[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断 作:npd writer
テストが辛いんです〜泣
「しかし、まぁ。驚いたね、メッセージ動画」
角田はコーヒーカップを持ちながら、椅子に座って動画を見ていた右京に声をかけた。この動画は過去に忘れられていた『鷺沢瑛里華 誘拐事件』についての人々の記憶を蘇らせるのにもってこいの動画だった。
右京も暫く動画を見ていたがふと立ち上がると、何かを探しているのか引き出しの中を漁り始めた。
「おかしいですねぇ。この辺に置いたはずなんですがねぇ」
「何探してんの?」
「ヘッドフォンです。課長、その部屋どう思います?」
右京は探し回りながら入口の壁に寄りかかっている角田に言うと、角田は興味深そうに画面を覗き込んだ。その画面は鷺坂瑛里華さんが新聞を持っている一場面であり、下には英語の字幕が表示されている。
「あぁ、これ?なんか、地下室みたいな部屋だろ?」
「えぇ。しかし、左上の所から光が差し込んでいるんですよ。つまり、その地下室には明かりとりの窓がある」
角田は眼鏡をおでこに上げ、改めて見つめていると確かに左上から光が差し込んでいるのが見えた。それでも何があるのか分からない角田に右京は自身が疑問に思っているところをそのまま言った。
「23秒の所、スローにして右肩の上の髪の毛の先を見てもらえますか?」
大木や小松が見つめる窓のブラインドを下ろした右京は引き続き、ヘッドフォン探しに奮闘していた。一方で、右京に言われた通り23秒のところをスローにして見ていた角田はようやく右京が言わんとしていることを察した。
「あ!なんか、動いた。風か?」
「えぇ。つまり、窓が開いている。外の音を拾えればアジトの場所を絞り込める、手がかりになるのですがねぇ」
「窓が開いてんなら大声で助けを呼べるんじゃないの?」
角田は眼鏡を下ろすと右京に問うた。確かに、よく見てみると瑛里華の右肩の先が風らしきもので揺れ動いているのが確認できる。つまり、窓が開いているなら彼女の判断で大声で叫べば誰かしら気づいてくれるのではないか、と角田は考えていた。しかし右京は角田の問いに静かに反論した。
「彼女には助けを呼べない、なんらかの理由があるのではないでしょうか?僕は、そこに引っ掛かりましてねぇ」
「理由って、何それ?」
やがて右京はヘッドフォンを見つけたらしく、冠城のデスクまで行き置かれていたヘッドフォンを手に取ると巻きつけていたコードを解きながら角田に右京に対しての愚痴をこぼした。
「冠城くんは時々人の物を勝手に使う癖がある、いけませんねぇ」
ヘッドフォンを耳につけ、作業を始めた右京を見ていた角田は特命係の部屋を出ようと背後を振り返ると、そこにはいつのまにか仕事から戻っていた冠城がいた。一瞬、驚いた角田だったがすぐに落ち着きを取り戻すと、壁に寄りかかる冠城に対して言った。
「見た?動画。しかし、7年も行きてたなんて驚いたね。顔色も良いし、なんか普通の子みたいじゃない」
「いえ全然普通じゃないですよ、彼女。普通を遥かに超えたかなりの美少女だと思いますよ?」
そんな会話を他所に作業を続けた右京であったがふと何かに気づいたかのように顔を上げると、ヘッドフォンを外し勢い良く立ち上がった。
そこに冠城の姿を認めると、右京は何処に行っていたのかと疑問をぶつけた。
「例のレストラン街と、国際会議場です。ノリスさんが殺された翌日にチンさんが事件に巻き込まれて更に同じ日に国際会議場の爆破が行われた。偶然にしては出来すぎている、俺が思うに日本で『レイブン』が事を起こす前に天敵であるチンさんを始末しようとした、そしてその過程の陽動で国際会議場を爆破した。と」
「えぇ。『レイブン』はノリスさんのスマートフォンとタブレットを持ち去っていますからねぇ、日程表を見れば2人で行く筈だったお店も分かるはずでしょうし、国際会議場を爆破すれば警戒がそっちに行きますからチンさんを標的にするに使ったとも考えられますねぇ」
右京と冠城は互いに集めた情報から推理を始めた。右京が持論を展開するて冠城も肯定したが、上着かけにかけてあった上着を取りながら右京は推理に対する疑問を言った。
「しかし、『レイブン』が毒物を混入したかどうかは分かりません」
「仰る通りです。防犯カメラをチェックしたんですけど、それらしき人物は発見できなかったと。あれ、どちらに?」
冠城は右京がせっせと何処かへ行く支度をしている事に気付き、聞くと右京はパソコンにさしてあったUSBメモリーを抜くと身だしなみを整えながら言った。
「えぇ。僕はちょっといくつか寄りたいところがありましてねぇ。あぁ、冠城くん。君、人の物を借りる時はひと声かけてからにしてくださいね、悪い癖」
戸惑う冠城を他所に右京はスタスタと何処かへ歩いてしまった。1人残された冠城は角田と談笑しながら自分が興味を持った国際会議場爆破についても調べを進めた。
特命係の部屋を出た右京が向かった先は、顔見知りでありかつて何度か捜査協力を依頼したこともある人物がいる場所であった。
沢山のコンピューターが置かれ、壁際には大型モニターが設置された肉体派の刑事部とは違うインテリ風の頭脳派が集まる部署、警視庁生活安全部サイバー犯罪対策課の部屋は落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
その中の一つに座っている眼鏡をかけ神経質そうな男、かつて捜査一課の伊丹とタッグを組んだとこがある、岩槻 彬 巡査部長に右京は声をかけた。
「お久しぶりです。杉下警部」
「お時間を取らせてすみませんねぇ。実は『レイブン』の動画に気になる点がいくつかありまして」
右京は懐からUSBメモリーを取り出すと岩槻の許可を得て、彼のパソコンに挿した。USBメモリーには『バーズ』から発信された動画が映っていた。
「杉下警部の事ですから、また何か細かい事を気になさったのだと思いますが?」
「えぇ。僕はこの音声の中に、ある音を見つけました。その音をあなた方に解析していただきたいのですが」
「分かりました」
岩槻はUSBメモリーの中に保存された音声の音をいくつかの音に分けて分析を始めた。現在では何重にも混じり合った音を区切る事ができ、その音だけを残して後は消すこともできるほど技術は進化していた。岩槻は音をいくつかに分けるとともにネット上にもアクセスして似た音を探して行くとあるところで岩槻の手が止まった。
「この音…。電車の走行音ですか?」
「やはりそうでしたか。僅かに聞こえた音なのでいまいち確信が持てなかったのですからねぇ」
岩槻が発見したのは僅かに聞こえた電車の走行音だった。つまり、『バーズ』のアジトは線路沿いにあるという確証を右京は得たのだった。
更に、岩槻は自らが気づいた点である壁掛け時計にも着目した。時計を高精度の画像処理にかけてみたところ、6時ごろに撮られたものであることが分かった。
「岩槻さん、どうもありがとう」
「また、何かあれば声をかけてください」
岩槻に礼を言い、サイバー犯罪対策課の部屋を出た右京にスマートフォンが振動し着信を告げた。右京が懐からスマートフォンを取り出すと、画面には社の文字が表示されていた。
『社です。捜査本部が探偵の毛利 小五郎を再重要容疑者として確定しました。彼のパソコンに国際会議場の見取り図や爆弾の入手経路を調べたと思われる履歴が残っていたようです。今日の夕方にも毛利 小五郎は身柄を確保される可能性が高くなりました』
「そうですか…。いささか犯人確保までの時間が短いと感じますが、誰の判断でしょうか?』
『衣笠副総監が、いくつかの証拠を上げたため毛利 小五郎を犯人として確定したそうですが、詳しいことはまだ』
社に礼を言い、電話を切った右京の脳裏に浮かんだのは自身の娘が関わった事件などで特命係、引いては甲斐峯秋と対立してきた政敵の衣笠 藤治 警視庁副総監 警視監だった。
今回は岩槻 彬が出てきました。
本来は青木を出そうかなと考えていましたが、なんか青木は嫌い(笑)なので岩槻を出しました