ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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第10話 見つけた絶好の相手 これぞゴーレム修行法

「出でよ、炎の魔人(インフェルノ・アニキ)!」

 

「ファファファファファファ!」

 

 クロッキー帳から、輝きと共に真紅の魔人が出現した

 

 魔人と名付けるだけあって迫力は十分

 

 全身に紅いオーラを漂わせ、隆々とした胸板の前で両腕を組んで不気味な笑い声をあげる

 

 ヤムチャ、ブルマ共々、これはかなり予想の斜め上をいっていた模様

 

「す、すげー……」

 

「描いた絵を実体化させる能力ってこと?ハルナ」

 

「そうです、やろうと思えばブルマさんそっくりのゴーレムだって作れますよ」

 

 ブルマは感心し、同時にすぐ近くにいたプーアルを見やる

 

 つまりハルナの力は、作りたい物を自由に作り出す能力

 

 彼と似ていると思ったのだろう、ポツリと呟いた

 

「へー、ひょっとしたらプーアルの変身能力よりも凄いのかもね」

 

「なっ!?し、失礼な!」

 

 その昔盗賊家業を営んでいたヤムチャ、その頃からの彼の唯一無二の相棒がプーアルだ

 

 南部変身幼稚園出身のプーアルには、最近は披露することが少なくなったがある能力がある

 

「僕だってこのくらい!やあっ!」

 

 ボワンと煙のようなものが、プーアルの掛け声と同時に一瞬出現

 

 晴れた煙の中には、元のプーアルの姿は無い

 

「お、それやるの久々だなプーアル」

 

「えっへん、どうです!」

 

 『変身能力』

 

 現在のプーアルは、炎の魔人(インフェルノ・アニキ)の姿を模したものとなっていた

 

 身体の大きさまで同じほどにまで膨れ上がり、本物と正面から向かい合う

 

 炎の魔人(インフェルノ・アニキ)が二体も並ぶ壮絶な光景

 

 になる筈なのだが、どこかこの図には不協和音が存在していた

 

「……かわいい」

 

 理由は、のどかが漏らしたこの言葉が全て

 

 オリジナルとプーアル版、両者の決定的な違いがそれ

 

 オリジナルの顔→ギラギラした黒目、ゴツリとした鼻、横長に大きく開かれた口

 

 プーアル版の顔→まんまるお目目、小さく殆ど目立たない鼻、まんまるお口

 

 つまりプーアル版は、顔のパーツがそのままプーアル

 

 さらに言えば筋肉隆々のボディも完全再現は出来ておらず、どことなく柔らかい丸みが散見

 

「ふぁふぁふぁふぁふぁふぁ!」

 

 真似して笑い声をあげてもみるが、当然声も元のまま

 

 迫力という物は微塵として感じられず、この場にいた者全員が思わず心の内で呟いた

 

 あ、かわいい と

 

「ファッファッファッファッファッファ!」

 

「ふえええっ!?」

 

 ただし例外が一人、というより一体、それは炎の魔人(インフェルノ・アニキ)

 

 対抗してプーアルのすぐ近くまで顔を近づけ大笑いをし、ビビらせ変身を解除させる

 

 プーアル完全敗北の瞬間だった

 

「ヤムチャ様ー!」

 

 ヤムチャは自分に飛びつくプーアルを、身体と両腕で受け止める

 

 よしよしと頭を数度撫でた後、自身より遥かに巨漢な魔人の顔を見上げた

 

 ヤムチャにはちょっと、気になることがあった

 

「……ハルナ、こいつって実際に敵と戦わせたりできるのか?」

 

「え?まあ戦闘用ゴーレムってイメ-ジで作りましたから、結構な戦闘力はあると思いますけど」

 

 やはりか、とヤムチャは納得する

 

 先程から、炎の魔人(インフェルノ・アニキ)からピリピリと感じてくるものがあった

 

 過去に強敵から感じた『気』のようで、どこか違うもの

 

 ハルナはこのゴーレムを魔法の一種として呼び出していた

 

 そのためヤムチャはこれを自身の中で『魔力』と名付けて思考を進める

 

(今感じる魔力の大きさが向こうの基準だとどれくらいかはまだ判断出来んわけだが……かなりでかいよな)

 

 少なくともあの力が戦闘に発揮された場合、ハルナの言うとおり結構な戦闘力、それこそ常人相手ではまず無双を誇るのではなかろうか

 

 問題はその無双が、どれくらいの相手にまで及ぶかどうか

 

 もとより、本日ここへ足を運んだのはある大会に向けての修行目的

 

「……ハルナ、だったな。ちょっとこいつで俺に攻撃してみてくれ」

 

「え!?」

 

 試して損は無かろうと、ヤムチャはハルナへ提案した

 

 まだヤムチャの実力の一片すら見たことが無いハルナは多少躊躇するが、心配いらんと本人に言われては断りようが無く

 

「……ほんとにいいんですか?」

 

「ああ、どんとこい」

 

 決行

 

 ヤムチャはブルマとプーアルを自身から離れさせ、右掌をスッと胸の前まで上げて的を作る

 

 ここにパンチしろ、ということだろう

 

「どれくらいの力があるのか興味があるんでな、全力で攻撃してみてくれ」

 

「……本当に大丈夫なんですよね?」

 

「だから心配ないって」

 

「じゃあ……攻撃」

 

 躊躇いをやや見せつつも、攻撃を指示

 

 ハルナがヤムチャに指をさすと、炎の魔人(インフェルノ・アニキ)は大きく振りかぶって右ストレートを放つ

 

「ふんっ!」

 

 ヤムチャはそれを右手で受け止め、続いて両足を地面へ強く踏み込ませた

 

「うおおおっ!」

 

 予想以上のパワー、始めはそれほど構えておらず対応が僅かに遅れる

 

 その場に踏みとどまれず、下の芝生を削りながら後退

 

 右掌と両足への気の充填が追いつき、動きが止まったのは三メートルほど動いた後であった

 

 ハルナの指示で魔人は拳を引き、ヤムチャは攻撃を受け止めた右掌を見やる

 

 炎を冠する魔人だけあってその拳には炎が宿っており、気で防ぎきる前に少々火傷を負ってしまったようだ

 

 もっともそれ自体に対して痛みは無く、おそらくヤムチャの治癒力ならば数日で回復するだろう

 

 むしろ、あたりをつけていたよりもパワーが強大だったことに今は感心している

 

「そのゴーレム、思ったよりやるじゃないか」

 

「でしょ?私もこのアーティファクト気に入っちゃってるんです」

 

 絵の上手さ、更には創造力によって幾らでも強さを発揮できるアイテム

 

 これほど自分にピッタリなものも無いだろう、手に入れた当初ハルナもそう思ったものだ

 

 そして、ヤムチャはあることを考え始める

 

 目にしたゴーレムは目の前の一体だけだが、即興であれ程のものを描きあげたということはハルナの画力は相当の物

 

 つまり頼みさえすれば、幾らでも色々な物を描いてもらえるのではないか

 

 そう、例えば修行相手

 

 二週間後に控えた、天下一大武道会に向けての修行相手を

 

「ブルマ、この子達お前の家で居候させるのか?」

 

「ええ、そのつもりだけど」

 

「……ハルナ、ちょっと頼まれてくれないか?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、こんなこといきなり頼んで」

 

「別にいいですよ、三週間もあそこでゴロゴロしてるだけってのも退屈ですし」

 

 ハルナ達がいた大都市、西の都から数十キロ離れた先にある荒野

 

 周囲は開けていて人通りは殆どなく、修行にはもってこいの場所

 

 そこに現在、ヤムチャとハルナの二人が立っていた

 

「ハカセは研究所の中に缶詰、のどかはこの世界の本に興味津津……私だってこの異世界を楽しみたいので」

 

 ハルナはヤムチャと会話しながらも、そちらへ目を向けているのはほんの数瞬

 

 主な視線の先は左手に持つクロッキー帳

 

 右手には羽ペンを持ち、凄まじい速度で一体の人物像を描き出している

 

「それで必殺技が、手からエネルギー波を飛ばす『かめはめ波』と、自在にエネルギー球を動かせる『繰気弾』と、えっと……」

 

「『狼牙風風拳』だ。こう、両手を狼に模した感じで連続攻撃をだな……」

 

「あーはいはいOKですからあんまし動かないでくださいね……っと、まあこんなもんですか」

 

 最後にページの端に幾らか書き込みをし、作業完了

 

 ハルナは息を吐き、面を上げてヤムチャと完全に目を合わせた

 

「言っときますけど、実力の完全再現は無理ですからね?」

 

「わかってるわかってる、それでも充分修行になるから問題ねえよ。早く出してみてくれ」

 

「はいはい……」

 

 ハルナはクロッキー帳を持ち替え、絵が描かれた面をヤムチャへと向ける

 

「出でよ!パル様戦闘ゴーレムNO.3……荒野のハイエナ ヤムチャ!」

 

 炎の魔人(インフェルノ・アニキ)の時と同様、ページ部分から迸る光

 

 そこから飛び出した一体のゴーレムが、ヤムチャと対峙した

 

 ハルナが呼んだ名の通り、そのゴーレムは正にヤムチャそのもの

 

 本人からすればまるで鏡を見ているようなほどの再現度

 

「それじゃヤムチャゴーレム、しっかりヤムチャさんの相手してね」

 

「ふっ、お遊びはいい加減にしろってとこを見せてやるぜ」

 

「うおっ!声まで出るのか!?」

 

 上から、ハルナ、ヤムチャゴーレム、ヤムチャの順

 

 ゴーレムには書き込みによって声の付加も可能、そっくりな声色で台詞を言い放ったヤムチャゴーレムにヤムチャが驚くのも無理はない

 

 想像以上の出来に思わず舌を巻くが、このゴーレムを作らせたのはそうやって驚くためではない

 

「最初に技の説明はしたが……本当にこいつ使えるんだよな?」

 

「説明書によれば可能みたいです、私が考えた以外の技ってのは初めてなんですけど」

 

 ヤムチャは構えをとる、ヤムチャゴーレムも全く同じ構え

 

「はいやーーーーー!」

 

 先に飛び出したのは、ヤムチャゴーレム

 

 それを受けてヤムチャも飛び出した

 

 中央で交錯、両者の拳が狭い空間内で乱舞する

 

(はっはっは!どうだクリリン、お前にはこんな都合のいい修行相手はいまい!勝てる、勝てるぞ!勝って優勝賞金1億ゼニーは俺のも……)

 

 ヤムチャゴーレムの拳が、隙をついてヤムチャの頬を抉った

 

「ぐべええっ!」

 

「ヤ、ヤムチャさーん!」

 

 この時、ハルナは思ってもみなかっただろう

 

 自身のゴーレムの存在が、ヤムチャの練習相手だけに終わることは決してなかったということを

 

 それを知るのは、もう少し後の話である




 二本目遅くなって済みません、今回の投票は以上となります。

 一応次回分でストック切れになるので、今晩と明日はさらに頑張って書き進めます。ではでは
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