[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断 作:npd writer
久しぶりの投稿です。
東京地方裁判所の廊下で、蘭は英理やコナンと一緒に公判前整理手続きが終わるのを待っていた。
「蘭、落ち着いて」
英理はベンチの前をうろうろと歩き回る蘭に声をかけた。
「でも…」
「今日はまだ裁判じゃないんだよね?」
ベンチに腰かけたコナンは隣の英理にたずねた。
「そう。『公判前整理手続き』。争点や証拠を絞り込んで、日取りを決めるだけ」
英理は「言ったでしょ?」と立っている蘭を見た。
「そうだけど…」
そのとき、部屋から日下部誠と境子が出てきた。蘭が「境子先生!」と駆け寄っていき、英理とコナンも後に続く。
境子の先を歩いてきた日下部誠は、鞄からスマホを取り出した。
コナンが日下部誠とすれ違ったとき、ピッポッパッ…と音がして、コナンは振り返った。
スマホのロックを解除するために暗証番号を入力したのだ。
「岩井統括、日下部です。たった今、公判前整理手続きが終わりました」
日下部誠は電話しながら去っていき、コナンは境子たちの元に向かった。
「日下部検事が開示した証拠は?」
「先にもらっていた証拠のとおりでした。これが一覧です」
英理に訊かれた境子は、手にしていた多くの検察側証拠の中から一覧表を差し出した。
「公判期日は?」
「決定しました。それも予定どおりです」
境子はジャケットのポケットに入れたスマホをチラリと見ると、持っていた検察側証拠を英理と蘭に預けた。
「すみません。ちょっと読んでてください。お手洗い行ってきます」
と走っていく。しかしトイレは境子が走る方向と逆側にあった。
「あ、境子先生!トイレ、反対側!」
コナンが声をかけたが、聞こえないのか境子はそのまま走っていってしまった。
「境子先生もきっと緊張してるのよ」
英理は軽くため息をつくと、蘭と検察側証拠の確認を始めた。
そのとき、コナンの耳元でザザッ…というノイズがした。犯人追跡メガネが盗聴音声を受信したのだ。
『…だ…そう…』
風見の声だった。
(これは昨日、風見刑事に仕掛けた…近くにいるのか?)
コナンはメガネの左レンズで発信機の位置を確認した。すると、発信機の位置を示す光点が、レーダーの中心近くで点滅している。
(近い!まさかこの裁判所の中に!?)
廊下を走り出したコナンは、角を曲がって二階の踊り場に出た。吹き抜けになった一階ホールには大勢の人がいる。
(クッ…どこだ!?)
コナンがホールを見回しているとーー盗聴器から着信メロディが聞こえてきた。
(これは境子先生の着メロ!?)
『あ、すぐ戻ります』
スマホで話す境子の声が聞こえてきて、コナンは驚いてメガネを外した。
(なんで風見刑事の盗聴器から境子先生の声が…たまたま風見刑事の近くにいたのか?)
いや、違うーーコナンはすぐに自分の考えを否定した。
(音声を聞いた限り、二人はしばらく近い距離にいたはず。たまたまじゃない…)
コナンはメガネをかけ直すと、険しい目でホールを見つめた。
警視庁の大会議室では刑事部と公安部の合同捜査会議が行われ、公安部側の席についた風見が捜査結果を報告していた。
「我々公安部の捜査の結果、爆破現場への不正アクセスに『Nor』が使われていたことがわかりました」
「ノーア?『ノアの箱舟』をモチーフにしたなにかか?」
黒田と並んでひな壇に座っていた内村が問い返す。
「いえ、IPアドレスを暗号化し、複数のパソコンを経由することで辿れなくするブラウザソフトです」
「ノーアの匿名性は解除できないのか」
黒田の問いに、風見は「原則的にできません」と即答した。
しかし、ここで捜査本部に出席していた岩槻が立ち上がり風見の代わりに説明を行った。
「失礼します。サイバー犯罪対策課の岩槻です。公安部から捜査協力を要請され調査した結果、ノーアのブラウザに構成ミスやバグがあれば、ユーザーを特定できる可能性があるそうです。逆に言えば、犯人のノーアブラウザにこちらから脆弱性を作れば、追える可能性があります。現在、サイバー犯罪対策課と公安部でサーバーを辿り、ユーザーが特定できる可能性を探っています」
「ノーアだかなんだか知らんが、毛利君にそんなことできるかね」
目暮は反論した。パソコンに詳しくない小五郎がそんなソフトを使えるとは到底思えないのだ。
しかし、
「ノーアは素人でも簡単に使えます」
風見に冷たい目つきで言い放った。
「そんな…」「一体、どうなってるの?」
高木や佐藤ら刑事部からざわめきが起きた。何が何でも小五郎を犯人にしようとする公安部の強引なやり方に、誰もが疑問を抱き始めていた。
「目暮警部、あなたは小五郎氏を余程犯人にしたくないようですね。これだけの証拠があがっているのにも関わらずに」
ひな壇の中央に座っていた衣笠は黒田の隣に座っている目暮を睨んだ。
「ということは、あなた方刑事部は小五郎氏とは別に犯人の目星が付いているということですか?」
「いえ、そういうわけでは…。しかし、副総監。前にも申し上げた通り、毛利君はこのようなパソコン関連の扱いには不慣れでして…」
「そういったことは簡単に言い訳できる、違いますか?」
言葉は丁寧だが、明らかに刑事部延いては目暮に対して強い不満を衣笠は醸し出していた。尚も、反論しようとする目暮に内村は咳払いしてこれ以上、意見するのを止めろと遠回しに伝えた。
そのときーー風見はズボンのポケットから着信振動したスマホを取り出した。
「…すみません。招集がかかりました。一時、退席します」
黒田が「うむ」とうなずくと、風見は後方の扉から出ていった。