[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断   作:npd writer

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今回は、右京さんとコナンくんのセリフが多いよりは安室と風見のセリフが多いです。


41 風見と安室

事務所に戻ってきたコナンと右京、冠城は都内で起きている不可解な現象はIoTテロだと英理たちに説明した。

 

「なるほど。それが本当なら裁判に勝てるかもしれないわね」

 

「うん。検察につかまってるおじさんは今、ネットにアクセスできないもんね」

 

「ええ、そうね」

 

愛猫のゴロを抱いた英理が蘭を見ると、蘭はホッとしたような顔で小さくうなずいた。

 

すると、傾いた壁掛けテレビの前で冠城と修理を行っていた境子が「いいえ」と言った。

 

「日時をあらかじめ設定しておけば、拘束された後でもIoTテロは可能です」

 

「え?」

 

「サーバーを辿ってアクセス先がわかれば、毛利さんの容疑は決定的になる」

 

「そんな…!」

 

と蘭が青ざめる。

 

「一つよろしいでしょうか?」

 

そこへ、コナンの隣に立っていた右京が人差し指を立てて境子に聞いた。

 

「我々、警察でさえサーバーの捜査は残念ながら時間を要します。裁判が終わるまでにそれが終わるとは考えにくいのですがねぇ」

 

右京が訊くと、境子はテーブルに置いた工具箱からドライバを取り、テレビを持ち上げた。

 

「公安が捜査しているはずですから難しくないはずです。杉下さんが知らないはずはないと思いますけど」

 

「…待って!」「おやおや」

 

境子の言葉に引っかかったコナンと右京がほぼ同時に言葉を発する。

コナンの脳裏には、風見の言葉がよぎった。

 

『現在、我々公安部とサイバー犯罪対策課でサーバーを辿り、ユーザーが特定できる可能性を探っています』

 

捜査会議を盗聴したとき、確かに風見はそう言っていた。でも、どうしてそれを境子がーー?

 

「なんで公安がその捜査をしてるって知ってるの?」

 

「え?」

 

テレビを持っていた境子の手の力が一瞬緩み、留め金から外れたテレビが大きな音を立ててテーブルに落下した。

 

英理が抱いていたゴロが「ミャ!!」と驚いて逃げ出す。

 

(もしかして、右京さんが訊きたかったのって?)

 

(えぇ、僕も同じ事を考えていたのですがまさかそれがコナンくんだとは思いませんでしたねぇ。やはり、コナンくんについて少し疑問に思うことがあります)

 

コナンの後ろに立っていた冠城は右京に耳打ちし、冠城自身もコナンが改めて単なる小学生ではない、という考えが確信に近いように感じた。同時に法務省時代のコネを使い、コナンを調べようと冠城は考えた。

 

 

「あー、ごめんなさい」

 

テレビを落としてしまった境子はコード一本でかろうじて壁につながっているテレビを覗き込んだ。そして体を起こしてコナンを見る。

 

「それはね、ボウヤ。その手の捜査をするのは公安が多いからよ。公安警察はね、たくさんの『協力者』を持ってるの」

 

「『協力者』というのは、公安刑事の捜査に協力する民間人のことですよね?」

 

冠城がたずねると、境子は「そうです」とうなずいた。

 

「特に通信傍受法で捜査対象になるサーバーの関係者には、公安警察の協力者が多いんです。その手の協力者に当たれば、毛利さんが不正アクセスした証拠も取れるはず」

 

境子は雨の水滴が流れる窓に目をやりつつ言うと、

 

「あ、もちろんそんな証拠があればの話ですよ」

 

慌ててフォローして、再びテレビを直そうと手をかけた。

 

「橘先生、それもういいわ」

 

「そうですか?」

 

「ええ。おとなしく業者に頼みましょう」

 

コナンは英理と会話する境子を訝しげに見つめた。

 

小五郎の起訴が決まりそうなときといい、さっきの言葉といい、弁護する側の発言とは到底思えない。

 

(なんなんだ、この違和感…彼女にはまだ何か…)

 

 

IoTテロの翌日、まだ雨が降り続く早朝に日本橋船着場から日本橋へ続く階段のたもとに、傘を差した風見が立っていた。片手に持ったスマホでニュース番組を見ている。

 

『いまだ混乱が続いている一連の事件に関して、警視庁はIoTテロの可能性が高いと発表しました。なお、この事件が国際犯罪組織『バーズ』、及びそのリーダー『レイブン』によって引き起こされたという、可能性については現在調査中としーー』

 

「まさかIoTテロとはな」

 

声がした方向をチラリと見やると、いつのまにか安室が近くにいた。雨の中、傘も差さず、柵に肘をかけて日本橋川を眺めている。

 

風見はスマホをポケットにしまうと、安室に背を向けて少し離れた。

 

「さすがですね。そんな手口を特定するなんて」

 

「特定したのは僕じゃないが、おかげで事件化には成功した」

 

安室はそう言うと、ポケットに手を入れて歩き出した。

 

「よって我々がした違法作業にカタをつけたい。『協力者』の解放だ」

 

風見は思わず安室を振り返った。階段を上っていく安室の後を追う。

 

日本橋の中央まで来た安室は、麒麟像の横で立ち止まると、柵に肘をかけた。やや遅れて来た風見は麒麟像の前で安室に背を向ける。

 

「その前に、現段階でゼロがつかんでいる情報を教えてください」

 

「ああ」

 

安室はスマホを取り出し、電話しているふりをして何かをつぶやいた。

 

「NAZU!?」

 

風見は思わず後ろを振り返った。

 

「この情報をサイバー犯罪対策課を経由して、捜査会議で刑事部に報告させる」

 

「…刑事部に花を持たせるんですか?我々公安部から報告すべきです」

 

風見の言葉に、安室は軽く笑った。

 

「褒美さ。爆破テロが事件化できたのは刑事部のおかげだ。それに、この情報がゼロからだってことは『裏の理事官』には伝わっている」

 

 

『裏の理事官』は、警察庁警備局警備企画課を統括する指導担当の理事官のこと。警察庁に入庁十五年程度の警視正が務めることが多く、その中には後に警察庁長官や警視総監の職についた者が多い。

 

 

風見は小さく息をつき、安室をチラリと見た。

 

「…降谷さんが怖いです」

 

全て安室の思惑通りに事が進み、風見は恐怖すら覚えた。

 

「風見。僕には、僕以上に怖い男が五人いるんだ。そのうちの一人は、まだほんの子供だがな」

 

言っていて自分でもおかしくなったのか、安室はフッと笑った。

 

「今、降谷さんと同じ子供を思い浮かべましたよ」

 

そう言って風見が振り返るとーー麒麟像の横にいた安室の姿が消えていた。

 

「ッ!?」

 

驚いてすぐに周囲を見回したが、行き交う人々の中に安室の姿を見つけることはできなかった。

 

 

 




今月27日、大木長十郎の志水正義さんが亡くなりました。
ご冥福をお祈りします。

今年は衣笠副総監役の大杉漣さん、瀬戸内法務大臣役の津川雅彦さん、そして大木長十郎役の志水正義さんと相棒を代表するスターたちが次々とこの世を去っていっており、相棒ファンとして非常に残念な年になりました。
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