夢日記   作:どりーまー

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最近、と言っても六ヶ月程前からなのですが、夢の中での自分の性別が現実とは違うことがあるようになりました。

結構面白いですね。


2019/5/20

 私は、映像を見ている。

 

 私の手には古ぼけた黒色のコントローラが握られ、画面には一人の少年が写っていた。

 

 その少年を、私は知っていた。

 確か、何かの漫画かアニメのキャラクターだったはずだ。

 赤茶けた髪は緩くパーマを描き、黒い制服に身を包んだ彼は、腰に月光を反射する鞘を提げていた。

 

 

 画面の中の少年に意識を移すと、私の意識は彼の中に飲み込まれた。

 

 

 

 左腕に目を移すと、そこに腕は無かった。

 そうだ、()の腕は引き千切られていたのだった。

 右手に左腕を抱えながら、私は前を見据える。

 

 そこは、庭園と呼ぶのが相応しいだろう。

 長方形の形をした庭の外周は薔薇の垣根で出来ていた。美しい薔薇の花は一輪も無く、そこにあるのはただの茨。

 それはまるで中に入ったものを逃さない監獄のように、高く、そして隙間なく張り巡らされている。

 

 庭園の中央には白い茨で出来た大きなアーチが鎮座し、その向こうでは満月が煌々と、禍々しい黄金に輝いていた。

 

 

 意識が一瞬途切れると、アーチの向こうに一人の少女が現れた。

 

 

 ウェーブした銀色の長髪は忌々しい月光を反射して清廉に輝き、ヴァイオレットの目はこちらを真っ直ぐと見据えている。その瞳の上で輝くヘアピンは燃えるような、新鮮な動脈血のような緋色。

 その華奢な身体に纏われた、黒を基調とし、ところどころに白いフリルのあしらわれたゴシックロリータは、決して華美でなく、洗練された美しさを感じさせる。

 

 風が一つ吹く。

 

 ()脚に力を溜め(コントローラを握りしめ)、目の前の少女は可愛らしく、それでいて妖艶に笑う。

 

 

「さぁ」

 

 

 砂糖を煮詰めたような、濃く、ドロリとした甘い声が耳朶を打つ。

 背筋に怖気を感じながら走り出す。少女から逃げるために、速く、速く。

 

 少女はこちらを見る目を薄くして、冷ややかに見つめてくる。

 

 私は一つ呼吸をして、少女の方を振り返る。彼女の足元には、いつの間にか骨の怪物が蠢いていた。

 その姿は、首の落ちた巨大な蜥蜴の骨のよう。

 

 少女はその足元の怪物を、踵で一つ叩いた。

 カラリと音が鳴って、化物が動き出す。

 

 庭園の外周に沿うように、私は逃げ続ける。

 

 

 あの少女に捕まるな。

 

 

 本能が叫ぶままに、ひたすらに逃げる。

 千切れた左腕を抱えながら、庭園のアーチや彫像を利用して逃げる。

 

 

 跳べ。

 

 

 理性を介さない警告のままに右側に飛んで避ける。左耳を紫色のレーザーのようなものが掠めるのを確認して、敵を振り返る。

 

 骨の怪物の周りに紫色の火の玉が踊り狂っている。

 少女の肩には、赤銅色の無骨なバケツが嗤っていた。ジャック・オ・ランタンのような顔が付いたそれは、カラカラと哄笑を上げていた。

 

 

 私は走り続ける。だが、今度は逃げるためではなく、少女へと近づくために。

 なぜ? そんな事は分からない。だが、私は彼女にこの千切れた腕を渡す必要がある。

 

 接近を許さないように、骨の怪物の攻撃が激化する。火の玉は狂ったように宙を飛び交い、光線は私を狙って何本も放たれ、空中に紫の線を残す。

 

 

 足元で銀色のバケツが転がった。

 それを見て、少女の肩のバケツは明らかに動揺した。

 

 

 行けるという不思議な、そして当然な確信とともに、私は少女の下へと走った。

 骨の怪物は既に攻撃をやめ、少女の足元で静かに蹲っていた。

 

 少女の前へ辿り着く。

 彼女はもう、最初に浮かべた笑みを浮かべていない。静かにこちらを観察するような、私の存在自体を解読するような、そんな目でこちらを見つめた。

 

 右手に持っていた左腕を、私は彼女に差し出した。伸ばした手の先でだらんと垂れ下がる腕は、いつの間にか金属製の小手のようなものを着けていた。

 

 

 彼女は私の腕だったものを見る

 私と少女とバケツを取り囲むようにして、火の玉はぐるぐると回る。

 上下に揺れながら私達を取り囲む火の玉は、次第に回転の速度を上げていく。

 

 

 少女はにっこりと笑った。

 私の腕を掴み、バケツの中へと放り込む。

 そして、赤銅のバケツは遠くへと投げ捨てられた。

 

 

 私も笑みを浮かべた。

 これで、全てが終わった。

 

 火の玉は勢いを強く、紫をより毒々しく、回転を速く、円を縮めるように踊り狂った。

 次第に半径の縮まった円の中には、もはや私と少女しか残されていない。

 

 

 最後に私達は目を合わせた。

 その透き通るような紫の眼は、私を嘲笑うように、愉快そうに、憐れむように、慈しむように歪められていた。

 そして、その小さな、形のいい唇が開かれた。

 

 

「ァハ」

 

 

 無音の声が私を笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めた。




2018年の数話については近いうちに消します。


皆様良い夢を。
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