ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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 結局分割することにしました、予定より少々遅れて申し訳ないです。ではどうぞ


第30話 ちう茶々地球冒険録④ 開戦編

 サタンシティからかなり離れ、海も越えた先にある島にメイクイーン城という城がある

 

 原則的にこの世界の統治はキングキャッスルに住む国王が一括しているのだが、それとは別にこの島では代々城に住む一族が少なからず権力を持ち富を膨らましていた

 

 現在の当主はジャガー・バッタ男爵、ミスターサタンとは幼馴染である

 

 彼が今熱を入れているのはバイオテクノロジーだという

 

 研究施設を城内に建て、優秀な科学者を招き日々研究を進めているとか

 

 その施設内では現在、彼と共にもう一人の男がテーブルを囲んでいた

 

「大したことはない、の一言だな。あれなら何人来ようと、さっきのように一瞬で片付けられる」

 

「ぐんぬぬ、まっさかおらの自慢のバイオ戦士がああも見事にやられっとは思わなんだ……」

 

 後から口を開いた東北訛りに近い喋りをする男、彼がジャガー男爵だ

 

「どういう目的かは知らんが、最強の戦士を作ろうと考えているのなら諦めることだ。この私がいるからな」

 

「サタンをギッタギタにしてやろうと思ってたっちゅうのに、これじゃまた一から出直しだぁ……」

 

「……サタン?」

 

 彼がバイオテクノロジーに手を出した目的は、最強のバイオ戦士を作り出すこと

 

 サタンの幼馴染だとは先に述べたが、幼少時は格闘家を目指しサタンと競い合っていたライバル関係でもあった

 

 ところがサタンに敗れたことでその夢を断念、現在は父の跡を継いでこの城の主として収まっている身である

 

 一方でサタンを倒すという夢は諦めておらず、そのためにバイオ戦士研究に心血を捧げていた

 

 そして近年になって研究がかなり進み、何人かのバイオ戦士の完成に成功

 

 実力をテストしようと、自身の従兄弟で秘書も務めるメンメンに『サタンとは別に腕自慢の格闘家を連れて来い』と命令

 

 しかしそこらの格闘家は大抵サタンと親交がある者ばかりで、倒した後サタンにバイオ戦士の情報が漏れるかも分からない

 

 そこで所謂『裏社会』の格闘家にターゲットを絞り、探し当てたのが今ジャガー男爵の向かいに座る人物

 

「ハッハッハ、何だ男爵、ミスターサタンを倒したかったのか。それなら何もこんな戦士を作らずとも、私に依頼すれば済む話だ」

 

「どっ、どういうことけ!?桃白白先生!」 

 

 かつて悟飯の父孫悟空をも苦しめた殺し屋、桃白白

 

 ついさっきジャガー男爵のバイオ戦士を一人残らず倒してみせた彼は、サタンの名を聞き不敵に笑った

 

「南の都あたりだったかな、昔あいつとは会ったことがある。なぁに大したことはない、ひと捻りで半殺しにしてやったさ」

 

「そういや数年前に、サタンが大怪我したっつう記事が新聞に……」

 

「事故という形で誤魔化したようだが、やったのは私だ。今会いに行って私の顔を見せれば、腰でも抜かすかもしれんぞ」

 

「け、けんども……」

 

「あの時と同じようにミスターサタンをひと捻りで沈めてやろう、ただし報酬として五千万ゼニー頂く。奴の無様な姿を記録して持ち帰る手間賃も込みでな」

 

 桃白白は右目のスコープの側面を指でトントンと叩く、ジャガー男爵は頭を悩ませていた

 

 報酬を払うことは容易いが、それでは今まで手がけてきた研究の意味が無くなってしまう

 

「はっきり言おう、あんな肉達磨では私は当然ながらミスターサタンすら倒せん」

 

「ぐぬぬ……」

 

 しかしサタンをギッタギタにしたいという気持ちも強く、結局ジャガー男爵はそれに負けた

 

「わかった!ただし報酬はサタンをギッタギタにした映像と交換だ!嘘ついて持ち逃げは許さねっぞ!」

 

「いいだろう、ミスターサタンの最『期』の姿を記録して持ち帰ることを約束する」

 

「よっす交渉成立!惨めな姿さ撮られて、これで奴も最『後』だガッハッハッハ……」

 

「では今から向かうとしよう、さっきの実戦テスト代金は私が戻るまでに振り込んでおくように」

 

 ここで、両者の間で重大な認識のズレが発生していた

 

 ジャガーは桃白白が『かつてサタンを半殺しにした』という点から彼に依頼

 

 桃白白はジャガーが『自分の本職は殺し屋』と知った上で依頼したものと解釈

 

 つまりどういうことかというと、ジャガーが頼んだのは『サタンの半殺し』だが、桃白白が今から行おうとしているのは『サタンの殺害』なのだ

 

(あの時確かに殺したと思っていたが、奴はしぶとく生きていた……丁度いい依頼が来た、今度こそ完璧に殺してやろう)

 

 これは、桃白白がサタンシティに赴く数時間前の出来事である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにいないということは、屋敷の中か……邪魔をしたな、続きをしてもらって構わんぞ」

 

 桃白白はリング中央から道場全体を見渡し、サタンがこの場にいないことを改めて確認

 

 外へ出るべく歩を進めるのだが、彼はやむなく足を止めることになる

 

 出口へ向かおうとする彼の前方には、それを妨げるべく複数の男達が立ちはだかっていた

 

「ミスターサタンを殺すだって?」

 

「冗談も大概にしやがれ!」

 

「天下のサタン道場でこんな真似をして、無傷で帰れると思うなよ!」

 

「はて、困ったな。私が頼まれたのはミスターサタン一人だけだ、これではタダ働きになってしまう」

 

「ほざけぇっ!」

 

 道を塞いでいたサタンの弟子の一人がこう言うと、その場にいた者達数名は一斉に桃白白へ襲いかかる

 

 つまらなそうな顔をする桃白白は、その場から動かない

 

 いや、唯一右腕だけがスっと顔の辺りまで上がる

 

「仕方ない、半殺しというのは性に合わんがそこで寝ててもらおう」

 

「っ、いけません皆さん。攻撃をやめ……」

 

 茶々丸が静止の言葉をかけるが、もう遅かった

 

 動く右腕、動きが止まる男達、血を噴き出し倒れる男達

 

 何が起きたか目視出来たのは彼女のみ、他の者はただ結果だけを目にし叫び声をあげる

 

(あの一瞬の内に、四人を指一本の攻撃で……)

 

「わっ、わあああぁぁっ!」

 

「ひっ、人殺しぃ!」

 

 襲いかかった者は全部で四人、その全員が桃白白の足元で瀕死の状態に陥っていた

 

 一人は額、一人は喉、一人は左胸、最後の一人はこめかみに小さな穴が一つ

 

「ふん、生かしておいてやったのに人殺しとはよく言ったものだな。まああくまで『今は生きている』だけだが」

 

 よく見れば桃白白の右手人差し指は血に赤く染まり、不機嫌そうな顔でポケットからハンカチを取り出し拭っている

 

 他の箇所に返り血らしいものがかかった場所は無い、指一本のみの攻撃は正確に四人を絶命直前まで追い込んでいた

 

「さて、他に私の邪魔をしようという輩がいるならとっとと来てもらおうか。そらどけっ!」

 

 進もうとして四人の内の一人の身体に足が当たり、蹴り飛ばして道を開ける

 

 この場にいた全員に、桃白白の強さと恐ろしさを伝えるには既に充分だった

 

 まず、四人に続いて攻撃しようとしていた弟子達がその場から逃げ出した

 

 次に、その者達が目の前を通り過ぎていった弟子達も続くように逃げ出した

 

 道場内だけではない、惨劇を目の当たりにした道場外のギャラリーも甲高い叫び声をあげて走り去っていく

 

 まだ助かるかも分からない四人のもとへ向かう者はいない

 

 桃白白がいる場所から道場の出口、更には本邸入口までの道に彼の行く手を阻むものはなくなった

 

 いや、ただ一人だけそうでない者がいた

 

「……おやお嬢ちゃん、何か用かな?」

 

「ぱっパパを殺すだなんて、絶対させない!帰って!」

 

 正面から対峙するその少女の足は、まるで子鹿

 

 顔の前で構えて握られた拳は、一発叩いてやれば簡単に解けそうな弱々しさがあった

 

 恐怖を少しでも抑えるために近くで倒れるサタンの弟子達を視界から外し、声を震わせながら桃白白に言った

 

「パパ?ああ、そうかそうか。ミスターサタンの一人娘、ビーデルというのはお嬢ちゃんのことか」

 

 先程とは打って変わって、桃白白は愉快そうに笑う

 

 それは漸く十を過ぎた頃の少女が自分に拳を向けているという異様な光景にか、もしくは今回のターゲットの娘という都合のいい人物と会えたからか

 

「ちょうどいい、屋敷の中を案内してもらおう。流石のミスターサタンも、娘が捕まってるとなれば姿を見せるだろう」

 

「っ、嫌っ!離して!」

 

(もう、静観してるわけにはいかないですね……)

 

 下がって距離を取ることも、拳を振るって抵抗することも出来なかった

 

 瞬く間に左手首を掴まれ少女ビーデルは拘束される、その場で杭を打ち込まれたかのように微塵と腕を動かすことは叶わない 

 

 ビーデルを引きずりながら、桃白白は一歩また一歩と歩みを再開させる

 

 桃白白の進行方向とは反対側、道場の隅まで身体を寄せながら彼女の身を案じ名前を小さく漏らす者が何名かいた

 

 ただしそれだけ、救出に飛び出せる者はその中に一人としていない

 

 しょうがない、彼らの中にそれをするに必要な強さと覚悟を持ち合わせた者がいないのだから

 

「っ!?な、なんだ貴様!」

 

「えっ?えっ?」

 

「そこまでです」

 

 そして唯一その両方を備えていた彼女、絡繰茶々丸はついに突撃する

 

 ビーデルを掴んで右手の使用が不自由なのを見越して右側から回り込み高速で接近、薙ぎ払うように左足で上体目掛け回し蹴りを放った

 

 この攻撃方法を選んだのにも理由がある、桃白白が取れる選択肢の問題だ

 

 現在の桃白白はビーデルを掴み、瞬時に大きく移動をし距離を取ることは難しい

 

 しかし茶々丸の深く踏み込んでの蹴りは、上体を反らすといった簡単な回避動作で対応出来るものではない

 

 さらに左手は防御に使おうにもすぐには届かない、すると桃白白の行動として考えられるのは幾つかしかない

 

 甘んじてその攻撃を受けるか

 

「早く道場の外へ、あとは私が」

 

「うっ、うん!」

 

 右手を離し、距離を取るか防御するか

 

 結果として取ったのは後者、上腕が茶々丸の蹴りを受け止める

 

 その間に茶々丸はビーデルを下がらせ、完全に一対一の状況へ持ち込んだ

 

「ほぉ、なかなかの使い手のようだな」

 

「あなたの相手は私がします。これ以上、見過ごすわけにはいきませんので」

 

「……面白い」

 

 続く第二撃、横腹を狙った茶々丸の正拳もまた防がれる

 

 そこから文字通り返す刀で放たれる桃白白の手刀は、拳をすぐに引き後退した茶々丸の目の前を通過した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここまで大騒ぎになって屋敷内で何も起きていない筈がない

 

 桃白白がサタンの弟子四人を血の海に沈めたのと、千雨が自分の番を終え部屋から出たのはほぼ同時だった

 

「おいおいおいおい、何だってんだよいったい……」

 

 屋敷の外から聞こえる叫び声、屋敷内で慌ただしく響く足音

 

 更衣室に向かおうとしていた千雨も思わず足を止める

 

「ミスターサターーーン!」

 

「うわっ!何だ何だ!?」

 

 すると正面から、廊下の角を曲がってきた男がこちらに向かって激走

 

 更に後ろからけたたましくドアが開き、男が名を呼んだサタン本人が飛び出してきた

 

「どうしたー!私の道場で何があった!」

 

「大変です!道場で貴方を殺すと言い出す不審な男が突然現れて、道場にいた者が四人も……」

 

「なにいっ!?ビーデルは!?ビーデルは無事なのか!?」

 

「すみませんそこまでは……少なくともあの時点でまだ道場の中には居たはずです」

 

「とっ、とにかく向かうぞ!オーディションはひとまず中止だ!」

 

 どちらも自分にぶつかりかねない勢いで走ってきており、壁に背を向け千雨は後退する

 

 そこへ先程道場から逃げてきた弟子の一人と、サタンとの会話が目の前で繰り広げられた

 

 二人はすぐさま駆け出し、屋敷の出口まで向かう

 

 思わず呆気にとられた千雨だったが、二人が向かっていった方向を見てある可能性を考えてしまった

 

(迷子のガキに宝石泥棒、そんで今度は殺すとかぬかす道場破り。どうして行く先々でこんな面倒事……ん?まさかあいつまた関わろうとしてねえよな!?)

 

 しかも見事に正解である

 

 何か不都合なことを起こして、この世界での行動を制限されることは一番あってはならない

 

 第六感に近いものが千雨に所謂『嫌な予感』というものを想起させ、その身を動かさせた

 

「頼むから壊れたり捕まったりはすんなよ……あのボケロボッ!」

 




 一応補足をしておきますと、冒頭に出たジャガー男爵らは劇場版のキャラですね。加えて最近鳥山先生が公開した、サタンと桃白白の関係についての設定も採用しています。
 次回は週の半ばくらいでしょうか、連休中に出来るだけ書き進めておきたいです。ではでは
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