夢日記 作:どりーまー
結構面白いですね。
私は、映像を見ている。
私の手には古ぼけた黒色のコントローラが握られ、画面には一人の少年が写っていた。
その少年を、私は知っていた。
確か、何かの漫画かアニメのキャラクターだったはずだ。
赤茶けた髪は緩くパーマを描き、黒い制服に身を包んだ彼は、腰に月光を反射する鞘を提げていた。
画面の中の少年に意識を移すと、私の意識は彼の中に飲み込まれた。
左腕に目を移すと、そこに腕は無かった。
そうだ、
右手に左腕を抱えながら、私は前を見据える。
そこは、庭園と呼ぶのが相応しいだろう。
長方形の形をした庭の外周は薔薇の垣根で出来ていた。美しい薔薇の花は一輪も無く、そこにあるのはただの茨。
それはまるで中に入ったものを逃さない監獄のように、高く、そして隙間なく張り巡らされている。
庭園の中央には白い茨で出来た大きなアーチが鎮座し、その向こうでは満月が煌々と、禍々しい黄金に輝いていた。
意識が一瞬途切れると、アーチの向こうに一人の少女が現れた。
ウェーブした銀色の長髪は忌々しい月光を反射して清廉に輝き、ヴァイオレットの目はこちらを真っ直ぐと見据えている。その瞳の上で輝くヘアピンは燃えるような、新鮮な動脈血のような緋色。
その華奢な身体に纏われた、黒を基調とし、ところどころに白いフリルのあしらわれたゴシックロリータは、決して華美でなく、洗練された美しさを感じさせる。
風が一つ吹く。
「さぁ」
砂糖を煮詰めたような、濃く、ドロリとした甘い声が耳朶を打つ。
背筋に怖気を感じながら走り出す。少女から逃げるために、速く、速く。
少女はこちらを見る目を薄くして、冷ややかに見つめてくる。
私は一つ呼吸をして、少女の方を振り返る。彼女の足元には、いつの間にか骨の怪物が蠢いていた。
その姿は、首の落ちた巨大な蜥蜴の骨のよう。
少女はその足元の怪物を、踵で一つ叩いた。
カラリと音が鳴って、化物が動き出す。
庭園の外周に沿うように、私は逃げ続ける。
あの少女に捕まるな。
本能が叫ぶままに、ひたすらに逃げる。
千切れた左腕を抱えながら、庭園のアーチや彫像を利用して逃げる。
跳べ。
理性を介さない警告のままに右側に飛んで避ける。左耳を紫色のレーザーのようなものが掠めるのを確認して、敵を振り返る。
骨の怪物の周りに紫色の火の玉が踊り狂っている。
少女の肩には、赤銅色の無骨なバケツが嗤っていた。ジャック・オ・ランタンのような顔が付いたそれは、カラカラと哄笑を上げていた。
私は走り続ける。だが、今度は逃げるためではなく、少女へと近づくために。
なぜ? そんな事は分からない。だが、私は彼女にこの千切れた腕を渡す必要がある。
接近を許さないように、骨の怪物の攻撃が激化する。火の玉は狂ったように宙を飛び交い、光線は私を狙って何本も放たれ、空中に紫の線を残す。
足元で銀色のバケツが転がった。
それを見て、少女の肩のバケツは明らかに動揺した。
行けるという不思議な、そして当然な確信とともに、私は少女の下へと走った。
骨の怪物は既に攻撃をやめ、少女の足元で静かに蹲っていた。
少女の前へ辿り着く。
彼女はもう、最初に浮かべた笑みを浮かべていない。静かにこちらを観察するような、私の存在自体を解読するような、そんな目でこちらを見つめた。
右手に持っていた左腕を、私は彼女に差し出した。伸ばした手の先でだらんと垂れ下がる腕は、いつの間にか金属製の小手のようなものを着けていた。
彼女は私の腕だったものを見る
私と少女とバケツを取り囲むようにして、火の玉はぐるぐると回る。
上下に揺れながら私達を取り囲む火の玉は、次第に回転の速度を上げていく。
少女はにっこりと笑った。
私の腕を掴み、バケツの中へと放り込む。
そして、赤銅のバケツは遠くへと投げ捨てられた。
私も笑みを浮かべた。
これで、全てが終わった。
火の玉は勢いを強く、紫をより毒々しく、回転を速く、円を縮めるように踊り狂った。
次第に半径の縮まった円の中には、もはや私と少女しか残されていない。
最後に私達は目を合わせた。
その透き通るような紫の眼は、私を嘲笑うように、愉快そうに、憐れむように、慈しむように歪められていた。
そして、その小さな、形のいい唇が開かれた。
「ァハ」
無音の声が私を笑った。
目が覚めた。
2018年の数話については近いうちに消します。
皆様良い夢を。