「おおっ!やぱり修行してたのは私やアスナだけじゃなかたアルね!」
「もし大会で当たった時は、よろしくでござるよ古」
天下一大武道会、世界中から二百人超の武道家が集まった大規模な武道大会だ
参加者は当然ながら殆どが男性、しかしあくまで全員ではない
少数ながら女性選手も大会に参加しており、そのため控え室も女性専用のものが一室備えられていた
現在そこにいるのは全部で六名、その内五名が知り合い同士という状態
「……にしてもいいんちょ、あんたよく参加する気になったわね」
「一応ながら修行をつけさせてもらった身ですし、駄目で元々の力試しといったところですわね……ただしアスナさん、あなたに負ける気はさらさらありませんので、そこはあしからず」
「前日に少し見せてもらいましたが、少なくともまほら武道会の時のアスナさんより力は上かと。油断しない方がいいかもしれませんよ」
楓、古、アスナ、あやか、刹那
女性選手用控え室で再会した彼女達は、予選開始が近づくのも忘れ会話を交わし続けていた
ただし古とあやかを除く三人は数日前に神の宮殿で会ったばかりでもあり、それも含めた話が続けて展開される
「ということは、私がクリリンと修行してたのも見られてたアルか……」
「あくまでカリン様や神様からの伝聞だけどね、私が直接見たわけじゃないし」
「しかしこれで、皆さんの所在が大分判明したことになりますわね」
この世界に飛ばされた可能性の高い者として、あやかはあの時超の周辺にいた面々が該当すると考えていた
そして現在共に行動している者、他の者からの情報でこの世界での存在が判明している者を除外すると残りはかなり少ない
「夕映殿、朝倉殿、さよ殿……それに真名、超殿でござるか」
基本的にカリン、デンデが確認出来たのは屋外にいた者のみ
したがって修行中のネギ達や古やハルナ、各地を放浪していた茶々丸達(もっとも、聖地カリンで既にアスナは存在を聞いていたが)を見つけ、アスナ達に教えた次第である
逆に屋内に閉じこもりっぱなしの者は、余程注意を向けぬ限りは見つけにくかった模様
五月は古から、のどかとハカセはあやかから、存在をそれぞれこの場で報告されていた
「この大会で何か手がかりが見つかるといいんですが……あ、そうだアスナさん、多分そろそろネギ先生からカードの念話が来ると思います」
「え?」
“アスナさん、ネギです!聞こえたら返事をお願いします!”
「わっ!?ネギ!?」
まだ見ぬ仲間達の話題になったところで、刹那があることを思い出しアスナに話す
それとタイミングをほぼ同じくして、アスナの脳内にネギの声が響き渡った
「よかった、刹那さん達と合流したんですね!はい、はい……そうだったんですか」
(おっ、アスナ姉ちゃん当たりか)
大会が始まるまで一時間を切り、多くの人で溢れかえっている会場
コタローは周囲の雑音をなるたけ排除するよう意識し、隣でパクティオーカードを片手に念話するネギの声に耳を傾ける
数十分前に会場入りしたネギ達は、受付を済ませると数組に分かれていた
まず先述の通り、楓と刹那とあやかは女性用控え室へ
ネギ、コタロー、悟飯の三人は会場とその近辺を周り、今もこうしてネギの仲間達の捜索を行っている
ピッコロはこの雑踏の中に身を置くことを良しとしなかったのか、予選時の再会を約束してどこかへ行ってしまった
また今回、大会参加組はクリリンや天津飯らと同じく舞空術で会場まで移動
残る非参加組の木乃香、カモ、チチは交通機関を用いてここまで来ている(牛魔王は悟天のお守りのため留守番のようだ)
「はい、また後で合流を……はい、わかってますって。それじゃあ」
「アスナ姉ちゃん、ここに来とったんか」
「うん、悟飯君の知り合いと一緒に。僕達と同じで大会にも出るって」
ネギはパクティオーカードによる念話を切ると、コタローへ先ほど得た成果を伝える
他の面々の捜索を第一にしたため今から即合流することは見送ったが、本当はすぐにでも会いたいのだろう
コタローがそう推測するのは、アスナの無事を知ったことによる歓喜の感情がこれでもかとネギの顔に出ていたため実に容易だった
「さっきはのどかさんの無事も確認できたし、次のカードを……」
パクティオーカードによる念話、これは本日アスナが二番目
最初に使ったのはのどかのカードである
『のどか、ハルナ、葉加瀬がブルマ宅に居候している』
精神と時の部屋での修行を終え、大会前日になって久しぶりに悟飯宅へ戻ったネギ
その時彼はこのことをチチの口から聞かされていた
天下一大武道会の観戦に来るであろうことも知り、捜索となった際にも真っ先に彼女のカードを取り出していた
念話の有効範囲には限りがあるが、お互いが会場内にいるならまず問題はない
すぐさま両者間で通じ、嬉々としたのどかの声を聞くことができた
こちらもアスナの時同様ひとまず再会を後に回しているのだが、なんにせよ着々と皆の所在がわかってきたのは嬉しい限り
次なるパートナーに連絡をとらんと、ネギは新たにカードを取り出した
「んーと、残ってんのはあのチビ助に……」
「千雨さんだね。ひとまず千雨さんと……」
「ネギくーん!」
ちょうどカードを額に当てようとしたところで、後ろから名前を呼ばれる
つい数分前にも聞いた声、振り向く前からもうわかっていた
「あっ、悟飯君」
三人で会場内を捜索と先程説明したが、正確に言えば『ネギ&コタロー』と『悟飯一人』の計三人での捜索とした方が正しかっただろうか
悟飯はネギの念話のような、目標を探すための特別な手段は持っていない
そのため悟飯は少々別方向からの捜索、詳しく言えば『会場に来ている知り合いを、気を探ることにより見つけて情報収集を行う』という手段をとることにした
しかし予め決めていた合流時間より少々早い、何かあったのだろうか
「どうし……」
「ネギっ、先生!」
そのことをネギが尋ねるよりも早く、悟飯の後ろから飛び出した一つの影が言葉を遮った
一度に大量の情報が、ネギの頭の中を駆け抜ける
正面に見えた紫がかった髪は、すぐに顔の横まで移動し頬を撫でた
木乃香以来だろうか、年頃の少女特有の香りが鼻腔を通り抜けた
背中に回された腕は力こそ少女相応のものだが、離してなるものかという意志がこれでもかと伝わった
ほんの数分前に聞いた時よりも、口から漏れてくる声は涙声だった
「のどか、さん……」
魔法先生ネギ・スプリングフィールド、そのパートナー宮崎のどか
彼と彼を愛する少女、二人はこの場で再会を果たした
そして、もう一人……
「ウーロン、どこにもピチピチギャルはおらんぞ~」
「何見てんだよ爺さん!武道大会観に来たんだろうが!」
場所はやや離れる
会場内に観客のため設置されたカフェ、そのすぐ横に建てられた細身の柱によじ登るサングラスの老人がいた
青地にハイビスカスの模様が入ったアロハシャツを身に付け、下は短パンという老人らしからぬ風貌
亀仙人こと武天老師は、同行者ウーロンの叱責も無視し周囲の観察を続ける
「そんなもん観なくても悟飯かトランクスの優勝に決まっとるじゃろうが」
クリリンとは別に船に乗って会場までやって来た亀仙人は、チチやブルマとも既に顔を合わせていた
悟飯やトランクスの参加もその時知ってしまい、クリリンの優勝の目が無くなったとわかると途端にこうして会場内での物色を始めてしまったというわけだ
先程は描写を省いたが、ウーロンの他に女性である五月を連れているにもかかわらずである
「だったらDカップやTバックなギャルを探してじゃな……」
亀仙人としてはブルマと一緒にいたハルナを『なかなかのスタイル』と評し結構気に入ったようなのだが、ブルマが目を光らせていたため変に手を出せず
そこへ姿を見せた悟飯と共にブルマ達はどこかへ行ってしまい、美味しい思いは出来ずに終わっていた
他に逸材はいないものか
そんな願望を持ちつつ左右に首を振っていると、ある一人の少女を捉えることに成功する
「……いたぁー!」
人混みの中でも目立つ赤毛
それを後頭部の上の方で一括りにしており、固めの髪質と併せてさながらパイナップルのように見えなくもない髪型
しかしそれ以上に亀仙人が目を引いたのは、彼女の抜群のプロポーション
(さっきの子と比べるとヒップはともかく、ウエストは細いしバストサイズも上じゃ。こりゃすごいわい)
上記の内容はあくまで亀仙人の目測なのだが、ほぼ当たっているあたりおそろしい
柱からすぐさま滑り降りると、声を掛けようと接近を試みた
ちょうど焦った様子でこちらの方向へ走ってきており、両者の接触まで三秒とかかりそうにない
「ハーイ、お嬢さ……んお?」
「すっ、すみませんです!」
しかし頭の帽子のつばに手をやり、持ち上げて軽やかな挨拶をしようとしたその時
亀仙人の横を小柄な少女が一人、肩を擦らせ謝罪の言葉と一緒に横を走り抜けていった
多くの人が溢れかえる会場内、珍しいことでもない
しかし目に入った彼女の格好を見て、思わず視線が後を追ってしまった
紺色のローブに三角帽子、初めて見る姿ではない
(あれは……)
数十分前、船上から上空を見上げた際のことを思い出す
一瞬で飛び去っていく姿を見て、ウーロンにはヤムチャじゃないかと言われたが今わかった
あの時、飛んでいたのは彼女だ
「姉ちゃんみたいな格好じゃが、飛んでたのはもしかして箒ほぎゃっ!」
「ちょっとちょっと!待ってってばー!」
思考がそちらへ奪われていた間に、当初お目当てだった少女が接近
先程よりも強めにぶつかり、吹っ飛ばされた亀仙人をそのままにローブの少女を追いかけていく
「あっ、朝倉さん!今ぶつかったのお爺さんですよ!」
「え!?やっば……けど夕映っちとはぐれるのもマズいって!」
実は今亀仙人を抜いていったのは一人でなく二人
後ろを向きつつ飛行するさよの言葉にやや眉をひそめつつも、朝倉は前方を走る夕映を追い続けた
「なんでまた急に走り出すかなーもう……」
「そういえば夕映さん、直前に『あの魔力は……』とか言ってたような……」
「魔力?……もしかしてネギ君!?」
(確か、魔力を感じたのはこの辺りの筈ですが……)
予選の開始が近いこともあり、観客席へ次々と人が押し寄せてくる
その人混みの流れと反対の方に夕映は進み、自身の周囲を見回していた
(一回目は突然だったので気のせいかとも思いましたが、二回目で確信が持てました……あれは、間違いありません!)
念話か何かの簡素な魔法を使っていたのか発現された魔力は小さかったが、それでも彼が発した魔力であると分かるには充分
人混みを綺麗に掻き分ける余裕はなく、数秒に一回は肩に衝撃を受ける
それでも夕映は感知した魔力を辿り、彼を探し続けた
(そうだ、あの時水晶に映っていたのは……)
魔力以外にも手掛かりはあった、昨晩夕映が水晶玉で見たあの光景だ
この大会名を知ったのもあの時、忘れるはずがない
(あのアーチがあったのは……一般入場口のすぐ外!)
さらに明確な方向を定め、夕映は足を速めた
「はあーっ、はあーっ、この……辺りですね……」
会場へ来た時にも見たアーチをすぐに見つけ、通り抜けたところでようやく人混みも減り場所が開ける
アーチというとりあえずの目標にたどり着いたことで、稼働し続けだった両足の動きを夕映は停止
やや深めの呼吸を2回して息を整え、さあ再開だと伏せ気味になっていた顔を上げる
顔を伏せていたのは数秒だったが、その間に少なからず周囲の状況は変化していた
例えば、すぐ横にある出店で商品を受け取った親子が店頭を後にしていたり
例えば、上空で行われている航空ショーのアクロバット機が新たな隊列を組んでいたり
例えば、両者の間に位置していた人がいなくなったことで抱擁する男女の姿が顔を見せていたり
「っ!」
よくよく考えてみれば、驚くべきことではなかったのかもしれない
水晶玉に映っていたのは、ネギ一人だけではなかった
彼を探していれば、彼女が一緒にいてもなんらおかしくはない
しかしそもそも夕映がここまで探しに来たのは『ネギの魔力を感じたから』、故に失念していたということか
とにかく、目の前の光景は夕映の想定外であったことに違いはなく
「っ、っ……どっ……」
彼と共にいた少女は彼同様に、意味こそ違えど大好きで、掛け替えのない親友であり
両者が揃ってこの場に居た事実は、いつもは饒舌である夕映から言葉を奪っていた
口は開いているのに声が、それに息すら止められているような感覚を覚える
それを解くきっかけが、ただ立ち尽くしているだけの今は得ることが出来ていない
このことを無意識の中で把握したのか、夕映は数秒の静止ののち文字通り動いた
空気を求め|水面(みなも)へ上がる獣のように、呼吸を止め顔を赤くして
周りの情報を遮断してまで一心不乱に、二人のもとへ駆け出した
「ん?……夕映!?」
「えっ、夕……」
二人のことを遠巻きに見ていたもう一人の親友、早乙女ハルナが夕映発見者第一号
ハルナの言葉を受けて彼女が、親友のどかが視線を向けるのと
「ふえっ!?」
「ゆっ、夕映さん!?」
夕映が二人まとめて横から抱きつくのに、時間の差は殆ど無かった
のどかと、彼女に少し遅れて夕映を見たネギは共に驚きの声をあげる
二人の声が、顔を近くに寄せていたため夕映の両脇から勢いよく飛び込む
「……ど、かっ」
これが、彼女にかかっていた魔法を解いた
声を、息をせき止めていたものが突如と消え、栓を抜いたビールが如く噴き出した
「のどかっ!ネギ先生っ!」
「夕映……」
「夕映さん……」
のどかの名を、ネギの名を、自身が冷静さを取り戻すまで止めることなく吐き続けた
そしてその声は、途中で夕映を見失っていた朝倉とさよもこの場へ呼び寄せる
「ネギ君に宮崎、コタ君に……パルとハカセも!」
(凄い……夕映さん、ホントに未来を映してたんですね!)
朝倉はハルナ達、さよは夕映達の方へそれぞれ駆け寄る
ネギ以外の仲間達と大勢合流出来た驚きは大きく、加えてさよはもう一つあった
夕映の表情を見るべく正面へ回ると、そこにあったのは目尻に小粒の涙を浮かばせつつの笑み
更にネギとのどかも同様に笑みを見せている、間違いない
(のどか、ネギ先生……)
昨晩夕映が水晶玉に映し出したものと何一つ変わらない、未来が現実となって今この場に現れた
長いこと更新を遅らせてしまいすいませんでした。
書き溜めはこの話で無くなりましたが、なんとかGW中に一本仕上げられるよう頑張ります。では