東方錦上京の馴子ちゃんが可愛すぎて、早速小説書きました。超突貫工事です。
製品版頒布前に執筆しましたので、設定が色々とヒャッハーです。ご了承ください。
本日は晴天なり。
天候も良ければ気分も良い。
気分が良ければ口も回る。
勢いのまま、眼の前の少年に語りかける。
「ねえ、ボク。このなぞなぞ分かるかな?『朝は……』」
「人間でしょ」
そしてピタリと止まる。十八番のなぞなぞが問題文を出し切る前に答えられた。
少年は、どことなく呆れた口調である。
「馴子おねえちゃん、前と同じ問題出されたら流石に分かるよ。そろそろ問題増やしたら?」
「ぐふっ」
遥かに年下の子どもに正論で諭され、膝から崩れ落ちた。
反論しようにも、数千年に及ぶ人生(神生?)を生きてきて、持ちネタがこれ一つという壊滅的な状態のためぐうの音も出ない。
じゃあまたね、馴子おねえちゃん!と元気な声で去っていく少年に手を振り、軽く息を吐いた。
季節は春と夏の境目。華やかな桜色から美しい新緑に変わっていく景色が、私の双眸に広がる。
深呼吸すると、花と草の香りが胸いっぱいに取り込まれる。空気ってこんなにもおいしいものなのね、と独りごちる。
1年前、幻想郷を賑わした異変が解決し、私の役目は終わった。
……いや、役目などと偉そうなことを口にしたが、元々半ば忘れられていた存在だった私に役目も何も無い。
死ぬほど退屈だった、長い日々。
地下の祭壇に封印された何者かが目覚めた際、それが悪しきものだった場合、その悪から弱き人間を守るために置かれた私。
その守るべき存在である人間が、私をボコして(これは私の自業自得ではある)元凶をとっちめてしまったのだから立つ瀬がない。
どうやらこの地域は、私の昔の常識が通用しない場所らしい。
博麗の巫女、恐るべしである。
さて、地下で長年過ごしているうちにいつの間にか祭壇自体が幻想郷と呼ばれる場所に取り込まれてしまった。
祭壇に封印されていたものも無力化されたことで、私が守り続ける意味もなくなった。
晴れて自由の身となったわけだが、逆に言えばやるべき事が無くなってしまったともいえる。
ずっと一人で門番もどきをしていたため、昔ながらの顔見知りなんていない。
当然、土地のツテなんてあるわけがない。
さてどうしたものかと思い、考えて考えて。
結局自分の頭では妙案は思い浮かばず、博麗の巫女とやらに相談することと相成った。
「あー?人に謎かけ出しといて襲ってきて、自分ではロクに考えられないだなんてなんなのよアンタ」
博麗神社の境内。呆れたようにため息を付く彼女だったが、なんだかんだでアドバイスはもらえた。根は優しい人間なのかもしれない。
幻想郷での大まかな土地勘と、決められているルール。
楽園と言われているだけあって、成る程、確かにルールを守る限りなら過ごしやすい土地であると感じた。
特に、私のような木っ端の道祖神にとってはありがたい。
そこで改めて、身の振り方を考えた。
元の場所、地下祭壇に戻りたいとは思わなかった。平和だけど刺激のない、変わり映えしない日々には嫌気が差していたからだ。
人里、妖怪の山(祭壇の地表に広がっている場所らしい)など様々な場所を回り、たどり着いたのがこの道端の場所だ。
人里と命蓮寺をつなぐ、幻想郷の中でも比較的安全な道。
当然人の往来も多く、たくさんの人間を見ることが出来て内心嬉しい限りである。
道祖神の原点に帰って、道端に立つことで悪霊や疫病を払う……そんな役目を夢見て立ち続けている。
先立って博麗の巫女から人里に通達が入り、
「あの道に新顔が立ち始めたわ。格好はともかく悪いヤツではないから」
という触れが回っていたため、すんなりと人間に受け入れてもらうことが出来た。
私の格好に関する言及に思う部分はあるけれど、本当に感謝している。
思いを馳せていると、ガヤガヤとした賑わいに意識が戻る。
人里から歩いてくる人間は、浴衣や着物を着ているものが大半だった。
人々の顔には笑顔、笑顔。愉快な笑い声とともに近づいてくる光景に、こっちまで幸せな気分となる。
本日は、命蓮寺の縁日。
めでたい日はとことん楽しむもの。様々な屋台が開かれるということもあって、向かう皆が笑っている。
それならば道祖神らしく、その笑顔がいつまでも続くことを願おう。
手を振ってくれた人に、お礼を込めて大きく振り返す。
本日は晴天なり。
たくさんの人の流れを見ながら、私は静かに微笑んだ。