[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断 作:npd writer
右京さんやコナンくんは登場しません。
その夜。日下部は岩井紗世子統括捜査官の部屋である統括検事室を訪れた。
紗世子の部屋はウォーターサーバーやオシャレな小物が並び、タイトスカートのスーツに身を包んだ紗世子は日下部の報告を聞きながら棚の上の小物をあれこれいじっていた。
「本日取り調べをした結果ですが、毛利小五郎に爆破テロの動機が全く無いのが気になります。それに、彼と『バーズ』の関係性の不明な点が多いです」
「ふーん、動機ねぇ…」
小物を並び替えた紗世子は満足げに微笑むと、切れ長のきつい目を日下部に向けた。そして、自分のデスクに向かい、置かれた証拠ファイルをチラリと見る。
「でも証拠がこれだけあるわけだし、明日にも起訴でいいんじゃない?」
「し、しかしですね、統括官。この事件にはいくつかの不可解な点が多いわけでして…」
ドアのそばにいた日下部は紗世子のデスクに歩み寄り、証拠ファイルを開いて指差した。
「例えば、爆発現場のガス栓にアクセスしたとされるこの記録ですが、被疑者のパソコンが第三者に中継点にされた可能性も考えられます。そのうえで、見取り図や予定表といった証拠を被疑者のパソコンに残し、罪をかぶせた可能性も十分に考えられ…」
デスクに頬杖をつきながら聞いていた紗世子は「日下部主任」とさえぎり、証拠ファイルの別のページを開いた。
「それはこの証拠を無視した、あなたの勝手な推理よ」
と高圧ケーブルの格納庫に焼きついた指紋写真を指差す。
「岩井統括。私は警察に追加の捜査をさせ、その結果を見てから起訴するかどうか決定したいと思います。警視庁にはサイバー犯罪対策課を始め、専門機関がいくつか存在し、それに現在はICPOの専務理事を務めているエドワード・チン氏が来日しています。彼のコネを使い、直接彼にーー」
「いいえ!その必要はない!!」
紗世子が力強く言った。
「毛利小五郎は起訴しなさい。これは公安部の判断よ。いいわね?」
「その公安部とは、我々検察庁ですか?それとも、警察庁の方ですか?」
デスクの小物に手を伸ばした紗世子は、横目でチラリと日下部を見ると、
「以上です。出ていきなさい」
再び手にした小物に目を移した。日下部は暫くデスクの前に立っていたが、あきらめてドアに向かうと、紗世子はクルリと椅子を回して背を向けた。
同じ頃、首相官邸の副総理執務室には佐藤副総理の他、金子警察庁長官、山崎警備局長、折口官房副長官、内閣危機管理監、そして7年前の事件の際、身代金要求を突っぱねた柳沢環太平洋評議会専務理事がいた。
「ニューヨークから帰国したばかりでお疲れのところ、よくお越しくださいました」
「先程、山崎くんらから例の件について聞かされた時は驚きましたよ」
出されたコーヒーを飲みながら、ソファに座った柳沢は自分の斜め左前に座る佐藤の方を見て、太々しく笑いながら言った。
「SPの精鋭部隊が警護につきますので、警備の方はご安心を」
山崎が言うと、柳沢はコーヒーを飲み干したカップを応接セットのテーブルに置くと、静かに言った。
「その件ですがSPについてもらうのは良いとして、サミットの方は出席を見合わせようと考えましてね。何も知らない犯人グループが現れたら、逮捕及びテロリストたちの殲滅の絶好のチャンスですからね」
「日本警察の威信にかけ、必ず犯人グループを逮捕します」
山崎の宣言に満足した柳沢は一呼吸置くと、佐藤の方を向いた。
「いや、それにしてもこの前の記者会見は良かったですよ。『我々は毅然とした態度でテロと闘う』。今回の一件はニューヨークでも話題になっていましてね。各国から事件の対応に関して、弱腰と受け取られるのは私としても憤慨ですから、強気の姿勢を見せたあなた方日本政府の方針には納得ですよ」
「『だが、我々はテロの犠牲になる側の人間ではない』そういうわけですね?」
それまでじっと沈黙していた折口が、発言した。突然、横槍を入れてきた折口を当然、柳沢は歓迎する気もなく明らかに不満げな表情を浮べていたが黙ったまま、彼の発言を促した。
「我々には国民を守る責務があります。それなのに、自分たちは安全なところにいて、犯人逮捕のためならば例え一般市民を巻き込もうが関係ない、そう仰りたいのですか?」
折口は席を立つと、佐藤の目の前まで移動した。折口は顔には出さないものの、彼らの『関係ない』という姿勢に怒っていたのだった。
「事が起これば、何も知らない一般市民が巻き込まれることになるんですよ…!」
「だからこそ、警察がいるんです。当然、警察の方でも警備の方は十分にしてもらえる、でしたよね?」
柳沢に話の矛先を向けられた金子は動じる事なく、眼鏡をかけ直して答えた。
「無論、サミットが開かれる会場及び東京、名古屋、大阪の三大都市圏を中心に警察官を最大限配置しますが、先述した場所を含めた日本各地を警戒するのは事実上、不可能です」
金子の発言に納得するように頭を縦に振った佐藤は、彼の話が終わると折口を諭すように言った。
「折口くん、無理を言っちゃ金子長官もお困りになるよ。人にはそれぞれ役割っていうものがあってね、国家を1人の人間に例えるならば我々は“頭脳”だ。手足が多少擦り傷を負っても“頭脳”は、守られてしかるべきでしょう」
確かに、佐藤の言う通り自分らは“頭脳”と呼ばれる存在だった。しかし、あまりにも国民の命を軽んじている佐藤の発言にも憤慨する折口にとって、今の立場は両板から挟まれるように苦しい立場だった。
何も言い返せない自分に密かに、折口は自分自身に腹を立てていた。
次回は右京さんやコナンくんを出す予定です。
それにしても最近は、あまりにも暑過ぎてエアコンが手放せません汗