GGDF(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 穴だらけの話になりそう。


終戦。 それぞれの世界へ。
事情聴取


事情聴取

 

プレイヤー達は、ドンパチが終わって自由行動に出たようだ。

 

駐屯地へ戻る者もいれば、隊員と話して銃や装備品の話をして盛り上がる者もいる。

 

一方で、多くの野次馬は祭りが終わったとして、ログアウト。 GGOから現実へと帰還した。

 

隊員も、駐屯地へ帰還して後始末をする者とグロッケン(のあった土地)に残り、仮設本部の警備と、周囲の始末に入る者で別れた。

 

とまあ、多くの者は大凡役割や行動が決まっており、祭りや勝利の余韻に浸かるとは限らなかったが……自身の無力さに嘆いたり、EDFの謎に突っ込む者がいたりと様々である。

 

それらの群勢から離れて、ストーム・ワンとグレ男が本部の呼び出しで地下に戻った後。

 

一部のプレイヤーは、EDFを理解しようと歩み寄り、または単なるナンパで近寄った。

 

EDFは《ザスカー》と、どういう関係かとか、NPCなのかAIなのか、プレイヤーなのかとか。

 

正体はどうでも良いので、お姉さんの連絡先教えて下さいとか。

 

異質な存在であるEDFだが、必ずしも疎まれたり、恐怖の対象だとは限らない。

 

理解出来ないからこそ、歩み寄る。

魅せられたからこそ、あやかりたい。

不思議な雰囲気だからこそ、感じてたい。

 

隣人と相対するとき、GGOでは銃や爆弾で語るのが一種の礼儀である。 特にフィールドでは。

 

そして、EDFとしても。

 

だけど、今は平和だった。

かつて殺し合い、憎み合う仲でもあったのに、こうも互いに笑い合って会話をしているとは。 不思議なものだ。

 

それは、ゲーム世界故か。

言葉が通じる相手だからか。

互いの違う雰囲気に惹かれたからか。

 

きっと色々あるだろう。

 

だから。

その色々の中に、戦争を起こした者とも、和解出来ると考え接する者がいたとしても、可笑しいコトではない……のかも知れない。

 

その思考をする者は、果たして身を滅ぼす愚者か。 それとも、全てを丸く収める英雄たる人物か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とグレ男、少佐の部下がいる場所。

本部のある地下に設けられた、即席の取調室は、簡単な仕切りに囲まれた粗末で小さな空間だった。

 

そこに机を挟んで、パイプ椅子が対になる様に置いてある。 俺は扉側に座り、部下の子は俺の正面に座っている。

グレ男は扉を塞ぐ様に仁王立ち。 部下の子をグラサン越しに冷ややかな目で見ており、威圧的だ。 いつものお調子者の雰囲気ではない。

 

だがまあ、構わず仕事に取り掛かろう。

 

本部や情報部に口を開かなかったというが、俺となら或いは。 そういった理由で俺はこの場にいる。

 

当の本部や情報部の人間は、仕切りの外にいて、俺らの話を記録している。

ナニも期待しないで欲しいが、やらねば何も始まらない。

 

なら、やらねばならない。

結果なぞ知らない。 恐れず前に進むのみだ。

 

それが今の存在意義。 そして口を開けば良い。 言葉をかけろ。

そして、戦争の首謀者だというこの子から、証言を、事実を聞くのだ。

 

それが任務。

仲間だとしても、恐ろしい事実や話が出て来ても。

俺は受け入れ、聞き出していこう。

EDFとして、かつて直属のサポートをしてくれた者として、無関係ではいられない。

 

 

「直接会うのは初めてか。 戦時中は、無線越しに世話になったな。 ありがとう」

 

「…………」

 

 

先ずは礼を言って、相手の緊張を和らげようと試みた。 だが逆に硬直して視線を下に向けてしまうオペ子。

まるで叱られた子どもみたいだ。 いけない。 イキナリ失敗したか?

 

あれか。 戦闘終了だと言っては敵増援が来たり、今度こそ戦闘終了だと言っては、また敵増援が来たり。

夜間作戦では、眠いなぁとボヤいてたり、何かの作戦では遅れてきて、その時には既に敵を殲滅し終えた後だったり。

ポンコツな部分が、隠れる事なく発揮されていたからか。

 

 

「ま、まあ……なんだ。 戦時中は絶望に飲まれていく中、良く耐え忍んだな。 偉いぞ」

 

「隊長。 コイツは戦争を起こした悪者ですよ。 本題に入って、牢にぶち込んで終わらせましょうよ」

 

「お前には言われたくない。 戦時中は味方ごと吹き飛ばしたり、ビークル壊したり、命令無視ばかりで」

 

「この時の為に、試行錯誤していただけです」

 

 

グレ男の言っているコトは、時々分からない。 本部とも通じていた様だし、意味がなさそうで、実はあるかの行動も。

 

まあ良い。 今はオペ子だ。 コイツのコトは後回しだ。

 

 

「話がズレた。 だが、コイツの言った通り、君は戦争を起こした張本人なのか?」

 

「……ええ、そうです」

 

 

重々しく口を開いた。 そこは認めるのだな。

正直、否定するのを期待していた部分もある。 仲間が敵になる瞬間を味わいたくないからだ。

 

だが、証拠不十分。 真犯人は別にいて、庇っている可能性を否定出来ない。

 

ストレートに聞きたいところだが、グッと抑えて話を続ける。

 

 

「では、どの様にして戦争を起こした? 君1人で、あれだけの規模を起こせるとは考え難い」

 

 

少し前のめりになりながら、オペ子に尋ねた。

 

情報部の彼女の立場が、高位であったのかは不明だが、1人だけでやるには規模がデカ過ぎる。

 

俺がGGOに入って、3ヶ月以上の猶予はあったが、そんな短期間で、アソコまで出来るのか?

 

仮に準備出来たとして、誰も気が付かなかったなんてあるのか?

 

 

「駐屯地は占拠され、グロッケンも、ほぼ制圧する程の戦力。 そして、グロッケンを吹き飛ばす程の力も持ち合わせていたが」

 

「いや、吹き飛んだのは隊長の所業だと思います」

 

「お前の所為でもある」

 

「罪を着せるのは良くないッス」

 

 

グレ男め、お前は黙ってろ。 本題がズレちゃったよ。

 

真面目に考えよう。 戦力の大半はクローンであったが、本物も少なからずいた。

駐屯地を守っていた、ニクス隊パイロットがそうだ。

 

他にも、知らないところで空軍や海軍も絡んでいる。

隊員はクローンと違い、言葉を発せられる人間だ。 何が善で悪か、考えもする。

 

はっきり断った者はクローンに殺されたらしいが、参戦するフリをして告発する者はいなかったのか。 気になる点は多い。

いや、告発はしたのか。 本部が少し知っていたそうだから。

 

今は死んでしまったか、拘束されたか。

生き残った者に同じように尋問しても、ただ命令に従って行動したとしか言わないらしく、真相解明には役立たない。

 

だから、やはり首謀者と思われる彼女に聞くしかないかと思い質問してみたが……答えてくれるのか否か。

 

 

「ストーム・ワン。 既に知っていると思います。 この世界がプログラムであると」

 

「ああ」

 

「そして、プログラムを弄れば、物資や食料、兵器群をヌルの状態から生成出来ることも」

 

「そのようだな」

 

 

どうやら、答えてくれそうな雰囲気だ。

相手の言葉に頷きつつ、次の言葉を促していく。 グレ男も茶化さず、黙ってくれた。

 

開戦の経緯も知らねばならない。

此方が知りたい情報のみならずだ。

 

 

「最初は、誰も知らなかったのですよ。 プログラムの世界に行けるだなんて。 ストーム・ワンが行方不明になったとき、転送装置によるものだと情報部が掴んで……そして調査が行われました。 結果、プログラムで構成されたゲーム世界にストーム・ワンが転送されたと判明。 そして……可能性が生まれた」

 

「プログラム、システムからの、資源や人の無尽蔵の生産、そして地球に転送しての再生計画か?」

 

「馬鹿げてると思います? ですが、我々がVRマシンを介さず、生身でこの場にいる。

この事実は変わらない。 そして、食べ物や物資に直接触れて、使用出来ます。 しかも地球に輸送可能。 夢のような話です。

プレイヤーには偽物でも、EDFには本物なのです」

 

「俺がSJ2前に、本部からの命令であったアレは……文面だったが、君が書いたのか?」

 

「そうです。 地球の為に、人類の為に奇跡を起こし続けた貴方なら此方側に着くと思ったのですがね。 よく裏切ってくれましたね?」

 

「……他の、少なからず生の兵士が加担していたが。 同じ感じで引き入れたのか?」

 

「はい」

 

「そして、断った者は殺したか」

 

「はい」

 

「俺のコトは……グロッケン制圧作戦のとき、殺そうとしたのか」

 

「はい。 情報部の端末から、クローンや此方に着いた隊員に指示を出して」

 

「ハッキリ断っては、いなかったが?」

 

「ソチラのグレ男さん……龍馬榴弾兵と通じていました。 ストーム・ワンは、こちら側に着くつもりはないと。

それで、殺害と制圧を実行しましたが……結果はコレです。 貴方が易々と死ぬとは考えませんでしたが、グレ男さんが裏切るとは思いませんでしたよ」

 

「は? 元から仲間だったつもりはねぇよ」

 

「よせ、グレ男」

 

 

淡々と答えていく彼女。 その考え方は、きっと、ひとつの正義だ。

 

だがな。 考え方は様々だ。

俺やグレ男が裏切ったと言ったが、彼女の考え方は侵略のソレだ。

 

EDFとして、忌避するべき悪行だ。

 

俺は侵略者になる気は無い。 軍曹達、ストームチームの面々も同じ想いだった。

他にも《ブルージャケット》、《ドーベル隊》、《スカウト》もそうだ。

最終的には、クローンの子も加勢してくれた。 グレ男も……今回はふざけた雰囲気ではなかったな。 闘い自体は楽しんでいたが、いつもよりマジだった。

 

俺はジッと彼女の目を見る。 間違ったコトをしたつもりはない、そんな眼差しだ。

 

 

「だがな、お前の正義はEDFの意に反する行為だ。 仲間にすら手を掛け、終いには《プライマー》の群勢。 多くの者が傷付いた。 分かっているな?」

 

「それ以上の価値が、GGOには……VRMMOの世界にはあったんです。 ゲームとしてだけではない、新たな居住地としても、無制限の物資生成場としても」

 

「再興の為なら、侵略者の真似事が許されるとでも?」

 

「ゲーム世界です。 誰も死なない。 平和的じゃないですか。 プレイヤー達には勿体無い世界です、我々本物の為に利用されるべきなのですよ。

なのに、なのに! 貴方達は馬鹿ですか? 最初から賛同すれば良いのに! プレイヤーは死なないから、遠慮なく殺せば良いのに!

アイツら偽物の為に命張って、傷付いて、その結果が感謝もされずに罵倒される!

この世界の連中と馴れ合う必要性は無いというのに! あの絶望が続く地球がどうなっても良いんですか!? 救える貴重な命が失われていくのが、どうでも良いと!?」

 

「黙れ」

 

 

思わずピシャリと言い放つ。 こんなに喚くヤツとは思わなかった。 いや、どこか分かっていたか。

 

彼女の言い分は分からんでもない。

戦後の地球は、かつての人口の1割にまで減少。 少ない物資を奪い合い、人同士が殺し合う暗黒時代だ。

 

EDFは残された微々たる力で、なんとか統制を図っているが……《オペレーション・オメガ》の件もある。

EDFを恨む生存者も少なくない。 そうでなくても、多くのモノを失い、生気が無い人間も多い。

 

隊員も、助けたいのに殺しに来る、拒否する者と接している内に病んでしまう話も後を絶たない。

 

メンタルの弱い彼女なりに、今回の件で打開策を考えた結果。 それが侵略であったのだろう。

 

確かに。 この世界を制圧すれば解決の方向に向かうだろう。

物資があれば争いは減る。 EDFも戦力を増強出来、安全を確保出来る。 皆を守れる。

 

だが、俺らEDFはそうじゃない筈だ。

 

それに。 彼女には言っておきたいコトがある。

 

 

「この世界はゲームだと言ったな」

 

「ええ。 我々は生きていますがね!」

 

「プレイヤーもだ」

 

「はい?」

 

「この世界で生きている、と言いたい」

 

 

これだ。

プレイヤーにとって、確かに現実ではない。 ココは仮想世界。

偽物だ。 肉体を持たず、アバターで行動している。 死んでも、本当に死ぬコトはない。

どこか感覚は希薄で、夢の中にいるような、そんな気もするという。

 

だが、様々な経緯の上でログインし、心を持ち、他のプレイヤーと話し合う彼等。

そこには喜怒哀楽が存在しているのだ。 例え眼に映る表情がエフェクトの1つだとしても、筋肉が動く疲れが無くとも。

 

心の内側までもがプログラムではない。 本物なのだ。

 

 

「死なないから。 疲れないから。 感覚が希薄だから。 所詮ゲームだから。 だが心まではゲームの、プログラムやシステムの話ではない。 そして、操れない。 本来交えないEDFが絡んだコトで、少なからず心に傷を負ったモノもいたのではないか?

結果、現実でも影響が出る可能性は否定出来ない。

お前は、救える命を気に掛けていたな。 では、その為に此方の命を奪うのは良いのか?」

 

「重みが違います。 そんなの、個々の問題で」

 

 

特大ブーメランだな。

そして重み、ね。 コイツもまた、希少性や数で天秤にかける1人か。

 

 

「なら、お前もその1人だ。 もっと言えば、EDFとGGOもだ」

 

「はい?」

 

「個人の考えや問題で、他を巻き込むなと言いたい。 助けを求めるのは悪いことではないが、寄りかかれば共倒れになる。

今回は、元に戻せないレベルにまで達した。 此方の現実では、EDFの件で大騒ぎになっているそうだ。 これ以上問題になれば、GGOはサービス終了、プレイヤーは死ぬ。

その後も調査が入るだろう。 その時、我々EDFだけでなく、地球も危険に晒される事になり兼ねない。

そうなれば、お前が言う地球と、その貴重な命全てを失う結果になるかも知れない。

本部はこの点も踏まえて、GGOから撤退するのを決定した。 転送装置の破壊、履歴の削除も含めて。

お前のやり方は強引すぎたんだ。 もっと穏便にやるべきだった。 武力に頼り、人を考えなかった。

それと…………命の重みを数や希少性、別世界で天秤にかけるモノではない。 そう考えられなかった時点で、お前は失敗していたんだよ」

 

 

これもまた、個人の意見だ。 そして、彼女の正義ではない。 悪だ。 受け入れられるとは思ってない。

 

黙ってしまったが、別に意見を曲げた訳ではなさそうだ。

結構。 期待なんてしていないさ。 俺は君のように意見を押し付けるつもりはない。

それに、反対の意見を認めてしまえば、自身の行いの結果を背負わねばならない。 負けを認めねばならない。

 

それは苦痛であり、屈辱だ。 周りから責められ、完全犯罪者の扱いになり、自身の考えや存在を全否定されかねない。

それを受け入れられる人は、極少数だろう。

 

まあ、良い。 何が正しいかの議論をしているつもりはない。 それに、話は終わってないのでな。

 

 

「話を戻そう。 告発の恐れは考えなかったのか? クローンは兎も角、隊員は良く喋るぞ」

 

「常にクローンに監視させてました。 裏切る動作をすれば、銃殺させました」

 

「クローンは、お前が造ったのか?」

 

「いえ。 《サテライトフォール》の女科学者です。 地球サイドで、人口の水増しで量産されました」

 

 

あの女、《スプライトフォール》以外興味が無いと思いきや、他にもやっていたのか。

無線越しだけでは、人となりは分からんな。

 

 

「クローンというからには、モデルがいるな。 誰だ?」

 

「貴方達ストーム隊と、一部の隊員ら。 外見はどこかのウィングダイバーらしいですが、遺伝子情報はごちゃ混ぜだとか」

 

「何故、女なんだ? なんとなく察しはつくが」

 

 

おかげさまで酷い目にあった、とは言わない。 というか言えない。

レンちゃんの怖い『ウフフ』を思い出すからだ。 願わくば、二度と見たくない。

 

そんな、内心ブルってる俺を気に掛けず、彼女は淡々と答えていく。 素直でよろしい。

 

 

「ウィングダイバーの装備も扱える様にする為や、集団行動や成績において、女性の方が優れているデータもあった為です。

それと、先程言いましたが、人口の水増し。 子を産めるからです」

 

「そんな気はした。 人との違いは無いのだな。 思考や無感情、無口の部分はあるが」

 

 

無表情で無口のみならず、行動もどこか簡素的だったクローンを思う。

簡単な回避行動は取るが、戦術的な動きはしない。 横隊でレイヴンを構えて、弾幕を張りながら前進する行動が主だった。

駐屯地では、遮蔽物に身を隠さず、ひたすらに撃ちながら前進を繰り返していたようだ。

そんなコトをしたものだから、プレイヤーに撃たれまくり(特にスナイパーには格好のマト)、多くの子が死んでしまった。

 

死の恐怖がないのか。 だからといって、俺は人形とは思えない。

 

 

「養成ポッドで、強制的に大人サイズまで成長させる所為でしょうかね。 それは造った本人にでも聞いてください」

 

 

いや、勘弁して下さい。 会いたくも話したくもないです。

 

いや、本当に必要なら会うよ? それが任務を遂行する上で必要ならば。

そうでなければ会いません。 終戦直後の無線は、嫌な思い出だ。

 

無線越しでは、人となりは分からない。 でも狂人だよ。 間違いない。

グレ男やピトみたいなのを見てきたからな。 俺は知っているんだ。

 

 

「あー、今度にする。 だが例外もあったな、M4だ」

 

「M4……GGOの銃の方、ではないですよね。 EDFのレイヴン……ああ」

 

「無感情なのは一緒だが、良く喋る子だ。 他の子の武装がM3の改修に対して、あの子だけM4だから、M4。 あの子は特別なのか?」

 

「開発者は成功例と言っていました。 他の人形とステータスは同じですが、思考が出来るのと言葉による意思の疎通が可能な事から、他を纏めるマスターの役割を期待されていましたが……思考が出来るという事は、反乱の危険性があった。

危険分子として実験台にするか、戦場に放り出すか悩んだそうです。 その間は駐屯地の看守の任務についていました。

ですが、捕らえていたプレイヤーを勝手に逃がして、挙句に持っていたEDFの装備まで渡したとか。 自身も何処かへ行ってしまったそうです」

 

 

捕らえていたプレイヤー、ね。

それはレンの事だろう。 成る程、あの子がレンを逃がしてくれたのか。 礼を言わねばな。

 

 

「GGOの駐屯地で同じ製法でアレだけ造ったら、思考を持ったそうです。

VRMMOの世界故か、偶然か。 科学者は興味津々でした。 そして、この世界を実験台にする為に、クローンの実験も兼ねて侵攻に手を貸してくれましたよ」

 

「クローンが戦力になっていた経緯は分かった。 M4のコトもな。

ビークルの運用は、プログラムからだな? 既存のモノを動かしたら、バレるからな」

 

「はい。 プログラムの書き換えや付け加えで、生産、運用したのです。 まさかプライマーまで創れるとは、思いませんでしたが」

 

 

少し口角を上げて話す彼女。 余程、嬉しかったのだろうか。

 

全く。 とんでもない世界に来たものだ。

量産設備や資材を使わず、ポンポンとビークルや兵器を出せるのだから。

 

馬鹿馬鹿しく、そして恐ろしい。

世界を弄れて、無限に物資を生産出来る。 神にでもなったつもりか。

 

 

「でも……ストーム・ワン。 貴方の存在がいる限り、きっと、全ての計画は崩壊する運命だったのでしょうね。

どんな絶望も窮地も切り抜け、跳ね除ける貴方なら、マザーシップを12隻造ったとしても、きっと勝つ。 そして、戻ってくる」

 

「戦時も思った事だがな、過大評価だ。 俺は空爆誘導兵。 地底じゃ足手纏いにならないようにするのが精一杯だったし、地上でも1人で大群を相手に出来るほど俺は強くない。

グレ男なら兎も角、俺は皆の支援を受けて、ようやくだ。 それも、俺自身の力ではない。 空軍や海軍、基地や衛星の力だよ」

 

「その誘導技術と人望は、他には無いものです」

 

「激しく同意」

 

 

グレ男も口を開き、褒めてくる。

だがな。 多くの仲間の犠牲の上で、俺は前線に立ち続けたのだ。 素直に喜べない。

 

だがやる事はやらねばならない。 死んでいった仲間達の為にも。

 

 

「さて。 長くなったが……他に仲間はいるのか?」

 

「いるとしたら、あの謎の女科学者ですね。 彼女からも話を聞いてみたらどうでしょう」

 

 

やっぱやらなきゃダメ?

あ、いや……死んでいった仲間の為にもか。

 

俺は席を立ち、外にいる本部の人や情報部の少佐に声をかける。 やる事は続きそうだ。

 

 

「本部。 彼女とはココまでだ。 次は……女科学者を呼んでくれ」

 

 

やりたかねぇ。

だがやる。 会えば意外と良いヤツかも知れない。 発狂されなきゃだが。

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