[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断   作:npd writer

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この暑さは、本当に辛いです…。

今回は、ちょっと劇場版とは違う展開にしてみました。


30 公安的配慮

小五郎が逮捕されて三日目。コナンは警視庁を訪れていた。

本来ならば、警視庁本庁に子供が一人でで来るのはありえないことだったが、警視庁本庁の正門に立つ警官はまた事件関連で呼ばれたものと勘違いしてあっさり通したのだった。

 

朝の通勤ラッシュ時という事もあり、エントランスは職場に向かう人と夜間の仕事が終わりこれから帰宅する人でごった返していた。

コナンは入り口近くにあるベンチに座り、目的の人物を待った。

 

「杉下警部、おはようございます」

 

コナンは持っていたスケボーを抱えて、右京の前に立ち挨拶した。

 

「おはようございます。コナンくん、君から赴くとは何かありましたか?」

 

「小五郎のおじさんのことで、ちょっと」

 

 

廊下を歩く職員や特命係に隣接する組対5課の捜査員からの目線を物ともせず、右京とコナンは特命係の部屋に向かった。

右京はコナンを、部屋の左側にある応接セットに案内した。右京の棚にはレコードや書籍が置かれ、机にはビックベンを模したガラスの置物が陳列されていた。壁にもロンドンの地図が掲示されており、コナンは右京がイギリス好きである事を察した。

 

「僕は、エッジオブオーシャン爆破と平行して鷺沢瑛里華さんに関する事件も追っているのですが、どうもタイミングが良すぎると思いましてね?」

 

「FBI捜査官が殺され、ショッピングモールで起きた毒物混入騒動、エッジオブオーシャンの国際会議場の爆破、そして鷺沢瑛里華さんを使った身代金要求、まるで一連の出来事が繋がっている。そう杉下警部は考えているってこと?」

 

コナンが聞くと、右京は紅茶を一服すると答えた。

 

「チンさんから聞いた話ですが、『バーズ』は身代金要求や詐欺行為、各国の政府機関や金融機関等へのサイバー攻撃など様々な犯罪に手を染めていますが、大勢の人々が集まる場所で爆発を起こし大勢の無辜の人々を殺害するといった残虐的な犯罪は行なっていません。それなのに、国際会議場爆破について『バーズ』及び『レイブン』は一切、否定する声明を出していません」

 

「つまり杉下警部は、鷺沢瑛里華さんの身代金要求と国際会議場爆破は関連していると考えてるの?」

 

「その可能性は十分に高いと思いますよ」

 

コナンは出された紅茶に角砂糖をいくつか入れて、紅茶を甘くして飲んだ。一方、右京は考え込むコナンの姿がまるで工藤新一にそっくりな事に気付き、ますます彼に興味を抱いていた。

 

 

「おはようございます…って、コナンくん。どうしてここにいるのかな?」

 

右京に遅れること約十分後、特命係の部屋に冠城が到着した。冠城はコナンが部屋にいることに驚きながら自らのデスクにカバンを置き、朝一のコーヒーを作り始める。

 

「小五郎のおじさんのことが心配で…」

 

「小五郎のおじさん…。ああ、毛利探偵のことか。その事で検察庁内でまた動きがあってーー」

 

 

同じ頃、妃法律事務所には白鳥が訪れていた。

 

「追加の捜査を求められた?」

 

デスクの側に立っていた英理が訊き返すと、白鳥は「はい。日下部検事に」と答えた。

応接セットに座っていた蘭が身を乗り出す。

 

「じゃあその捜査次第で、お父さんが不起訴になるってことも…」

 

「いえ…追加捜査は日下部検事の一存で、公安警察は起訴を決めたようです」

 

白鳥の言葉に英理は「ちょっと」と眉をひそめた。

 

「なんで警察が起訴に口出すの?警察は検察に監督される立場のはず。何より起訴は検察官の独占的権限で…」

 

と何かを思い出した英理に、資料棚の前に立っていた境子は「ええ。おっしゃるとおりです」と言った。

 

 

場所は再び、警視庁特命係の部屋に戻る。

英理が話していた内容とほぼ同じ内容を冠城は語っていた。冠城は法務省のキャリア官僚であったことから、法務省及び検察庁の動きには敏感で法務省内に友人も多く、事件の最新進捗状況を入手できた。

 

「検察の刑事部や特捜部は、警察からの要望を退けますが公安部については少し事情が違うんです。右京さんはあまり知らないかもしれませんが」

 

冠城の言葉に右京は頷きながら言った。

 

「えぇ。確か、一口に公安部と言っても、我々警視庁、警察庁、そして日下部検事がいる検察庁、それぞれに公安部があると聞いています。警察は捜査した結果を検察に送りますが、検察はそれを受けて改めて事件を調べるとか」

 

「右京さんの言うとおりです。容疑者を起訴するかどうかはこの検察の調べを踏まえて、検察官が判断するのが普通です。でも検察の公安部だけは違います」

 

ボードに分かりやすく図を書いていた冠城は、ある一点を指した。

 

「はっきり言って、検察の公安は警察の公安に歯が立たないんです。捜査員の人数やノウハウに雲泥の差がありますから。よって、毛利さんの起訴にも『公安的配慮』が働くことがあります」

 

(公安的配慮、か…)

 

コナンは冠城の言葉にあった『公安的配慮』の言葉を心の中で復唱しつつ、右京のデスクに置かれた資料を眺めた。

 

 

その頃、とある場所で特命係の会話を盗聴している者がいた。

褐色の耳に差し込んだワイヤレスイヤホンから右京の声が聞こえてくる。

 

『瑛里華さん誘拐や、サミット会場爆破は、公安警察の顔に泥を塗ったのと同じですからねぇ。しかも、警視庁の衣笠副総監は公安警察とも関係があるそうですから、必ず起訴しろという圧力がかかるのも納得がいきますねぇ』

 

 

「それじゃあ、お父さんは…」

 

妃法律事務所で境子から同じことを言われた蘭が不安そうにたずねると、窓の外を見ていた境子はゆっくりと振り返った。

 

「えぇ。きっと起訴されます」

 

「そんな…」

 

落胆する蘭に近くにいた白鳥はかける言葉もなく、窓際に立つ境子を振り返った。

 

どこか悲しげな顔で蘭を見ているが、その口ぶりに英理は違和感を覚えた。

 

(境子さん…。まるで起訴を望んでいるみたいだわ…)




相棒劇場版llで、それぞれのキャストが「守るべきもの〜」というポスターが発表されていたので、その守るべきものを今回から不定期ですが、載せていきたいと思います。

杉下右京 守るべきものそれは正義

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