ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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 ここ数日リアルが忙しすぎて全く筆が進まなかったカゲシンです、大変申し訳ない。ではどうぞ。


第17話 師の違い 古とアスナの伸びゆく先は

 武術の神様武天老師、またの名を亀仙人

 

 その彼が住むカメハウスが建つ島の砂浜に、彼とは違う二人の人物が立っていた

 

 中国拳法の型を取り、演武の様な形で次々と技を繰り出しているのは古菲

 

 それを脇で見ているのはクリリン、かなり熱心な様子で眺めている

 

 毎日麻帆良でもやっていた稽古なのだが、この時古は麻帆良とは違った状態で行っていた

 

 背負っているのは、巨大な甲羅

 

 クリリンも昔やっていた修行法だと亀仙人に紹介され、古は修行二日目から嬉々としてそれを取り入れていた

 

 ここに来てから早四日、甲羅を背負ってからかれこれ三日は経っている

 

 ちなみに甲羅の重量は、現在カメハウス内にある最重量の物で八十キロ

 

 自身の体重の倍近くある代物を背負い、古は少量の汗を流しながら両手両足を振るった

 

 一通り終わると、古は甲羅はそのままに息を吐きクリリンの方に向き直る

 

「クリリーン、もうちょと重いのないアルかな?」

 

「うーん、これ以上重いのだと逆にな……」

 

 クリリンは悩ましい表情で古を見た

 

 続いて視線を横にずらすと、亀仙人が椅子に座って二人の様子を眺めつつ時折カップに入れた飲み物を口に運んでいる

 

 クリリンの視線に気付いた亀仙人は手に持つカップを脇に置き、よいしょと立ち上がった

 

「ふむ、初めの手合せでも思ったが古ちゃんの格闘技術は中々のもんじゃ。それについてはこっちが手出しして色々弄るのは逆効果と言える、だからこそこうして基礎パワーの向上を狙って甲羅トレーニングをさせてみたが……八十キロではもう慣れてしもうたか」

 

 重い物を身に付けることで負荷をかける、トレーニングにおいてはよくある手法だ

 

 亀仙流においてもそれは取り入れられており、亀仙人の弟子が過去何人も甲羅を背負って修行に励んでいた

 

 現在古もクリリンの弟子のような形で修行しているため、言ってみれば亀仙人の孫弟子である

 

 よってクリリン達の例に倣いその修行を続けていたが、これ以上続けることに彼らは難色を示していた

 

「これ以上重いのも用意出来なくはないが、そのせいであまり変な癖がつくのも考え物じゃしな……」

 

 負荷をかけるといっても、『甲羅を背負う』という特性上両手両足までには完全にかからない

 

 すると背負って慣らしている時はいいが、いざ外した時に古の中国武術の繊細な動きのバランスが崩れる恐れがあった

 

 ただパワーを上げたいだけならいいが、それによる弊害が懸念される以上甲羅だけに頼る修行法は推奨出来ない、そう亀仙人は言っているのだ

 

「それじゃあどうするアル?手足にも重り着けるアルか?」

 

「ひとまずはそうなるかのう……おっ、クリリン、お主確か天界で修行してた時に貰った道着がありゃせんかったか?」

 

「ああ、そう言えば……確か奥にしまってる筈です、ちょっと取ってきます」

 

 クリリンはカメハウスの中へと駆け入った

 

 カメハウスの中からは昔の荷物を片っ端からひっくり返す音が聞こえ、どこへいったかな、と首を捻っている姿が容易に想像できるクリリンの声が漏れる

 

「道着……アルか?」

 

「うむ、知り合いの何人かも修行の時に着ていたやつじゃ。今背負っとる甲羅よりもずっと重い代物じゃぞ、すっかり忘れとったわい」

 

「おおっ!」

 

「しかしクリリンのやつ当分出てきそうにないのう……」

 

 亀仙人は数歩だけ進んで玄関の前へ

 

 そこから中を覗き込んでみたが、本当にどこへしまったか忘れたのかクリリンはどうやら二階へ上がっているようだった

 

「なら見つかるまで、別の修行をするまでアル!」

 

「ふむ……そういえば古ちゃん、気の扱い方についてはクリリンから何か教わったのか?」

 

「込め方や練り方とかは一通りアルかな、例えば……ハイヤッ!」

 

 古は海岸の方へ身体を向けると、中段の突きを一発

 

 目に見えて気が溢れ返っていた右拳からのそれは、直接触れずとも大きく水飛沫を上げさせた

 

「おおっ、初めてクリリンと手合わせした時よりも威力が上がっておるのう」

 

「大分コツを覚えたアル……が、まだクリリンみたいに手に出して撃ったりは無理ヨ」

 

「気功波か……どれ、クリリンが出てくるまでわしがコーチしてみるか」

 

「老師自らアルか!?」

 

 この亀仙人の提案に、古が嬉々としない理由はない

 

 たまには身体を動かさんとのうと亀仙人は言い、次に古の前に立って構えを取った

 

 古もクリリンが撃つのを見た、かめはめ波の構え

 

 同じ構えをしてみいと古に言うと、彼女も見よう見まねで同様に構える

 

「さっき古ちゃんは拳に気を込めとったが、手を握らんでも……例えば手掌にでも大丈夫か?」

 

「無論アル!」

 

「なら説明が楽じゃな、イメージとしては(てのひら)そのものに直接ではなくその少し先、掌同士で作ったこの空間の中に込めるんじゃ」

 

 そう言って亀仙人が少し気を込めると、両手の間に青白い光が灯った

 

 両手で上手くコントロールされたその気は、手の中から逃げることなく一定量づつ大きさを増していく

 

「気功波とは、本来身体に内在してる気を外へ引っ張り出して相手に放つ特別な技。だからこそ途中で飛散せぬよう自身でコントロールすることが求められる、難しいのはそこなんじゃ」

 

「だから両手で囲うようにして気を集めるアルか?」

 

「その通り、こうすれば気を逃がすことなく集め易い。そうやって気を集束して放つのが……波あああっ!」

 

 完全に込めきったわけではないが、亀仙人の両手から気功波が真っ直ぐ放たれる

 

 あくまで見本という形で撃ったため、海の上を数十メートルも飛ぶとあっさり消えた

 

「かめはめ波、というわけじゃ。それじゃあ、古ちゃんも気を込めるところからやってみい」

 

「わかたアル!ぬぐぐぐぐ……」

 

(思えば、こうやってかめはめ波を教え込むなんて何年ぶりかのう……悟空やクリリンは見よう見まねで勝手に覚えよったし、ヤムチャ以来か)

 

 古は亀仙人の言葉一つ一つを、実に素直な様子で聞き入れ実行している

 

 亀仙人はまたも十数年前、カメハウスに集い修行する弟子達のことを思い返していた

 

「波っ!あ、ちょとだけ出たアル!出たアルよね老師!?」

 

「うむ、いいぞ古ちゃん」

 

 暫くするとクリリンが道着を見つけてきたが、ほぼ同時に昼ごはんが出来ましたと五月に呼ばれ食事休み

 

 この後は古が逆に師となって二時間ほどクリリンに自身の中国武術を伝授、これも修行を始めてから定例のメニューとなっている

 

「そうそう古、さっき道着探してる時前言った知り合いに電話しといたんだ。そしたら三日くらいで修行道具こっちに送ってくれるってさ」

 

「甲羅や道着よりも凄いアルか?」

 

「ふふん、聞いて驚くなよ。実は俺もまだやったことないんだけど、重力を……」

 

 亀仙流クリリンとその弟子古菲の修行の日々は、これからも続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さてほぼ同時刻、古と同級である神楽坂明日菜も天津飯達と修行の日々に明け暮れていた

 

「行くよ、アスナ!」

 

「はい!」

 

 餃子の合図に答え、アスナは餃子と同時に駆け出す

 

 その先にいるのは天津飯、距離を取るでも迎撃しようとするでもなくその場に立ったまま二人の攻撃に応じる

 

 餃子はアスナよりも短い手足ながらも、その小さな体躯からは想像出来ないスピードで次々と蹴りや突き

 アスナはアーティファクトであるハマノツルギ(ハリセンモード)を展開、加えて自らの得意とする足技を絡める

 

 前方斜め二方向から攻めたてられる天津飯だが、動揺は欠片も見られない

 

 基本的に攻撃のリーチは決まっている、餃子が超近距離でアスナがそれよりちょっと長い近距離

 

 天津飯の三つ目はアスナが攻撃動作に入った瞬間を捉えることで攻撃の軌道を即座に予測し、すぐさま回避行動に移ることで餃子の攻撃を見切る猶予が充分に手に入る

 

 巧みな立ち回りと両腕の防御動作で、二人の攻撃を全て防ぎ切っていた

 

 また、この時点でアスナは既に咸卦法を発動済、地上での近距離戦においてはこれ以上ない全力である

 

「どうしたアスナ!それが精一杯か!」 

 

「……まだまだぁ!」

 

 アスナは脚を止め腕を止め、次の瞬間後ろへステップを踏んで後退

 

 一定の距離をとるとその場で垂直に飛び上がった

 

 その間にアーティファクトは仮契約カードに戻し、空いた右手と共に両手の五指をそれぞれ合わせる

 

 両手の間に球形に近い空間が出来上がり、そこへアスナは咸卦の気を瞬時に込め、

 

「せやあああっ!」

 

 バレーボール大の気弾を、頭上に抱え上げた状態から天津飯目掛け投げ下ろした

 

 餃子もアスナとタイミングを同じくして下がっており、人差し指一本だけを天津飯に向け攻撃する

 

「どどん波!」

 

 光線状の気功波攻撃、両者それぞれの技が天津飯を襲う

 

「……」

 

 だがそれでも天津飯はその場から動かない

 

 何故なら、彼にとってそれらの攻撃は避けるまでもなかったから

 

「……はああああああっっ!」

 

 全身から突如として猛烈に湧き上がる気、咆哮と共にそれは爆発

 

 アスナの気弾と餃子のどどん波、その両方を難なくかき消した

 

 それに伴い、気によって巻き起こされた爆風がアスナ達二人を吹き飛ばしにかかる

 

 地上にいた餃子は何とか踏ん張り、体勢を維持

 

 一方のアスナは空中にいたためそんなことは出来ず、その場でのけぞるような形でバランスを崩す

 

 しかし、何とか高度はそのままに少し時間を経て元の状態に戻った

 

 フーと息を吐き、アスナは地上の天津飯と目を合わす

 

「おいアスナ、大丈夫か」

 

「な、何とか……けどやっぱりこれってかなり難しいですよ、全然小回り効きませんし」

 

「慣れれば何てことはない、むしろ俺はお前が既にここまで出来ていることに驚いているんだがな」

 

 舞空術で浮遊するアスナは、ゆっくりと降下し着地

 

 天津飯の修行の手伝いという名目で始まった三人での合同稽古

 

 実質的にはアスナの実力の底上げを天津飯らが支援する形に近いのだが、その成果は目まぐるしいものがあった

 

 元より麻帆良の武道大会においても、参加選手からの念話によるアドバイスだけで咸卦法を巧みに操り更にはその時の対戦相手である刹那を追い詰めたことまである

 

 吸収力は凄まじく、加えて咸卦の気の強大なエネルギー量を利用してあっという間に舞空術を会得する

 

 気功波そのものの扱いについてはまだ難があったが、撃ち出すことが出来るなら上出来といっていい

 

「とりあえずは一旦飯にしよう、午後はそうだな……何か気功波系統の技、さっき餃子が使ったどどん波の練習でもしてみるか?」

 

「すみません、本当はそういう時間も天津飯さん自身の修行にあてるべきなのに……」

 

「お前が強くなればなるほどこっちとしても助かるんだ、気にしなくてもいい。それじゃあ餃子、頼む」

 

「うん、まき絵と合流してお昼ご飯作る」

 

 森の向こう側に、煙が一本立ち上っている

 

 その地点では佐々木まき絵が火をくべて既に昼食作りの準備に入っており、餃子はそこを目指して真っ直ぐ飛んでいった

 

 残った二人は餃子の後を舞空術で追いはせず、少々迂回するようなルートでまき絵のいる場所へと歩いて向かう

 

 お昼が出来上がるまでの時間つぶしも兼ねて、夕食以降に使う用の山菜を採るためだった

 

「~~~~♪」

 

(だがアスナの覚えが早いからといって、少々急ぎ過ぎたかもしれんな。本来なら初めの一週間くらいは、気の扱いに耐えうるだけの基礎力の向上を重点に置くべきだった。それが今は半実戦形式……)

 

 そんな中天津飯はアスナの現在の修行内容を振り返る、彼らは知る由も無いが彼らのは修行内容は古達のとは大分かけ離れている

 

 クリリンは古に舞空術や気功波の習得を別段急がせてはいなかった、あくまで教えたのは古の拳法を活かしつつ攻撃力を上げるための気の込め方や練り方が中心で、他は甲羅トレーニングのように負荷をかけての基礎力の向上を狙うメニュー

 

 おそらく古が天津飯のもとでアスナと同様のメニューをこなしていた場合、舞空術で飛ぶことも気功波を放つことも現時点で容易だった筈だ

 

 しかし基礎力に関しては、クリリンと修行する古の方がそちらに時間を割いている以上アスナよりも伸びていた

 

(近い内、何か別の修行法を考えた方がいいかもしれんな……)

 

 師とする人物が違う以上、修行内容に差が出るのは必然であり避けられない事実

 

 その結果が表れるのは十日後、皆が一同に会する天下一大武道会である

 




 本当は一週目の登場順に書く予定(つまりネギ→刹那→古→ハルナ→アスナ→夕映→千雨)でしたが、武闘派は武闘派同士で話固めた方がいいなということで順番変えました。
 次回はおそらくハルナです、ではでは。
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