GGDF(完結)   作:ハヤモ

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mother ship No.12迎撃戦

61.mother ship No.12迎撃戦

 

やれやれ。 まさかGGOで、再び見るコトになろうとは。

上空を覆う巨大な金色の円盤を見て思う。 こりゃ、骨が折れるぞと。

 

 

「な、なにあれ……ラ◯ュタ!? フライングソーサー!?」

 

「アレもEDFの兵器?」

 

「フザケンナ。 ありゃ、プライマーの兵器で、マザーシップと俺達は呼んでいる」

 

「プライマー?」

 

「俺たちの地球を、世界を侵略してきた宇宙人」

 

 

隣でフカやレンが騒ぎ、いつの間にかヘルメットとアーマーを着込んだグレ男が説明する。 おおよそ合っている。

 

マザーシップ……EDF隊員ならば知らない者はいないだろう。

巨大な質量の皿状円盤で、街をひとつ飲み込む程の大きさがある。 侵略者供の親玉というべき存在だ。 最初は世界で10機確認。

末期には11番目を確認し、ペプ◯マンが乗るコマンドシップであった。

巨大砲台で武装している他、コマンドシップは加えて周囲に展開する無数の浮遊砲台で武装。

そして攻撃を受け付けないシールドを何重にも展開する強敵だ。

目の前のは最悪のケースを想定して、強力なコマンドシップ型と思った方が良いな。

 

ともあれ、本部より迎撃命令が下っているなら墜とすだけ。 味方部隊も、じきに来るだろう。

 

そんな中、聞き覚えのある女性の声が。 戦時中、本部や前線のサポートを行い、お世話になった《戦略情報部》の少佐だ。

ただ少し疲れている感じがある。 部下が狂ったからか。 それでも仕事だと隠しているのが伺える。

クールビューティを演じているワケじゃないだろうが、心中お察ししよう。

俺も専属で担当してくれた子だったのもあり、ショックであったからな。

 

 

『……こちら《戦略情報部》。 諸事情で遅れました、これより本部及び前線のサポートを行います』

 

「久し振りに声を聞けたのは嬉しいが、無理するな」

 

『いえ、大丈夫です。 今回は私の部下が原因ですから。 本来、私が処理するべきですが……前線の兵士のチカラを借りねばならないようです。 すいませんが……ストーム・ワン。 またも迷惑をお掛けします。 そして、お願いします。 悲劇を終わらせて下さい』

 

 

涙を堪えているのか。 今まで表に出られなかったのには、色々あったのだろう。

疲労や心労が声から伝わってくる。 だが、ここで下手に労わるより、仕事の話を振ろう。

何かの役に立ち、問題解決に自身が携わっているのが、今1番の慰めになるだろうから。

 

 

「分かった。 サポート頼む、駐屯地側の戦力はどうなった?」

 

『……はい。 戦闘は一時止まりましたが、プレイヤー間で思考の違いから銃撃戦が発生しました。 負傷者が多く出ましたが、現地のEDF隊員らにより、プレイヤーを鎮圧。 各隊再編成し、大至急グロッケン跡地へ急行中』

 

「よし。 それまで前線を支えるぞ」

 

 

駐屯地側でナニやら問題が起きたらしいが、何とかなったそうだ。

ならば、到着するまで派手にやろうじゃないか。 味方が多いと互いに気を使うからな。

他のメンバーも同じ想いか、闘志を燃やしている。 心強い。

 

 

「アンコールをした覚えは無いんだがな。 現れた以上、もうひと踊りといこう」

 

「お父さん、指示願います」

 

「ふん。 黄泉の国から戻ってきたか」

 

「ストーム・ワン。 アレをもう一度墜として見せろ。 それで貸し借りはナシだ」

 

「ああ、行儀の悪い客には帰って貰うだけよ」

 

「行儀の悪い客はEDFだと思うけど」

 

「あー聞こえなーい聞こえなーい!」

 

 

娘とグレ男の会話を無視しつつ、バキボキと殺る気満々に腕を鳴らす。 士気は上々。

それを知ったか知らずか、マザーは上等だと言わんばかりに真下に針のような、巨大砲台を展開。

バチバチと電撃が先端に集まり、光の玉が大きくなっていく。 戦法はあの時のままか。

分かりやすくて結構。

俺はポイ、とビークル要請用の発煙筒をひとつ地面に転がして焚いておいた。 もうひとつ、遠くに投げておく。 将来用だ。

 

 

「あれ、絶対にヤバいヤツでしょ! 逃げた方が良いって!」

 

「ウチの子は、こう言っているが。 情報収集を優先するか?」

 

『いえ。 退避願います』

 

 

フカが子供っぽく指をさして騒ぐから、俺は少佐に皮肉を言っておく。

あの時も皆んなが直ぐ退避していれば、犠牲は少なかっただろうな。 もう、過ぎたコトだが。

この雰囲気も、開戦した時を思い出す。 悪い思い出なのは言うまでもない。

 

 

「各自、後退しつつ巨大砲台に撃ちまくれ。 破壊する。レンとフカは地下に退避」

 

「わ、わたしだって」

 

「見れば分かるだろ、対空ミサイルかロケット弾、有効射程距離の長い狙撃銃でも無ければ無理だ。 案ずるな、素敵なオモチャを用意しておく。 今回は役に立って貰うからな」

 

「ッ! うん!」

 

「我々も射程圏外なのだが」

 

「俺達は槍だ」

 

「レイヴンも射程圏外です」

 

「後で活躍してもらう。 たぶん」

 

 

嬉しそうに頷くと、自慢の脚力で走り出す我が娘。

フカが置いてけぼりを喰らって、「待ってよレーン!」と、わせわせと後を追う光景が微笑ましい。

他のストームチームのボヤきは無視しておく。

 

 

「俺も地下に行ってますねぇ」

 

「お前は頑張るんだよ!」

 

「あん、酷いわ隊長ッ!」

 

 

そして、ドサクサに紛れて逃げ出すグレ男の首根っこを掴む。

地下の件含めてお仕置きしたいところだが、猫の手……いや、兎や子犬、馬や烏の手も借りたい。 ココは戦って貰おう。

あれ、烏に手はあったか? まあ良いや。

 

 

「そうやって、チビばかり可愛いがってりゃ良いっすよ! さっきまで喧嘩ムードだったのに……仕方ない。 俺は《グラントMTX》で闘いますから許してねぇ」

 

 

かなりゴツく、SFチックなロケットランチャーを何処からともなく出して、肩に担ぐグレ男。

長身の砲は、明らかに人の身長を超えており重そうだ。 表面に電子機器の類やスコープが付いているから余計に。

逆にコレらが無ければ、武器そのものがミサイルかロケット弾にすら見えてくる見た目だ。

後方の、ロケットブースターにも見えなくもない、反動を消す為と考えられるガス噴射口下部には巨大なボックスマガジンが挿入されているように見える。

実際、発射可能な弾頭は単発ではなく複数であり、もっといえば4発連続して発射可能の強力な兵器であるということ。 連射速度は確か1.3発/秒程と早い。

どこかの宇宙世紀なロボットの武装にも、こんなのあったなぁ。

EDF謎の技術。 今更突っ込まないぞ。

 

 

「ソレ、戦時の混乱で行方不明になっていたグラント・ロケットランチャーの最終完成形じゃないか。 ホント、どこから見つけてきたんだ」

 

「戦時中に拾いました」

 

「……まあ、射程はある武器だ。 頼んだぞ」

 

 

管理体制にも突っ込まないぞ。

グレ男は早速、砲口を上げ、ドッカンドッカン巨大砲台に撃ちまくる。 その都度、後方にガスを噴射、白煙で辺りの視界が悪くなる。

弾が切れると、後部の巨大なマガジンを引き抜いて、新品を叩き込んでは、構わずまた撃ちまくるの繰り返し。

砲台側面……斜面から小さな爆炎が複数見えた。 遠いのと砲台が巨大過ぎて、弾着時の大きな爆炎が小さく見えるのだ。

だが確実にダメージは与えている。 戦時の記憶と感覚を頼りにするなら、初弾発射には間に合わないだろうから、退避準備は進めておこう。

 

 

「お父さん」

 

「分かっている。 状況に備えろ」

 

 

それに。

予想が当たって欲しくないが、敵はマザーだけではない。

あの終戦した日、多くの敵歩兵部隊もいたのだ。 杞憂に終われば良いが、備えておいて損はない。

その時こそ、対空戦で微妙な……げふん、精鋭のグリムリーパー隊とスプリガン隊の出番だ。 それと、いつのまにか味方になったクローン部隊。

そして後に来るであろう、プレイヤー含む歩兵部隊のみんな。

 

 

「おい、今失礼なコト考えただろ?」

 

「戦闘中だ。 私語は慎め」

 

『コンテナ投下!』

 

「おっ?」「きたか」

 

 

そうこうしているうちに、輸送機ノーブルが飛来。 片方の一機は遠方でホバリング。 EDF印のコンテナが2つ投下された。

ガシャーンと派手な音と共にデコボコの地面に落ち、直ぐにコンテナが消滅。

中から現れたのは兵員退避用に《武装装甲車両グレイプM9》と遠くで重武装のコンバットフレーム《ニクス バスターカノン》。

逃走用と戦闘用だ。 今は前者を使おう。 遠くに投げたのは、砲撃の被弾を避ける為だ。

 

 

「隊長ッ! 巨大砲台の1発目が来そうですよ!」

 

 

グレ男が撃方を止め、叫ぶ。

上を見やれば、バチバチと針の先端の光が大きくなっていた。 今にも落ちてきそうだ。

こりゃ来るな。 退避しなければ。

 

 

「全員グレイプに乗り込め! 運転は俺がやる!」

 

「スラスターがあるから構わない」

 

「飛行ユニットで十分退避可能だ」

 

「あっ、俺も《アンダーアシスト》あるんで」

 

『既に私含むクローンは退避させました』

 

 

あれ。 みんな冷たい。

いいもん。 俺だけ乗って退避するから。

寂しい想いをしつつ、グレイプの運転席に乗り込むと、直ぐにアクセルを蒸す。

軍用車のパワーは凄く、みるみる加速、砂埃を立てながらマザーシップから離れていく。

デコボコした悪路なので、ガタガタ揺れて乗り心地は悪いが慣れたものだ。

そしてそれ以上に早く動くグリムリーパーの面々や空駆けるスプリガン隊。 あとグレ男。 戦場でピースサインしながら走るな。 どいつもこいつも変態しかいない。

 

 

「来るぞー!」

 

 

砲塔を動かして、ガンカメラ越しに砲台を見やれば、世界は眩い緑と白を混ぜた光で覆われて……次には全てを巨大な爆炎で包み込んでしまう。

爆風が吹き荒れ、地響きと轟音が空間を揺らし、クレーターだらけの、グロッケンがあった大地を、大きな穴で統一。

その凄まじい威力は、離れたグレイプをも揺らす程。 ハンドルを少し取られる風圧も合わさる。

他の面々は少し姿勢を崩すも、そこは精鋭。 コケたり墜落せず体勢を立て直す。

 

戦時中に幾度と見て経験してきたが……全てを焼く破滅の炎は、嫌な思い出を沸々と湧き起こしてきやがる。 また見る羽目になろうとは、忌々しい。

 

 

「いやー! 久し振りに見たけどスゲーですねぇ!」

 

「ああ。 グロッケンがあったら、1キロ四方は吹き飛んだかもな」

 

「その前に全部吹き飛ばしたそうで」

 

「お前の所為だ。 それと娘の為だ」

 

「それで消される街が可愛そうっす」

 

「次はお前を消してやろうか」

 

「遠慮しときます。 戦闘中ッスよ」

 

 

グレ男と軽口を叩き合いつつ、改めて思うな。 相変わらず凄まじい火力だと。

今回は誰も犠牲者がいなかったコトに安堵するばかりである。

 

 

「落ち着いたら、再度攻撃開始」

 

『パパ! 凄い揺れたんだけど、大丈夫?』

 

『ワンちゃん!』

 

「問題ない。 君達は指示あるまで地下から出るな」

 

 

フカとレンから心配する無線が聞こえたので、返答しておく。

これで無謀にも地上に飛び出されたら、生存率は大幅に下がるので、意外と頑丈な地下に籠っているように言う。

ピンク色の《P90》ピーちゃんと、グレラン《MGLー140》は決して弱くないが、マザーシップと闘うには無謀な銃種だ。 空飛ぶ相手だ、射程が足りない。

プライマーの大群が現れたら、まだ活躍出来るだろうが火力不足。

レンが誰かから持たされた、ガンシップへの要請用ビーコンガンは役に立つだろうが、何にせよ戦力が整ってからだ。

浮遊砲台からの攻撃が加われば、蒸発してしまう。 駐屯地での戦闘で弾薬を消耗しているだろうし、兵士達の補給の段取りもしなければ。

嗚呼、隊長は忙しい。

 

 

「マザーシップ下部にプライマーの歩兵部隊が突如として現れました。 かなりの数です」

 

 

クローンの子、M4が報告してくる。

ふむ。 やはり来たか。

 

 

「悪い予想は当たるものだな。 詳細は?」

 

「EDFデータベースによれば、《コスモノーツ》。 巨大なグレイ型宇宙人。 第二次・地球降下部隊の主力だったものです」

 

「各隊迎撃。 増援到着まで戦線を維持する」

 

「この世界に奴らは必要ない」

 

「我々スプリガンの出番だ」

 

「迎撃します」

 

「あっ、俺は砲台で忙しいんで」

 

 

予想していた客……歩兵部隊が現れてしまった。 休まる暇はない。

砲塔のガンカメラ越しに見やれば、防弾性の高そうな、甲冑に見える宇宙服に身を包んだ巨人……ロボットにも見えるヤツらが確認出来た。 懐かしくも会いたくなかった。

連中は憎き侵略者の、文明を築いた主ではという話もある。 まさか、再び見るコトになろうとは。

 

なんであれ、SFな見た目と悪趣味な黄金色をした銃……《エーテルライフル》や散弾銃のような《ラプチャーガン》、狙撃にも用いられる《高出力レーザー砲》、重武装兵が持つ連射能力の高い《エーテル・ヘビーガン》、重武装炸裂兵の開閉式の発射口を持つ大型火器《レッキングランチャー》を構えて攻撃してくる以上は敵なので倒す。

交渉なんて頭から考えない。 同じ悲劇は御免だ。

 

 

「もう二度と会いたくなかったんだがな。 奴らは地球を諦めてGGOに侵略を始めたか?」

 

 

ボヤきつつ、戦闘準備を進めていると、本部から無線が。

うむ。 こうして直接話される機会はなかったから、新鮮味がある。

 

 

『こちら本部。 いや、そうではないのだ。 マザーシップ含めて、目の前のプライマーはプログラムから生まれた偽物だ』

 

「また偽物の話か」

 

 

だが理解に苦しむ内容は困る。

偽物と本物の話が未だ続くか。 もう俺にとっては目の前でドンパチしているモノ全部が本物で良い気がする。

そうすれば対応に困らない。 撃たれたら撃ち返すだけ。 倍返しだ。 過剰防衛上等。

対話? 現場はそれどころではない。 そも、相手にその気はないだろう。

 

 

『グレ男は知っていると思うが……まず、GGOはゲーム世界。 プログラム、システム上の世界だ。 それは良いな?』

 

「理解している」

 

 

戦闘中に話すコトではないだろうが、聞いておこう。 本部も早期に知って欲しいのだろう。 この異常事態の話を。

ガンカメラではグリムリーパー隊やスプリガン隊が《コスモノーツ》の群れに突撃して、ドンパチしている。 銃を持った集団相手に、被弾せず一方的に駆逐しているときた。

相変わらずの手腕だ。

 

グレ男は落ち着いたのか、巨大砲台に攻撃を再開してアヘ顔を晒している。 放置しておこう。 害はない。

 

俺は無線に耳を傾けつつも、グリムリーパー隊とスプリガン隊の援護をするべく照準を合わせてトリガーを引いた。

もれなく、一体の頭が爆炎に包まれる。 片手を頭に抑え、怯む動作をするものの、傷は負わせられなかった。 相変わらずの防御力だ。

だが怯んだ隙を突き、グリムリーパー隊の1人がスラスターで急接近、胴体を文字通り伸縮する槍で突いて息の根を止める。 無駄ではなかったか。 役立てて何より。

 

 

『この世界の主な住民、プレイヤー。 GGOというゲーム……《VRMMO》を楽しむ、或いは職場にしている者達は本物の人間ではない。 これも良いな?』

 

「ああ。 《アバター》と呼ばれる身体で仮想現実にて遊んでいるのだったな。 《アミュスフィア》と呼ばれる、頭部に装着する機械を使って。 本当の身体は彼らの現実世界にある」

 

『そうだ。 NPCやAIのような、例外もいるがな』

 

 

だから、レンやフカは、GGOでは幼女の姿をしているものの、現実では幼女ではない、みたいな感じだ。

レンは大学生だという話だから、実際はお姉さんの姿なのかも知れない。 だからといって、俺の愛が変わることはないが!

 

 

『だが、この仮想現実に我々は本物として活動している。 そして、銃弾を喰らえば死んでしまう。 それは現実だ。 一方でプレイヤーは撃たれて死んでも、現実ではないから本当に死ぬ事はない。 《死に戻り》する事が出来るのだ。 《SAO事件》では《ナーヴギア》の電磁パルスで脳が破壊されて、本当に死んでしまったそうだが……なんであれ、これが世界のシステムだ』

 

「理不尽だな。 なら、マザーシップが現れたこの理不尽な状況も、この世界のシステムにあったとでも」

 

 

言うのか?

 

苦笑しながら出そうとした言葉。

だが出る前に、思考が待てを掛けた。

 

プログラムの世界。

書き換えや上書きが可能なのを暗示していないか?

それは今吸っている空気から景色、扱っているビークルや武器の一切、存在そのものや記憶等、何もかもだ。

無から万物の消去や生成も自由自在。

そして、何者かがプログラムを弄った結果が、目の前のプライマーなのでは?

 

 

「…………まさか、目の前のプライマーは、少佐の部下が創り出したのか?」

 

『そうだ。 障害となりうる戦力を潰す為に行ったものだ。 信じられないだろうが、現実だ』

 

「我々は軍人だ。 現実と戦う……とは司令と部下との会話であったな」

 

『何であれ、此方も《戦略情報部》と協力して、この異常事態を止める。 今、元部下の者に尋問しつつ、プログラムへの干渉を試しているところだ』

 

「頼む」

 

 

その手は背広組に任せよう。

今出来る事は、目の前の敵と対峙する事だけだ。

兵士には兵士の、本部には本部側の役割がある。 それぞれの仕事を全うしよう。

 

 

『大変です! 間も無くプライマーの大戦力が召喚されようとしています! 部下の端末履歴から判明しました!』

 

 

少佐の悲痛の叫びが聞こえた。 休まる暇がない。

ああ、最悪な状況はこれからのようだ。 恐れていた事が現実味を帯びてきたな。

召喚自体は見たことあるから驚かない。 《かの者》がそうだったからな。 仕組みは知らんが。

 

 

「キャンセルしろ。 満員御礼だ」

 

『試していますが、最悪の事態に備えて下さい』

 

「仕方ない。 持て成すとしよう」

 

 

この手のものは、大抵最悪の方へ転がると相場が決まっている。 EDFの伝統芸にすら感じる程に。

なら最低な連中が来た時の為に、最高の振る舞いを出来るよう、段取りをしておこう。

 

 

「隊長! 巨大砲台の破壊に成功しましたぜ!」

 

 

矢継ぎ早にグレ男からの、嬉しそうな報告。

上を見やれば、針状の巨大砲台が爆炎を上げてマザーシップ本体から落ちていっているではないか。 単騎でコレは仕事が早い。 コイツがマトモなら勲章ものだ。

やがて地面に衝突。 これまた大きな黒い爆煙が巻き起こる。 下にいたら死んでいたな。

だが安心するのは早い。 次の仕事はタンマリとあるのでな。 取り掛かって貰おうか。

 

 

「宜しい。 あの時と同じならば、この後浮遊砲台が現れる。 備えろ」

 

「俺はソイツを堕とせば良いッスかね」

 

「ああ。 他の者は引き続き、雑魚の相手を頼む。 忙しくなるぞ」

 

「踊り疲れる事はしない」

 

「地獄の耐久レースといこう」

 

「M4了解」

 

 

銃撃と爆音が止まらぬ戦場。

それでも士気は高い味方たち。

コスモノーツの眩い光線が飛び交い、仲間は避けつつも必殺の一撃を喰らわしていく。

ある者は槍を突き刺し。 ある者は光線を撃ち返す。

同じ顔のクローン部隊は、多砲身の、ガトリングの様なレイヴンで弾幕を張って応戦する。

生まれた時、戦法を叩き込まれたのか知らないが、胴体なら胴体を皆で集中砲火。 鎧を素早く破壊して、生身の身体に銃撃を喰らわせているのだ。

うむ。 戦術の講義は必要なさそうで良い。

だが次から次へと無の空間から敵がポンポン現れている。 侵略性外来生物の大群まで現れたぞ。 キリがない。

コッチの増援はまだか、と聞こうとした刹那。 やっと部隊が到着した知らせを受け取った。

 

 

『プレイヤーの先発隊、指定座標に到達』

 

 

隊員ではなく、プレイヤーが来たらしい。

後方を見やれば、《グレイプ》が10台くらい停車。 後部兵員室からゾロゾロと様々な格好をしたプレイヤーが現れた。 30人はいる。

だがプライマー相手では、彼らの武器の多くは火力は低い。 無力ではないが心許ない。

 

 

『本部よりストーム・ワン。 プレイヤーも戦力になる筈だ。 上手く指揮を執ってくれ』

 

「任せろ。 それと、GGOの弾薬や武器をプログラムから大量に生成できないか? プレイヤーに提供する」

 

『やってみよう。 改竄せずとも、元から存在するデータならば出し易いかも知れん』

 

『EDFのビークルも、GGO内に存在する以上はプログラムから生成出来る筈です。 現在GGOにて存在するEDFのデータを調べて、造れるかやってみます』

 

「助かる。 だが、あくまで部下のプログラムを止めるのが優先だ」

 

『はい』

 

 

だが、弾薬と武器、その他物資さえあれば、それなりに役に立つ。

プログラムで自由自在に世界を操れるなら、逆に利用してやろう。

敵も此方も大所帯になりつつある。

上手く誘導して、勝利を掴まねば。 単純に歩兵の力と数で比べればEDFは負ける。 それは戦時もそうであった。

ならどうやって、勝利を掴むか。 数の優勢を覆すのは困難である。

 

簡単だ。

EDFの強力な兵器を無限湧きするプレイヤーに貸せば良い。 銃を貸しても、重いだの反動がキツイだので、プレイヤーには扱えないようだが、ボタン押したり、ペダル踏んだりすれば済むビークルは扱えるっぽい。

ソチラを提供して、戦力になって貰おう。

とはいえ、訓練を受けていない素人。 命中率も操作も期待は出来ない。 だが火力と生存率は大幅に上がる。

だが決定打に欠ける。 そこで、俺の空爆誘導の出番だ。

 

 

『えっ、ナニあの巨大な円盤』

 

『どう戦えってんだ!』

 

『地上はバケモノ塗れじゃねえか!』

 

 

嘆くプレイヤーの声を聞きつつ、俺は《グレイプ》から降車。 上空からの光線をグレイプの装甲でやり過ごしつつ、ポイポイと次から次へと発煙筒を焚いていく。 周りが煙たくなるが、構やしない。

輸送機ノーブルにはガンガン働いて貰おう。 出し惜しみは無しだ。 本格的な戦闘になってから要請するのでは遅い。

 

 

「ストーム・ワンから全プレイヤーへ。 緊急時特例として、民間人の搭乗を許可する。 欲しい得物があれば言え。 遠慮するな」

 

『おお! 使い方知らんけど、何でもええんやな!?』

 

『じゃ、俺はグロッケンで見たロボット! ロマン優先!』

 

『俺は戦車!』

 

 

コンバットフレーム《ニクス A型》に、量産型の《ブラッカーE1》を要請しよう。

ポイポイと発煙筒を投げて、どんどん焚いていく。 お陰で先程から円盤と地上の間を輸送機がひっきりなしに飛び交っている。

ぶつからないか心配。 呼んでおいて何だが。

 

 

「フカ! 無線は聞いていたな? 先発隊と合流するんだ。 ビークルに随伴して、味方が撃ち漏らした敵を榴弾で吹き飛ばせ」

 

『ごめーん。 弾切れだからさ、乗り物に乗りたい』

 

「良いぞ。 使い方は分からないだろうが、落ち着いてレバーやペダル、ハンドルや操縦桿、スイッチを押すんだ。 自然と分かる」

 

『わたしは?』

 

「レンも、ビークルに随伴しろ。 ビーコンガンを持っているだろ。 ソレでガンシップに攻撃目標を指示してくれ」

 

『分かった』

 

 

指示を立て続けに出すと疲れるが、仕方ない。 EDFの兵器でないと、プライマーに対抗するのは困難故に。

 

 

「隊長ッ! マザーシップの周囲に、無数の浮遊砲台を確認!」

 

 

再びグレ男からの報告。

上を見やれば、マザーシップの周囲に箱状の、大きなモノが沢山飛んでいるのを確認。

それらは表面の真ん中の丸い模様から、地上に雨霰とビームを撃ちまくってきた。 線状の緑や赤、球状の弾幕が綺麗なイルミネーションとなり地上に降り注ぐ。

見る分には綺麗だが、当たれば痛いでは済まない。

昔と同じく、苛烈な砲撃だな。 今回も被害は甚大になりそうだ。 プレイヤーが《死に戻り》出来るのが救いである。

そして例によって、マザーシップを覆う半透明の、球状をしたシールドを確認。

 

 

「片っ端から破壊しろ。 シールドを発生させている砲台は優先だ」

 

「イエッサー!」

 

「プレイヤーはビークルに搭乗。 空は狙わなくて良い、地上の敵を相手してくれ」

 

『おうよ……って! うわあ! なんだこの巨大な蟻の大群は!?』

 

『蜘蛛もいるぞ!』

 

『気持ち悪っ!』

 

『《エネミー》じゃねえよな!?』

 

『ヒィッ!? 来るな! 来るなー!』

 

『何か吐き出しているぞ!』

 

『酸だああああ!!』

 

『輸送車に隠れるんだ!?』

 

『装甲が数秒で融解したぁ!』

 

『いくらゲームでも、溶けて死ぬとか勘弁!』

 

『蟻や蜘蛛の顔ドアップとか悪夢だわ!』

 

『逃げろー! 退避だ退避ッ!』

 

『後続はまだかよー!』

 

 

うん。 まあ、期待はしてない。

プレイヤーの部隊を襲ったのは、侵略性外来生物αやβ。 全長10メートルは超える巨体にも関わらず、俊敏な動きで、群れで在来生物を襲う、エイリアンが持ち込んだ危険な怪物だ。

終戦から3年は経っているのに、未だに《人の声が響かない地球》で発見報告が寄せられる奴等でもある。 それだけ数がいた、見慣れた怪物供ということだ。 EDF隊員なら嫌という程相手にしてきただろう。

さて。 肝心の相手の主な武器は、αなら強靭な牙での噛み付き攻撃、金属を数秒で溶かす程の強酸を100メートルほどの距離まで放出する。

βなら跳ねながら接近してきて、回避し難い酸性の糸を飛ばして攻撃してくる。

これらは酸に強いとされるEDF製アーマーでも防げない。 連中の体面も強硬で、距離によって減衰した小銃弾では弾かれる。

一体一体は大した事はない。 だが数の暴力は恐ろしい。 開戦から5ヶ月で、コイツらの所為で総人口の2割を失ったほどだ。

 

そんな相手だ。 アーマーが無く、火力が低いプレイヤーには強敵だろう。

だが例によって、1番の役割は囮になって貰う事だ。 倒す事ではない。

ビークルは生存性を高めて、敵の注目を少しでも長く集めさせる事にある。

 

プレイヤーに餌をあげ、更にソレが敵を引きつける餌になる……固まったトコロ、そこを叩く。

しかし……まだ中途半端に散らばっているな……集まりきる前にプレイヤーが全滅してしまうか。

なら、広範囲に機銃掃射を要請するだけの話。 機転を利かせろ。 駄目なら有効な方法に変えるのみ。

 

 

「その場を動くなよ」

 

 

プレイヤーに群がる蟲供を、プレイヤーごと消し飛ばす。 手っ取り早く。

 

 

『えぇ!?』

 

 

無線機で《プランX18》を要請した。

円盤より低高度の空を、その四方八方から18機もの戦闘爆撃機が飛来。

スクランブル交差点を早送りしたように、プレイヤーの位置を軸に別々の角度から高速で機体が突入。

 

 

『機銃掃射、開始ィッ!!』

 

『空から戦闘機がっ!』

 

『大編隊だ!』

 

『俺たちゴト吹き飛ばす気かい!?』

 

『ストーム・ワン! お前、覚えてろよ!?』

 

 

恨みを買いつつ、空からの機銃掃射を喰らう彼らプレイヤー。 無数の光弾が地上へと降り注ぎ、轟音が鳴り響く。 砂嵐でも起きたかと錯覚するほどに埃が舞に舞う。

 

 

「「「ギャアアアアアッ!!」」」

 

 

αとβと共に砂塵の中へと消えていくが、まあ、気にしない。 悲鳴も掻き消されて聞こえない。

敵は大勢待っているのだ。 プレイヤーもログアウトしなければ無限湧きするのだから、これからもこの調子で頑張って貰おう。

弾薬やビークルと同じ、消耗品として。

 

 

『突入には危険が伴う。 気安く呼ぶんじゃないぞ』

 

「巨船直下でも来てくれる空軍は、勇敢で助かる」

 

「隊長。 チビ供に同じ役を?」

 

「娘を同じ目には遭わせない」

 

「同じプレイヤーッスよ」

 

「そこらの有象無象と一緒にするな」

 

「何たる溺愛っぷり」

 

 

グレ男に失礼な事を言われた。 ウチの娘を囮……消耗品にするワケないじゃない。

するのは他の無法者と同類の連中だ。 慈悲はない。

 

 

『……ワンちゃん。 今、味方ごと消し飛ばした様に見えたけど』

 

『虫はキモいけどさぁ。 パパ、酷くね?』

 

「再出撃すれば済む事だ。 心配するな、君たちは、ちゃんと守る!」

 

『選ばれるのも、複雑』

 

『そういう問題?』

 

 

ブーブー言われたが、仕方ない。 プライマー相手に何振り構ってられない。

プレイヤーは本当の意味で死なないから、これくらい許してくれ。 EDF隊員は死んだら一巻の終わり故に。

 

 

『第二陣、到着』

 

 

おっ。 新しい餌……げふん。 味方が来た。

先発隊が乗り込めなかったビークルがたくさんあるので、是非有効利用して欲しい。

 

 

『やほー! ワンちゃん! 来てやったよ感謝しな! さりとて、味方ごと吹き飛ばしたんだって? やるじゃん!』

 

「その声は……ピトか。 何、コラテラル・ダメージだ。 必要な犠牲さ」

 

『ワンちゃんが言うと重みが違うね! さて、空覆う超巨大円盤に、無数に浮かぶ砲台から光学兵器の弾幕……地上には巨人に巨大な虫の大群。 凄い光景ね』

 

「招かねざる客どもだ。 寛大に持て成せ」

 

『殺し甲斐があって良い! ところで、降ろされた地点にロボットが沢山あんだけど。 使って良いの?』

 

「構わんよ? 操縦の仕方は分からんだろうが」

 

『大丈夫! 駐屯地でパクったのがあってさー、操作が同じならイケる!』

 

「何だって?」

 

『戦闘停止を無視して暴れるプレイヤーを仕置きするのに使わせて貰ったのよ』

 

「それで。 みんなに迷惑掛けたと」

 

『やーね? 有効活用したから褒められるべきなのよ。 なのに軍曹って名乗るヤツがリーダーやってる《スコードロン》に破壊されたっていうね。 あの人ら、他の人と違って強いのね』

 

「軍曹に迷惑かけたのか」

 

 

軍曹……俺の知り合いがすいません。

駐屯地のトラブルって、まさかピト絡みだったんじゃ。 というか、よくコンバットフレームを動かせたな。

起動シーケンスが終わっていたとしても、操作は難しい筈なのに。 バトルシステム再起動にしても。

まあ良い。 今は戦場に集中しよう。 状況は悪い。 各隊の援護に回らねば。

 

俺は工具箱を大きくしたような見た目の、赤い運搬ケースを周囲に3つ設置。 これは高速ロケット弾を発射する自動追尾砲座で《ZEXランチャー》と呼ばれる。

火力は高く、砲座の旋回性能も高い。 自動追尾兵器技術の最高峰ともいえる武器だ。

 

 

「ランチャーを起動する! 各隊、当たらないように」

 

「簡単に言ってくれるな」

 

「俺なら当てても良いッスよ。 爆発で死ぬのは本望です!」

 

「当たりに行く暇あったら、砲台を破壊していろ」

 

 

手元の起動ボタンを押せば、運搬ケースが変形、脚が生え、砲口が突き出てセントリーガンの形になる。

そして、カメラにより砲口が敵を自動追尾。 発射されれば、白い帯を残しながら敵の群れへ飛んでいくロケット弾。

先頭のα型頭部に当たると、爆炎を巻き起こす。 もれなく、周囲の敵も木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

 

『おお! パパ凄い!』

 

『でも敵の勢いが止まらないよ』

 

「行儀の悪い客どもだ!」

 

 

ならばと、俺はもう一度無線機を取り出した。 刹那の爆発や銃撃で波を止められぬなら、防波堤をつくるまで。

 

 

「重爆撃機《ウェスタ》にナパーム弾を投下してもらう。 火の壁を作って、敵を塞きとめる。 少佐、敵の出現位置は固定か?」

 

『固定です。 マザーシップ直下、同じポイントからのみです』

 

「ならば、その手前に投下する」

 

 

無線機に座標を伝達、《プランX2》でいく。《プランW2》の強化ナパーム弾は破壊力はあるものの、燃焼時間が犠牲になっているからな。

ココは壁を持たせる方を選ぶ。 戦線を維持させるのが重要だ……さっきプレイヤーを巻き込んだのは、まあ、仕方ない犠牲なのだ。

その前に各隊に連絡せねば。 火の壁の内側に閉じ込められると後退し難くなる。

 

 

「M4。 クローン共々後退しろ! プレイヤーの部隊に随伴。 共に地上の敵を撃て!」

 

『M4了解』

 

 

クローンは駄目だ。 後退させてプレイヤーと共にさせる。 ルーキーより射撃は上手いが、アーマーが簡易的だし、ヘルメットは無着用なのは論外。 遮蔽物も無く、生存率は低い。

それに、レイヴンは弾薬消費が激しい。 残弾も残り少ない筈だ。 既に脱落者が何人も出ている。

プレイヤーの増援が来るなら、最前線に置くのはココまでだ。

 

 

「グリムリーパー! へばってないだろうな!?」

 

『舐めるな』

 

 

いつも通りのワイルドボイス。 槍と楯のみで、銃を持った相手によく大立ち回りが出来るものだ。 流石精鋭である。 信頼して、前線に残す。

 

 

「スプリガン! ヤバくなったら後退しろ。 救護車両と《ライフベンダー》を用意しておく」

 

『必要ない』

 

 

お姉様冷たい。 ハッキリとした口調で答えられたよ。

だか裏を返せば頼もしい。 心配無いな。

 

 

『あのー、俺スゲー頑張ってるんスけど。 砲台、雨霰と堕としてるの見えない? 勲章モノじゃない? 地上への弾幕薄れてるでしょ感謝して。 そんな英雄な俺に群がる《タイプ2ドローン》を迎撃して、助けてくれません?』

 

「問題なさそうだな。 燃やすか」

 

『無視!? 良いッスよ《MEX5エメロード》で迎撃しますから』

 

 

遠慮なくナパームを落とすか。 M4達が素早く後退したのを見計らい、俺は無線機に投下座標を指示する。

なんか、横長の、全長17メートルはある空飛ぶ無人戦闘兵器の群れと、それに飛んでいく4発のミサイルが見えたが、個人用誘導ミサイルランチャーだろう。

たぶん、グレ男だ。 アイツなら、ほっといて良いだろう。 死にやしない。

 

 

『これより、目標上空に侵入する』

 

 

もれなく平らな機体、フォボスに似たウェスタが二機、マザーシップより低高度で飛来。 空中をクロスするように進入してきた。

 

 

『ファイヤ!』

 

 

そして大量のナパーム弾をクロス状に投下。 細くしたラグビーボールに尾が付いたようなそれは自由落下で地上に衝突。 すると、ばつ印を描くように轟々と燃え上がる火柱が出来上がった。

世界の照度を一気に上げ、火のある周辺が眩く見難い程の火力である。

これでしばらくは、火の壁でαやβ等はコッチに近寄れない。 《コスモノーツ》もな。

正確には自ら火に入り、射程に入る前に燃え尽きる。 正に飛んで火に入る夏の虫。 夏じゃないけど。

早速、燃えに行く敵を見て思う。 αやβに知性があるとは思えないから、火に入るのかもだが……《コスモノーツ》はどうなのか。 ビル壁に隠れる知性はあるのだが。 火を避けずに突っ込むのは分かっていてのコトなのか。

まあ、良い。 都合が良ければ。

 

 

『目標地点への空爆に成功。 成果はあったか?』

 

「成果は後から出るさ。 フカ、レン。 君たちはどこだ?」

 

『車の運転をして、外周部をグルグル! レンは身を乗り出して、ビーコン撃ってるよ!』

 

「グレイプか。 レンは激しく動く車体から撃っているのか? ちゃんと当てられるのか?」

 

『的は大きいから、大丈夫。 それに必ず当てる必要無いでしょ。 ビーコンなんだから、敵の足下にでも撃ち込めれば良い』

 

 

レンから頼もしい返事をされた。 うむ、流石我が娘だ。 短時間でビーコンの有効利用方法を確立しつつある。

 

 

「地面に撃ち込む際は、ロケット弾か大口径弾だな。 取り扱いに注意しろ。 味方への誤射や自爆は笑いの種にもならない」

 

『ワンちゃんじゃないんだから』

 

 

いや……昔は自爆したけどさ。 乱戦中に射線に入ってきた味方に当てちゃったり、街の並木に当てちゃったりして。

それと、さっきのは仕方ないんだ。 必要な犠牲だったんだ。

イケナイのはグレ男みたいなやり方だ。 SJ2のラストは酷かった。 あのオチは許せん。

 

 

「とにかく、ソッチは任せた」

 

『あいよー』『任せてよ』

 

『分隊長。 俺は中距離から狙撃しているが……どうも効果が薄い。 何か弱点は?』

 

「その声は、エムか。 《コスモノーツ》、巨人相手なら一点集中で防具を破壊して生身の部分を攻撃する方法が良い。 だが《M14・EBR》のみで大群は相手に出来ない。 弾薬は無いだろ?」

 

『ああ。 駐屯地でだいぶ、な』

 

「ビークルに乗って闘ってくれ。 遠距離から攻撃出来るモノを要請する」

 

『……なんだって?』

 

 

そういうと、エムがいるであろう、《グレイプ》が固まって停車している位置に発煙筒をぶん投げる。

《ブラッカーSPS》を要請した。 遠距離攻撃用にカスタマイズされた戦闘車両ブラッカーだ。

主砲は125ミリ長距離榴弾砲。 弾速が速く、遠距離への正確な砲撃が可能である。

しかし弾速が増したぶん、反動も大きい。 だが賢いエムなら使いこなせるだろう。

 

 

『……小さな戦車が目の前に現れたんだが』

 

「ソイツを使え。 装甲に守られつつ、遠距離から攻撃可能だぞ。 砲安定装置はなく、自身で照準を付けねばならないが、自動装填装置はある。 エム向けだ」

 

『使い方が分からんぞ』

 

「そんなの弄りまわせば分かる。 お前が愛するピトフーイも、そうやってコンバットフレームを動かせるようになったそうだ。 見習うんだ!」

 

『……誤射しないよう、努力する』

 

 

緊急時だ。 エムにも頑張って貰わねば。

トーンが低い返事をされたが、直ぐにドゴォンと砲撃音が。 そして初弾が《コスモノーツ》の胴体に当たった。 ウホッ良い腕!

狙撃兵のみならず戦車兵の才能もあるんじゃないか?

 

褒めようとした刹那、隠れているグレイプの上にドーンと《ニクス A型》が降ってきやがった。

グレイプは頑丈なので壊れやしなかったが、グシャッと車高が一瞬縮んだ。 俺の寿命も縮んだわチクショウ。

 

 

「うおおおっ!?」

 

『ワンちゃーん、弾切れ! 何とかして』

 

「ピトかよ、脅かすんじゃない! しかしお前、スラスター噴射まで使いこなしてるのか。 装甲のヘコみ具合を見ても、この弾幕の中で大して被弾しなかったか。 訓練を受けていないのに、天才だな」

 

『ありがとー! んで、さっさと新品出して!』

 

「それが人にモノを頼む態度か」

 

 

まあ良い。 活躍してくれるなら。

俺はポイと発煙筒を投げて新しいビークルを要請。 《ニクス C3》だ。

遊撃戦用コンバットフレーム。 C2型を改修。 多彩な局面に対応できるよう、さらに武装を追加されている。

右腕に多砲身な見た目のリボルバーカノン。

左腕にタンク付きの、サブマシンガンにも見えなくもない、コンバットバーナー(火炎放射器)。

左肩に見慣れた箱状の武装、ミサイルポッドをマウント。

右肩には大砲と言うべきか、ショルダーハウィツァー(肩部榴弾砲)を搭載。

他の点としては、スラスターが強化されているのと、上半身の回転速度が速くなっている。 《ニクス A型》より装甲面も含めて遥かに強い。

パイロットによるが、普及量産型の《ニクス B型》より強力な兵器であろう。

やがて、期待のコンテナが目の前で落下。 直ぐに消えて現れた《ニクス C3》に、ピトは興奮する。

 

 

『ヒューッ! たくさん武装を積んでるじゃない! ワンちゃん分かってるぅ!』

 

「多くの武器を手に取ったというピトなら、使いこなせそうだったからな。 武装は局面に合わせて上手く使いこなせ」

 

『オッケー!』

 

 

そう言うと、ウィーンとコックピットが開いて現れる長身でスラッとした女性、ピト。

狭いコックピットだからか、サイドアームの拳銃《XD拳銃》を太腿辺りに装備するのみ。

見た目のピチピチな服装的にも、なんかパイロットらしく見えてサマになっている。

惜しい。 俺ら側の人間だったなら(そしてマトモなら)、EDFのコンバットフレーム隊でエースになれる器だぞ……!

 

 

「んじゃ、暴れてくるわ!」

 

「あ、ああ。 行って来い」

 

 

そして、余計な動作1つせず、真っ直ぐコックピットを乗り換える。 やたらイイ笑顔で。

そして直ぐにハッチ閉鎖、装甲表面に複数ある各種センサー及びカメラ部分が機械音を出しながら輝きを放つ。

バトルシステム起動、しゃがみ姿勢から立ち上がり、銃口を前に構えた。

あ、マニピュレーターの人差し指は立ててある。 直ぐにトリガーに触れて撃つ事になるんだろうけれど。

操作可能になると直ぐに跳躍。 スラスターを噴射しながら空を飛びつつ、敵の群れに突撃。

 

 

『たーのしー!』

 

 

多砲身が高速回転し、金色の空薬莢が空中でキラキラと舞い散って綺麗だ。

α型の群れ手前で着地すると、ガシャンという音共に土埃が舞い、それらが落ちきる前にはコンバットバーナーで群れを容赦なく焼く。

遠くにいた《コスモノーツ》には肩部榴弾砲を命中させ、ミサイルポッドから放たれたミサイル群は、別の場所で飛び跳ねていたb型の群れを吹き飛ばした。

早速使いこなしてるように見える。 あのハイセンスが羨ましい。

 

 

「……集中しなければ」

 

 

いかん、見惚れてしまった。 戦場でナニしてるんだ俺。 緊急時だぞ。 こんな事してると、命を落としてしま……、

 

 

『150ミリ砲、ファイヤ!』

 

「ん?」

 

 

ドゴォン! ドゴォン!

ドゴォン! ドゴォン!

 

 

「うおおおおおおおおお!?」

 

 

なんだなんだ!?

突然、横殴りの光弾がきて《グレイプ》の上に不法投棄された《ニクス A型》を攫ったと思えば爆発、大破したぞ!?

《グレイプ》も吹き飛んで大破。 スクラップに。

その衝撃の余波で俺は吹き飛ばされて、地面を転がされてしまった。

 

 

「ぐっ……油断大敵だぞ俺」

 

 

すぐ起き上がらず、匍匐姿勢で周囲を警戒。

プライマーの攻撃じゃない。 ガンシップの《150ミリ4連装砲》だなコレ。

現状、ガンシップに要請出来るのは俺とレンだが……誤射か?

 

 

『ワンちゃーん??』

 

「レ、レン。 誤射か? 気を付けろよ」

 

 

レンから無線が。

多分、誤射だろう。 なに、そういうコトもある。 俺もあった。 気にするな。

だが何だろう。 この寒気。 戦場とは違った緊張感が出てきたぞ……。

 

 

『誤射。 ゴメンね』

 

「お、おう。 慣れない銃だろうからな……ハハハ……ハハ」

 

 

いつもより優しげな口調の裏に感じる狂気と怒り。 俺、ナニかしたか?

戦場でふざけた事をする子ではないのは知っているので、ナニか意味があるのだろう。

だがレンの現在位置は遠方。 狙撃が苦手なので、ここまでビーコンが飛んで来たのは本当に誤射かも。 だが聞けない。 聞いたら『誤射』されそう。

 

 

『パパ。 あまり長く話さない方が良いよ。 特に他の女性とはね』

 

 

すると、フカがアドバイス。

成る程。 確かに指揮官が現状、俺だけな気もする。 あまり個人に時間を割くのは得策ではない。

レンはそれに怒ったのだろう。

 

 

「……確かに、指揮を執らねばな。 すまない」

 

『何か勘違いしてるみたいだね』

 

「へ?」

 

『えーと』『もう良い。 この駄犬』

 

「お、おいレン! おーい!?」

 

 

レンに罵倒され、以降応答無し。

たぶん……フカと話し過ぎたのがマズかったのだろう。

折角レンが「戦場で長話はメッ!」と教えてくれたのに、またやらかしたから。

嗚呼。 駄目なパパですまない。 もう戦場に戻ろ……。

俺は起き上がって、砲撃要請の準備に入る。 発煙筒を投げるだけなんだけど。

 

 

『ストーム・ワン。 あとで謝った方が良いぞ。 2人きりで、何処か落ち着いた場所でな』

 

「スプリガン隊長……アドバイス感謝する」

 

 

ドンパチで忙しいのに、わざわざ無線越しにアドバイスをくれるお姉様。

全て終わったらカフェでも連れていこう。 2人きりが良いらしい。 謝る目的だしな、そうするべきだろう。

しょぼんとした気持ちで、仕事に戻ろうとする俺。 だが、話は延長戦になってしまった。

 

 

『ヤイコラ子兎! 営倉から脱兎した次は、隊長に『誤射』か、オオン!?』

 

 

グレ男が無線越しに突っ掛かる。 戦闘中に仲間内で揉め事とか、やめてくれよ……。

 

 

『ワンちゃんを半殺しにした人の発言とは、思えないね』

 

『お前はマジで殺しかけたよなぁ?』

 

『天罰が下ったんだよ。 戦場で『よそ見』してるから』

 

『お前も『よそ見』したから『誤射』したんだろーに。 真面目に、俺様の為に地上の敵を掃討しろ』

 

『『誤射』したらゴメンね』

 

『1発やったら、1発返す』

 

 

何だか学生時代の、それも小学校の頃を思い出す。 当時はこんな口喧嘩はしょっちゅうだったか。

ああ、つまりガキの喧嘩と言いたい。 懐かしくも、聞きたいものではない。

 

 

『ねえ? か弱い運転手がいるのを忘れないでね』

 

 

運転手のフカが止めるべく、間に入る。 その勇気ある行動は好きだぞ。 流石我が娘と褒めてやりたいところだ。

あ、パパは疲れちゃってね。 成り行きに任せてるの。 逃げてるわけじゃないよ。

 

 

『悪いな同志。 だが生意気な親友に言ってくれ。 そんなに隊長を独占したいなら、側にいろと。 なんなら《アミュスフィア》のローカルメモリーにアイテムとして保管出来るか試みれば良い。 或いはPC。 《STORMー01》とかいう表示で保存されるんじゃない? 知らんけど』

 

「……メットは間に合ってる」

 

 

勘弁して欲しい。 ナニやら恐ろしい発言が聞こえたのでな、口を挟ませてもらった。

プログラムの世界故、俺も0と1で表示させられていると思うと複雑だ。 そして、データの扱いを受けて保管されるのは嫌過ぎる。

俺は生きている。 モンスターなポケットみたいに閉じ込められるのは心理的に拒否したい。

 

 

『……そっか。 そうすれば、ワンちゃんは帰れない。 ずっと…………ずっと、わたしの側に置いておけるもんね』

 

『こ、コヒー!?』「レン!?」『まさかのヤンデレンってか』

 

 

トリップするレン。 無線越しに伝わる狂気の発言。 どんな顔をしているのか、見えないのがせめての救い。

かつてこれ程、レンが怖いと思った日はあっただろうか。 いや、ない。

 

 

「ペット感覚で、檻の中に閉じ込められる趣味は無い!」

 

『兎に飼われる犬の図も見たいですがね』

 

「冗談キツいぞ!」

 

 

いよいよ謝らないと。

だが今は戦場だ。 こんな事を話している場合ではない。 『誤射』で済まなくなる。

 

 

「戦闘に集中だ、集中! グレ男はマザーシップを攻撃!」

 

『了解ッス』

 

「フカ、敵との距離に気を付けて運転するんだぞ!」

 

『パパも、その……気を付けて』

 

「レン、要請する弾種を上手く使い分けるんだ。 被弾しそうになったら、車内に隠れろ。 寧ろずっと隠れていて良い!」

 

『声、震えてるけど。 大丈夫?』

 

「大丈夫だ問題ない」

 

『そう。 ウフフッ』

 

 

問題大有りだ。

レンちゃんマジ怖い。 《パーソナル シェルター》に閉じこもりたいくらい怖い。

でも敵に背を向けないのだ。 立ち向かえ。 レンに……じゃなくて、プライマーに!

 

 

「きょ、《強化榴弾砲》を要請する! マザーシップ中央に発煙筒を投擲! スモーク地点から半径130メートルは離れていろ!」

 

 

そんなワケで、早く戦闘を終わらせるべく発煙筒をぶん投げる。

マザーシップ直下中央、敵のスポーン地点から見事にレッドスモークが立ち昇った。

恐怖で狙いが狂わず良かった。 逆に早く解放されたくて、狙いが良くなったか。 ハハハ……笑えよ。

 

 

『エアレイダーより要請です!』

 

 

よし! これで敵を一掃出来る。 若き声を聞いて確信した。

強化榴弾砲は攻撃範囲がとても広い。 敵はもれなく、木っ端微塵だな!

そして、しかとその光景を見届けようとして、前方の敵の群れを見ていたのだが、

 

 

『あの……なんか、ズレてませんか?』

 

「あれ?」

 

 

砲撃が終わった時の通信が入る。

おかしい。 砲撃が確認出来なかったぞ。

 

 

『隊長ナニしてんスか! 榴弾は全部、マザーシップの天辺に当たって、地上に落ちなかったんスよ!』

 

「ああ! しまった!」

 

 

グレ男からの通信で気付く。 やっちまったと。

砲兵隊の攻撃は遠方から山なりに砲弾が落ちるのだが、それは高高度から降り注ぐ。

マザーシップより高度が高く榴弾が撃たれた所為で、砲弾が全部マザーシップの上に当たってしまったのだ。

これでマザーシップがダメージを受けていれば、無駄ではないと言えるのだが……マザーシップの金色の装甲は、そんなので傷付かない。 つまり、無駄に終わった。

 

 

『少し落ち着いて下さいよ。 レンに動揺しちゃうのは仕方ないですがね、隊長なんだからしっかりして下さい! それとも、人間アピール?』

 

「すまない。 俺が悪かった」

 

 

グレ男に説教されようとは。 俺も終わりだな……ハハハ。 笑えよ。

 

 

『俺なんて、火の壁の内側という退路がない中、砲台全部撃ち堕としたッス。 ドローンに襲われつつ、無支援のサイテーな状態で!』

 

「ああ。 よくやった……次は、本体を堕とせ」

 

『《ニクス バスターカノン》、使わせて貰いますよ!』

 

 

ニクス バスターキャノン。 さっき要請したヤツだな。 俺が使おうと遠方に置いておいたが、グレ男の方が活躍するだろう。

武装は両腕にリボルバーロケットカノン。 6バースト。 両肩に巨大な拡散榴弾砲を搭載。

圧倒的な火力を持つ反面、搭載火器が重く、運動性能は低い。 その欠点を補うため、上半身の回転速度を向上。 移動する目標を狙いやすくなっている。

さらにスラスターの性能も向上し、長時間の噴射が可能となった。

ピトが使っている《ニクス C3》より機動性はないが、火力は圧倒的に上。 射程も長く、高度の高いマザーシップを墜とすにも使えるだろう。

 

 

『こちら戦略情報部。 落ち込んでいるところ悪いですが、報告します。 プレイヤー用の弾薬と銃器を生成するのに成功。 グレイプの辺りに転送します』

 

「助かる。 他はどうなった?」

 

『ビークルの生成にも成功。 プレイヤーでも簡単に扱えて、尚且つ命中率を上げる為のビークルとして《ネグリング自走ミサイルXM》を大量に用意しました』

 

「ああ、アレなら命中率は高そうだ」

 

 

ネグリング自走ミサイルXM。

新型の収束誘導ミサイル砲を搭載した車両。 サイト内の敵を自動的に捕捉し、複数の敵をロックオン。 そうしたら、ボタンを押せばミサイルが飛んでいく。

それだけならば、他のネグリングと同じだが、普通の誘導ミサイルとは異なる点に注目。

 

 

「ストーム・ワンよりプレイヤーへ。 ネグリング自走ミサイルに搭乗せよ。 勝手に敵をロックオンし、ボタンひとつでミサイルを撃てる。 楽だぞ」

 

『ねぐりんぐ? ロケット砲みたいのが、ついている履帯の車か』

 

『おお! ニュービーでも活躍出来そう!』

 

『やったぜ』

 

『ヤダね。 遠方から撃つのは性に合わねえ』

 

『巨船直下で戦うスリルを味わいたい』

 

『……隊長。 戦車ではなく、此方を寄越してはくれなかったのか?』

 

 

約1名、聞いたことある声が。 他にも不服そうな声も聞こえる。 効率ではなく、楽しい方を選ぶ辺り、プレイヤーなのだと再認識させられる。

俺達EDFは命懸けなので、真面目に闘って欲しいんだがな。 言っても馬鹿にされるだけだろうが。

だから無視だ。 今は戦闘中。 集中せねば。

 

そしてプレイヤーの降車地点、後方から沢山の白帯を描いて、俺の頭上を飛んでいく。 素直に乗り込んで、撃った者がいたようだ。

それらは、目標に飛翔しながら分裂。 多数の小型ミサイルとなると、ドカドカと《コスモノーツ》や、空飛ぶ《タイプ2ドローン》、地上で群れなすαやβを、ドッカンドッカンと吹き飛ばしていく。

 

 

『うひょー!』

 

『面白いように当たるな!』

 

『乗り物、楽しい!』

 

『操作は思ってたより楽だ』

 

『SJでもあったけど、アレらより強力だし、使ってて楽しいわ!』

 

『銃も良いが、乗り物も良いわ』

 

 

好評でなにより。

命中率の高さは、ロックオンによる誘導ミサイルもあるが、ミサイルそのものによる影響が強い。

小型ミサイルに分裂する収束誘導ミサイルは、高速で移動する場合でも最低1発は命中する場合が多く、確実にダメージを与えていく。

俺の様にエイムが苦手なプレイヤーや、野次馬でも使える。 少佐は良いビークルをチョイスしてくれたものだ。

 

 

『増援到着』

 

 

おや。 このタイミングで、更なる味方が。 有り難い。

戦局は有利であるが、味方は多い方が良いに決まっているからな。

 

 

『こちら、ストーム・ツー。 だいぶ派手にやっているようだな!』

 

『あの女の、コンバットフレームを黙らせるのに苦労しなきゃ、もう少し早く来れたんだが』

 

『まっ、味方としてなら役に立っているようだしな! 大目に見ようぜ』

 

『次やったら、大目玉に遭わせますが』

 

「軍曹……来てくれて感謝します。 そして、身内がすいません」

 

 

来て早々、ピトの事としか考えられない経緯を話す軍曹チーム。 思わず謝ってしまう。

ピトもグレ男も、サテキチ姉さんも性格がアレなのが身の回りにいると苦労する。

凄い人だとは思うよ? でも迷惑をかけるのはいけない。 役に立てば許されるかと言えば大間違いだ。

え? ブーメラン発言だって? 知らんね。

 

 

『《ブルージャケット》現地に到着。 またしても、コイツらを見ようとはな』

 

 

むっ。 EDFの狙撃部隊も来たか。

あの時とは異なり、狙撃部隊以外にも味方はたくさんいる。 「本能寺だー!」とはならないだろう。

 

 

「マザーシップを撃墜するのに手を貸してくれ。 遠方からの狙撃で、地上部隊の相手を頼む」

 

『喜んで。 再び共に戦える事を誇りに思う』

 

 

そういうと、通信が切れた。 敵味方の弾幕の中で、狙撃の活躍を見分けるのは難しいだろうが、上手く立ち回るだろう。

あの部隊の主兵装は《KFF50》という、大口径の狙撃銃だったか。 ボルトアクション式で、連射が利かないが威力は高い。

 

戦時中、押し寄せるβの大群相手に《ブルージャケット》と俺の空爆誘導で何とかしようという作戦があったのを思い出す。

戦場で狙撃兵程、恐ろしい相手はいないとか言っていたが……数の暴力相手に、狙撃のみでは対処しきれず、最後は波に飲まれて悲鳴が木霊した。

俺が空爆誘導や砲撃要請、サポート機器、ビークルで何とかしたが。

今回は狙撃部隊のみならず、優秀なデコイが沢山いるのでそんな事は無い筈だ。 良かったな、《ブルージャケット》。

 

 

「ところで、《ライサンダー》みたいな対物ライフルを持った、青髪の女の子の話をチラッと聞いたんだが……ソッチの部隊か?」

 

『ああ、あの子も同じタイミングで乗車したが……《ブルージャケット》じゃないぞ』

 

「そうなのか」

 

『この世界の女王だ』

 

「ナニ!? 卵をポコポコ産むのか! オマケに強酸を吐くのか!?」

 

『ナニ言ってんだ!?』

 

 

トンデモナイ話を聞いてしまった。 まさか女王がこの世界にもいようとは。

あの、巨大な羽根の生えたαが脳裏に浮かぶ。 或いは飛行能力のあるデカいヤツ。

話では、見た目は女の子の姿で青髪。 《ライサンダー》みたいなアンチマテリアル・ライフルを持っているという事だったが……まさか女王とは。

 

 

『落ち着け。 《スカウト》によると、そんな事はない。 そもそもプレイヤーだ。 一戦交えたが……怪物の様なエグい《スキル》は確認出来なかった。 狙撃の腕は1800メートルは離れていた《スカウト》のフルスロットルで動く《フリージャー》バイクに当てて、大破させたとかだが』

 

「…………本当なら、ある意味で怪物だな」

 

『どちらにせよ、今回は味方だから安心して良いと思う』

 

 

良かった。 人間の姿で酸を吐いてたり、卵を産んでいたら色々ヤバいからな。

そう思って胸を撫で下ろしたら、ズドォンと目の前の地面がめくり上がる。

舞い上がった土がドシャアとヘルメットに被さり、一時的に視界が遮られる。

くっ、砲弾でも撃ち込まれたか!?

 

 

『いい加減に、集中したらどうかしら。 隊長さん?』

 

 

すると、若い女子の声が。

どっかで聞いたコトのある声だが……静かな物言いだけど怒気を含みつつ悪びれのない、ワザとやったとしか思えない言い方から、俺の発言の結果だと悟った。

うん。 この世界の女王は恐ろしい。 オープン回線なので、不用意な発言はしないようにしよう。

今更ながら、そう反省し、戦慄と共に身を震わせた。

 

 

「すまない俺が悪かった!」

 

『次は当てるから』

 

『ストーム・ワン……コッチの世界でも苦労してるな』

 

 

また『誤射』されるのは勘弁。

このままでは命が持たない。 プライマーに殺されるのではなく、味方に殺られる。

戦場に集中だ集中。 仕事に戻るんだ。

 

前方を見やれば、プレイヤーのミサイル群により吹き飛ぶαやβ、腕や脚をもがれた《コスモノーツ》が見える。

向こうも撃ち返してくるが、幸いプレイヤーや《ブルージャケット》による遠距離からの一方的な攻撃で、押さえつけられている様子。

だが敵は無尽蔵に湧いてくるのでキリがない。 グレ男も中央に近寄れず、マザーシップを攻撃出来ないようだ。

《ニクス バスターカノン》で、進路上にいる邪魔なαやβ、《コスモノーツ》の歩兵部隊にロケットカノンを情け容赦なく撃っているのが見える。

両腕合わせて計12発のロケット弾が、白帯を作りながら群れを襲い、生まれた大きな爆炎は敵を全て飲み込んだ。

グレ男らしい。 そして命中させる腕も良い。

近距離の敵の群れには拡散榴弾砲で吹き飛ばしているし、空中にいる《タイプ2 ドローン》にも上手く当てられている。

対空戦闘には不向きな武装なのに、相当な腕前だと改めて思う。

だが敵は倒せど倒せど湧いてくる。 プレイヤーも頑張っているのだが、処理能力を上回っているな……マズいか。

 

 

『撃てども撃てどもキリがない!』

 

『弾が切れた!』

 

『無理ゲー』

 

『飽きてきたな』

 

『勝てるのかよ?』

 

 

あかん。 プレイヤーの士気が下がってきたか。 いくら死なないとはいえ、ログアウトされる危険性が出てきた。

戦力を失えば、今度はEDF隊員が危険に晒される。 早期決着をしなければ。 何か打つ手はないか?

 

 

「少佐! プログラムを止められないのか!?」

 

『やっています。 ですが、部下が残したプロテクトに苦戦しているのです』

 

『尋問を続けているのだがな、不気味な笑い声を上げるばかりで会話にもならん』

 

「敵は本当に無尽蔵なのか?」

 

『そのようです。 EDFのデータベースにある敵勢力の記録をコピー・アンド・ペーストで繰り返しているようです』

 

「消去すれば良いだろ」

 

『コトは単純ではありません。 ですが、マザーシップを基点にしています。 撃墜出来れば、或いは止まる可能性があります』

 

「出来ないから困っているんだがな。 結局はそうするしかないか」

 

 

どうする?

プレイヤーがいる内に何とか撃墜したい。 プレイヤーは死なないからな。

ビークルに乗せて突っ込ませて時間を稼ぎ、その間にグレ男に攻撃させるか。

うん? 死なない……グレ……。

 

 

「いや、そうするか」

 

プレイヤーには所詮ゲーム世界。

我々EDFには生死を賭けたガチ世界。

 

プレイヤーには理解を得られないだろう。 だがやってもらう。 住む世界が違えば戦術も違うというものだ。

ましてや、死なない兵がいるというなら尚更に。

 

 

「グレ男。 《C70爆弾》はあるな?」

 

『へ? ありますが。 特攻しろと?』

 

「プレイヤーにさせる。 《グレイプ》に大量に貼り付けろ。 それと、搭乗するプレイヤーの背中にも一個」

 

『成る程。 俺は同乗して、途中で飛び降り降車。 プレイヤーはそのままプライマーのスポーン地点に特攻し、俺の任意で爆破。 空いた刹那の隙間に俺が《アンダーアシスト》で突入して、急いでマザーシップの下部ハッチを攻撃。 これで良いです?』

 

「察しが良くて助かる。 さて、無線の通りだ。 立候補するプレイヤーはいるか?」

 

『ふざけるな《荒らしのワンちゃん》!』

 

『テメェがやれや!!』

 

『そんな気分じゃないね』

 

『爆弾より銃寄越せ』

 

「あー。 ピトは?」

 

『ワンちゃんを殺させてくれたらね。 それとも、特攻して死んだら『死んでも良い』かな?』

 

「駄目だ。 というか、まだ言うか」

 

 

駄目か。 プレイヤーなら、喜んで死んでくれると思ったが。

最悪攫ってでも……と思った矢先。 無線から最も聞き慣れた声がしてくる。 レンだ。

 

 

『ワンちゃん。 わたし……ワンちゃんの為なら死ねるよ。 足も、グレ男さん程じゃないけど自信あるし。 行けるところまで行って、死んでくる』

 

『パパー。 わたしも良いぜ?』

 

「いや、レンとフカには…………」

 

 

大切な娘に死んで来いとは言えない。 例え死なぬプレイヤーだとしても。

俺は……俺は、甘ちゃんだ。 自覚はしているが……いや、時間がない。 やってもらおう。

 

 

「わかった。 《グレイプ》には可能な限りの支援を行う。 グレ男、爆弾を頼む」

 

『了解。 お嬢さんたち。 ゲームとしてお楽しみ中の連中が芋ってる、降車地点に戻ってきてくれ。 爆弾つけるから』

 

『分かった』『はいよ』

 

『幼女に特攻させるとか、外道だな』

 

『おいおい、今更気付いたのかよ。 《荒らし》なチート野郎だぜ。 外道に決まってるだろ、アイツ』

 

『違いねぇ!』

 

 

ゲラゲラとプレイヤーの笑い声が聞こえてくる。 無線越しに、俺を非難しているようだが、気にしない。

今は戦争を終わらせる事が先決だ。 それと、レンとフカはプレイヤーだ。 『死なない』。 その事実があれば良い。 だから、何言われようと、俺は……。

 

 

『隊長。 まあ、後は俺が何とかするんで。 だから先に休んで下さいよ。 俺も、戦い疲れたし、ふざけるのも飽きてきたので……コレが終わったら休みますわ』

 

 

グレ男が、何を思ったのか。 サボるような話をしてきた。 いかんな。 そうは、いかないんだよ。

 

 

「生きている限り、戦いは続くぞ。 生きるというのは、そういう事だ」

 

『本当の意味で死ねずに、目的を見失って繰り返してるとですね、生きる気力が失せるんです。 やる気が出ないんです。

自棄になって、人を傷付けても何も感じなくなる。 或いは……幸せそうな顔や無知な雰囲気が許せず、不幸にさせようとしたり。

他人の気持ちを考えるのが面倒にもなるし、そのくせ新しい刺激を求めて、外道を進む。 他人の気遣いより、自分の為に行動する方が楽でありますし』

 

「今は戦闘中だ。 時間も惜しい。 また今度、お前の話は聞いてやる」

 

『了解ッス。 まあ、今は隊長のお陰で知らない未来を歩んでいると思えるし、昔の目的を思い出したから、良いッスけど』

 

 

何の話か知らないが、兎に角、王手をかけに行かねばならない。

その為には陸軍……レンジャー隊員の、爆発物のエキスパート(笑)なグレ男と死なぬプレイヤーの協力が必要不可欠なのだ。

 

 

『《C70爆弾》、チビどもの《グレイプ》に、シコタマ貼り付け完了ッス』

 

「よし。 そこを動くなよ」

 

『へ?』

 

 

俺はそういうと、降車地点に向き直る。 だいぶ距離を置き、グレ男と思われるレンジャー隊員が見えた。

棒立ちしている相手になら、当てられるだろう。 プレイヤーが発射している、収束誘導ミサイルが描く、クレヨンのような白線が無数に引かれて、降車地点周囲の空が見えないが、地にいるマトを撃つのに支障はない。

そう思い、俺は《パワーアシストガンMG》を構えて……グレ男に撃った。

パット状の弾が飛んでいき、見事にグレ男胴体に命中する。 俺も少しは、射撃が上手くなった気がするな。

 

 

『あん、隊長に撃たれたー! フレファ反対!』

 

「喧しい。 お前の攻撃力を上げたんだ。 知ってるだろ、ソレ」

 

 

そしてコレは、非殺傷弾による嫌がらせではない。

数あるEDFサポート装置のひとつ、パワーアシストガンは、攻撃力を上げるパットを発射する銃だ。 パットは壁や地面、ビークルや人に張り付く。

そして周囲と、張り付いた人の攻撃力を上げる。 本人の身体能力というより、使用する武器の威力が上がるのだ。

時間との勝負なので、攻撃力を上げて成功率を上げておきたかった。 因みに仕組みは不明である。 EDF謎の技術。

 

 

『じゃ、さよなら隊長。 無茶はいつも通りですがね、一応ね』

 

「お前は死なんさ。 そして、頼んだぞ」

 

『パパ……格好良く散る様を見てくれよ!』

 

『ワンちゃん、行ってくる』

 

「ああ。 戦闘爆撃機《カムイ》に空爆要請をして、露払いをするが、爆炎に構わず突っ込め」

 

『信じてアクセル全開!』

 

 

そう言って、俺はレンとフカ、グレ男を見送る。 砂埃を立たせて、フルパワーで真っ直ぐマザーシップ直下に向かう《グレイプ》。

俺はすぐさま無線機を取り出して《カムイC1》を要請。 マザーシップ直下を空爆してもらう。

 

 

『空爆を開始する!』

 

 

無線が聞こえると、グレイプの頭上を一機の戦闘爆撃機が高速で追い越した。 すぐさま指定座標に正確に爆弾を、帯を描きながら複数落としていく。

そして、爆弾が敵の頭上や地面に衝突すると、激しく爆発。 αやβが吹き飛び、《コスモノーツ》の防具の破片や手足が空中を舞っていくサマが見えた。

そこに、《グレイプ》が突入。 爆炎に消えると……爆炎が更に盛り上がる。 天高く、そのままマザーシップに届きそうな程の巨大な爆炎だ。

考えるまでもない。 《C70爆弾》が起爆したのだと直ぐに察した。

センサー反応から見て、なんとか生きているようだが、上手くやってくれよ。

 

 

『ヤベー《グラントMTX》の弾が切れた』

 

「ファッ!?」

 

 

グレ男から不安にさせる言葉が。

 

 

「なら、他の武器で撃墜しろ」

 

『グレラン《UMAX》は届かない。 ハンドグレネードで対空戦は曲芸だしぃ……《エメロード》はロックオンしないし……《C70爆弾》を投げて届くとは思えないし』

 

『こんな事なら、潔く散れば良かったなぁ』

 

『わたし達の武器じゃ、弾が届かない』

 

 

嘆くグレ男と娘たち。

せっかく中央に行けたのに、コレは酷い。 何か方法があるはずだ。

むっ。 《C70爆弾》……投げる……それだ!

 

 

「グリムリーパー! まだ生きてるか!?」

 

『ああ。 お前が雑談で盛り上がっている間も、仕事に勤しんでいたぞ』

 

「す、すまん。 頼みがある! マザーシップ直下へ向かい、ウチの娘を開いたハッチに投げてくれ!」

 

『笑えるな』

 

「投げるだけだ。 高い高いしてくれれば良い」

 

『成る程』『酷い作戦』『仕方ないね』

 

「スプリガン! グレ男達を援護!」

 

『既に向かっている!』

 

 

グレ男や、レン、フカは納得してくれた模様。 うむ。 プレイヤーじゃないと出来ない芸当だ。

グリムリーパー側も分かったらしく、「ひとつ貸しな」と聞き慣れた言葉を返された。 やってくれるらしい。

 

 

『今向かう』

 

『お、おい……黒い鎧連中、スポーン地点に突っ込んでるけど』

 

『いくらEDFがチート装備でも、あの数相手じゃ死ぬぞ!?』

 

 

さっきまで笑ってたプレイヤーが、今度は死神の心配をする。

ナニ、この対応の差。 俺は良いんですか。 そうですか。

 

 

『だからどうした? それが俺達の仕事だ』

 

 

そしてクールに、ワイルドボイスで答える隊長さん。 格好良い。

戦時中、撤退する味方の為に、軍曹達と敵を攻撃して時間稼ぎをしていた時を思い出す。

あの時、駆け付けたグリムリーパーが同じような事を言っていたな。

雨降る中、津波の如く押し寄せる敵を前に「帰るつもりは無い」と言い放ち、敵の軍勢に突入して押し返したのは感動的だった。

きっと、今回も上手くいく。 そう信じている。

 

 

『同士! 派手に散って来い! 汚ねぇ花火になって、あのUFOを撃墜するのだ! そして……人類の英雄になれ!』

 

『おうよ! 散る時は派手に散ってやらぁ!』

 

『盛り上がってるトコ悪いけどさ、やってる事は幼女に爆弾を付けまくって、砲弾にしようとしてるんだよね?』

 

『プレイヤーだから、マジで死なねーだけ良いんだよ! それに、オマイらチビで軽そうだから、投げ易いだろうし! 逆に俺がやったら隊長が悲しむだろ!』

 

「いや、悲しまないが。 寧ろ本望だろ、お前の場合」

 

 

ナニか言ってるので、ツッコミを入れておく。 別に問題児が利益を出して散る分には構わないんだが。 今後の面倒も見なくて済みそうだし。

 

 

『ねぇフカ。 やっぽりわたしたち、チビなんだよねぇ……』

 

『そうだね、役立って良かったじゃん。 派手に散るまで生き延びなきゃだけど』

 

 

そして、1番ヤベェ地点でトリップするレンちゃん。 なんか喜んでる。 怖い。 パパ、将来が心配!

だが確かに。 生き延びて貰わねば困る。

 

 

「グレ男! 周囲の敵の注意を引くんだ! レンとフカを守れ!」

 

『やってますよ! 《UMAX》を撃ちまくってますよ!』

 

「フカ、レン! 匍匐でジッとしていろ! 被弾率を下げるんだ! 応戦はしなくて良い、隠れてろ!」

 

『やってるよ!』『分かってる!』

 

「弾を失えば、こちらの負けだ。 グレ男、グリムリーパー、頼むぞ!」

 

『タマ? コイツらタマナシでしょ……っておい! 撃つんじゃねえ子兎!』

 

『ごめん。 『誤射』した』『サイテーだねグレ男さん』

 

『弾はあるってか? てか、ふざけてねぇで《ストレージ》にしまっておけ! 死んだ時に木っ端微塵だぞ!』

 

 

凄い盛り上がっているけど、大丈夫だろうか。 《リムペットスナイプガン》で見える範囲で援護しつつ、俺は作戦の成功を祈るしかない。

 

 

『ウギャッ!?』『フカ!』『同士!』

 

「どうした!? 報告せよ!」

 

 

フカの悲鳴と仲間の声が聞こえて、慌てて応答を求む。 被弾したか!?

爆煙が晴れておらず、状況不明……いや、仲間のセンサー反応がひとつ消えてしまったぞ!

 

 

『すみません、同志が《コスモノーツ》に踏まれて《死に戻り》しました。 レンは無事です』

 

 

なんて事だ……偶然か、レンは迷彩効果が発揮されて生き延びたラッキーガールか。

兎に角、弾丸はレンだけか。 レンだけで行けるか!?

 

 

『グリムリーパー現地に到着』

 

「急げ! レンを掴んで、フルパワーでマザーシップ直下のハッチに投げろ!」

 

『了解。 気張れ、チビ』

 

『うん!』

 

「グレ男! タイミングは任す! しくじるなよ!」

 

『任せて下さい!』

 

 

そして、煙の山の天辺から、小さなナニかが、シャトルでも上がったのかという感じで、真っ直ぐ抜けるのが見えて……そのままマザーシップ直下、ハッチに入った様に見えた刹那。 凄まじい爆発音。

 

 

ドガアァンッ!!

 

 

『やったぜ隊長』

 

 

ハッチから激しい爆炎が起こり、マザーシップの金色の表面から多くの火花と爆炎が噴き出していく。

次から次へと、範囲がどんどん拡がれば、とうとうバランスを崩して高度が下がり始めた。

 

 

『凄いですね、ラッキーガール! ステータスというより、リアルラックもあったと思いますよ!』

 

「全隊員及びプレイヤーへ! マザーシップが堕ちる! 出来るだけ遠くに逃げろ!!」

 

 

勝利を味わう余裕は無い。 俺は直ぐさま退避命令を下す。

巨大な質量を誇るマザーシップが堕ちてみろ、辺りのエリアは全滅だ。 グロッケンは既に吹き飛んでるが、隊員とプレイヤーが死んでしまう。

 

 

『退避だ退避ッ!』

 

『全員、ビークルに乗れるだけ乗れ!』

 

『離れろ急げ!』

 

 

退避する皆。 この調子なら大丈夫だろう。

プレイヤーはまだ良いが、隊員は駄目だ。 死んでしまう。 ここまで来て死人が増えるのは見たくない。

俺も近くのグレイプに乗り込み、アクセルを思いっきり踏んで離れる。

ガンカメラ越しにマザーを見やれば、地面に端が衝突する瞬間であり…………刹那、巨大な土埃を舞わせて崩れゆく。 大きな地響きと衝撃がグレイプを激しく揺らした。

やがて爆発の代わりに光の粒子となって、マザーは消えてしまう。 予想と少し異なる終わり方だったな。

 

 

『終わったのか?』

 

「情報部! プログラムはどうなった!?」

 

『もうすぐ止められます! マザーの消えた部分から…………今、止めるのに成功!』

 

『本部より全隊員及びプレイヤーへ。 戦闘終了だ。 よくやった。 後処理は任せろ』

 

 

ようやく……終わったか。 長かったような、短かったような。 グレ男や皆のお陰か。

 

 

『ワンちゃん! 成功したみたいだね!』

 

「レンか!? 良かった、死に戻りしたのか」

 

『パパー、わたしもいるぜ?』

 

『フカもか! 良かった……ありがとう。 そして、すまなかった』

 

 

死ぬ事は無いと分かっていても、いざ死ぬとなると不安が拭えないものだ。

でも……良かった。 生きてくれて。 ああ、本当に。 そして、俺も生きている。 味方に殺されずに良かった。 マジで。

 

 

『本部よりストーム・ワン。 そして、グレ男。 悪いが地下に来てくれ。 少佐の部下の件だ』

 

 

だがまあ、仕事は残っている。

俺は返事をすると、駆け足で指定場所へ向かう。 全ての謎が解決するとは思えないが、やる事はやらねばならない。

地球に帰るのは、それからの方が良い。

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