

「問答無用!?」

 

 

情状酌量の余地なし。

ドロドロした目のまま、ピーちゃんのトリガーが絞られ、『遊び』が死んだのを確認。 同時に俺の目も死んでいく……。

次にちょっとでもチカラが加われば、俺は死ぬ。 死ぬ一歩手前。

もう裁判関係ないよね。 打ち首みたいになってるよ。 刀じゃなくて銃だが。

だがココで、言いたい事があると察したのか。 レンが提案をしてきた。

ココを乗り切れるなら、受け入れようじゃないか。

 

 

「じゃ、選択肢をあげる。 このままピーちゃんのサビになるか、それとも」

 

「そ、それとも?」

 

「表に出て、ガンシップの攻撃を受けるか」

 

「死なない選択はないのか」

 

 

どこかで手に入れたらしい、コーティングガンを大きくしたような……腰に付いているビーコンガンをチラ見せしてくるレン。

どうあがいても死んで欲しいんですかそうですか。 そこまでの罪を俺は犯したのか。

だがな、一方的にシネシネ言われた挙句にあの世行きは御免だ。 やらなきゃいけない事も残っている。

ココはせめて、レンが殺気立っている理由だけでも知っておきたい。

俺は冷静に、静かに言葉を発しつつ語りかける。 これでレンがご乱心を止めて、平常心になってくれれば、突破口は見えてくる。

 

 

「…………なあ、レン。 何故そんなに怒っているんだ。 女性の裸体を見たのは罪深い事だとして、俺はそれに対して謝ろうと思う。 だが、俺を殺すほどの事なのか?」

 

「ワンちゃんは本物で、《ハラスメントコード》が効かないでしょ? すると、プレイヤーと間違いが起きるかも知れない。 そうでなくても、既に大会はメチャクチャだし大規模な戦闘まで起きてるし、この光景から、今後起きるであろう問題を危惧した結果。 手遅れになる前に処刑する事に決めたの……他にも色々、終わらせられそうだし。 うん、だから死のうか?」

 

 

虚ろな目で、それっぽい事を言うレン。

だがしかし。

そんなに俺を……殺す程なのか?

今までは兎も角、今回の件は俺というよりEDFの所為なのは、レンも分かっているだろうに。

クローンもGGO側ではなく、EDF側だ。 混種混合はしてないじゃないか。

やはり一応、聞いておこう。 答えを聞くのは怖いが、死ぬ前に知っておきたい。 絶望の淵に沈む前に。

 

 

「俺の事が嫌いか?」

 

「…………」

 

「ハッキリ聞きたい」

 

「…………わたしには、ピーちゃんがいれば良い、から」

 

 

ぷるぷる震え始める我が娘。

何故ココでピーちゃん? why?

そしてワケ分からず葛藤して、辛い想いをするレン。

どうしたものか。

チラリと、ヘルメット越しに周囲を見る。 クローン達は相変わらず棒立ちで、スプリガンとグリムリーパー隊は静観。

全てはレンの行動待ち。

そして、レンは自分がアクションしなきゃ、でもどうしようと悩んでいる。

だから、どうしたら上手く後腐れなく進められるか悩んで、止まってしまったか。

フカは……親友故か。 分かりきっているように、半分呆れつつも此方にウィンクしている。 「助けてあげて」のサインか。

まあ、こんな時、助けてやれるのはパパたる俺だろう。

仕方ない。 パパ、一肌脱ぐ……いや、諸肌を脱ぎ悪役となろう。

銃や装備品は使わない。 こうも接近していては、使う余裕もない。 《サプレスガン》を出す間に撃ち殺される。

ならば、やるのは素手による格闘戦だ。 苦手だが、娘と踊ってやろうじゃないか。

 

 

「レンのコトは好きだ。 だが殺されるのは理不尽。 このままアホな理由で死ぬ気は無い!」

 

「ッ!」

 

 

一瞬怯んだ。 今がチャンス。

ゼロ距離のピーちゃんを左腕で素早く払いのければ、レンの虹彩を取り戻した綺麗な、だけど驚きて丸くなっている目がハッキリ見えて。

刹那、左頭部側面で強烈な連続した閃光と複数の爆音。

だが銃撃を回避した今、構わずレンの右腕……ピーちゃんを持つ腕を掴んで捻る。

 

 

「うぐっ!?」

 

「どうだ!」

 

 

例えピーちゃんを落とさずとも、利き手の、腕の自由を奪われれば銃口は向けられまい。

そして必然と次に来る手は、

 

 

「駄犬がぁ!」

 

 

左手、もしくは足による抵抗。 或いは噛みつき。 外野からの野次は……考えたくない。

 

レンは少し遅れて何とかナイフを抜き取り、首元目掛けて斬りかかってきた。

レンが持つとナタみたいに大きく見えるな……いやしかし、容赦を知らない子兎だ。

だがな。 来るのが分かっていれば怖くない。

ましてや、利き腕を掴んでいれば。

 

俺は持ったままの右腕を軸にして、手間に引き寄せる。 その時の刹那の勢いで、

 

 

「ふっ!」

 

「がっ!?」

 

 

背負い投げの様に、その小さな身体を投げ飛ばす。

身長150cmに満たぬ小さな身体は180度、分度器の弧を描いてドシンッと床に叩きつけられた。 音がかなり痛そうだ。 HPもソレナリに削れたかも知れない。

我ながらエゲツないと思う。 側から見たら色々サイテーだ。 だがコレもレンの為なのだ。

 

…………いや、正直に白状しよう。

俺、死にたくなかったし。 取り敢えず目の前の銃口を消したかった。

正直に言う。 内心メッチャ怖かった。 失敗したら死んでたよ。

野次も飛んできたら、いよいよダメだった。 結構危ない橋を渡ったと改めて思う。 生きていて良かったと思うわけ。

とりま、次弾が来る前に説教モドキを垂れておこう。 口を開いている内は銃弾は飛んでこないだろう。 たぶん。

 

 

「何でも銃やらナイフやら武力に頼るな。 GGOでは当たり前なのだろうが、俺と会話しているつもりなら、そういうのは止めろ。

この世界がゲームなのと、そもそも命のやり取りですらないから奪い奪われても、《死に戻り》して笑い合い、友になる事もあるのだろう。

だがレン。 俺とお前、そしてピトとは殺し合わずとも、会話の中から友になれたじゃないか。 つまり、何が言いたいかというと、選択肢は1つじゃない。

1人じゃ決められないなら、俺が助けてやる。 俺がダメならピトでも、それこそ親友のフカやエム達に頼れ。 1人で悩むな。

お前の本当の望みは何だ。 言いたい事も言えてないじゃないか。

望みとは、SJ2の時みたいに誰かを、或いは俺を殺す事か? 教えてくれ。 俺はお前の助けになりたい」

 

 

我ながらナニを言っているんだ。

床で仰向けに倒れるレンに、矢継ぎ早に語りかける俺。

怖くて外野を見れない。 見たら光線が飛んできそう。

 

 

「わ、わたしは……うぅ」

 

 

ぐすっ、と涙を浮かべ始める。

え、なんか俺が泣かしたみたいになっちゃったよ。

実際そうなんだろうけど、ヤメテ。 心が痛い。 もう反射的に謝りたい。 抱き締めてナデナデしたい。

そんな様子を見かねたのか。 フカが助け舟を出してくれた。 持つべきは心の友だ。

 

 

「この機会に言っちゃいなよー。 『わたし以外の裸、見ちゃダメ!』って」

 

「ちょっと美優!?」

 

 

いや。 レンの素肌を見たら見たで、怒られそうな気がする。 そして何時ぞやみたいにペド野郎扱いは勘弁だ。

そして突っ掛かる他の外野。 出来ればずっと黙っていて欲しい。

 

 

「ふむ、やはり好いていたか。 気持ちは分からんでもない」

 

「ストーム・ワンの人望が為せるワザか」

 

 

嗚呼。 レンを刺激するな。 茹蛸みたいに赤くなっていくのが見えないのか。 彼女の戦闘服のデザートピンクより目立ってるじゃないか。

全く。 自身の命を削る様な事をしてはならない。

このまま暴走してピーちゃんを振り回されたら、死ぬかも知れないのに。

俺は倒れてるレンの上に覆い被さって、腕を拘束しておく。 身体が小さいのと、力は強くないので難しくはない。

 

 

「暴れるな。 そのままジッとしていれば大丈夫だ……俺に任せておけ」

 

「ふぇっ」

 

「うわっ! パパ大胆!」

 

「子ども好きだとは思っていたが……そういう趣味が」

 

「笑えないぞ」

 

 

誰のせいだと思っているんだ。

ピーちゃんの火力でスプリガンの高機動についていったり、強化外骨格に身を包み、シールド装備のグリムリーパーを倒せるとは到底思えないが、傷の1つでも負う危険性があるなら拘束するべきだろう。

それに、この場にはフカ、クローンや気絶中のオペ子がいるのだ。 其方はピーちゃんの火力は危険故に。

 

 

「えっと……みんな見てるから!」

 

「お前の行為を見届けてくれる人がいる、と考えれば良い。 ほら、ピーちゃんのコトは考えるな。 今は俺のコトだけ思ってくれ。 頼む」

 

 

本当、俺の為に冷静になって下さい。 周りの野次にいちいち反応してたら、進展ないです。

俺は危険物であるピーちゃんをそっと取り上げて、刺激しない様にゆっくりと、上部の縦長な半透明のマガジンを外し、弾を抜き、ゆっくりと、ゆっくりと本体を床に置く。

そのサマを見て、ひとつひとつの動作に息を荒くして見るレンは、やはり危険だ。

それとフカもスプリガン隊。 なんでお前らまで赤くなってるの。 今の武装解除の何処にそんな要素があるの。 全体が再び静かになって良かったけど。

 

 

「話を戻すが、レンの望みはなんだ」

 

「…………ワンちゃんと、ずっと一緒にいるコト」

 

「そうか」

 

 

勇気を持って答えた願い。 俺と一緒にいたい、か。

だが……それは叶わない。

 

 

「すまないが、無理だ」

 

「えっ」

 

 

レンは大人だ。

優しい嘘じゃなく本当の、俺の話をしていこう。

この戦争がなければ、或いは終われば黙って出て行くつもりだったが。

 

 

「本来、俺はGGOに存在しない。 元の世界に帰るべきだ。 それはEDFの一部隊員や本部、大勢のプレイヤーが思っている」

 

「なによ、それ」

 

 

まあ、こう反応するか。

 

 

「そんなの周りが思っているコトでしょ! ワンちゃんは? ワンちゃんはどう考えてるの!?」

 

「帰る。 《人の声が響かない地球》にも俺を待っている人達が、助けが必要な人達がいるんだ」

 

「そんなの……そんなの!」

 

 

プルプル震えて、今度は怒りで支配されていく我が娘。 俺は拘束を解き、少し離れた。

そして手にはリムペッドガンを構える。

納得はしないと思っていた。 そして、結局は銃やナイフ……武力に訴えることも。

 

 

「わたしが止める! EDFも、ワンちゃんも!」

 

 

人の話を聞かぬとは悪い子だ。 そしてワガママなのも。 そこがまた、可愛いとも思う。

まあ、ここはGGOだ。 言葉より銃や爆弾でカタをつけるのが礼儀か。

さて。 もう一度レンを大人しくさせようじゃないか。

 

 

「他は手出し無用。 レン、表に出ろ。 お前の本気を見せてくれ」

 

 

グレ男に続き、連戦はキツイ。

それにこんなことしている場合ではない。

だが、娘と戯れるのは最後かも知れないのだ。 少しくらい、大目に見て貰おう。

 

 

「じゃ、ワシも参戦しようかのぉ」

 

「共に踊ろうじゃないか」

 

「死神同士、一度手合わせ願おうか」

 

「隊長! 面白そうなんで俺ちゃんも参戦しますよ! あ、もちろん隊長の味方ッス!」

 

 

あれ。 大目に、みんな敵になったよ。

それと最後にグレ男。 お前、何処に隠れていたんだ?

そんな絶望に、希望の光が射し込んだ。 別の、静かな女性の声に振り返れば、そこにはひとりのクローンが。

見た目に差異はないが、彼女は舌が回る方らしい。

 

 

「……お父さん。 戦力ならココにも。 事情は聞きません」

 

「あー、えっと、おとお……いや、それより君は?」

 

「『M4』とでも。 他の子と異なり、唯一の銃が《M4レイヴン》なので。 他のクローンは、本部のオペレーターからの指揮下を離れました。 貴方か私の指揮で動くように再設定されています。 どうぞ、ご指示を」

 

 

混乱する頭を整理しつつ、戦力を確認していく。

えーと、此方の味方はグレ男に、M4。 それとクローン。

向こうはレンとフカとグリムリーパーとスプリガン。 うん。 絶望的。

嗚呼。 なんで敵になったのだ。 そんなに俺が気に入らなかったのか。

まあ、なるべく不殺でいくが……保証出来ない。 グレ男いるし。

 

 

「それとバスタオル。 お前はココで待機、オペ子を本部に渡しなさい」

 

 

非戦闘員もいるし。 面倒だ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、表にみんなして出るコトになったのだが……。

空を覆い、闇落とす巨大な金色の円盤を見たとき、プレイヤーは目を丸くし、俺らEDF隊員は握り拳を作って闘志を燃やすコトになる。

 

 

『ええ、ええ……こうも上手くいくとは思っていませんでした。 プログラムから、NO.11を……いえ! NO.12を創れるなんてねえ! アハハハハハッ!』

 

 

オペ子の狂った声を無線越しに、俺たちはまた、円盤を墜とす羽目になりそうだと察したよ。

 

 

『こちら本部! 緊急事態発生! 大至急、指定座標に集結せよ! マザーシップがグロッケン跡地上空に突如として現れた! 動けるEDF隊員及びプレイヤーは迎撃に向かえ!』

 

 

オペ子の件は後で本部に聞くとして。

今は何とか、円盤を墜とすとしよう。 なに、今度も上手くやれるさ。

ただ……まさか、ペプ◯マンが乗っているんじゃないだろうな。




マザーシップ戦へ。 仲間割れしている場合でなし。
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