[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断   作:npd writer

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何に亀山が衝撃を受けたのか。それはこの話を読むと分かると思います。


58 亀山の衝撃

『レイブン』のアジトを捜索した一課が、作成した大量の資料を段ボールに箱詰めした神戸がやってきたのは大河内が神戸に連絡して30分後の事だった。

 

段ボール2箱に及ぶその資料を息を切らしながら神戸は嫌々、特命係の部屋まで運ぶ。

 

 

 

 

「全く!僕は特命係の雑用係ではないんですよ!」

 

「その割には、きちんと運んでくれているようですがねぇ」

 

神戸は段ボールを特命係の部屋の床にドサッ、と置くと苛立ち混じりに右京に抗議するが、その抗議を右京はさらりとかわし分野別に整理された資料の一部を手に取る。

 

「じゃ、俺も…」

 

部屋に残って雑談をしていた亀山も右京と冠城が、資料を読んでいるのを見て、同じく手を伸ばしたが箱の近くで待機していた神戸は段ボールの蓋を素早く閉めた。

 

「生憎、部外者には見せられませんので。亀山さんに見せちゃうと僕が情報漏洩の罪で捕まっちゃうので。そういう理由から残念ながらお見せできません」

 

「そうすっか……ってあれ?何処かで会いましたっけ?」

 

亀山は見ず知らずの他人が自分の正体を知っていることに、僅かだか恐怖心を覚えた。

 

「お会いしたことはありませんが、大体は知ってますよ。杉下警部の下で長く『相棒』を努めた()()の人物、亀山薫・元巡査部長。元外務省事務次官の北条晴臣を二度も追い詰め、内閣官房長官だった朱雀武比古の逮捕に成功し、富永洋介氏主催のカウントダウンパーティーでは、富永元議員のこれまた元婚約者を助け、事件解決に奮闘した正義感溢れる熱血漢。殺害された友人の意思を受け継ぎ、妻とともにサルウィンへ移住、そして現在に至る。こんなところですかね?」

 

「へぇ〜。よく調べてんなぁ。えーと…」

 

神戸は自己紹介をしていなかったので、改めてスーツの襟を正して直立不動の姿勢て亀山に挨拶する。

 

「あ、自己紹介が遅れました。僕はあなたの後を継いだ杉下さんの2代目相棒、神戸尊です。今は警察庁長官官房付として好き勝手にやらせてもらってます」

 

「亀山薫です。改めてですが、よろしく」

 

右京の下で相棒を務めた2人が、手を交えて握手する。もうこうした機会は恐らく二度とないと思えるぐらい素晴らしい光景だと、冠城は考えた。

 

と、握手を終えた亀山がある人物の消息を尋ねてきた。

 

「あぁ、右京さん。官房長って…」

 

亀山は特命係には切っても切れない関係で会った小野田の消息を右京に尋ねる。小野田の最後を知る右京や神戸にとっては、あの衝撃は忘れられないものであり、無論忘れてもいなかったが。

 

「君が知らないのも無理はありません。官房長は警視総監以下12名の幹部を人質に立て篭もった『警視庁篭城事件』の直後、殉職されました」

 

「えぇっ!?殉職って…」

 

「しかも目の前で殺されたんだからね」

 

右京の説明の後に神戸が補足する。この2人は警視庁の地下駐車場で小野田が殺される当にその瞬間を目撃していたのだった。

 

 

 

 

7年前の『警視庁篭城事件』直後の警視庁地下駐車場。右京と神戸との会話を最後に、突き放すように小野田は公用車に向かう。運転手が後部ドアを開け小野田が乗り込もうとした瞬間、小野田に向かって罵声を発しながら走ってくる者がいた。

前の警視庁の会議にて小野田が提示した人事案の中でただ1人、懲戒解雇(交通違反のもみ消し、裏金作り、金品の授受等の重大な罪を犯していたことによる)になった三宅生活安全部長だった。正気とは思えな様で小野田に突っ込んだ三宅は、勢いで持っていたナイフを彼の腹部にナイフを突き刺した。

慌てて右京、神戸、更に地下駐車場から本庁に繋がる入り口の警備に当たっていた警官が三宅を取り押さえる。

引き離された三宅は一緒に腹部からナイフを抜く。小野田は空いた傷口から大量に出血しながら車に寄りかかるようにして倒れる。

 

『俺の人生返せぇ!!何の為に…何十年も警察に尽くしてきたと思ってるんだ……!!』

 

三宅は喚いたまま警官に引きずられていく。神戸が救急車を呼ぶ中、右京は出血を抑えようとハンカチで傷口を覆う。しかしハンカチが血を吸収する速さよりも出血する速度の方が断然早く、あっという間に地面は真っ赤に染まる。

 

『おかしい…ねぇ…』

 

地面に横たわった小野田は虫の息の中、最後の力を振り絞るようにして自分を介抱する右京に言う。

 

『何がでしょう?』

 

『殺されるなら……お前にだと思っていたのに……』

 

その言葉を最後に小野田は、意識不明となった。瞼が閉じられた小野田に向かって右京は渾身の力で叫んだ。

 

『官房長ぉぉぉ!!官房長ぉぉぉぉ!!!!』

 

右京の必死の叫びにも小野田は答えずに、只々地面に横たわるだけだった。

 

やがて東京消防庁の救急車が地下駐車場に滑り込んできて小野田を搬送して行くも、その途中の車内で小野田の死亡が確認され右京にその報告が行ったのは一連の騒動から1時間ほど後の事だった。

 

 

 

 

「俺がいない間にそんな事が…」

 

亀山とこの事件の詳細を知らない冠城は、右京が語った一連の出来事に唖然としてしばらく固まった。

 

「亀山くん。君は海外に行ってしまったものですからねぇ、中々詳細を伝えられずに長い時が経過してしまいました。あとで、官房長の墓にお参りに行ってはどうでしょうか?」

 

右京は手帳の紙を一枚、素早く綺麗に取るとそこに住所を書いて亀山に渡す。後日、亀山夫妻はその墓を訪ねるのだがそれはまた後日。




最近、投稿が遅くなっているのは忙しくなっている為です。

コナンの最新の映画『紺青の拳』早く見たいです!(自分はまだ見ていない)

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