[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断 作:npd writer
これも皆様のご厚意のおかげでございます。これからも愛読していただければ幸いです。
同じ頃、都内のとある場所では『レイブン』によって拘束されていると報じられているものの、実際は自由を与えられている鷺沢瑛里華が皺によってボロボロとなった1枚の白黒写真を眺めていた。
「随分古い写真だね。家族が誰かのなの?」
大勢の人々に見送られて出航していく南洋開拓団の人々の写真を瑛里華に見せるように彼女に向けていた、リーダー格の男はその写真を大事そうにしまうと答えた。
「親父の形見さ。これくらいしか、記録が残っていないのさ」
男は立ち上がると瑛里華の方をじっと見つめていたが、慈愛のこもった声音でしみじみと言った。
「大きくなったな…。7年前とはまるで別人みたいだ」
「去年から1cmしか伸びてないの」
そこまで言うと、瑛里華はスタスタと自分の寝床であるスペースへ戻っていった。その様子を男は何も言わずにじっと見つめていた。
一方、右京、冠城、コナンの3人は事件の鍵であろう、『天田修介』に直接会ったことのある最期の親族への面会の為、介護老人ホームに向かった。
夕方ということもあり、面会人は少なく3人は親族が現れるまでの間、ロビーに設置された大型テレビを眺めていた。
『…続いてのニュースです。今日午後、国際競技大会にて華々しい活躍を見せた日本人選手団が、成田空港に到着しました。選手団が空港ロビーに現れると、選手を一目見ようと…』
「そういえば選手団の凱旋って、確か〈エッジオブオーシャン〉で行われるんだっけ?」
「えぇ。佐藤副総理が力を入れている都心再開発、その大目玉こそ〈エッジオブオーシャン〉ですからねぇ。文部科学大臣に無理を言われたとか。次期総裁選向けてのPR活動とも囁かれていました」
テレビを見ていたコナンの疑問に同じくテレビを見ていた右京が答える。国際会議場爆破という事件が起こったにもかかわらず、佐藤中心の強硬派はテロには屈せず日本の底力を見せつけるという名目で、強引に凱旋イベントの延期、中止は検討せずに予定通り行うことを大河内総理に承認させていた。
「全く、政府は一体何を考えているのやら。事が起こってからでは遅い、というのに…」
冠城もテレビを眺めながら、ボソッと呟く。冠城は法務省や検察庁に友人がいるため、情報を請求すれば答えられる範囲ではあるが正確に聞く事ができる。故に、冠城は官僚が今回の一連の騒動でどれだけ頭を悩ませているのか少なからず知っていた。
やがて介護棟へ繋がる扉が開き、車イスに乗せられている高齢の女性が現れた。女性のヘルパーが気付くように3人は立ち上がって、2人がいる場所に寄って行った。
「この午後の貴重な時間をいただいて申し訳ありません。警視庁特命係の杉下です」
「冠城です」
「僕は江戸川コナン。おじさん、毛利小五郎さんの無罪の証拠を集めるために特命係の人たちと行動してるんだ」
「そうですか。コナンくん、君はとってもいい子ですね」
女性は優しい声音でコナンに話しかけると自分の自己紹介を始めた。
「私は天田光代と申します。天田修介は、私の従兄弟にあたります。私で良ければ、答えられる範囲ではありますがどんな事にも答えますので」
場所へ移動してラウンジに落ち着いた一行はそこで話を聞く事にした。ヘルパーに4人分のお茶を用意してもらった光代は、彼女がいなくなったのを見ると、ゆっくりと語り出した。
「修介さんの両親は戦前に…『南洋開拓団』の一員としてトラック諸島に渡ったんです」
「トラック諸島というのは、現在のチューク諸島ですね?」
「えぇ。当時はトラック諸島と呼ばれた日本の委任統治領で、開拓団として海を渡った日本人が、立派な街を作っていたんです。学校や病院、神社などもあって。その島で修介さんは、昭和16年に生まれたんです」
光代は持っていた小さなアルバムからいくつかの写真を見せた。それはトラック諸島での生活を写した新聞の写真で、日本人が作った建物や日々の暮らしの一幕が写されていた。
「確か、当時島には連合艦隊の大きな港があったはずですが?」
「はい。でも、戦争末期。ある朝、島の人々の目が覚める頃、トラックの海を埋めるようにして海原に浮かんでいた軍艦は忽然と港から居なくなっていたそうです」
「主力艦隊は全て撤退したわけですか…」
冠城の言う通り、当時の大日本帝国海軍軍令部はこの時、軽巡洋艦大淀を移動司令部として使用することを提言しており、撤退は時間の問題だった。無論、軍人でもなくただただ安住の地を求めてトラックにやって来た人は知る由もなく、主力艦隊が撤退したことでトラック諸島にいた人々は敵のど真ん中で孤立する状況に陥った。
「島に残された人たちはどうなったの?」
コナンの質問に一瞬、光代は詰まる。なぜなら彼女は自身の辛い過去を話すことをあまりしてこなかったからだった。しかし真剣に話を聞いてくれる姿勢、自分に対しての敬意を忘れずに払う3人を見たことで、覚悟を決めて光代は辛い過去を語った。
「島に残った人たちの運命は残酷なものだったそうです。ご存知の通り、今まで島を守る要だった連合艦隊の撤退後、トラック諸島は度重なる米軍の空襲や艦隊からの艦砲射撃等など、連合軍の集中攻撃を受けました。その惨状は正に地獄絵図だったようで…」
そこから語られる彼女の、戦争の生々しい体験談は3人の心を揺さぶり、戦争の悲劇を改めて痛感させた。
皆様の暖かい感想、お気に入り登録に支えられてここまで来ることができました。この場を借りて御礼申しあげます。
この物語も50話を超えてきており、物語も終盤にさしかかろうとしています。
引き続き駄文ではありますがこの作品を最後まで楽しんでいただけたら執筆者としてこれほど嬉しい気持ちはありません。