ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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 いやはや、時間が過ぎるのはあっという間ですね。……はい、遅すぎました本当にすいません。では本編どうぞ


第23話 開いた!師・修行・力の差 

「ネーギくーん!」

 

「わぷっ、こっ木乃香さんストップ……」

 

 突如、ネギの目の前は黒へと染まる

 

 めのまえが まっくらに なった!

 

 とはいっても、別にネギの手持ちが全滅したとかそういうわけではない

 

 カードを介しての情報交換を終え、ネギ達は無事ピッコロと共にいる刹那達との合流に成功

 

 上空から着地すると、直後にネギは木乃香に正面から抱きしめられていた

 

「ホンマに無事で良かったー、安心したわー!」

 

 このようなスキンシップを受けたことは初めてではなく、麻帆良にいた頃も何度か体験している

 

 しかしその頃とはどうも違う、そんな感覚がネギの中にはあった

 

 その正体は、顔を身体に押し付けられることで彼の鼻腔をくすぐる彼女の香り

 

 制服やパジャマ姿で抱きしめられたあの頃にした香りは、石鹸やボディソープの成分が混ざったそれ

 

 一方で今の木乃香からは、どこか自然に溢れたそんな感想を抱かせるものだった

 

「あっ、もしかして汗臭かったん?せやったらごめんなネギ君」

 

「い、いえそんなことは……」

 

 その正体は木乃香の言うとおり、中に着込む肌着が吸い込んだ彼女の汗

 

 今の季節は春、加えてこの辺り一帯はやや温帯気味の気候で暖かい

 

 自ら鍛錬のため身体を動かす刹那や楓ほどではなくとも、体温調節のため発汗してしまうのはしょうがない

 

 木乃香はネギを解放すると、ちゃんと洗濯したのにと自分で胸元辺りの布地を鼻先まで持っていく

 

 いくら山に篭っての生活が続いているとは言え、来訪当初の服を今に至るまでそのまま着続けているということは流石にない

 

 かつて悟飯に魔族の服を授けたことがあるように、カモの進言もありピッコロは自身の魔術によって三人へ必要最低限の衣服を提供していた

 

 そのため木乃香が今着ているのも、昨日川で洗濯した後乾かしたものである

 

 ここでもう一つ追加する、木乃香からは太陽の香りもした

 

「……ほう、ということは今日までお前がこいつらに稽古をつけてたわけか」

 

「はい、僕やピッコロさんと同じで大会に出るために。三人とも、特にネギ君とコタロー君はどんどん強くなってます」

 

「どんどん強く、な……」

 

 一方、ネギ達から少し離れた場所で話しているのはピッコロと悟飯

 

 先程の情報交換で伝えきれてないことは山ほどあり、今は舞空術を使ってここまで飛んできたネギ達のことについてだ

 

 その話の流れから、彼らが悟飯と大会へ向けて共に修行していることをピッコロは知る

 

 視線の先にはネギ、続いてコタロー、最後にあやかと順々に移る

 

「随分と昔の話になるが……悟飯、お前と初めて会った時俺が何といったか覚えているか?」

 

「え?」

 

「『どうせ鍛えてもらうならお父さんの方が良かった』。そう言ったお前に、俺が何と言ったかだ」

 

 あれは、悟飯にとって忘れることのできない出来事だった

 

 突然現れた男に攫われ、父が助けに来てくれたと思ったら気が付くとまた別の人物に攫われる

 

 目の前の人物、ピッコロと今に至るまでの長い師弟関係の始まり

 

 あの時の言葉の一つ一つは無意識のうちに胸の内に深く刻まれ、ほどなくして悟飯はその記憶を掘り起こす

 

「お父さんは甘いから、師匠には向いてない。そうピッコロさんは言いました」

 

「そうだ。どうやらそういうところはあいつに似たらしいな……ちょうどいい、折角の機会だ」

 

 ピッコロは悟飯と話す傍ら、楓達の会話に聞き耳を立てていた

 

 相手はコタロー、こちらに来てからどんな修行をしたか等について熱心に話しているようだった

 

 前に楓から聞いた話によれば、楓や刹那には劣るもののコタローの実力は向こうの世界では中々の使い手に相当するとのこと

 

 ネギについてはコタローに肉薄、あるいはそれを上回るポテンシャルを持つと評していた

 

 『お前達が本気で戦ったらどっちが勝つ?』

 

 『そうでござるな……こちらへ来る前なら七分三分程と言いたいところでござるが、今なら負ける気は殆どしないでござるよ』

 

 これが二日ほど前、ピッコロと楓が交わした会話である

 

「ふむ、確かに随分とコタロー殿も腕を上げたようでござるな」

 

「せやで!今だったら楓姉ちゃんにだって……」

 

「なら早速、やってみるか?」

 

「「ん?」」

 

 そしてピッコロは提案する

 

 楓とコタローだけでない、ネギと刹那もすぐ傍まで呼び寄せる

 

「悟飯、お前があいつらをどこまで鍛えたのか見せてもらうぞ。二対二だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ俺が楓姉ちゃん、ネギが刹那姉ちゃんの相手でええな」

 

 ネギとコタロー、刹那と楓が二対二の形で対峙する

 

 ネギの正面には刹那、コタローの正面には楓

 

 木乃香とあやかは戦闘に巻き込まれぬよう距離を置き、その少し前にピッコロと悟飯が立つ

 

 この模擬戦の提案はコタローにとって渡りに船、むしろ自分の方から手合せしようと楓に申し出ようとしていたくらいだ

 

 ネギも純粋に、今の自分がどこまで強くなったのか興味があった

 

 悟飯という遥か上の存在とは別に、刹那や楓というまだ抗いようがある力量差を持つ彼女達と戦うことでそれを確かめてみたかった

 

 対戦カードは『前よりどっちが強くなったか』をはっきりさせんがため、過去に拳を交わしたこの二組

 

「勝負は相手が気を失うか降参するまで、場合によっては俺が止めに入る。では始めろ!」

 

「よっしゃ!行くでネギ!」

 

「うん!」

 

 開始の合図と共に、コタローとネギはそれぞれ気と魔力を全身に滾らせた

 

 構えを取って正面の自身の対戦相手を見据え、相手の動きに合わせていつでも動ける体勢

 

(楓姉ちゃん達も相当修行してきたんやろうが、俺らだってそうそう負けへんで!)

 

(刹那さん……)

 

 楓達の方はというと、少年二人と比べまだ大人しい

 

 不意打ちされぬよう隙を見せずにいる最低限の格好ではあるが、攻めようという気概というか気配があまり感じられずにいた

 

 加えてネギは、刹那が本来右手に収めているはずの獲物が何一つ無いことにも疑念を持たずにはいられない

 

 あくまで模擬戦の形であるし、真剣である夕凪を使わないのはまだ分かる

 

 しかし刀剣の類の使用を禁止されたまほら武道会で彼女と戦った際、彼女は代わりの獲物として自身の気を通したデッキブラシを使用した

 

 なのに今は徒手空拳、つまり素手のみでネギと戦おうとしている、彼女は剣士であるにもかかわらずだ

 

「では……」

 

 数秒の硬直の後、四人の中で最初に動いたのは楓

 

 といっても傍目から見ればうんと些細なものだ、飛び出さんと右足で軽く地面を踏み込むという動作

 

 しかしその直後、こうなると予見したものは果たして何人いただろうか

 

「っがあぁ!?」

 

「こちらから、参るでござるよ」

 

 ネギが見据える刹那の横から、楓の姿が消える

 

 コタローが吐き出す声と蹴り飛ばされるその姿、ネギの耳と目が認識したのはほぼ同時

 

 楓は一瞬の内に、コタローの背後への移動を完了させていた

 

 地面に強く打ちつけられる音が一つ、コタローが咄嗟に気の込めた手で受け身を取った音

 

 それでも勢いは殺し切れず、あわや刹那にぶつかろうという所まで飛ばされる

 

「っ、楓!」

 

「おっと、すまぬすまぬ」

 

 刹那はそれを横跳びで回避、楓を少し睨むとすぐさまその視線の先をネギへと戻す

 

 そしてそのまま、ネギに向かって瞬動を用いて正面から襲い掛かる

 

 あの回避が無ければ、刹那も楓同様自分の背後に突如として攻撃を決めにかかったかもわからない

 

 その事実に一瞬ネギは身を強張らせながらも、古直伝中国拳法の構えで刹那を迎え撃った

 

 コタローも足で地を削りつつその身をようやく静止、今度は自分から楓に攻撃を仕掛ける

 

 少年組と少女組、四人の戦闘は幕を開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その開幕から数分、戦いを見守るあやかが見せた表情は唖然としたそれ

 

 木乃香とその肩に乗るカモは、一応納得しつつも驚きを隠せないという状態

 

「カモ、一応訊くぞ。この世界へ来る前、あいつらの実力差は目の前のあれと比べてどうだった?」

 

 ピッコロは開始当初と何一つ変わらない、その表情のまま顔も見ずカモに尋ねた

 

 ネギと刹那の試合は直接見た、一方で修学旅行でのコタローと楓の戦いは殆ど見れていない

 

 しかしまほら武道会において後者二人は、クウネル・サンダースという共通の敵を相手に戦っている

 

 その試合の内容から幾らか実力差の把握も出来なくもない、それを踏まえてカモは答える

 

「……元々楓姉さん達の方が強かったスけど、あそこまでひどいもんじゃなかったですぜ」

 

 目の前に地に身を伏せる少年が二人

 

 始めこそ不意を突かれた形だったが、直後の交戦では修行の成果を見せ少女二人に食い下がってはいた

 

 しかしそれも最初まで、徐々に実力差を見せつけられ体力を削られる

 

 そして今、刹那の蹴りと楓の肘鉄を受けてほぼ同じ時同じ場所で彼らはダウンを奪われたところ

 

 するとその内の一人、コタローが口元を拭って立ち上がる

 

 拭ったのは倒れた際についた砂、そして自らの血

 

 残るもう一人、ネギは片膝までは突いたがそこから動けない

 

 その二人へ、楓と刹那が最後の攻撃にかかる

 

 コタローの最後の拳は難なくかわされ、震えを見せる下半身へ脚払い

 

 仕上げに額をトンと二本指で突き、腰や背より先に頭部が地面へ真っ先に叩きつけられた

 

 ネギは右手から魔法の射手(サギタ・マギカ)、しかし刹那は既に背後についていた

 

 襟を掴んで地面に組み伏せ、反撃を許さぬよう右腕は右脚で押さえつける

 

 これを受けネギはギブアップ、コタローは気を失いKO

 

「勝負あり、だな。木乃香、治してやれ」

 

「は、はいな!プラクテ……」

 

 木乃香は杖を片手に駆け寄る

 

 怪我人の治療はこの一週間で数百とこなした、詠唱も忽ち終わり到着と同時に術を施す

 

 場所が場所なだけあって、戦いは主に小技の応酬

 

 大敗を喫したネギ達だが、ダメージは浅くすぐに治療は完了

 

 彼らに比べれば屁のようなものであったが、何発かは攻撃を貰っていたようで楓と刹那もちょいと杖一振りで傷は消えた

 

「凄いです刹那さん!まさかこんなに強くなってるなんて思わなかったですよ!」

 

 傷が癒え、立ち上がったネギがまず口にしたのは彼女らへの称賛

 

 攻め手はことごとく捌かれ、逆に向こうの攻めはこちらの防御を綺麗に掻い潜って的確に当てに来る

 

 悟飯と手合せした時にも何度か感じた、いわゆる清々しい負けというのが一番的を得た言い方だろうか

 

「っがあああああ!ここまで差がつくなんて思わへんかったわっ!どんな修行してたんや楓姉ちゃん、ズルいで!」

 

 一方で目を覚ましたコタローは、負けた悔しさに加えて楓達の強さへの嫉妬を吐き出す

 

 どんな修行をしてきたか、その問いにどう返したものかと楓は首を捻る

 

 そんな彼女の耳に、一人の足音が入り込んだ

 

「ならやってみるか?今から大会まで一週間」

 

 声の主は、ピッコロだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母さんただいま!」

 

「おかえり悟飯ちゃん」

 

 日は大きく傾き、パオズ山は夕日に染まっていた

 

 ピッコロのもとから戻り、悟飯宅のドアを開けて入る者が

 

「……ん?ネギ君達は一緒じゃねえだか?」

 

「えっと、それは……」

 

 二人、悟飯とあやかのみである

 

 ネギとコタロー、この二名はピッコロの所に残っていた

 

 あの戦いの後ピッコロは指摘する、悟飯のもとで修行を続ければさらに差が広がるかもしれんぞと

 

 たった一週間とはいえ、ああも実力が開いたのは修行の内容が大きいだろう

 

 残り僅かな時間で、少しでも実力をつけて大会に臨みたい

 

 そして出来ることなら、悟飯相手に一泡吹かせてみせたい

 

 それを望むコタローはピッコロの言葉を受けて決意する、自分もここで修行すると

 

 ピッコロはさも当然といった様子でコタローを受け入れた

 

 もとよりあの言葉は、楓達の修行の刺激とすべくピッコロがコタローを誘導させるために言ったもの

 

 楓は思わず口元を緩ませる、これもピッコロの予想通りの光景だった

 

 そしてネギもコタローに引っ張られる形で残ることになり、帰還する悟飯とあやかを見送った

 

 あやかはネギの身を案じずにはいられなかったが、自分の実力ではここで修行しネギを気に掛けるほどの余裕はまず無いだろう、そう自覚もしていたため残ることは出来ず

 

(元々お二人の修行の邪魔になっていた私が手出しできる問題ではない、分かってはいますわ……けど、ネギ先生ーーー!)

 

 しかし帰還途中、悟飯が合同稽古で出向く際同行する以外にネギと会えないことに気付くと、後悔の念もまた彼女の中を支配していた

 

 その日の夜、いつもより広く感じる部屋の中であやかは眠りにつく

 

 やはり無理に無理を言って自分もあそこに残るべきだったのではないか、と未練がましく胸の内で繰り返し呟きながら

 

 そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずあああっ!」

 

「っが!」

 

「あ、兄貴!ピッコロの旦那、今のはちょっとやりすぎですぜ!」

 

「ふむ、魔法障壁か……ギリギリの加減が少し難しいなこれは」

 

 それに遅れて約二時間、日付が変わって少しした頃

 

 ネギは組み手によりピッコロの蹴りを腹部に受け、広い大地の上にて眠りについた




 次回も夏の内には何とか一本、投稿が不定期化して申し訳ないです。ではでは
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