[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断 作:npd writer
右京やコナン、冠城が警察学校を訪れていたその頃、警視庁内では風見が退席した後も捜査会議は進み、終盤を迎えようとしていた。
黒田が「では」とまとめに入る。
「公安部とサイバー犯罪対策課がノーアによるアクセス先を特定次第、毛利小五郎を起訴する補強証拠として東京地検に提出ーー」
「失礼します!」
突然、前方の扉が勢いよく開いて、千葉が入ってきた。
「都内で今!大変なことが起きています!」
都内を走る電車の車両は、サラリーマンや学生などで比較的混雑していた。座席についている人も立っている人も大半の人がスマホをいじっている。
すると突然、二人組の女子高生が悲鳴を上げてスマホを落とした。
なんだー近くで座っていたサラリーマンが目を向けたとき、持っていたスマホがバチバチっとスパークした。
「うわっ!」
驚いて思わず手を離すと、床に落ちたスマホから白煙がもくもくと発生した。
都内の大通りに面したマンションでは、ベランダに置かれたエアコンの室外機から突然、火が噴き出した。
「わっ!な、なんだ!?」
部屋から出てきた男子中学生が慌てて学ランを脱ぎ、室外機を覆って火を消す。
その下の大通りでは、暴走した車が横断歩道を渡る人たちにあわや突っ込みそうになっていた。
「おかあさーん!大変ー!!」
子供の声に両親が何事かと洗面所を覗くと、ドラム式洗濯機から大量の泡が吹き出していた。
「ええっ!?」
「うそっ!」
驚く両親の前で、洗濯機の扉が勢いよく開き、洗濯物が飛び出す。
同時にダイニングテーブルに置いてあった電気ポットから熱湯が噴き出し、近くで寝ていた猫が逃げ出した。
東京地検・日下部の部屋では、小五郎の取り調べが引き続き行われていた。
延々と同じような取り調べを繰り返されて、ついにキレた小五郎が立ち上がる。
「いつまで同じことをーー」
検察事務官に羽交い締めされた瞬間ーーデスクのパソコンが火花を散らし、ぼんっと煙をはいた。
妃法律事務所にいた蘭は、英理の部屋の壁面に取り付けられたテレビをつけた。
窓から見えるビル群のあちこちから煙や炎が上がり、外からは消防車のサイレンや車のクラクションの音がひっきりなしに聞こえてくる。
テレビではどの局も番組が中断され、臨時ニュースに切り替えられていた。
『6日後、6月30日より行われる国際平和会議 東京サミットのため厳戒態勢が敷かれている東京都内で、次々に起きている不可解な現象について、警視庁からはまだ正式な発表はなく、国内だけでなくアメリカをはじめとするサミット参加国を中心に不安と批判の声が日本政府に届いています。また、日本政府は国民に正確な情報に従い、不要不急の外出を控えるよう呼びかけています。パソコンや電気ポットが突然発火したという情報もあり…』
突然、テレビからバリバリと音がしたかと思うと、火花が飛び散り、画面が真っ暗になった。
「なんなのよ…一体…」
英理は白煙を上げるテレビを呆然と見つめた。
首相官邸では、5日前帰国した総理を含む内閣の全閣僚が集まり、緊急の対策会議が行われていた。
「今日、起こっているこの事案は『バーズ』による犯行ですか?法務大臣の見解を」
4階の大会議室に置かれたテーブルの中央に座る大河内清次内閣総理大臣は、向かい側のテーブルに座る法務大臣に問う。
この会議には佐藤副総理を始め、国平、そして折口も出席していた。
「現在、容疑者として毛利小五郎氏を逮捕・送検していますが、今都内で起こっているこの現象は彼が拘置所に拘留されている間に起こっており、彼が犯人という仮説が覆る可能性があります。よって、この犯行は『バーズ』によるものが高いです」
佃駒人法務大臣が答えると、佃の二つ左隣に座る国平が大河内に言う。
「既に、入国している各国の政府高官たちもこの現状に危機感を抱いている。即刻、事態を解決しなければ日本政府の信頼失墜につながりかねない。総理、海外から弱腰と思われる事態は避けたいと考えます。その為にも、即刻事態の収拾を…」
「外務省の勝手な都合を言わんでくれ!既に都内の消防署の対応も限界を迎えている。関東各県の消防署に応援の連絡を入れても道路システムが麻痺しており、直ぐには駆けつけられん!そこの所も考えて言ってもらいたい!」
国平の発言に反対側に座る河野純総務大臣は苛立ち混じりに反論する。この一連の現象は都内の信号機システムやETCにも影響を及ぼしており、各料金所でその対応に追われ、その結果応援の消防車の到着遅れにつながっていた。
「警察庁は何か、情報を掴んでいないのですか?」
「想定外の事態で、我々も情報収集を行っているが詳しい情報は入って来ていない。内閣情報調査室も同じと聞いているが?」
国平と同じ列に座る柳原邦彦国土交通大臣が警察庁を管轄する国家公安委員会委員長の金井光二に聞くが、彼も分からないと言わんばかりに首を振った。
そんな中、会議に出席していた折口は腕組みをしながら進展しない会議を見つめた。
(こうしている間にも、被害は深刻度を増している…。急ぎ、対応することこそが、我々の使命ではないのか…)
この異常な現象は警察学校内でも見られた。
チンが持つスマホが発火したその直ぐ後、食堂に置かれたポットが突然、湯を出したまま止まらなくなり、生徒が持つノートパソコンは火を噴き、白煙を上げ始め、そして食堂に吊るされたテレビがバリバリと音を立てて、画面が真っ暗になった。
冠城は、思わず後退りして右京の背後に移った。
「右京さん、これって…」
「この異常な現象は、全て電化製品による物が多いようですねぇ。電化製品…」
右京は、電化製品という言葉を繰り返しつつ、偶然生徒が持っていたラジオから流れてくる緊急ニュースを聞いた。
『繰り返しお伝えします。4日後より行われる東京サミットのため厳戒態勢が敷かれている東京都内で、次々に起きている不可解な現象について…』
「電化製品…」
コナンは呟きながら自分のスマホを見た。ふいに、灰原の言葉が頭をよぎる。
『スマホから圧力、温度、時間を設定するだけでスープなどの調理ができる…』
灰原のパソコンで見た圧力ポットを思い出した瞬間、コナンの脳裏に閃光が走った。
それは、右京も同じで眼鏡を光らせた。
「なるほど。コナンくん、このテロの最初こそ…」
「そう、杉下警部。サミット会場の爆破だったんだ!」
いよいよ、物語も終盤へと差し掛かってきました。飽きっぽい性格の自分が良くここまで書き上げたなと、感心しています。
因みに内閣の閣僚の名前ですが、ピンときた方には分かると思いますが『シン・ゴジラ』に出て来た閣僚の名前です。