ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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 今回の話は2話構成なんですが、書き溜めのストックの関係上今日は一本だけということで。
 加えて今回はDBの原作初期、いわゆるアニメ無印版のキャラが多数登場します、あまり詳しくない方すみません。


第11話 え、悪魔!?ここは砂漠のど真ん中

「朝倉さん!夕映さん!お願いですから起きてください!大変なんですよー!」

 

 相坂さよ

 

 3―A幽霊生徒の彼女は、必死になってクラスメイト二人を起こそうと奮起していた

 

 二人より先に覚醒したさよは、目の前の事態に驚愕

 

 辺りは砂漠、気絶する直前までいた麻帆良の欠片すら無し

 

 周囲の様子を見に行こうかとも考えたが、二人を置いていくことはまず出来ない

 

 幽霊であるため手を触れること、例えば担いで一緒に移動したり、肩を揺すって起こすといった行動も不可

 

 仕方なしに声を荒げ、それで目を覚ましてくれることを願うしかなかった

 

 だが、かれこれそうやって十分近く経過

 

 そもそも元の世界で彼女の声を聞きとれる者は殆どおらず、例外は片手で数えられる程度

 

 二人の内の一人、朝倉和美はその数少ない例外なわけだが、気絶しているとなるとそれも厳しい

 

 空からは太陽が照りつけ、二人の身体からは汗が流れ続ける

 

 加えて呼吸がやや乱れ始めたのにさよが気付いたのは、呼びかけ続けるのに少し疲れて一旦休憩した時だった

 

「ああっ、た、大変です!このままじゃ二人が、えっと……そ、そう!熱中症になっちゃいます!」

 

 より事態が深刻であるのを確信し、さよは慌てて周囲を見渡す

 

 熱中症の対策として彼女が真っ先に浮かんだのは、『水を飲ませる』

 

 しかし辺りにどこか水場は無いのかと必死になってから数十秒後、自身の身体では彼女らに水を飲ませることが出来ないことに気付く

 

 同様に、『日陰に移動』させたり『氷を当てて体温を下げ』たりも不可

 

 八方ふさがり、彼女の焦りは頂点に達しようとしていた

 

「どどどどどど、どうしたら、どうしたら……朝倉さんお願いだから起きてくださーい!」

 

 『助けを呼びに行く』のも、自分を認知出来る者がまずいないであろうことを考えたら可能性は絶望的

 

 故にこうして、二人が目を覚ますのを信じて呼び続けるしかない

 

 そうさよは考えていた

 

「朝倉さん起き……?」

 

 彼が飛来してくるその瞬間までは、だ

 

 彼女も最初は何がなんだか分からなかった

 

 頭上に影が出来、ゆっくりと接近

 

 鳥か、飛行機か、そう考えたもしたがどちらでもない

 

 全身が黒色で頭に角、背には羽

 

 そんな悪魔のような外見をした生物が、自分達のすぐ側に降り立った

 

「まったく、婆さんの言うことは外れねえなぁ……ほんとにこんな砂漠のど真ん中にいやがった」

 

 彼は目の前で倒れている二人、綾瀬夕映と朝倉和美を一瞥

 

 続いて膝を折り、両手をそれぞれの身体へと伸ばして軽々と担ぎ上げる

 

 突然のことで思わず固まっていたさよ、ここでようやく我に返って止めに入った

 

「や、やめてください!夕映さんも朝倉さんも、その、食べてもきっと美味しくありませんから!」

 

 とっさに浮かんだ止め文句がこれ

 

 さらに、止めたところで向こうは聞こえてないんだから意味が無い、と言った後に気付く

 

 そう、普通ならさよの声は大抵の者は耳にすることは出来ない

 

 よほど『普通でない者』でない限りは、だ

 

「あのな、俺は別に人食いの趣味なんかねえよ」

 

「……あれ?」

 

 目が合い、返事をされた

 

 普通に自分と会話してきたことに信じられず、さよは再び開口

 

「私のこと、見えてるんですか?それに……聞こえて」

 

「嬢ちゃん以外に誰がいんだよ。んでこの二人、知り合いか?」

 

「え、あ、はい。同じ学校のクラスメイトで……」

 

「ここを西に少し行くと知り合いの婆さんがいる、とりあえずそこへこいつら運ぶぜ」

 

「えと、あの、その……」

 

「幽霊なら飛ぶなりなんなりしてさっさとついてこい!」

 

「は、はいいぃっ!」

 

 彼は羽をバサリと鳴らし、再度飛翔

 

 さよはあわあわと困惑してその場から動けなかったが、一喝され後を追った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?占ったって、その今乗ってる水晶玉で!?」

 

「そうじゃ。でなきゃお主たち今頃おっ死んどったぞ、感謝せい」

 

 占いババの館、今夕映達三人がいる建物のことを人はそう呼ぶ

 

 運び込まれた後、夕映と朝倉は程なくして回復

 

 水を幾杯か喉へ通した後、さよから事の次第を聞いた

 

 その後、タイミングを見計らったようにこの建物の主人である占いババが入室

 

 身長は三人の中で一番小柄である夕映よりもうんと低く、全身黒色の服装に三角帽子と、魔女を思わせる容貌

 

 更にはその『魔女』を裏付けるかのように、こちらへの移動手段は徒歩でなく水晶玉

 

 身の丈の半分以上の大きさはまずあるその玉はフワリと宙に浮いており、そこの上へ正座した状態で占いババはやってきた

 

 今はちょうど、夕映達が砂漠に出現した経緯を含めて情報交換の最中

 

「にしてもよ婆さん、他の星やあの世とかならともかく、別次元の地球から来たっていうのはちょっと話が飛躍しすぎじゃねえのか?」

 

「別にありえん話じゃなかろうて、アックマン」

 

 ちなみに現在部屋にいるのは合計五名

 

 夕映達三人に占いババ、そして夕映達を此処まで連れてきた張本人の彼

 

 名をアックマンといい、占いババとは少なからず縁が深い人物である

 

 目覚めた当初夕映達は彼の容姿に驚くが、おそらく悪い人ではないと把握していたさよがすぐに説明

 

 そのまま、占いババの入室後もなし崩し的に会話に加わっていた

 

「娘らが話す『地球』とワシ達が知るこの『地球』、本質的なところは変わらんが肝心の中身がまるでチグハグじゃ。それに、『太陽系第三惑星』なんてもんがこの宇宙に二つもあると思うかの?」

 

「記憶を弄られたって可能性もあんだろ、何の意味があってされたかは知らねえが」

 

「それも無い。部屋に入った時パッと三人を見たが、そんな形跡は残っとらんかったわい」

 

「あの、すみません……」

 

 とは言っても互いに情報を出し尽くした後、つまり考察のところまで段階が進むと喋っていたのは殆ど占いババとアックマン

 

 こちらの入る余地がなかなか無く、見かねて夕映が二人の間に入り込んだ

 

 すると占いババは何かを思い出したようで、顔を彼女の方へ向け距離を詰める

 

「おっと、そうじゃそうじゃ忘れとったわい。ほれ」

 

「え?」

 

 続けてシワだらけの右手をパーにし、掌を上にして夕映のすぐ目の前まで差し出した

 

「金、じゃ。居場所占って助けまで寄越したんじゃから当然じゃろ」

 

「……はい?」

 

 先程の情報交換で既に判明していたことだが、元いた地球と今いる地球とでは通貨が異なる

 

 元いた地球では国ごとにバラバラで、例えば日本だと円

 

 今いる地球では地球全体で統一、単位はゼニー

 

 1円=1ゼニーくらいの価値とみて良さそうであるが、当然夕映や朝倉の持つ円は此処では役に立たない

 

「わしの占い料は高いぞ?一回一千万ゼニーじゃ。まあ特別に割り引いたとしても……何?金が無い?しょうがないのう……」

 

 どうも占いババは、夕映達を連れて来させた時点でこうしようと決めていたと見える

 

「超特別サービスじゃ、この館の二週間のタダ働きで勘弁してやるか。のう?アックマン」

 

「……婆さんの好きにすりゃあいいだろ」

 

「あのさ、夕映っち。これってば一体……」

 

「……断る材料がこちらに無い以上、従うしかないでしょうね」

 

 諦めた様子で、夕映は息を吐いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋を出る前に時計を見ると、午前十時前

 

 こちらへ飛ばされる直前は日も沈んで夜だったのだが、眠気は特に感じず身体は普通に動く

 

 現在、綾瀬夕映は一人で館の奥にある書庫にいた

 

 占いババに命じられた、まず最初の仕事は掃除

 

 装備は雑巾一枚、ハタキ一本にハンカチ一枚

 

 あまり整理されて、というより人が入ってすらいなかったか、埃が溢れ返るその書庫内で彼女はハンカチ片手にハタキを振るう

 

 脚立を上って本棚の最上部をパタパタとはたくと、これでもかと埃が飛び出し顔面へ降りかかった

 

 ハンカチで口元を覆っていたが防ぎきれず、むせ返る

 

「げほっ、ごほっごほっ……ううう、これはあまりにも酷いです」

 

 『一先ず本や棚にかかっている埃を全部落とした後、床に落ちたそれを雑巾で拭いて掃除終了』

 

 という考えでもってかれこれ十数分右手を動かし続けたが、まだ半分と終わらない

 

 未だ埃にむせながらも脚立を下り、次のポイントへ移動する

 

「しかし、個人でこんなに大量の本を所有しているとは……おや?」

 

 その最中、ふと一冊の本が目に入って立ち止った

 

 そういえば、この世界の書物はどのようなものがあるかまだ知らない

 

 著者・作者は一人として元いた地球と同じ人物はいない、ならば本も然り

 

 図書館探検部部員、綾瀬夕映はその本へ自然と手を伸ばす

 

 背表紙の文字は大半が掠れていたが、唯一『MAGI』という部分だけは読みとれた

 

 目に入った理由はそれ、MAGIとはラテン語で『魔法使い』の属格の意味を持つ

 

 棚から抜き取って表紙を見ると、やはり自分でも読めそうな言語で書かれている

 

 元々、この掃除に時間制限は設けられていない

 

「……ま、ゆっくりやればいいですよね」

 

 夕映はページに手をかけ、パラリとまずは一ページ目をめくった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっへっへっへ」

 

「ぎゃああああああ!ま、まいったーー!」

 

 所変わって館の外、一人の男が叫び声をあげる

 

 服装を見る限り、何かしらの武術経験者だろう

 

 その男に一体の怪物がしがみつき、牙を肩に突き立て血をすすっていた

 

「ちっ、もう終わりか……ほらよ、御馳走さん」

 

「ひえええええっ!」

 

 怪物はギブアップ宣言を受け、男を開放

 

 情けない声を漏らしながら、男は白いタイルの床で出来た舞台から外へと走り出る

 

 その男の姿を見て、彼の知り合いであろう別の男が意気揚々と舞台へと上がった

 

「くそおおっ!今度は俺が相手だー!」

 

「ケケケケ、今度はさっきの奴より吸わせてくれよ?」

 

 そして、試合開始

 

 この様子を、占いババは楽しそうに観戦

 

 更には占いババ含めた全体の様子を、館の中からさよ達は眺めていた

 

「あわわわわ、大変です……さっきの人、あんなに血を吸われちゃって……」

 

「ん?平気平気、ちゃんとあいつは加減して吸ってるからよ」

 

「それにしても準備0で来たんだなあの人達、こりゃ僕の出番は無さそうだ」

 

 そこらの一般人が見れば、眺めているのは一人だけに見えるだろう

 

 全身包帯でグルグル巻きになっている巨漢、その名もミイラくん

 

 しかし実は、その場所には更に二人いる

 

 一人は言うまでも無く、幽霊相坂さよ

 

「あの……本当に透明なんですね、私最初はてっきり手品か何かかと」

 

「アハハハ、別にいいよ。あ、話しづらいならサングラスとマスクでも掛けとこうか?」

 

 そしてもう一人、透明人間のスケさん

 

 幽霊のさよでさえ目視不可な彼だが、ちゃんと実体そのものはあり彼女の横に立っていた

 

「いえ、大丈夫ですお構いなく……占いババさんって、ああいうのがお好きなんですか?」

 

「まあね」

 

 前述の通り、占いババの占い料金はとんでもなく巨額である

 

 となると占ってもらいにやって来るのは一部の金持ちばかり、いつの日からかそれだけではつまらないと考え始めたらしい

 

 その結果がこれ、占いババが用意した戦士達との団体戦だ

 

 五対五の勝ち抜き戦で勝利すれば、一千万ゼニーの占い料はタダ

 

 これを始めてから、館への来客は倍増した

 

 とはいっても、そう易々と占ってやるほど占いババも甘くは無い

 

 用意する戦士は毎回強者揃い、並の格闘家相手ではまず負けない強さを誇る

 

 その証拠の一つとして現在先鋒で戦っている彼、ドラキュラマン

 

 得意の吸血攻撃であっという間に三人抜きを果たし、既に四人目と対戦していた

 

 血を毎回吸っているためか疲れは無く、またも機敏な動きで四人目の男を翻弄する

 

 もう勝負の行方は知れたもの、そう思ったのかミイラくんはいつのまにか館の奥へと消えていた

 

「とは言っても、今まで五人抜きをした人なんてほぼゼロさ。僕が知ってるだけでも一組だけだね」

 

「へー、凄いんですねその人達」

 

 その間に、またも悲鳴が一つ

 

 それはドラキュラマンの勝利宣告にほぼ等しく、すぐさま五人目が出てきたが結果は同じ

 

 向こうのあまりの不甲斐なさに占いババは罵声を幾つも浴びせ、試合場から不満そうな顔をして館の中へと戻って来た

 

 その後ろにはドラキュラマン、沢山の血を吸えたためか占いババとは対照的にかなり満足気だ

 

 さらにその後ろには朝倉和美、先程まであった来客の行列を整理する仕事を命じられていた

 

「おいスケ、そこにいんだろ?今日はもう終いらしいから、奥行って酒飲もうぜ」

 

 ということらしく、ドラキュラマンはスケを伴い館の奥へ

 

 占いババは朝倉へ新たな仕事、現在夕映がいる所とは別の部屋の清掃を命じる

 

 サボるでないぞと最後に釘を刺した後、占いババはさよの方へと振り返った

 

 占いババもアックマン達同様、さよの目視をさも当然のように行っている

 

 というより、現在この館内でさよの目視がまともに出来ないのは夕映一人のみ

 

 朝倉と占いババ以外は全員お化けまたはそれに似た類の人外であり、占いババも齢500を超えておりある意味人外と言えないことも無い

 

「さて、と。そろそろいい加減お主にも何か働いてもらいたいんじゃが……この館内じゃ出来ることが無いからのう、見事に透けとるし」

 

「うっ、すみません……」

 

「というわけで、今からちょっと付き合え」

 

「?」

 

 朝倉と夕映は現在掃除仕事、そんな中さよだけが仕事をしていない

 

 というのもさよが幽霊であるため実体が無く、何かを持ったり運んだりということが出来ないのだ

 

 さっきまでは一応『対戦の順番待ちをしているミイラくん達の話し相手』という名目であの場所に居させていたのだが、正直仕事と言っていいのかかなり怪しいレベル

 

 そこで占いババ、さよにでも出来る仕事を思いつき、占い稼業を途中で切り上げた

 

「あの、私にも出来るお仕事って……」

 

「お主、地縛霊ということはまだ会ったことがないんじゃろ?」

 

 自分の近くに寄るようさよに命じ

 

「誰にですか?」

 

「閻魔じゃよ、閻魔」

 

「ええっ!?」

 

 二人はその場から、一瞬で消えた

 

 

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