ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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 結局完全オリジナルで書き直してたら遅くなりました、お待たせしてすみません。ではどうぞ


第15話 ちう茶々地球冒険録① 聖地カリン編

 天津飯やアスナがいる場所からずーっと南西に進んだ先には、とあるとてつもなく高い塔が建っていた

 

 その名をカリン塔といい、そこにはカリン様という仙猫つまり猫の仙人が時折下界を見下ろしながら平和に過ごしている

 

 そんなカリン塔の周囲は森や草原と言った自然に囲まれ、その中心に位置しているのが聖地カリンだ

 

 古くから住む原住民が集落を形成しており、今も聖地としてカリン塔を守り続けている

 

 現在どうやら、集落の中でちょっとした騒ぎが起きているようだ

 

「え!?森へ行ったっきり帰ってこない!?」

 

「おそらくな。今日はこんな天気だし、危ないから森には入るなと言っていたらしいんだが……」

 

 話しているのは二人の男性

 

 二十代半ば程の青年が、父親らしき男から詳しい話を聞いていた

 

 なんでも、集落に住むある家族の一人息子の姿が遊びに出て昼過ぎから見えなくなっているらしい

 

 現在の時刻は午後四時を少々回ったところで、まだ夕方と呼ぶにも少々早い時刻

 

 しかし朝からどうも天候が安定せず、今では雨が降り続いていて止む気配はない

 

 それどころか更に空模様は悪くなるばかりで、もう少しすれば雷でも落ちそうな程だ

 

 こんな天気になっても帰ってこないということは、森の中で何かあって動けないのか、もしくは森のどこかで雨宿りを決めて動かずにいるのか

 

 これから先は暫く天候の回復が見込めないことを考えると、放っておくという選択肢は取れない

 

「それに今しがた、森の上空を怪しい人影が飛んでいるのを見た者がいるという話も聞いた。何かあっては遅い……今から私は森の中を探しに行こうと思う、お前もすぐに支度をしろ」

 

「分かりました父上!」

 

 青年はすぐさま家から弓矢を持ち出し、再び父の前に立つ

 

「よし、では行くぞウパ!」

 

「はい!」

 

 聖地カリンの戦士、ボラの後を青年ウパは追っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい、まだ着かないのかよ」

 

「今までの移動速度を考えますと、残り三十分ほどかと。もうじきです千雨さん、頑張ってください」

 

 その一方で、聖地カリンの集落へ向けて足を運ぶ少女らがいた

 

 絡繰茶々丸と長谷川千雨、この二名である

 

 気が付いた時、二人は既にこの森の中にいた

 

 最初事態が理解できずに激しく動揺していた千雨、その一方で茶々丸はある程度すぐに把握する

 

 おそらくではあるが、自分達は転移魔法の類で飛ばされて今この場所にいるのだと千雨に話した

 

 千雨は既に麻帆良祭を通して魔法を知り、その使い手であるネギと深い関わりを持ってしまっている

 

 故に『魔法のせい』は否定材料に出来ず、他に理由も思いつかないため茶々丸の言うことに納得するのに時間はかからなかった

 

 しかしその茶々丸も最も現状で肝心な点、今自分達が何処にいるのかというのは分からず

 

 普段なら衛星情報等から現在位置を割り出すことくらい朝飯前なのだが、本人曰く内部にインプットした地図を参照してもエラーしか出ないらしい

 

 仕方がなく彼女は、周囲の目視による現在地の確認を行った

 

 魔力を動力として動くガイノイドの茶々丸は、その魔力をジェット噴射させることで上空へ飛翔

 

 すると森を抜けた先に小規模ながら集落があるのを発見し、その方角を正確に記録したのち着陸、千雨に伝えてその方向へと今も歩き続けている

 

「なあ、さっきのジェット噴射使ってパーッと飛んでけねえのか?私をおぶるなりしてさ」

 

「あれは私の動力である魔力を多量に消費してしまいます、この先何が起こるか分からない上補給の目途も立たない現状では、無闇に使ってしまうのはあまり推奨出来ません」

 

「はいはいそうですか、我慢して歩きゃいいんだろ……っつ!」

 

 歩くのに疲れを見せてきた千雨だが、自らの提案を却下され思わず不満を零す

 

 だがそんな彼女の口から突然、不満とは違った声が漏れた

 

「どうされましたか?」

 

「いや、ちょっと枝が引っかかって血ぃ出た」

 

 現在の千雨の格好は、麻帆良祭の時そのままで夏服セーラー服にミニスカート

 

 出来るだけ早く森を出たいという千雨の意向に沿って、やや草木が他より多く茂る道を度々通っていたのだが、やはりというか無茶が祟った結果である

 

「少し休憩も兼ねて手当てしたほうがよろしいのでは……」

 

「それよか今は森出るのが先だろ、何か本格的に降りだしてきたぞ」

 

 千雨は上を向き、より一層悪くなっていく上空を眺める

 

 かけていた伊達眼鏡のレンズはたちまち雨粒によって濡らされ、レンズ越しの視界は完全にボヤけてしまった

 

 高く伸びる木々の葉が幾らか遮っていてもこれなのだから、現在どれだけ降っているのだろうか

 

「つうかさっきから見えるあの馬鹿でかい塔は何なん……おいどうしたよ急に止まって」

 

「すみません千雨さん、お静かに願います」

 

 茶々丸が安全を確認しながら先に進みその後ろを千雨がついているのだが、茶々丸が突如立ち止まったことで千雨もその場で足を止める

 

 問い正そうとする千雨の口を、逆に茶々丸は掌で覆って喋るのをやめさせた

 

 自然と千雨は言葉を止め、茶々丸と同じ方向へ顔を向けて耳を澄ます

 

 すると、今まで雨音で気付かなかったが何やら子供の泣き声がするのが聞こえた

 

 放っておくことは出来ず、すぐさま茶々丸は進路を変更して子供のいる方へと走る

 

「おいおい、マジでいたじゃねえか」 

 

「どうやら怪我をしているようですね……大丈夫ですか?」

 

 千雨も仕方なく茶々丸の後を追うと、そこにいたのは木の下で座り込んでいる十歳ほどの少年だった

 

 茶々丸は少年に近付くと、大きく腫れた患部の足首に手をやる

 

 指先が触れた瞬間少年は悲鳴に近い声を上げ、重度の捻挫かそれに近い重傷であることはすぐに分かった

 

「……失礼します」

 

「わっ、わあっ!?」

 

 茶々丸は少年の膝裏と背中に手を回してヒョイと持ち上げ、後ろに立つ千雨の方へと向き直る

 

 少年はいきなりの茶々丸の行動に慌てるが、彼女に敵意が無いことが分かるとすぐ大人しくなった

 

「このまま運んでく気か?」

 

「ここでは碌に治療も出来ません。服装からしてこの先の集落の方のようですし、目的地が同じなら時間のロスもありません」

 

「あ、ありがとう……お姉ちゃん」

 

 こうして茶々丸と千雨の二人に、少年を加えて移動を再開

 

 少年一人を抱えていたところで茶々丸の動きは決して鈍ることなく、先程同様順調に出口へ向けて進んでいく

 

 さらにこの移動の最中、少年からこのあたりの地域の情報を聞くことも出来た

 

 少年曰く、ここは西の都からうんと西にいったところにある聖地カリンの森

 

 そして森の中からも見えるあの大きな塔は、仙人カリン様が住むカリン塔

 

 聞き慣れない単語だらけで千雨は怪訝そうな表情だったが、一方で茶々丸は着々と自身の中で情報の整理を進めていた

 

(衛星情報が一切無し、聞いたこともない地名、そして現在の建築技術では到底不可能なあのカリン塔……ここを私達がいた地球と同一視するのは、難しいかもしれませんね)

 

 何にせよ、更なる情報が必要だ

 

 三人がもう少々進んでいくと、突然耳につんざく轟音が響き渡る

 

「うおっ!?今のかなり近いぞ!」

 

 ついに上空の雨雲から、集落でボラ達が危惧していたように雷が落ちてきた

 

 しかも千雨の言う通り一行と落雷地点との距離は遠くなく、雷光と雷鳴のタイムラグは皆無

 

 雨脚も強くなる一方で、雨具もなく全員が雨で身体を濡らしている現状は非常に危険と言わざるを得なかった

 

「おいボケロボ!あとどんだけかかんだよこの森出るのに!」

 

「おおよそ、あと十分少々……ですが、あと三分で間に合わせましょう」

 

「は?ってこらこらこら!」

 

 緊急を要すると判断した茶々丸は、少年を片手で抱えなおして空いた右手を千雨へと伸ばす

 

 腰に手を回し、有無を言わさず持ち上げて脇に抱え込んだ

 

「こちらも落とさぬよう注意しますが……暴れないでいてください」

 

 茶々丸が初めに出した到着までの予定時間は、千雨が遅れないよう彼女にスピードを合わせたうえでの計算結果

 

 では茶々丸だけがそういった事情を考えずに移動した場合を計算したらどうなるか、結果は初めのそれよりも数倍早くなる

 

 落ちないよう細心の注意を払いつつ、茶々丸は森の中を駆け出した

 

「わっわっわっ!おい待てボケロボ!速い速い速い!」

 

「舌を噛みますよ千雨さん、お静かに」

 

 顔を上げた千雨の目の前に映ったのは、目まぐるしい速度で動く森の景色

 

 千雨に木や枝が当たらぬように配慮したコース取りを茶々丸はしていたが、本人からしたらたまったものではない

 

「そういう問題じゃ……っ!」

 

 続けざまに抗議する千雨を、ここであるものが黙らせる

 

 茶々丸の前方に位置する大木が被雷、さっき以上の音が周囲を包み込む

 

 その上急停止した茶々丸めがけ、狙ったかのように倒れてきた

 

「千雨さん、下がって下さい」

 

「ん?あたっ!」

 

 茶々丸は落とすように千雨をその場で解放、両手を突きつつ千雨は地につく

 

 これで右腕が空き、それを前へと突き出して大木を受け止める

 

 揺れ落ちる葉っぱ、ズンと響く重い音、茶々丸の右肘と両膝が一瞬曲がった

 

「お、お姉ちゃん……」

 

「大丈夫ですよ」

 

 茶々丸は少年の顔の後、自身の右横をチラリと見る

 

 千雨は既に茶々丸の言うとおり後ろへ退避、これで問題はなくなった

 

 真下から力を入れて止めていた目の前の大木だが、手首を少し返してその向きを右へと寄せる

 

 体勢を崩すことなく大木を右横に落とし、地面とぶつかり鈍い音を立てた

 

 ロボットであるため当然なのだが、茶々丸は汗一つかかず平然とした顔で後にいる千雨へと向き直る

 

「では千雨さん、移動を再開しましょ……おや」

 

「おい君達!大丈夫か!」

 

「ボラさん!ウパ兄ちゃん!」

 

 そこへ落雷と倒木の音を聞きつけボラ達がやって来たのは、ほぼ同時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ!?異世界に飛ばされた!?」

 

「先程ボラさんから色々お話を伺い、最終的な結論が出せたところです」

 

 茶々丸達が森を抜け、聖地カリンの集落に到着してから約三十分ほどが経過

 

 気が抜けたためか腕の傷が痛み始めてきた千雨は、少年と共に彼の家でさっきまで手当てを受けていた

 

 一方で茶々丸はそことは別の住居、ボラ親子の家屋に足を運び更なる情報収集

 

 そこで前述の通り色々と話を聞いた結果、確信に至って千雨の所まで戻ってきたところ

 

「名前こそ地球ですが、実際は私達の知るもの大きく異なり世界全体が一つの連邦国家として統治を……千雨さん?」

 

「なんだよふざけんじゃねえぞ……魔法だの気だのはこの際もういいよ認めちまったし、けど次元飛び越えて異世界トリップはねえだろファンタジーすぎだろ。しかも同じ地球だが中身が違うって……」

 

 腕の痛みとは別種のそれが千雨の頭部を襲い、茶々丸に向かって話すでもなくブツブツと言葉を漏らす

 

 一回呼び掛けたが返事はなく、どうしたものかと茶々丸が待っていると、少しして千雨は口を止めて茶々丸と顔を合わせた

 

「……んで?まさかこういう時お決まりの、『帰れる手段は今のところ分からない』とかだったりすんのか?」

 

「いえ、それは少し見当がついたのですが……ここからかなりの移動が要求されます」

 

 そう言って茶々丸が取り出したのは、ボラから一枚譲ってもらったこの地球の世界地図

 

 茶々丸は地図上で一番大きな大陸の西側を指差し、ここが自分達の現在位置と説明する

 

 次に茶々丸はその指を右へ滑らし、大陸のほぼ東端で止めた

 

「この東エリアに、パオズ山という山があります。そこに孫悟空という方が住んでらっしゃるのですが、ボラさんによれば過去に一度その方によって命を救われたと」

 

「……で、それと私らが帰るのとどういう関係があるんだ?」

 

「正確には、その孫悟空さんが『あるアイテムを使って龍を呼び出し、その龍の力で既に亡くなっていたボラさんを生き返らせた』です」

 

「今度は龍……おいちょっと待て、生き返らせた!?」

 

「何でも願い事を叶える球、ドラゴンボールという名前だそうです。ただ現在それがどこにあるか等はボラさん達も分かりかねるそうで、こちらから出向いて本人から話を聞くことが必要になります」

 

 そのため、次の自分達の目的地は大陸東エリア

 

 明らかに距離がありすぎることを千雨は指摘するが、そこは船を利用しましょうと茶々丸は続けた

 

 今いる場所から北上すると大陸の西端に位置する港町があり、そこから船に乗って西にいけば東エリアまで一晩で到着するという

 

 ただし位置の関係上そこから幾つかの街を経由してパオズ山に向かわねばならず、長い旅になることは避けられそうにない

 

「ボラさん達のご厚意で数日分の水と食料をいただけることになりました、あとは現地調達で何とかしてパオズ山を目指しましょう」

 

「……他に方法がないんだな?」

 

「今のところは。それにネギ先生や他の皆さんについて、何か情報が得られるかもしれません」

 

 茶々丸が言い終わると、千雨は諦めたように深いため息を吐き出す

 

 続いて窓の外を見やると、まだ雨は降り続いているようで出歩けそうにはない

 

 これについては明日になれば雨が大人しくなるとみられ、今晩千雨達はこの集落で一泊させてもらうことを茶々丸とボラが話し合い、了承にこぎつけていた

 

 その場所は今二人がいる、森で助けた少年の家である

 

「雨のなか歩き続けたのでお疲れかと思います。もうすぐ夕食とのことですので、それをとりましたら今夜はもうお休みになった方がよろしいかと」

 

「分かった分かった、言われなくたってこっちはへとへとだよ」

 

 かくして千雨と茶々丸の、パオズ山目指しての旅は始まったのであった




 次回もリメイクではなく完全新作を書くので遅くなります。少なくとも今回ほどは間を開けぬよう頑張りますので、どうぞご勘弁を。ではでは
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