「どうして……クリリンさんの調子が急に……」
「やっと、ネギのやつ決めよったか」
悟飯とコタロー、準決勝を戦った二人は選手控え室に戻っていた
コタローが海に落ちての決着だったため、着替えるのと海水を洗い流すのが目的だ
着替えの用意をコタローはしていなかったのだが、そこはアスナやあやかの時と同じようにピッコロの出番
同じ控え室で待機していた彼が、二人が入ってくるよりも先に着替えを出していた
「そっか、ネギ君と一緒に最後の修行してたからコタロー君は知ってるんだ」
「せや。あれは俺のやつよかホンマえげつないで」
新しいシャツと学ランを身につけたコタローは、ネギが決めてみせたとっておきに思わず苦笑
精神と時の部屋での修行中、彼も幾度と味わったのであろうことが伝わってくる
悟飯はしばし自分だけで予想を立てようとするが、どうも答えが出てこない
「うーん……」
「本来の力を出そうにも出せない、という感じに見えますが……」
「今の内に言うとくけど、俺からタネは言わへんからな。まだ三人ともネギと戦う可能性あるさかい」
ピッコロと同様に待機していたトランクスも考えるが、直接の原因は分からずにいるようだ
これに対しコタローは教える気は0
厳しい修行を乗り越え、互いに新技を作り上げたライバルとしてのけじめ、という意識が強くあるのだろう
しかし残る一人、ピッコロはというと
「……ほう、そういうことか。予選と比べて、随分派手にやったものだな」
「ピッコロさん、分かったんですか!?」
「……なんや、一人バレてるやん」
悟飯達二人と違い、幾らか理解のあるような素振りを見せた
「ネギとの修行中、色々と話を聞いて知識はあったんでな。まだ確定ではないが」
「ほーん、そういやネギも言うてたわ。『ピッコロさんにはすぐ見破られるかもしれない』て」
「一応聞くが、あの技……お前じゃ逆立ちしても、一生俺達には打てない技だな?」
「せや、やっぱり分かってるやん。けど……」
「安心しろ、他人にぺらぺら話す気はない」
続いてコタローに確認の問いをし、正解を貰って確信に至る
(ならええわ、これで二人は気付かずのままや。ネギ、このまま気付かれん内に勝負決めたれ!)
その間にも、戦いは止まることなく続いていく
局面は一転してネギが優勢、これを一番拳を強く握って観ているのは他でもないコタロー
(そんで俺より大舞台、決勝で悟飯相手にぶちかましたるんや!)
「
(くっ、やっぱりか。距離を取ってもあの魔法の矢で追撃される!それに……)
あれからクリリンはネギの打撃を数発浴びせられた
思うように動かない両腕両脚、つまり腕での防御も足回りによる回避もままならないということ
一旦態勢を立て直そうと、今しがた隙を見て離れようとしたのだがご覧のとおり
退避に全力であったために、先程よりも多く矢を撃つ余裕がネギには出来ていた
加えてクリリンは、この攻撃の対処の自由が無い
(……くそっ、まだ駄目だ!気弾まで撃てないなんて!)
前と同じように気弾で撃ち落とそうと右手に気を込めようとするが、体表に形を為す前に飛散する
『気』自体の感覚はあるのだが、膨らませる前に潰されてしまう、そんな感覚
必然的に前方の7矢の対処は、自由に動かせない中での防御か回避に絞られていた
水平にした両腕を前方へ出し、上下に並べて盾にする
「ぐあぁぁぁぁぁあっ!」
着弾し、全身に雷が駆け巡った
拳を脇で挟み込んだ時とは比べ物にならず、思わず絶叫を声に出す
本数の増加以前に、根本的な威力が上がっているようにも感じられた
ガードが崩れ、そこへネギが攻め立てる
「風華崩拳!」
風の矢を纏わせたネギの第三の魔法拳、緩んだ両腕のガードを突き破らんと上段に突き出した
(まずい、あの色は!また縛られる!)
色から風属性のそれと見破ったクリリンは警戒を強め、どうにか避けんとし抗う
膝の力を瞬時に抜いて折り、姿勢を落とす
ただ力を抜くだけならどうにかいつも通りにでき、頭の上を拳が掠める
ネギの『左』拳が
(しまっ、狙いはあっちじゃなくて……)
硬開門
正中線上に立てた右肘が、鋭い踏み込みと共にクリリンの鳩尾へと突き出された
風華崩拳の狙いは、上方へ注意を向けさせることにあった
「ごおふぁっ!この……おわぁっ!」
自律的な呼吸とは別に肺から空気が吐き出され、クリリンは再び吹っ飛ばされる
ここで彼は宙で態勢を整えようとしたのだが、これも失敗
前後左右上下にコントロール不能な揺れが現れ、空中静止とならず地へ足を着く
この調子では、ネギも飛べる以上空中戦を試みてもより一層不利を被るだけだろう
(舞空術までまともに使えなくなってやがる……何かが、何かがおかしくなってるんだ……)
構えを取り直しながら、クリリンは必死になって原因解明のため思考を巡らせていく
あの時のネギの攻撃を受けてから、自身の中で何が変わったか
(まず最初に突っ込もうとしてつんのめった、上半身に対して足の力が追いつかなかったせいだ)
足に気を込めて、飛び出そうとした時
(次にネギの攻撃を押し返そうとして、逆に押し返されて……)
両手に気を込め、パワーを上げようとした時
(気弾も撃てなくて、舞空術もコントロール出来なくて……)
気を集め放出しようとした時、体内の気をコントロールして飛ぼうとした時
(そうだ、『気』だ。『力』って曖昧な括りじゃなくて、『気』がいつもみたいに扱えなくなってるんだ)
おかしいと感じた時全てに言える共通点、クリリンは今それを見つけた
(まるで何かが体内にいて、俺の気を押さえ込もうとしている感じ、なのか?だから最初は力そのものが抜けたみたいに錯覚し……待てよ)
更には、さして昔でないあの出来事が、瞬時に頭をよぎった
(何かが、いや別の力が……気を押さえ込む、というよりは…………反発?)
”力が上手く入らぬアル……毒、とは違うアルよね?”
”……気を扱う古菲さんとは相性が悪いかもしれないですね”
”えっと、気と魔力は反発し合うみたいで……”
(!!)
全ての辻褄が合った
(そうか、魔力か!さっきからずっと俺の身体で光ってるこいつも、俺が気を使うのを何度も何度も邪魔してるのも、魔力。つまりあの時あいつは……)
聞こえなかったネギの詠唱、だがどんな魔法だったかはほぼ確信出来た
(……俺の身体に魔力を、送り込んできたんだ!俺だけじゃない、予選で餃子にも!)
「気を扱う相手の身体に自らの魔力を、ですの?」
「はい、ほぼ間違いないでしょう」
ネギとの長い修行を経て、魔法についての知識を蓄積させていたピッコロ
試合前、既に気と魔力の反発を目の当たりにしていたクリリン
今いる世界の住人では、彼ら以外に正解にたどり着いた者は殆どいないだろう
しかし元より気と魔法の混在する世界にいた彼女達ならどうか
実際上空では一人、クリリンより先に気付いていた少女がいた
「けど、ネギは相手のカードを持ってないじゃない。どうやって自分の魔力をあげるっていうのよ?」
「
刹那はアスナの疑問に、自らの推測を交えながら説明した
彼女自身、推測ではありながらもほぼこれしかないだろうと半ば確信しており、実際それは正解であった
「アスナさんは勿論ご存知でしょうが、気と魔力は本来互いに反発しあうもの。同時に振るおうとすれば、力を打ち消し合ってしまいます」
「あ、修学旅行の後にエヴァちゃんが言うてたやつやね」
「はい。今クリリンさんはネギ先生の膨大な魔力で強化された状態、そこへいつものように動こうと気を発現してしまえば……」
「出そうとした気は打ち消され、更には現時点での魔力の強化も減少してしまう。というわけですわね?」
木乃香やあやかの言葉も添えながら、一連のクリリンの不調の真相が語られる
これに補足をするなら、あとは予選で餃子に使った時についてくらいだろうか
今しがたクリリンへ魔力を供給した際に激しい光と音を伴ったわけだが、予選ではそのような様子は見られず
これは光と音が送り込んだ魔力の量に比例するためで、クリリンより力の劣る餃子にネギが送り込んだ魔力は今さっき程大量でなくても事足りたため
更には光は混戦時に使ったため周囲の選手が遮り、音も全八ステージの戦闘音が掻き消し、他のステージの選手達も気付けなかった
四人の中で刹那が真っ先に気付けたのは、実際に自身も近い経験をしていたからだった
先程木乃香が言及した、エヴァの『気と魔力は反発する』発言
それよりも少し前、エヴァのその発言を聞く一因にもなったあの戦いに遡る
「はい、実際あの時は少し焦りました。カモさんに言われて成る程と両方の力を重ねようとして、途端に力が抜けてしまいましたからね」
「あ、それってネギと仮契約して妖怪と戦った時?」
刹那の発言を受け、これにはアスナも気付いた
修学旅行での、木乃香救出のための戦い
刹那にとって、あらゆる意味でも一生忘れることの出来ないあの大決戦
「そうです、あの時はカード越しだったので私はすぐ供給を切って戦えましたが……今のクリリンさんはそうもいきません」
従者への魔力供給は、
そのためカードに働きかければ供給にストップを掛ける事も、場合によっては既に供給された魔力をカード越しに送り返すことも不可能ではない
しかしカードを介して魔力を貰ったわけではないクリリンには、それが出来ないのだ
完全な一方通行、体内に入り込んだ魔力は自身で処理するほかない
「アスナさんや高畑先生と違い、クリリンさんが気と魔力両方の扱いに長けているとは考えにくい……となれば、魔力を自発的に発散させることは難しい筈です」
「ほなら、ネギ君このまま勝てるん?」
「可能性は充分にあります。あとは、序盤で受けたダメージがどこまで響いているか……」
(それと、もう一つ気付いたぜ……さっきからあいつは、俺に攻撃を一発食らわせた後しつこく追ってこない)
舞空術を失敗して、不完全な着地をして、構えを取り直して、おかしい原因を考察して
こうしてる間、ネギはクリリンに追撃を仕掛けてこなかった
肩で息をしながら、右手に今度は光の矢が集まっていく
(魔法の遠距離攻撃で牽制して、その間に接近して、古直伝の拳法を叩き込む、これが一連の流れ。ただむやみに接近戦を仕掛けるより、こうした方が俺がボロを出しやすいと踏んだんだろうな)
飛んでくる魔法の対処、接近してくるネギへの警戒、接近戦への切り替え
複数の段階を経ることで、クリリンが咄嗟に気を使おうとする場面は必然的に増える
そうすれば魔力との反発で力は落ち、攻撃が通しやすくなる
(逆に言えば俺がボロを出さないと、つまり気を込めて魔力と反発させないと……この魔力のパワーアップ状態の相手は怖いってことだ)
ネギの慎重な攻撃の理由を見抜くと、クリリンは前方に構えた自らの右腕を一瞥
今自分は一切気を込めていない、という前提のもとで改めて見てみると、不自然を覚えるほどのパワーが溢れているのを感じ取れた
もし吹っ飛ばされた状態でネギが追撃に来て、気を込めようとする間もなく無意識でこの腕を出せばどうなるか
序盤に受けたダメージによる体力差で、逆にネギがやられる可能性も充分考えられる
(つまり、俺の気でこの魔力を反発させず、そのまま一発ぶちかませれば……)
「
(げっ、あの色はマズい!気を使わず、今ある力だけで……うおっ、こんなに飛べるのか!?)
自身の気を封じられたカラクリ、それを見抜いたことで打開の道筋を一つ見出せた
だがそこへ容赦なくネギの魔法が襲い掛かり、まずはその対処に追われることとなる
飛んできたのは風の
防御で幾らか凌げる光や雷と違い、直接のダメージこそ無いが接触するだけで動きを封じられてしまう
つまりするべきは先に撃ち落とすか避けるかで、気弾が使えない以上後者を選択
気で力を上げる、という今まで当たり前だった行程をせぬよう意識し蹴ってみると、魔力の強化によって回避に充分な跳躍をすることが出来た
(いいぞ、これなら一気にこっちから距離を詰められる!)
真上のジャンプというよりは横っ飛びだったため、すぐまだ地に着く
その地に着くジャストのタイミングで、再びクリリンは地を蹴った
今度はネギへ真っ直ぐ向かう跳躍、拳も既に握ってある
気を込めてしまわぬよう注力しながら、突き出した
「ぐぅぅっ!な、なんで……」
攻撃をガードするネギから苦悶の声と、クリリンが急に鋭い動きを見せたことへの驚愕の声が漏れる
これを好機と見るや、クリリンは続けざまに攻撃
気弾が撃てず元より遠距離戦に持ち込めないこともあり、両者の勝負は接近戦に突入した
図らずして、同じ
クリリンは戦う上で、気を込めてしまわぬよう意識せねばならない
そうなると力任せに拳を振るうことは許されない、クリリンの力任せの『力』とは気に他ならないからだ
したがって有効だったのは力を無理に使わずとも戦える『技』、古から伝授された中国拳法の数々となる
一方のネギも、クリリンにぴたりと距離を詰められ魔法が使えない
無詠唱魔法ですら、意識を向けた途端に一撃を貰いかねない攻めが襲いかかろうとしているからだ
故にこちらも、接近戦での選択肢が他にないこともあり必然的に古直伝の中国拳法での応戦となる
(さっきまでと、動きが全然違う。僕と同じ戦い方……まさか、古老師が!?)
(流石は古の自慢の弟子、ってとこか?魔法だけに目が行ってたが……接近戦の動きも悪くないぞこいつ!)
攻撃を放っては捌かれ、懐に潜り込まんとすればいなされ、お互い未だ有効打は無し
クリリンは現在の魔力強化状態以上の出力が出せず、ネギの守りを突破できない
一方のネギもその防御に手一杯なところがあり、満足な攻撃が打てないでいた
(あともう少し、もう少しで一発を叩き込め……しまった!)
いや、『打てないでいた』は誤り、正しくは『打たずにいた』である
魔力で強化されている状態ではあるが、普段の全力とは程遠い攻撃しか打てず、拙攻が続きクリリンが焦るのを待っていた
ついに気を無意識に込めてしまい、魔力との反発で全体の動きが急激に鈍る
「雷華崩拳!」
そしてそれはネギに、
「ぐああああああっっ!」
クリリンは、もう何度目か分からない魔法拳の直撃を受ける
それでもどうにか途中で気を抑え込み、魔力便りのたどたどしい足つきながら受身から立ち上がるを瞬時に行った
(くそっ、これじゃ勝てない!パワーも足りないし、気を使っちゃ駄目ってことは結局出来る動きに向こうと差がありすぎる!)
クリリンは焦って気を使ってしまったこと以上に、気が使えないことによる先程の拙攻に歯噛みしていた
古の教えてくれた格闘術は決して悪くない、しかし今の自分では結局のところ100%の発揮が出来ない
長年の戦いで染みついてしまった気を用いる戦闘スタイル、それを意識して変えようとすれば動きがどこかぎこちなくなるのは必然だった
倒せるだけの力自体はあると希望を見た右腕を、いざ戦闘となれば力不足じゃないかと認識を改め恨めしく見つめる
(せめて、この魔力でもう少しだけパワーを上げられれば……ん?今俺って、魔力ってのが全身に行き渡ってんだよな?)
と、ここでクリリンは今の自分の状況をもう一度確かめ、一つ疑問が湧いた
(あれ、それじゃあ……)
これまで自分が拳を全力で振るおうとした時、全身満遍なく気を割り振ったか、答えは否
当たり前だが拳に一番気を集中させてきた、しかしさっきまでの攻撃はどうだろう
気の代わりに強化してくれている魔力は、全身へ均等に流れたまま
これでは、満足のいく攻撃が出来るわけもない
(出来るの、か?気と同じように、右手に……)
右手に自然と力が入った、ただし気を込める為の力の入れ方ではない
「サ、
ネギの魔法の矢が襲い掛かるが、クリリンはその場から跳躍してそれをかわす
しかもそのまま別のバトルステージに身を移し、高低差で姿を隠して時間を稼いだ
「くっ、ぬううぅぅぅぅっ…………」
全身を覆う光の波に、不自然な揺らめき
ネギの魔力でなくクリリンの魔力として、彼の意思に従わんと揺れる
(いけ、るか?)
「だああああああっ!」
「!?」
そこへ、クリリンが移動してきたのとは別ルートでネギが文字通り飛んできた
「
「ぐぅおぇっ!」
本来は箒ないし杖の加速に使われる魔法を自身に乗せ、小手先無しの体当たりをクリリンへぶちかます
(まずい、絶対にまずい!まさか魔力のコントロールをし始めるなんて……もう悠長に攻めてる余裕は無い!)
どうやらクリリンの思惑に気付いたようで、ダメージが根強く残る全身に鞭を打って攻撃を決めた
横から叩きつけられるような衝撃を受け再びクリリンは吹っ飛ぶが、右手への集中は切らしていなかった
「……どう、だあぁっ!」
「!」
思わず、大声を張り上げていた
体勢を戻しネギと正面から向き合った時には、右手の光の大きさは初めの数倍
両脚・左腕に光はほぼ無く、クリリンは殆どの魔力を右手に集めることに成功していた
(これでパワー充分、左手で気弾だって撃て……って、あいつどこ行く気だ!?)
(もう接近戦は無理だ、確実に押し切られる!だったら今の僕に出来る最大の魔法を!)
試しに左手に気を込めてみると、問題無しに気が伝わっていく
右手には溢れんばかりの魔力を感じ、クリリンはしてやったりの表情
しかしすぐそれは一変、目の前にいたネギが突如として飛び立っていったからだ
「ラス・テル マ・スキル マギステル……」
「また魔法か?させ……って、飛ぶのはまだ駄目かよ!?」
後を追おうとするクリリンだったが、舞空術を試みた途端あの時と同じ感覚
舞空術は全身の気を操って飛ぶ技法、つまり現在魔力が体内体外問わず集結している右手部分が明らかに足枷となっている
それを見越したネギはバトルステージ上から離れ、空中で上級魔法を発動させにかかった
クリリンに自身の魔力の大半を注ぎ込んだため、幾らか回復した現在まで撃てずにいたとっておき
既に開いたこの距離なら、一回の跳躍での接近や気弾の牽制なら充分に対処できる
「
これまで何度も放ってきた風と雷、その両方が同時にネギのもとへ集まっていく
ネギの操る最上級魔法の一つ、雷の暴風
全貌がまだ見えぬ現時点でも、相当のものが飛んでくるとクリリンが察するのは容易であった
(うわ、ありゃかなりでかいぞ……両手ならともかく、片手で撃つ気功波じゃ押し込まれちまう!)
右手に魔力が集まってるため、両手に気を集めて放つかめはめ波は使えない
魔力を手でなく足に集めれば両手が使えるが、そうなると撃ち合いになった時その場での踏ん張りが効かなくなる
結局のところクリリンがすべきは一つ、右手の魔力をどうにか全部無くしてしまうことだった
(気弾みたいに放出、は無理か。あいつみたいに魔法は使えないし、身体から無くすには……そうだ!)
当然であるが、彼はその技法を知らなかった
ただ、これまでの事象を踏まえて導いた案、それの偶然の産物
(今は左手で気が出せるなら、自分からこいつにぶつけて消してやる!)
更には、彼がその道においては悟空や悟飯を凌ぐ達人だったこともあるだろう
「(よし出た、これを合わせ……)うおっ!?思い切り反発させたらこんな衝撃来んのか……」
拡散エネルギー波、気円斬といった技の考案
そしてなにより、充分な説明も無いまま元気玉を悟空から託されたにも拘わらず、発現させ狙い通りに撃ち出せるセンス
(ちまちま何度もぶつけてちゃ、反発の衝撃にもたついて間に合わない。次は残ってる魔力を一度に全部、ぴったり消せるだけの気をぶつけてやる!)
気の繊細なコントロールに関してなら、純粋な戦闘力では他に遅れを取った現在でも彼は頭一つ抜けていた
自身では魔力を発現できず、他の使い手が相互調節するなかで気の量を合わせるだけで済んだことも大きかっただろう
(これで、どうだ!)
心中での宣言通り、右手に残った魔力に対応した寸分狂いの無い量の気が左手に
『魔力』と『気』、相反する同量の二つをそれぞれの手に纏わせ、クリリンは正面でぶつける
二人の勝負の決着は、それから十秒とかからなかった
「あ、う……えぁ……」
「ネギ坊主!だいじょぶアルか!?」
「……ぅ……古、老師?」
全身に走る痛みを、ネギは感じていた
元から序盤の攻防でクリリンから手痛いダメージを受けていたが、今はそれ以上
その上、直前の記憶がはっきりとしないときた
故に彼は、何故目の前に古がいるのかも良く分かっていなかった
咄嗟に彼女の名を声に出すと、喜んだ様子で横たわるネギの身を起こす
「おお!気が付いたアルな!ふむ、ふむ……クリリーン!平気そうアルー!」
「クリリン、さん……そうだ、試合は!?」
クリリンの名を耳に入れ、咄嗟にネギは辺りを見回した
自身が倒れていたのは、さっきまで戦っていたバトルステージ上
下を見ると、上から強く打ち付けて出来た床の窪み
「……思い出した、あの時僕は……」
「おおっ、そうか。加減が効かなかったんで冷や冷やしてたんだが、大したことなくて良かったぜ」
これらを目にし、あやふやだった記憶が少しずつ蘇る
そこへ、少々ふらついた様子でクリリンが近付いてきた
「ほら、立てるか?」
「少し痛みます、っ、けど、何とか…………負けたんですね、僕は」
「ああ、俺が勝たせてもらった」
手を差し出され、痛みが更に走るところをどうにか無理を通して立ち上がる
クリリンから確認も取れ、漸くネギはおおよその出来事を思い出せた
(そう、あの時クリリンさんは魔力に自分の気をぶつけて……それからこっちへ飛んで来たから詠唱途中の雷の暴風をどうにか撃ったけど、掻き消されて……最後は接近戦が、二秒と持たずに……)
真下へ叩き落され、この後の記憶が出てこないということはしばし気を失ってしまったのだろう
その間にクリリンの勝利が宣告され、試合が終わったことで古が客席から飛び出してきた、ということか
「あの、クリリンさん。最後のなんですが……」
「あれか?俺も無我夢中だったからよく分かんないんだよ、なんかこう、今までにない力が湧いてきたっていうか……もう出ねえけど」
「やっぱり…………あれは咸k」
「それにしても二人とも!ナイスファイトだたアルー!」
古が二人に飛び付いて会話を遮り、腕を回しぎゅっと引き寄せる
ネギがクリリンの顔を見ようとすれば、古の顔で隠れてしまうほどの密着具合
何より腕に込められた力がなかなかのもので、ネギが傷の痛みを再確認してしまうほど
「老師にはどっしり構える言われたアルが、我慢出来なかたアル!私よりずっと上のステージでの真剣勝負、しかと見させてもらたアルよ!」
「あの古老師、ちょっと強すぎ……痛いです近いですって」
「おとと、済まぬアル。時にネギ坊主」
「え?な、なんでしょう老師」
ネギに言われ腕の力は緩めたが、距離は変わらずのまま古はネギの方を向く
「嵌め手を交えたとはいえ、クリリン相手に短期間でここまで肉薄するとは……何か特別な修行をしたと見たアルが?」
「はい、多分クリリンさんも知ってると思いますが、神様の神殿で……」
「え?お前あそこまで行ってきたのか!?」
「な、何アルそれは!?クリリン、私に隠してたアルか!?」
自分とは比べものにならない成長の理由を尋ねると、耳慣れない単語に驚いて顔の向きを180度変えた
別の意味で驚いていたクリリンに、何故教えなかったと追求
「いや、別に隠してたわけじゃなくて、そこへ連れてくって発想が無かっただけで……」
「むむむ……二人とも、この大会が終わたら私もそこで修行するアル!連れてくヨロシ!」
二人の試合の余韻以上に、現在古の頭の中は未知なる修行場についての興味で埋まり始めていた
そこはクリリンがわかったわかったと古をなだめ、ひとまずこの場を収める
「とりあえず、次の試合もあることだしここから離れ……おとと」
「大丈夫ですか?」
「ああ、なんか気が大分減っちまったみたいだ。魔力ってのにはほんと、してやられたよ」
「ふむふむ、なら……ほいっと」
「ん?」
魔力をネギに送り込まれてから、出そうとした気を幾度と消されてしまったクリリン
更には最後の大量消耗もあり、空とまではいかないものの全体の内結構な割合を持っていかれていた
そこへ、古が手を伸ばして握ってきた
「何だよ古、いきな……お?」
「えへへ……さっきのお返し、アルよ」
何故握ってきたかは、送り込まれたそれが答え
さっきまで流れていた魔力よりうんと馴染みのある、気
古が自身のそれを、クリリンへと渡していた
「私のじゃ、どこまで足しになるかは分からぬアルが……お疲れ様アルな、クリリン」
「古……」
古は意識してないだろうが、彼女が今しがた見せたいつもの屈託の無い笑みもまた、クリリンの力となって流れ込む
気の消耗とは別にネギの攻撃でのダメージもあるだろうに、クリリンの表情は温かく緩んだ
「さて、じゃあクリリンの言う通り戻るアルか!」
とはいえ、三人の中で一番元気なのは間違いなく古
残る手でネギの手を握り、二人まとめて引っ張って歩く
「次は楓の試合、三人で応援するアルよー!」
予選が済んでから、空は雲一つない晴天
その空に負けないほど、今の古の表情は晴れやかであった
コタローvsヤムチャ以上の文字数になり、めっちゃ疲れました。準決勝もこれで折り返し、あと二戦もなるたけ速やかに、完成を目指します。では