[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断 作:npd writer
私はこのGW、平成から令和に変わるという素晴らしいGWでしたが、胃腸炎で苦しんだ10連休でした。
同時刻 妃弁護士事務所
西に傾いた太陽から強烈な西日が室内を赤く染める。
英理たちは白鳥から岩井検事のスマホが発火したと聞かされていた。
「え?岩井検事が?」
「はい。軽いヤケドでしたが、大事をとって病院に搬送されました」
「まさかそれも、IoTテロ?」
コナンがたずねると、白鳥は小さくうなずいた。
「と、杉下警部は考えているみたいだよ」
「え?杉下警部が?」
驚くコナンに対して白鳥は続ける。
「それにそのスマホを鑑識で分析した結果、これまでと同じくノーアからのアクセスがあって…失礼」
と着信振動するスマホをポケットから取り出し、コナンたちに背を向けて「はい、白鳥」と電話に出た。
「…え!ちょっと待って」
白鳥はスマホを手で押さえながら、笑顔で振り返った。
「毛利さんの不起訴が決定しました!」
蘭と英理は驚いて顔を見合わせた。「お母さん!」と蘭が英理に抱きつき、その頭を英理が優しくなでる。
「拘置所に迎えに行きますか?それとも警視庁へ?」
「早く会える方で」
英理が即答すると、白鳥は2人から離れながら電話に出た。
「…はい。手続きが済み次第、身柄を警視庁に移送してください」
コナンは抱き合って喜ぶ蘭たちを微笑ましく見つめた。
「よかったね、蘭姉ちゃん」
「うん、ありがと」
顔を上げた蘭は涙ぐんでいた。「新一や園子にも教えなくちゃ」
嬉しそうに小走りで部屋を出ていくのを見て、新一のスマホに電話がかかってくると思ったコナンもドアに向かおうとした。すると、
「ところでこれ、どうしましょう?羽場二三一を検察官が取り調べた調書なんですけど…」
緑が封筒から別の書類を取り出した。
調書を受け取って英理が目を通していると、電話を切った白鳥が近づいて覗き込んだ。
「あれ、この人…」
調書にある『岩井紗世子』の名前を指差し、
「スマホの発火でヤケドした岩井検事」
紗世子の肩書きは『主任検察官』になっていた。
「7年前は主任検事ね」
「えぇ。でも今は統括検事で、同期だった日下部検事の上司ですよ」
「そうです」
ドアの方から声がしてコナンたちが振り返るとーーいつの間にか傘とバッグを持った境子が立っていた。
「岩井検事は、妙なことに羽場二三一の窃盗事件がきっかけで出世したんです。ーーところで、これは?」
境子はテーブルに置かれていた調査報告書をと手に取って掲げた。
「なぜ私や私の元事務員をお調べになっているんですか?」
「えっと…」
緑が答えに困っていると、英理が「ごめんなさい」と助け舟を出した。
「先生のこと、よく知っておきたくて、私が栗山さんにお願いしたの」
英理たちに険しい眼差しを向けていた境子は、調査報告書を読み始めて何枚かめくった。
「…よく調べてある。あなたも優秀な事務員のようね」
境子に近づいたコナンが「あなたも?」と言った。おそらくここに右京がいれば同様の反応を示したに違いない。
「まるで羽場さんもそうだったって言っているみたいだけど。その人は携帯ゲームを盗もうとして、境子先生の事務所を潰した悪い事務員さんだよね?」
「あれは二三一のせいじゃない!」
声を荒げた境子はハッと我に返ると、首を垂れた。
「私が……無力だったから……」
「下の名前で呼ぶんだね。自分の事務所で働いてた事務員さんを、二三一って」
コナンが言うと、境子は持っていた調査報告書をバサッとテーブルに置いた。
「……彼が拘置所で自殺したことは?」
唐突に聞かれて、英理は「え?ええ…」ととまどいながらうなずいた。
「その自殺は、拘置所の中で公安警察に取り調べされた後、すぐだったんです」
(ーッ!?)
境子から意外な事実を知らされた瞬間ーーコナンの頭の中を風見の言葉が駆け巡った。
『数年前、拘置所で取り調べ相手を自殺に追い込んだ』
(まさか、安室さんが……!?)
コナンが考えているそばで、白鳥と英理は境子が告げた事実を訝しんだ。
「何で公安警察が?」
「そんなの聞いたことありません」
境子はテーブルに置いた調査報告書の羽場の写真を見て、握り締めた拳を震わせた。
「二三一の自殺にはそんな奇妙なことが重なっていた……」
英理たちが無言で境子を見つめていると、緑が「あの……」と遠慮がちに口を開いた。
「羽場二三一さんは、司法修習生を罷免されてますよね……?」
「裁判官を目指してたってこと?」
英理の問いに、緑は「はい」とうなずいた。
「ですが、彼は裁判官に採用されず、終了式の時に無理やり壇上に上がって不採用となった理由を所長に求めたそうです。その行動は自己満足的な正義感による暴挙と見なされ、裁判官はおろか……」
「弁護士になる道もなくなり、司法人生を絶たれた……」
言いよどむ緑に、境子が続けて言った。心ここに在らずといった面持ちで、ぼんやりと宙を見つめている。
「……なぜ、羽場さんを事務員にしたの?」
コナンがたずねた。
「……人にはね、表と裏があるの。君が見ているのは、その一面に過ぎない」
そう答えると、境子は英理の方を向いた。
「外で娘さんから聞きました。毛利さんが不起訴になったなら、私はもう用済みですね」
ペコリと頭を下げ、英理の返事を待たずに部屋から出ていった。
コナンが境子の言葉を思い巡らせていると、
「じゃあ私も捜査が残ってますので……」
白鳥が帰ろうとしていた。
「犯人のノーアを調べるんだね」
コナンが声をかけると、白鳥は「うん」と立ち止まった。
「NAZUに捜査協力を依頼してあるんだ」
「NAZUって、アメリカの?」
「そうだよ。NAZUでは7年前、ノーアを使った不正アクセス事件があってね」
「ああ、境子先生が弁護した……」
コナンは境子の取扱事件記録を思い出した。
『NAZU不正アクセス事件』ーー7年前、在英大使館の参事官令嬢、鷺沢瑛里華誘拐事件と同時期に起きた事件で、日本人がNAZUのコンピューターに不正アクセスした事件だ。
「それがきっかけで、ノーアユーザーを追跡するシステムがNAZUで完成したんだ。さっそく明日から解析してもらいます。NAZUは今日、太平洋に〈はくちょう〉を着水させるミッションに追われてますからね」
「あ、それ無人探査機のことだよね?」
「ああ。そんな日と日本人選手団のパレードが重なって、警視庁や警察庁も大わらわだよ」
白鳥はそう言って苦笑いした。
「そっか。日本人選手団のパレードも今日かーー」
〈NAZU不正アクセス事件〉〈鷺沢瑛里華誘拐事件〉〈はくちょう〉〈日本人選手団パレード〉〈レイブン〉ーーそれらの言葉が交差したとき、鋭い衝撃が頭を貫いてコナンはハッとした。それまで漠然と記憶されたものが、反射的に浮かんで頭の中を駆け巡った。
皆さん。10連休の休みが明けましたが、またこの一週間を頑張っていきましょう。