[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断 作:npd writer
毛利小五郎の運命は如何に…!
一方、阿笠邸を出たコナンは高木刑事と高速道路の高架下にある公園に来ていた。夕方という事もあり西日が差し込む人気ない公園で、高木ははベンチに腰かけ、コナンはその前でスケボーに右足をかけてゴロゴロと動かした。
「我々刑事部、あと公安部と警備部がサミット前に現場を点検することになっていて、爆発のときは公安部が担当だったんだ」
「だから風見刑事がケガを…」
「彼はビルの外にいたから軽傷で済んだけど、ビルの中にいた人たちは…」
高木の沈んだ声に、コナンは振り返った。
「うん…。亡くなった人もいていたって、ニュースで見た」
「ああ、こういうことは言うべきじゃないけど…被害が民間じゃなくて警察官だけだったのは、不幸中の幸いだったかもしれない」
そう言って俯いた高木は、複雑な表情を浮かべていた。
「サミット中に爆発が起きてたら、世界中が大騒ぎになっていたよね」
「いや、もう警視庁、特に公安部は叩かれてるよ。刑事部長の内村さんは寧ろ敵である彼らが叩かれて清々している感じだったけど、広報課の社課長を始め総務部には本当に迷惑をかけてると思うよ」
「更に、タチの悪いことにこのことを警察批判で有名な『週間フォトス』が日々大々的に報じてるんだ。その急先鋒はフォトスの記者、風見楓子さ。あの人は社課長がロシアのスパイとつながりがあるのではないか、と騒がれた時も記事を書いていて今回もどの社よりもいち早く報じたのさ。まぁ、サミット前とはいえ爆発事故だから警察にも落ち度はあるんだけど…」
高木の話はコナンもワイドショーを見ていたので知っていた。
『週間フォトス』が警視庁広報課長とロシアのスパイが繋がっているのではないかと連日報道し、しかもその女性が内調勤務であったこと、そしてそのスパイとの間に子供がいることも盛大に報じたのだった。その時は監察官聴取が行われたとコナンも記憶していたが、日が経つにつれ、その事実はうやむやにされていたのだった。
「高木刑事、事故ってどいうことなの?」
コナンがもう一つ気になっていたのは高木が事故と言ったことだった。高木は「あ、いや」と顔を上げた。
「現場の状況から、最初は事故で処理されるはずだったんでね、つい」
「小五郎のおじさんの指紋が現場にあったんだよね?」
高木は「うん」と頷き、眉をひそめた。
「それを風見さんが見つけて、一気に事件性が出たんだ」
「風見刑事が…」
その時、胸の内ポケットに入れた新一のスマホが震えた。蘭からの着信だった。
「高木刑事、ありがと。じゃあね!」
コナンは電話に出るため、スケボーを脇に抱えて走り出した。
「気をつけて帰るんだよ!」
高木は駆けていくコナンの後ろ姿に声をかけた。
「蘭、どうした?」
公園を出たコナンは、歩道をスケボーで走りながら電話に出た。
『新一、助けて!お父さんが逮捕されちゃう!』
蘭の切羽詰まった声を聞いたコナンは、クソッと歯噛みして、スケボーを一気に加速させた。
右京と冠城が探偵事務所を訪れて小五郎から話を聞いていると一台の車が停車した。
やがて、階段を上がりドアが開かれる音が聞こえると外から爆発の時の傷がまだ残っている風見以下数人の背広姿の男がやってきた。
「警視庁公安部、風見裕也です。毛利小五郎、不法侵入、器物破損、及び撃発物破裂罪の容疑でご同行願います」
警察手帳を小五郎の前でかざした風見は罪状を読み上げ、小五郎を警察へ連行しようとした。
「ちょっと待ってくれ!俺は何もやっちゃいねぇ!」
「父は、そんな事できるほど機械に精通していないんです!」
小五郎や蘭は反論するが既に風見は小五郎を連行すべく彼のデスクを取り囲み、詳しい話は警察にて聞くと全く聞く耳を持たなかった。
しかし、そこへ冠城が待ったをかけた。
「ちょっと待ってください。僕は小五郎さんが犯人とは到底思えないんですが」
後ろからの声に風見が振り返るとそこにはソファに座る警視庁窓際部署の刑事たちがいた。風見は内村や衣笠が使う決まり文句で特命係を遠ざけようとした。
「特命係…。『警視庁の人材の墓場』と呼ばれ、数々の違法捜査を行なっているあなた方が我々に何の用ですか?」
「我々は真犯人は別にいると考えています。そして、毛利さんはその罪をなすりつけられたのではないか。と」
右京の言葉にそばで聞いていた小五郎は何度も頷いた。風見に対抗できるのは現時点で右京と冠城しかいない。蘭や小五郎は藁にもすがる思いで彼らのやり取りを見ていた。
「あなた方は指紋で犯人を毛利さんを犯人と断定したようですが、指紋はやり方さえ分かっていれば誰でも写せることは可能です」
「指紋だけではありません。彼のパソコンからサミットの予定表、それから爆破された国際会議場の見取り図も出てきたんです」
風見は小五郎に突き出す予定だった証拠資料を右京に見せ、小五郎も慌ててその証拠を見た。
全体を一覧した右京は、再び目線を風見に戻した。
「パソコンから、この様な物的証拠が出たために彼を犯人と断定したわけですか?」
「そうです。分かったらさっさとお引き取り願いますか?我々はこれから彼を事情聴取しなくてはなりませんので」
そう言い、小五郎を連行しようとする風見に蘭が必死に説得した。
「パソコンに記録があるって…。そんなの嘘です!父はそんな資料をパソコンに保存なんてできません!」
リビングの隅で鈴木園子に寄り添うように立っていた蘭が訴えた。園子も「そうよそうよ!」と同調する。
「すごくパソコン音痴なんです!」
蘭の訴えに、小五郎は「そのとおり!できません!!」と得意げに賛同した。
そこへ事務所に入ってきたコナンは周囲を素早く見回し、さりげなく風見をスマホで撮った。
風見が小五郎に近づいて腕をとると
「ふざけるな!」
小五郎がその手を振り解いた。
「公安の任意同行なんか知るか!」
「では今の公務執行妨害で逮捕します」
「手を払っただけだろーか!って、おい!」
風見は構わず小五郎の腕をつかみ、ポケットから取り出した手錠をかけた。
「六月三日、午後四時五十六分」
腕時計を見て逮捕時刻を読み上げると、他の公安刑事が小五郎の両脇をつかんで連行しようとした。
「おい!放せよ!おい!!」
「暴れれば容疑が増えるだけですよ」
そう言い小五郎の手に手錠をかける公安部の刑事たちに右京と冠城は尚も食い下がった。冠城はドアを塞ぐように立つと彼らに聞いた。
「そうやって、あなた方の逮捕を急かす理由はなんですか?」
「爆発事件の犯人を捕まえて、未然に次の犯行を防ぐとともに事件の真相を解き明かす。警察官の任務でしょう」
「本当にそうでしょうかねぇ?」
ソファから立ち上がった右京は風見を見据えると、静かに言い放った。
「公安部はもともと、国家を標的にするテロや犯罪者を逮捕するため捜査に慎重を有します。今回の件は更に各国の要人が標的にされかねない重大な事件です。その事件で偽証可能な証拠のみで逮捕するなどいささか雑ではありませんかねぇ。僕にはまるで誰かに逮捕を急かされているように思えるのですが?」
「…あなた方には関係のないことです。それよりも、もし今後も我々の仕事を妨害し続けるのであればこの事を上層部に報告させてもらいますよ。あなた方は既に幾度となく謹慎処分を受けている、この上更に監察官聴取によって免職になればそれこそあなた方はこうやって警察を語ることすらできなくなる。手遅れになる前に早めに手を引いてこの案件は我々にお任せください。では」
右京や冠城の説得も虚しく、小五郎は連れていかれてしまう。コナンは公安刑事たちの前に飛び出して両手を広げた。
「小五郎のおじさんが犯人なら、サミット会場を爆破する動機って何!?」
「そうだ!なんのためにーーー」
「それも事情聴取で伺います」
風見が冷酷に言い放ち、公安刑事は強引に小五郎を連れて行った。帰り際、探偵事務所を退出する際に風見は再び右京やコナンを振り返ると静かに言った。
「我々は毛利小五郎と先日動画を流した『レイブン』との関与も調べています。彼はテロリストの一味かもしれません。なので彼を庇うのはやめたほうが賢明だと思いますよ」
そう言うと、今度こそ風見は探偵事務所から去っていった。
「お父さん!」
追いかけようとする蘭を園子が慌てて止めた。
「落ち着いて、蘭。すぐに工藤くんに連絡!」
「したわよ!したのに…」
「そんな…こんなときに、なんであの男は来ないのよ…!」
園子が涙ぐむ蘭を優しく抱きながら、悔しそうにつぶやく。その様子に近くにいた右京や冠城も事件の真相が不明なまま進んでいく現状に焦りを覚えつつ、目の前で逮捕を止められなかった悔しさに心を蝕られていた。
「冠城くん…。第1ラウンドは我々の完敗のようですね…」
こんなときにも蘭のそばに駆けつけてやれないなんてーーー二人の近くにいたコナンは自分の無力さに唇を噛むと、すぐに探偵事務所を飛び出した。
小五郎のおっちゃんは、映画通り逮捕されました!
果たして右京さんとコナンくんはおっちゃんの無実を証明し、真犯人を見つけることはできるのか?
引き続き頑張ります!