ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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 あけましておめでとうございます、今年もネギドラをどうぞよろしくお願いします。


第39話 映し出せ!ババからの最終試練

「さて、準備は良いか?」

 

「……はいです」

 

 占いババの館、その中にある大部屋

 

 普段は一同が食事の際に集いテーブルを囲うその場所に、真剣な面持ちでいる少女が一人

 

 綾瀬夕映は席についた状態で、目の前に置かれた水晶玉に手を伸ばす

 

(のどか、ネギ先生……)

 

「では開始じゃ、わしからの最終試練のな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の始まりは、十数分前に遡る

 

 占いババの館での生活が始まり、今日で二週間

 

 夕食も終わり、夕映は朝倉と共にその後片付けに勤しんでいた

 

「この生活も今日でおしまい、か……なんかあっという間だったかも」

 

「私はともかく、朝倉さんとさよさんはここに残ってもいいと思いますが……」

 

「夕映っち一人でみんなを探しに行かせるほど、私は無責任じゃないっての」

 

 水を流しながら皿をスポンジでこすり、汚れを落とし終えると朝倉は隣の夕映に渡す

 

 ここ占いババの館には食器洗い機なんて気の利いたものは無い、夕映はふきんを手に水気を拭き取る

 

「それに、ここから外に出た世界も見てみたいしね。明日から安全運転でよろしくっ」

 

「そっちがメインの理由に聞こえるんですが……まあ、一人後ろに乗せるだけなら問題ないです」

 

 この片付けが終わったら、部屋に戻り出発のための支度

 

 明日の朝にはここを出る手筈でいた

 

「あ、夕映さん朝倉さーん」

 

「ん?どうしたのさよちゃん」

 

 そこへ二人を呼ぶ声が後ろから聞こえる、振り返るとさよがスイスイと浮遊したまま接近

 

「えっと、夕映さんを大部屋に呼んでこいと占いババさんから言われて」

 

「私を、ですか?」

 

「はい、片付けは朝倉さん一人に任せてさっさと来いって」

 

 現在夕映達がいる厨房は大部屋の隣で、移動に十秒とかからない

 

 言付け通り残りの作業を朝倉に任せ、夕映はさよについていく形で大部屋まで移動した

 

 既に食器類は移動させた後であり、テーブルにあるのは中央の燭台のみ

 

 その筈だったが、片付けの際無かった物が新たにテーブル上に置かれていた

 

 占いババが普段移動や占いの際に用いる、あの巨大水晶玉だ

 

「ふむ、来たか。とりあえずわしの隣に座れ」

 

 席についているのは占いババ一人、水晶玉の前に陣取っている

 

 その隣の席に夕映は進み、腰を下ろす

 

「……今日で二週間、確か仲間を探しに行くんじゃったな」

 

「はい、今日まで本当にお世話になりましたです」

 

「まったくじゃ、いきなり魔法を教えろと土下座してきた時は驚いたわい」

 

 あっという間の二週間、朝倉の言うとおりだった

 

 あの日の出来事は二人共、まるで昨日のことのように鮮明に思い出せる

 

「まあいい、本題に入るぞ。お主が探している仲間というのは……こやつらで間違いないか?」

 

「!?」

 

 回想もそこそこに、占いババは話を本筋に戻す

 

 目の前の水晶玉に手を伸ばし、数秒と経たずある映像を映し出した

 

 それは二週間ぶりに目にすることになる、夕映にとって代え難い大切な二人

 

 ネギとのどかの二人が、笑顔で顔を合わせている光景だった

 

「ネギ先生!のどっ……」

 

「ほい、おしまい」

 

 夕映が食い入るようにその像へ顔を迫らせると、占いババは手を水晶玉から離す

 

 二人の姿は消え、夕映の声も詰まるように止まった

 

 どうして消すのか、そう訴えるような目を占いババに向ける

 

「……続きが見たいなら、お主自身の力で見ることじゃ」

 

「え?」

 

 ネギ達の場所が知りたいなら、占いババに直接占ってもらえばいいのではないか

 

 館でのタダ働きを始めてすぐの頃、朝倉が考えたことである

 

 実際そうしてもらえれば、夕映は箒で飛べるようになるだけで問題が解決する

 

 しかし朝倉が頼んでみたところ、即刻却下されていた

 

 “タダ働きを延長するから占ってくれじゃと?たわけ、この前提示した二週間がどれほどサービスしてやったかわからんのか?本来ならむこう三年ほど働かされても、文句は言えんのじゃぞ”

 

 正規の占い料は当然払えず、闘技場戦士と戦うだけの戦力も無い

 

 結局のところ夕映が修行で力をつけること以外に方法が無い、そのことを上記の一件で朝倉は、そして彼女から伝え聞かされた夕映とさよは認識していた

 

 にもかかわらず占いババは、ネギ達の場所を水晶玉に映した

 

 相応の理由がなければ有り得ない事であり、実際それは目の前に存在していた

 

「この二週間でどれほど力をつけたか、確かめさせてもらおうかのう。何も無しならともかく、ヒントとして断片的に見せてやったんじゃ、それとわしがいつも使っている水晶玉も貸してやる。これはかなりの大サービスじゃぞ?」

 

「つまり、今からやるのは……」

 

「まあ言うなら、わしからの最終試練といったところかの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして今に至る、既に夕映は詠唱を開始し水晶玉へと魔力を込めていた

 

「プラクテ ビギ・ナル……」

 

 魔力によって水晶玉に淡い光が灯り始める

 

 中心には白いもやのようなものがかかり、先程まで透けて見えていたテーブルの向こう側は隠れてしまう

 

 ここにお目当ての像が映し出されれば、合格となる

 

(ぐっ、やはりさっきの映像は現時点のものでは……とすればヒント付きとはいえ、かなりの難易度です)

 

 夕映は表情を苦くする、理由は映し出そうとする像の種類にあった

 

 夕映が占いババから学んだ占術魔法は、大きく二つに分けられる

 

 『離れた場所を映す』と『今と違う時間を映す』だ

 

 例えば、失くした指輪を見つけて欲しいと頼んだ客がいたとする

 

 この時占いババが水晶玉に映すのは、現在失くした指輪がある『離れた場所』

 

 例えば、今の恋人と上手くやれるかと相談しに来た客がいたとする

 

 この時占いババが水晶玉に映すのは、将来の二人がいる『今と違う時間』

 

 特に前者は基礎中の基礎にあたり、後者をやるにあたっても併用することが多い

 

 習い始めに課せられた『箱の中身を映し出せ』というのも、分類上前者に該当する

 

「ほれほれどうした、一向に映らんぞ」

 

(落ち着くです、さっき見た映像をもう一度頭の中に……)

 

 したがって『今と違う時間』の『離れた場所』を映そうとした場合、難易度は跳ね上がる

 

 これまでの修行で何とか使えるようになったとはいえ、占いババと比べれば天地の差

 

 0から映そうとすれば半径十数キロ、時間も一時間前が限度でその上未来視はほぼ出来ない

 

 そのことは占いババも知っている、知っている上でこの最終試練を提示してきた

 

(さっきのヒントで足りない実力をどこまでカバー出来るか、どこまで自分の力に出来るか……これはそういう試練ということですね?)

 

(そうじゃ。見せてみい、お主の力を)

 

 引くわけにはいかない、かつてアックマンに言った言葉が頭をよぎった

 

 “ですが魔法指導は別です、私はそれに見合う対価を今もろくに占いババさんへ返せていないです”

 

 試練に打ち勝つこと、つまりはこれまでの占いババの教えを無下にしないこと

 

 これが今自分に出来る唯一のお返し、そう考え映は決意を固めた

 

(未来視魔法の知識そのものは、占いババさんからの教えとアーティファクトで頭に入ってはいます。あとはそれを、どこまで使えるか……)

 

 その間も魔力を注ぎ込むことを忘れない

 

 そうしていると水晶玉の中に黒い影、像が形として現れた

 

「あっ!夕映さん!映ってます映ってます!」

 

(まだ、です!鮮明な形として映らない限り成功とは言えません!)

 

 後ろで眺めていたさよが嬉しそうな声をあげるが、夕映は表情を崩さない

 

 映っているのはただの影法師が二つ、ネギやのどかだと分かる材料は殆ど無く背景も映らない

 

(これじゃ頭の中に残っている記憶映像の劣化コピーでしかないです、目指すべきは更にその先!)

 

 ネギ達を探しに行けるだけの詳細な情報、それが得られるだけの鮮明な像を望んでいた

 

 さっき見た単なる一枚絵のような像でなく、本物の映像を

 

(そして私も、二人と一緒に……そうです、今から私が映さねばならないのは、これから起こる現実なんです!)

 

(……むっ?)

 

 夕映の目が大きく見開かれ、手から放たれる魔力の大きさが目に見えて増した

 

 まるでつっかえが取れたように、先程より勢いよく魔力が水晶玉へと注がれる

 

 変わったのは水晶玉の中身、映し出される像もだ

 

「わぁー、綺麗に映ってます!ネギ先生とのどかさ……あれ?」

 

(そう、これが……これから起こる私達の未来!)

 

 二つの影法師に色がつき、形が鮮明になり、ネギとのどかだという判別が容易についた

 

 しかしそれだけではない、もう一つ見過ごせない重大な変化がある

 

 映っている像が、二つから三つに増えていた

 

「これって……」

 

(……ふむ、ついにやりおったか)

 

 三つ目の像の正体は、さよが思わず目をやったその先に有り

 

 水晶玉に映し出された新たな姿

 

 それはネギ、のどか、そして夕映の三人が、先程以上の笑顔で再会を果たしているというものだった

 

(あとは場所です!全体を引いた構図にして、正確な位置を……っ!こんな、時に……)

 

 この未来を現実とすべく、夕映は仕上げに入ろうと映像を操作する

 

 と、ここで普段聡明な彼女の思考に、水晶玉の中とはまた別のもやがかかった

 

 加えて魔力の放出量が徐々に減っていくのも見てとれる、そうとすれば理由が明らか

 

(ドリンク……いや、ここで手を離し……消え……あと少しで……)

 

 魔力切れ、しかも補給行動をとることは現状不可能

 

 引き返せないことを覚悟していた夕映は、残る魔力だけで突き抜けることをぼやけ始めた思考で決定し実行する

 

(何か、文字だけ……でも……っ、見え……)

 

「夕映さん!頑張ってください!」

 

 魔力の消耗に伴い水晶玉の映像にも陰りが見え始めた、残された時間は少ない

 

 必死の思いで夕映は映像を動かす、どこかの島に居るようだが外景だけでは何処かわからない

 

 そんな中、アーチらしきものに文字が書かれてるのを見かけ、ぼやける視界の中でそれを読み取った

 

(天下一……大武……道……会……)

 

 読み終えたと同時に、夕映の目に映る映像はプツリと途切れる

 

 それは水晶玉への魔力が途切れたからであり、そして彼女自身の瞼が落ち切ったからであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んーと、つまり夕映っちはネギ君達の場所が占えたってこと?」

 

「左様、魔力の使い方に難有りじゃが、まあギリギリ合格点としてもよかろうて」

 

 朝倉が片付けを終えて駆けつけたのは、夕映が気を失ってすぐのことだった

 

 大部屋に入ってみれば、夕映がテーブル上に突っ伏してダウン

 

 そんな状況下では、さよや占いババに問い詰めずにはいられなかった

 

 一通りの事情を聞き終えると、ホッとした様子で朝倉は笑みを見せる

 

「けど良かった、ネギ君や本屋と合流の目処が立ったってのは、かなりの進展だもんね」

 

「私も早く、皆さんと会いたいです」

 

「でさ、ネギ君達とは何処で再会出来ることになってんの?」

 

「え?すみません、細かいところまでは私も見てなくて……夕映さんが目を覚ますまではちょっと」

 

「ここじゃよ」

 

「「?」」

 

 朝倉とさよのちょうど間に、一枚の紙がスッと差し出された

 

 朝倉はそれを手にとり、内容を読み上げる

 

「なになに、『天下一大武道会開催!栄光をこの手で掴み取れ!』……ふんふん、そんで場所と日時が……ってあれ?」

 

 何かおかしい

 

 ある程度目を通したところで朝倉は疑問符を浮かべた

 

「……あのさババさん、夕映っちがネギ君達の場所を占ったのってついさっきなんだよね?」

 

「そうじゃ」

 

「なのにその場所のチラシを今ババさんが持ってて……」

 

「うむ」

 

「その大会の開催日が、ちょうど私らのタダ働きが終わった日の翌日で……」

 

「うむ」

 

「…………」

 

「ほれ、さっさとこいつを連れて部屋に戻って寝ろ」

 

 つまりは、そういうことだった

 

 朝倉はこれ以上の追求はやめ、夕映の腕を肩にかける

 

 何にせよ明日の支度をしなくてはいけない、夕映も明日まで起きそうになく彼女の分まですることになりそうだ

 

「あの朝倉さん、さっきの話はどういう……」

 

「ん?いいのいいの、さよちゃんは別に気にしなくて」

 

 さよからの問いを苦笑いで受け流し、朝倉は部屋を出た

 

 そして一人残された占いババ

 

「おーい婆さん、明日のことなんだが……って、何だその顔」

 

「どうかしたのか?」

 

(なんであん時の嬢ちゃんと同じような顔してんだよ……)

 

 あとから大部屋に立ち寄ったアックマンによれば、暫くの間したり顔でいたという




 アスナ達とのどか達と茶々丸達、残り3つ書いたら大会編突入です、なんとかペースを守って2月までには入りたいところ。
 次回も一週間後を予定しています、ではでは。
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