[未完]名探偵コナンX相棒 首都クライシス 探偵たちの最期の決断   作:npd writer

69 / 75
カプセルが警視庁に落下するなんてこんなことが本当に起きたら、大混乱になると、自分でも書いていて思いました。


68 避難

「カプセルが警視庁に落下するだと!?」

 

「……どうなっている?」

 

公安部長のいつもの丁寧な口調がすっかり消え失せ、只々予想外のことに呆然とすることしか出来ず、衣笠も静かにではあるが困惑を隠せずに呟く。

 

「4メートルを超えるカプセルがここに落下したすれば、被害は想像がつかないぞ!」

 

「落下カプセルはGPSを積んだ精密誘導システムにより、半径200メートル以内の誤差で落ちてきます」

 

目暮と白鳥の言葉に幹部陣は衝撃を受ける。

 

「……聞くが、警視庁から半径200メートルの範囲にある建物にはどんな物がある?」

 

山崎が聞くと、スマホで調べていた白鳥は答えた。

 

「警視庁を中心にした場合、警察庁や総務省が入る中央合同庁舎2号館、国土交通省ならびに海上保安庁が入る中央合同庁舎3号館、それに法務省や検察庁が入る中央合同庁舎6号館と東京地裁が入ります」

 

「それだけでもかなりの避難が必要になりますね……」

 

白鳥の言葉を聞いていた公安部長は頭を抱えたが、手を顔の前で交差させていた黒田は鋭い眼光を維持したまま、冷静に判断した。

 

「大至急、大型人員輸送車を手配しろ!警視庁を中心に半径1キロ圏内は即時退避!!よろしいですね?山崎警備局長」

 

捜査員一同が「ハイッ!」と声を揃え、各々動き出した。その後に中央に座る山崎に呼びかけた。

 

「あ、あぁ…。それでいい」

 

度重なる報告に虚ろになっていた山崎は黒田の言葉に曖昧な返事で返した。しかしその次の瞬間に、駆け寄ってきた秘書の言葉に現実に引き戻された。

 

「大至急、首相官邸に連絡を。半径1キロ圏内には首相官邸も含まれているため、直ちに官邸機能を市ヶ谷の防衛省に移管するように金井国家公安委員長に進言してくれ。総理と各閣僚の避難用ヘリも用意しろ。また関係各省庁に連絡、急ぎ対策案をまとめ都庁に送るよう伝えろ。我々の捜査本部も緊急対策本部に名称を変更し、本部を都庁に移管する」

 

山崎の言葉に頷いた幹部たちも次々に席を立ち、捜査本部が置かれていた部屋を出て行く。

 

高木に連れられて大会議室の隅で立っていた小五郎は、ドアから出て行く刑事たちを目で追った。

側にいた蘭が不安そうに小五郎を見る。

 

「お父さん……」

 

「大丈夫だ、俺がついてるーー英理、お前も」

 

小五郎は英理の腕をつかんだ。

 

「俺のそばを離れるな!」

 

いつになく真剣な表情で見つめられて、

 

「え、ええ……」

 

英理は思わず顔を赤らめた。

 

「……やるじゃん」

 

2人のそばでやりとりを聞いていた園子は、蘭とともに感心した顔でつぶやいた。

 

 

 

警視庁の正面玄関にある広場は、ビルから出てきた大勢の警察官や職員たちでごった返していた。スマホを片手に走ってきた風見は、人の流れに逆らうように進んだ。

 

「探査機から切り離されたカプセルは隕石のように落下するだけ!つまり大気圏突入前のわずかな時間しか軌道のコントロールができません!!」

 

 

 

 

一方、停電し暗闇に包まれた警察庁内では金子以下、幹部らが小会議室にて停電状況に困惑していたが、やがて金子らの秘書を連れた神戸が会議室に突入し幹部らを保護した。

 

「神戸くん。これはどういう事かね?」

 

廊下を急ぎ足で歩いて、非常階段を下っていた金子は前を先導して歩く神戸に聞いた。

 

「詳しい話は降りてからですが、どうやら〈はくちょう〉のカプセルが警視庁本庁に落下する可能性があるとNAZUから報告がありました」

 

神戸の言葉に金子を始め、後ろから歩いてきていた幹部たちは息を呑んだ。

 

「それでカプセルは確実に警視庁に落下するのかね?」

 

「カプセルは誤差200メートルの範囲で落下してくるそうです。警察庁もその範囲に入っているため、我々も直ちに避難する必要があります」

 

金子の後ろを歩いてきた小田切が、神戸に聞くと息を少し荒げた状態ではあるが答えた。

 

「警視庁は半径1キロを避難区域として設定しているため、総理以下閣僚全員、我々のヘリで予備施設である防衛省に避難しました。また、皇居にお住いの天皇皇后両陛下も赤坂御用地に退避されました。あとは、我々だけです。金子長官と甲斐さんは総理が指揮をとっている防衛省に、残りの幹部の皆さんは警視庁が臨時の本部を設けている都庁の方に避難していただきます。都庁には山崎警備局長や衣笠副総監もまもなく到着されます」

 

「そうか。分かった」

 

何百段にもわたる階段を下り終えた神戸らは正面玄関に停めてある黒塗りの公用車に乗り込んだ。金子と甲斐は神戸が運転する車で防衛省へ、残りの幹部らも都庁へ向けて一般車両の通行が禁止された新宿街道を全速で走り抜けた。

 

 

 

その頃。政府は半径1キロの範囲に首相官邸が含まれているため、官邸機能を市ヶ谷にある防衛省・中央指揮所に移管していた。警察庁のヘリで避難した大河内総理以下、佐藤副総理や官房長官、折口らは中央指揮所に臨時の官邸対策室を設置し、関係省庁の幹部職員を緊急参集させていた。

 

中央指揮所では防災マップが映し出された大型スクリーンを前に、防災服に身を包んだ大河内総理や関係閣僚が向かい合って座り、その後方には事務方が並んでいる。

 

「警視庁の1キロ圏内には各省庁、公園やホテルも多く、避難人員はざっと計算しておよそ20万人と推定されます」

 

環境省の防災服を着た環境大臣の菊川の報告に中央指揮所にどよめきが起こった。

 

「それだけの人員の避難先として1キロ圏外にある候補地と順路をまとめてあります」

 

黒田、金子、甲斐は説明している柳原国土交通大臣の後ろを通り、警備局担当審議官に近づいた。金子と甲斐が着席したのを確認したのを確認した黒田は審議官に耳打ちした。目を見開いた警備局担当審議官が「総理!」と向き直る。

 

「NAZUからメモリーの修正ができないとの報告が!」

 

「何っ!?」

 

「地上局から探査機を送る信号は、特定のコードで暗号化されているのですが、そのコードが一致しないとメモリーの書き換えができないそうです!」

 

 

 

 

コード不一致のため探査機のメモリー情報を書き換えられないーーNAZUからの報告を風見から電話で知らされた安室は、車と並行して走るコナンに伝えた。

 

「つまり、そのコードを犯人が変えたってこと!?」

 

「ああ。NAZUに不正アクセスして探査機の軌道を変えたときに!」

 

「変更したコードを聞き出さないと!」

 

「そのために『協力者』になってほしい」

 

安室は左手でハンドルを握ったまま、右手でジャケットのポケットを探り、つぶれた盗聴発信器を見せた。

 

「こんなスゴイ物を開発する博士に」

 

「何をするの!?」

 

コナンがたずねると、安室は意味深にニヤリと微笑んだ。

 

「死んだ人間をよみがえらせるのさ!」

 

 

 




ゼロの執行人では首相官邸に官邸対策室が設置されましたが、ここでは防衛省に臨時官邸対策室を設置しました。

実際にこのような事態が起きた場合って官邸に対策室を置くんですかね?それとも予備施設に官邸機能を移管するんでしょうか?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。