ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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第51話 予選決着!見せろ刹那、己の『すべて』

「……すごい」

 

 二人の戦いを開始から暫く見て、ようやく漏れた第一声がこれ

 

「今までにないくらい、力を振るうピッコロさんも」

 

 そこから溢れ出すように、言葉が次々とネギの口から飛び出した

 

「それに食らいつき続ける、刹那さんも」

 

 目の前の戦いには、緩みが一切無かった

 

 一瞬一瞬が、攻防の繰り返し

 

 僅かな隙でやられるような強力な攻撃

 

 逆に言えば隙を見せず、それを食らわず戦い続けている刹那

 

 この間にも、刹那とピッコロの交戦は絶え間なく続いていた

 

「けどこのままじゃ、もう持たへんで」

 

「うむ。ピッコロ殿は本当にギリギリの塩梅で刹那殿に攻撃を加えているようでござるが、そのギリギリは刹那殿の神経を否応なしにすり減らしている……」

 

「第一、そのギリギリっちゅうんがおかしいんや。あれじゃあ勝負でも、ましてや組み手紛いの稽古でもあらへん。必死に逃げて、抗う様を上から見下ろして楽しむような……悪趣味ないたぶりと変わらへんやろ」

 

 一方で、コタローはピッコロの振る舞いに少々納得がいかない様子

 

 あえてギリギリの攻撃を続けるということは、手を抜いていることを露骨に示しているともいえる

 

 あれでは生殺し、コタローはそう主張したかった

 

「コタロー殿と刹那殿の、強くなりたい理由やピッコロ殿と戦う理由が同じなら、そうなのでござろうがな」

 

「?」

 

(とはいえ、時間があまりないのも事実でござろう)

 

「か、楓さん!あれ!」

 

(む……刹那殿、そろそろどうにかせねば、本当に終わってしまうでござるよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(どこだ!?どのタイミングであれを使える!?)

 

 刹那は再び、気功波の雨を空中で避け続けていた

 

 今度は気功波というか所謂気弾で、遠くから見れば『線』ではなく『点』の回避に近い

 

 端から見れば前より避け易いと思うかもしれないが、実際は違う

 

(体力もそうだが、気の消耗はこれ以上するわけにはいかない!それに……これらからどう抜け出す!?)

 

 刹那は第一撃を避けた箇所をほんの一瞬見て、奥歯を強く噛む

 

 避けた気弾は宙で静止し、刹那の空中での動きを制限していた

 

 よく見ると他にも数個、止まっている気弾がポツポツと

 

(増えれば増えるほど、対処は絶望的になる!考えろ!)

 

 そして現在進行形で、避けた気弾らは何個かに一個の割合で空中で動きを止め、その数を増やしていた

 

 技名こそピッコロは口にしなかったが、知る者が見ればあれが彼の必殺技『魔空包囲弾』であることは容易に分かるだろう

 

(前にも使ったが、今度は脱出の猶予も抜け道も用意せんぞ!さあ、どうする?)

 

(以前修行で囲まれたことがあるからわかるが、あれは本気でされたら脱出はほぼ無理だ!やるなら包囲網が完成する前の今しか無い!)

 

 問題の先送りが敗北に直結することを刹那は承知しており、早急の判断を迫られる

 

 理想は自分を囲む気弾達からうんと遠くまで離れることだが、現実は厳しい

 

 安全に抜けるための大回りのルートは、ピッコロの絶妙な攻撃が回避方向を制限し阻んでいる

 

 危険地帯、気弾と気弾の間を縫って通り抜けるのは、気弾がコントロール下に置かれたままである以上あまりにもリスクが大きすぎる

 

(動かされて道をふさがれたり、その場で起爆されたら一巻の終わりだ。ならどうするか……誘爆、させるしかない!)

 

 刹那の選択は、包囲される前に気弾そのものを消してしまうというものだった

 

(だが、私の攻撃では駄目だ。絶え間なく飛んでくるピッコロさんの気弾と、逆方向からの誘爆。その両方を同時に対処する力は私には無い。つまり……)

 

(その目、覚悟を決めたな)

 

 刹那は左拳を握りしめ、向かってくるピッコロの気弾を睨み付けるように見る

 

 それは離れた位置にいたピッコロからも確認でき、刹那の内にあるものを感じ取った

 

 

 

 

 

(ピッコロさんの気弾で誘爆させる!私が、弾き飛ばして!)

 

(相手から殺意を持って攻撃される覚悟と、もう一つ……その相手の攻撃を食らう覚悟が)

 

 

 

 

 

 次の瞬間、刹那は目をカッと見開き左腕を振るった

 

「ずぇぁああああぁぁっ!!」

 

 上腕全体、更には当たっていない肩や首元にまで激痛が走る

 

 それでも、刹那は痛みに耐え腕を振り抜いた

 

 ピッコロの気弾は刹那の腕では爆ぜず、進路を変え空中静止中の別の気弾に命中

 

(痛みがなんだ!集中を切らすな!この一瞬、逃せば次の機会はおそらくもう無……)

 

 直後、刹那は爆発の中に消える

 

 連鎖して次々と爆発していく気弾によって、刹那の姿は完全に見えなくなった

 

(左腕に気を集中させ、負傷を承知で無理矢理弾いたか……)

 

 爆発直前に放たれた気弾数発は、その中に飲み込まれていくが手応えは無し

 

 この状況では狙いを定められないと分かると、ピッコロは攻撃を中断し周囲に神経を集中させる

 

(あの誘爆や残りの気弾では、くたばっていまい……姿を晦ませ、それに乗じて仕掛けてくるつもりだな)

 

 爆音の中に潜む物音、刹那の気

 

 その両方を探りながら、ピッコロは攻撃に備える

 

(……妙だ、気の高まりは感じるがその場から動く気配が無い。まさかこの距離からそのまま攻撃してくる気か?)

 

 てっきり、中・近距離まで迫ってくるとばかり思っていたピッコロは、大まかながら感知出来る刹那の動向に首を捻りたくなった

 

 ただでさえ刹那とピッコロとは地力、即ち期待出来る攻撃の威力に大きな開きがある

 

 となれば刹那としては距離を詰め、少しでも威力の高い攻撃を叩き込みたい筈だ

 

 なのに刹那はあの場所、ピッコロから離れた上空から動かない

 

(ここにきて、俺の反撃を食らうのを恐れたか刹那!)

 

 

 

 

 

(違いますよ、ピッコロさん。私は……)

 

 

 

 

 

「!?」

 

 次の瞬間、ピッコロの不正解を糾弾するかのように刹那の攻撃が飛んできた

 

 気弾だ、それも無数の

 

(な、何が起きている!?)

 

 『無数の』といっても、実際に撃ち出される気弾の数は有限であり、同じ『無数の』と形容される連続攻撃があったとしてそれらには格差が存在する

 

 ピッコロほどの使い手ならよほどのレベル、例えばベジータが強敵相手に高速で両手を使って撃ち出すあの気弾攻撃並であっても、想定の範囲内として容易く対処出来たであろう

 

 しかし目の前の攻撃は、そのレベルを遙かに凌駕していた

 

 仮に刹那の腕が六本あり、かつベジータ並の速度で放ったとしてもお釣りが溢れんばかりの、圧倒的物量

 

 それに思わずピッコロは目を奪われ、その場から動かず両腕を掲げての防御体勢をとりその攻撃を受けた

 

 例えるなら、コンテナいっぱいに入っていたゴルフボールが、上空から隙間無く降り注ぐような

 

 それも一個一個が、ある一定の威力を持った気弾として超高速で

 

(避けるどうこうの問題じゃ無い!刹那のやつ、このバトルステージ全体に同密度の攻撃を叩き込んでやがる!)

 

 攻撃を受けながら周囲に目をやったピッコロは、辺りの無人の箇所も同様に気弾が届いていることを確認する

 

 予選開始早々二人は他の選手全員を倒しており、邪魔にならぬよう時間の有る内にバトルステージ上から退かせたため二次被害は無い

 

 しかし一番の問題は攻撃範囲や一般選手の安否ではなく、ピッコロの虚を突くほどまでの攻撃を実現させた攻撃手段だ

 

 上を向くと次々と襲いかかる気弾によって視界が遮られるが、それでもピッコロはどうにか刹那の姿を捉えた

 

(なっ!?コタローだけじゃなく、あいつもか!)

 

(私は……貴方に全力をぶつけるため、この選択をしたんです)

 

 コタローが獣化を今まで見せずにいたように、刹那もまたピッコロに隠していたことが一つ

 

 上空で刹那は自身の純白の翼を、より白く光らせ広げていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっちゃん!」

 

「カモさん、あれは……」

 

「ああ、刹那の姉さん思い切ったことをしやがった……けどピッコロの旦那を相手取るには、あれくらい無茶しなきゃ確かに無理ってもんだ」

 

 木乃香の表情に、笑みが戻った

 

 刹那が爆発に飲み込まれた瞬間顔にさした青色は、無事であると分かった途端スッと引っ込む

 

 一方で夕映とカモは刹那が無事であることよりも、あの圧倒的な攻撃に関心が向けられていた

 

「ねえ、夕映っち。あれってさ……」

 

「朝倉さんは、刹那さんの翼のことはもう知ってるですね?」

 

「う、うん」

 

「おそらく刹那さんは翼の羽根一枚一枚に気を込めて、それらを一斉に撃ち出してるです」

 

「は!?」

 

 コタローの時と同じように、そこに朝倉も加わる

 

 今回は彼女の持つ情報でも手に負えずお手上げ、完全に夕映とカモに委ねる

 

 そして返ってきた答えに、声を裏返しながらのリアクションで応えた

 

「え?え?羽根一つ一つって、あれ全部で幾つあるのさ!?」

 

「俺にもわからねえが、とにかく相当な数だ。現に気弾攻撃にも拘わらず、『点』でなく『面』の攻撃でピッコロの旦那を押さえ込んでやがる」

 

 刹那が接近を図らなかった理由がここにある

 

 接近しての攻撃の場合、自身を上回るスピードの持ち主のピッコロは少し本気を出すだけで攻撃圏内からの脱出を容易に行える

 

 一方であの攻撃を遠距離から放射状に撃てば、威力は落ちるが広範囲の攻撃でピッコロを捉え続けることが可能というわけだ

 

「そして真に恐ろしいのは、そんな多大な気を消耗する攻撃を絶え間なく撃ち出し続ける刹那さんの気力です」

 

「あとどれだけ撃てるかわからねえが、『撃てるだけ撃ち続けてやる』って凄みを遠くからでも感じるぜ!」

 

「けど、あれホントにピッコロさんに効いてるの?そもそも実力差がすごくあるのに、あんな風に威力を分散させたんじゃ……」

 

 力の温存を一切考えない、いわば捨て身にも近い戦法

 

 それを理解し熱くなっているカモに、少し落ち着きを取り戻した朝倉が疑問を口にする

 

 攻撃を当てるのと、ダメージを通すのとでは当然ながら大きな差が存在する

 

 前者はともかくとしても、後者を満たしているとは考えにくいのではと朝倉は思っていた

 

「……朝倉の姉さんよぉ、なんで刹那の姉さんが攻撃範囲をバトルステージ上ぴったりにしたと思う?」

 

「え?なんでって……あ!」

 

 しかし、それすらもカモはあっさりと正答を返してみせる

 

 カモが指さした先は両者が戦うバトルステージ、ピッコロのいるやや下

 

 コタローの時と比べここまで戦局が見事に読めているのは、ピッコロ及び刹那と長期間同行し両者についてより把握をしていたからか

 

「刹那の姉さんの狙いはKOでも、ましてや『せめてもの一撃』でもねえ。足場を破壊し、海中へ押し込んでの場外負けだ!不退転、最後の大博打を仕掛けやがったのさ!」

 

 

 バトルステージHは、みるみる内にその高さを失っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうか……俺に一矢報いるどころか、勝つ気でもいたのか)

 

 今も上空から絶えず降り注ぐ気弾と、崩れていく足場

 

 ピッコロは刹那の攻撃の意図を把握し、腕で顔を隠しながら口元を緩ませた

 

 一方の刹那の表情には、緩みは一切無い

 

 左腕のダメージと気の消耗に対し歯を食いしばって耐え、両翼を振るい気弾の暴風雨を浴びせ続けていた

 

(ピッコロさん、途中から気付きました。貴方が私の……どうしようもない我が儘に付き合ってくださったことには)

 

(楓の言うとおり、俺との初めの敗戦が余程堪えたか)

 

(貴方とのあの敗戦は正直、未熟な身とは云え私には辛すぎました。お嬢様を守る資格、それが本当に私にはあるのかと、何度己に問いかけても足りないくらいには)

 

(そして修行中、俺は度々お前にとって木乃香に害を為す仮想敵。酷い扱いをされたもんだ)

 

(不安を払拭するため、私は結果が欲しかった。掌で踊らされていたあのままでは終われない……どこかでそこから抜け出し懐まで潜り込み『どうだ!』と、貴方の鼻を明かしてやりたかった)

 

(もっとも、当時気付かなかった俺はいつも通り修行をつけ、いつも通りあしらってやったわけだがな)

 

(修行中それは叶わなかったが、この大会で最後かもしれないチャンスが巡ってきた。そしてピッコロさん、貴方は何も言わず私の挑戦を、わかったうえで正面から全霊を持って受けてくれた)

 

(そして今、見せてもらったぞ。力もそうだが、なによりも俺に挑む上で相応の覚悟を持った、今までで一番のお前の姿を)

 

 決して両者は、念話で会話をしているわけではない

 

 だがこの勝負の佳境、胸の内に思うことはほぼ共通していた

 

(だから私も、一矢報いた今に満足しません!全力で、全霊をもって勝負そのものに勝ちに行きます!)

 

(なら俺も、お前に見せてやるか……まだ遠く及ばんが、もう少しだけ全力に近い俺を、な!)

 

 足場が残り1メートルを切ろうかというところで、ピッコロは動く

 

 後ろ手にマントを掴み、気を通して硬化

 

「ずぇやぁぁっ!」

 

 上方に向けて広げて振るい、自身に着弾する筈だった無数の気弾を弾き返した

 

 弾き返された気弾は、さらに上方の気弾らと衝突

 

 爆発し、刹那の視界からピッコロが消える

 

 

 

 

 

「うおおおおぉぉっ!」

 

「!」

 

 次の瞬間

 

 刹那は迷わず右腕を突き出し、その先には一瞬で距離を詰めていたピッコロがいた

 

 

 

 

 

「……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 

「あと5センチ、そんなところか」

 

 上空で、静止する二人

 

 ピッコロへ突き出された刹那の貫手は、彼が肘部分を掴んで動きを止めていた

 

「読まれて、ましたか」

 

「いや、幾らか予想外だった。俺を待ち構えて攻撃してきたのも、この攻撃もな」 

 

 ピッコロはあの時今まで以上の、刹那の感知の限界範囲を大幅に超えたスピードで迫った

 

 にも拘わらず、待ってましたとばかりの攻撃

 

 加えて、貰えばただでは済まなかったかもしれない、今止めているこの攻撃

 

「動きが見れたわけじゃありません。ピッコロさんなら後発の気弾の雨を突き破ってでも正面から最短でやって来る、そう思ってからすぐに最速で技を放った。ただ、それだけの当てずっぽうです」

 

「それでもだ。前のお前なら、そんな賭けに出る土俵にすら立てなかったろうさ」

 

「…………」

 

「こいつは、最初に剣を使って俺に放ったのと同じ技だな?斬魔剣、だったか」

 

「……手刀や貫手に、どこまで力を乗せられるかは不安でしたが、『同じ』ですか」

 

 つまり刹那は、翼を用いたあの技が破られた際の最後の手段も持ち合わせていたということだ

 

 そしてそれを含め刹那は、ピッコロに全てを出し切った

 

「……おい、追いつめられてるのに、やけにいい顔をするじゃないか」

 

「ピッコロさん……」

 

 するとピッコロは、押さえ込んでいる右腕から力が抜けたことに気付く

 

 どうしたことかと刹那の顔を見てみると、さっきまでとはまるで違う様子に思わず言葉が出た

 

 表情から強ばりは消え、まるで憑きものが落ちたかのような

 

「……ありがとう、ございました」

 

「ふん」

 

 普段木乃香に向けるような、満足気で穏やかな表情で、刹那は最後に一言そう口にした

 

 対してピッコロは、右拳を一発叩き込む

 

 ピッコロは勝負の最後まで、刹那の『敵』として振るまい決着を付けさせた

 

 刹那はそれを素直に受け入れ、痛みを感じる間もなく意識を一瞬で刈り取られる

 

「…………」

 

「木乃香の奴は……あそこか」

 

『マ、マジュニア選手、予選通過です!これで予選は、終了です!』

 

 長かった予選は、ついに全てが終わった

 

『一時間の休憩ののち、準決勝戦を開始いたします!』

 




 頑張って続き書きます。
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