第1話 初遭遇 英雄の息子二人出会う
「うーん……ここは……」
どこからか吹いた風
地に横たわる少年、ネギ・スプリングフィールドの頬を優しく撫でる
それを受け、ネギは覚醒し両目を開く
先程まで完全に意識を喪失していたことを自覚し、とりあえず上半身だけ起こす
続いて手の甲で両目をこすり、まだ少々ぼやけ気味な頭の中を整理していく
(そうだ、さっき僕はあの光に飲み込まれて……それで気が付いたらここに……)
だんだんと意識がはっきりとし、意識を失う直前の記憶も蘇る
そして、あることがスッと頭をよぎった
(他のみんなは!?)
ネギは目を見開き、辺りを見回す
すぐさま視界に二人の姿が入った
「コタロー君!いいんちょさん!」
すぐ近くに、少し前のネギ同様気を失っているコタローとあやかの姿が
ネギは立ち上がると二人のそばへ駆け寄り、片手でそれぞれの身体を揺する
「んあ、ネギ?」
「ネギ……先生?」
もしこのまま目を覚まさなかったら
そんなネギの杞憂は吹き飛び、目を覚ました二人とすぐさま目を合わせる
どうやら先ほどまでのネギと同じく、気を失っていただけのようだ
そのことにネギは安堵する
意識がはっきりしてきた二人は身体を起こし、服に付いた砂埃を払いながら立ち上がった
その間にネギは改めて周囲を見渡すが、コタローとあやか以外は誰一人おらず
さっきとは別の不安が、ネギの中を駆け巡る
「……なあネギ、俺達どうなってもーたんや?」
「あ、コタロー君」
混乱しそうになるネギを我に返らせたのはコタロー
あやかよりも少しづつ現状を把握してきたのか、自分より先に起きていたネギへと尋ねた
「それにここ何処や?どう見ても麻帆良やないで?」
そう、三人がいたのはさっきまでの場所ではなかった
周りは木々が生い茂り、鳥がさえずり
近くの川から流れる綺麗な水
一応麻帆良にもそういう場所は有るのだが、そういった場所なら麓の方に学園都市が顔を出している筈
だがそういったものはまるで無し
「え?あ、ホントだ!」
ネギの方はそっちまで気が回っていなかったか、コタローに言われようやく気付いた
「それじゃあ、ここは学園外!?」
「十中八九そうやろな……あの光にやられてから、記憶が全然あらへん」
これについては自分もそうだと述べ、少ない情報を頼りにネギはコタローと推測を進める
口火を切ったのはコタロー
「そもそもあの光って何やったんや?」
「あれは超さんが、未来へ帰るって言って発動させた魔法陣で……」
「にしては超姉ちゃん随分慌てとったで?」
「多分超さんの予想してなかったことが……けどあの超さんが、数年前から準備していた術式のミスをするとは思えない」
とすれば原因は別、外部からの介入か
あるいは内部、発動媒体としていた世界樹に問題が起きたのか
幾らでも予想を挙げることは出来たがそのまま平行線、そこから先へは進まない
「つまり超姉ちゃんが発動しとったんは、世界樹の魔力を使った大掛かりな転移魔法……何らかの原因でそれが暴走して、俺らも巻き込まれたわけか」
「あ、あの……転移魔法って何のことですの?」
「せやからまとめて俺らも転移魔法で飛ばされたんやろ。場所も全然特定出来てへんし早いとこ一つでも多く手掛かりを……」
「コタロー君コタロー君!」
「…………?」
「うげっ!しもうた!」
あやかがいつの間にか二人の会話に入り込んでいた
あわてて言葉を止めたコタローだがもう遅い
「あの、ネギ先生?先程仰られていた『魔法』というのは?」
「いやあの、これは、その」
ただあたふたとするネギ
隣でコタローも回避法を考えるが浮かばず
アスナに初めて魔法を見られた時と同様、逃げ道がまるで見つからない
が、数秒ネギが慌てふためくのが時間稼ぎになったのか
「お、おいネギ!誰かこっち来るで!」
コタローのこの発言に至る
よく耳を澄ませると、確かにガサガサと植物を押しのけてこちらへ誰かが向かってくる音
「ほ、ホントだ!もしかしたらこの辺りに住んでる人かも!」
ネギはあやかから視線を外し、音のする方を向く
誤魔化しとしては弱いかもしれないが、魔法バレを防ぎたいネギとしてはなりふり構っていられず
音は確かに、こちらへ向かって大きく近づく
「えっと、確かこの辺だと思ったんだけど……」
次は、音の主の声
それから数秒と経たず、生い茂る木々の中からその少年が現れた
歳はネギやコタローと同じ程
紫の道着を身に纏い、コタローよりさらに大きく跳ねた黒髪
少年はネギ達と目が合い、さっきの一人ごとから続けるように言葉を放つ
「えっとすいません、さっきこの辺りで凄い光が起こって……あ、ひょっとして、さっきの光の正体って君たち?」
どうやらネギ達がここへ転移した際に、魔法陣のあの光のように大きく発光があったようだ
それを目にして追ってきた少年は、ネギ達に問いかける
「……多分合ってると思います。それと、こっちからもいいですか?」
ネギは肯定し、今度は逆に少年へと尋ね返す
何しろ土地勘0の場所へ飛ばされてから、初めて遭遇した人物だ
訊きたい事は山ほどある
その中でネギは、優先順位一位の問いを少年へ放った
此処は一体どこなのか?と
少年はポカンとした表情をした後、すぐ返答
「どこって、パオズ山だけど?」
「……パオズ山?」
今度は逆に、ネギの顔がポカンとしたそれに変わる
その後ろでコタローは眉をひそめ、あやかはやや右に首を傾けた
三人が三人とも、そんな山の名前は記憶の片隅にも皆無
せめて麻帆良からのおおまかな距離が分かれば、そう思っていただけにネギやコタローはこの返答に困惑を見せることとなる
「……あ、良かったら家に来る?家に戻れば地図があるから、パオズ山の位置とか教えてあげられるけど」
それを見かねて、少年のこの提案
彼の自宅はこの山の中、しかも歩いてすぐの場所だという
ネギ達はこの好意を受け、ついて来てと言って歩き出す少年の後ろを追った
「本当にありがとうございます。あの、お名前聞いてもいいですか?」
「僕?僕は悟飯、孫悟飯っていうんだ」
これが、偉大なる英雄を父に持つ二人の少年の出会いであった